寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

幸運の女神様(九)

2010年09月04日 11時11分25秒 | 日記
昼下がりの午後… 東京駅から山手線で二つ目、秋葉原に事業部の事務所はありました。
広子さんと仲直りを済ませた鬼塚課長は颯爽と入りました。
『頼もう~』
すっかり自信を取り戻した鬼塚課長は川中部長に現状の報告を済ませました。
『よく分かったよ』川中部長は笑顔でしたが目は決して笑っていません。
『いいか鬼塚、驚くなよ』
顔を近付け声を落としました。
『?』『実は明日の呼び出しだけど…』
周りに目を配らせた後一段と声を潜めました。
『調べたら佐伯さんがバックなんだよ』
佐伯さんは本部長です。
俗に三冷の佐伯と呼ばれる人でした。冷静、冷徹、冷淡、彼には氷のイメージが付きまといました。
情けは微塵にも持ち合わせていないとの社内でまず笑った顔を誰も見た事がないのですから…
今回の呼び出しにこの佐伯本部長が対応するのでした。
『う~ん』
川中部長はうなり声を上げるだけです(笑)
『川中部長、佐伯さんはどこに所属している方なんですか…』
『どこって、単独だと思うよ』
『単独ですか』…どこか別の派が動いている筈です。今売り出し中の鬼塚を外して新規事業部を我が派にする足掛かりとして狙っている派があるはずです……『佐伯本部長はシャドーだよ』
『なるほど。隠れ蓑にされているのか…』
鬼塚課長も様子が分かり掛けてきました。
『…でどうするかだけど…』
『斉藤役員に話しましょう♪』
川中部長はうん、と一つ頷いたきり黙り込みました。 『川中部長!』
勢い込みながら鬼塚課長は催促しました。
『実は斉藤役員は今入院されているんだよ』
『ええ!』川中部長が冴えない顔でいた訳がわかりました。
親分が居ないスキを狙われたようでした。
『斉藤役員を当てに出来ないから困っているのだよ』 沈痛な趣(おもむき)でため息をつきます。
『それじゃ斉藤役員なしで話しをすればいいじゃあないですか』
広子さんの幸運をお裾分けして貰っている鬼塚課長は強気でした。
なんでこいつこんなに元気なんだ? 眩しいものを見るように川中部長は見上げました。
『まぁ私に任せて下さいよ♪』
鬼塚課長には広子さんの幸運と高辻主任の作戦がありました。
『任せるって言ってもねぇ…』
川中部長にとっても一大事であることには変わりありません。
新規事業部の開拓者の鬼塚が左遷されたら必ずその上司の自分も遠からず移動の憂き目に会う事は免れません。
今景気が悪いから低調なこの事業部も景気が回復すれば必ず業績もアップするに違いありません。
…『そうか!客観的な資料を出して半年ほどの猶予を頼むつもりだな』
鬼塚課長はニッコリと笑いました。 『じゃあその線で俺の方も資料を作るから突き合わせをやろう!』
話がまとまれば後はやるだけです。 川中部長は部下全員に資料作成を命じました。 ……夜九時を過ぎた頃資料は完成しました。
『どうだ!これなら完璧だぞ』
『そうですね。ケチのつけようもないですね』
『それどころか、偉い奴やと褒められて部長になるのと違うか(笑)』
『ワッハハハ』
『ワッハハハ♪』
川中部長と鬼塚課長は窓の外に広がるネオンを見ながら大笑いしていました(笑)
コメント
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