寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

狐は背後に周る〓

2010年06月23日 09時09分11秒 | 日記
本社の査察も無事?終わりこの地方工場にも平穏な日が戻ってきました…
しかしそれは束の間でしたね。
次の週でした。本社の経理がまた来ることが判りました。
『また来るの…』皆一様に驚いたのは当然です。
私は例に依って新幹線の駅までお迎えに行きました。 『お疲れ様でした』私があいさつをしますと、経理部長は笑顔で『ありがとう』と会釈して『ところで高村さん、でしたね』『はい』
『今日はどんなに遅くなっても東京に戻らなくっちゃあいけないから最後までお願いしますね』
と来ました。残業は大歓迎です(笑) 『大変ですねぇ』 私が労(ねぎら)うと、『毎週来るから変だと思っているでしょう』薄っぺらな鞄を横に置いて苦笑していらっしゃいました。 『何か粗相がありましたか?』私はわざと砕けた言葉を使いました。
『ハハハそうですね(笑)』私の言葉が気に入ったのか経理部長はこの前とは違った笑顔を見せました。
『いずれ分かる事だけどどうも腑に落ちないんですよ…』窓から流れる景色を見ながら部長は話してくれました。
きっかけは一月ほど前に本社あてに匿名で密告があったことでした。
それによると工場長が業者から機械納入の見返りにリベートを貰ったのでした。
これはまぁ考えられる話で以前にも無かった訳ではないのです。
ところが内禎してみると工場長は潔白で、担当の某部長がどうも怪しいとなりました。
しかし調べて行くとその某部長もシロなのです。
そこで経理としては密告はガセネタだと結論づけました。
そしてしばらくした頃、リベートは××課長と工場長が貰ったんだよ。と再び密告がありました。
電話を受けた経理員は『証拠はありますか』と尋ねると、『こちらに来て下されば分かります。』と自信有りげな話し振りです。
本社ではもう一度念入りに調査しました。
それでも何も怪しいところは見つかりません。
これはやっぱりガセネタだ!とした時に別の電話があり『何もありません』と言うのでした。
名前を訊いても匿名の一点張りです。結局密告は三回ありました。一回目と二回目は同じ人物で三回目は違う声でした。
本社ではどうするか問題となりましたが、鬼塚専務の鶴の一声で現地調査となりました。 そして明日現地工場に行く夜に経理部長宛てにあの三回目の声の主が電話をして来たのです。『工場長の家に来て下されば分かりますから…』
『あなたの名前は?』経理部長が問い掛けると、『私は名乗る訳にはいきませんが、始めの人は分かりますよ』と謎めいた事を言います。
『それはどう言うことか』と再度訊いたところ『冬の天気を訊いてくれたら分かるはず』そう言って電話は切れました…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狐は背後に回る〓

2010年06月22日 11時41分18秒 | 日記
W杯予選も大詰めになりましたね。日本はデンマーク戦に予選突破を目指します。私には細かい戦術は分かりませんが《バイキング対サムライ》の戦いですよ(笑)日本は引き分け以上なら予選突破ですがそれが変な力みにならないかと案じています。私の予想では得点力に著しく劣る日本は1―1、これしかないですね。つまりデンマークを0に押さえられない日本が唯一予選突破できるスコアです。2―1や1―0で勝つことはありえません。0―1,0―2,1―2で負けることの可能性は大と感じています。応援はもちろんですが現実は厳しいのでは……………………クルマの外は爽やかな風が吹いていました。これが仕事じゃあなかったら絶好のドライブ日和です。住宅街に入るとスピードを落した総務課長の車が少し迷いながらの運転になっていました。私達のクルマは相変わらず沈黙したままでした。
『この辺り雪は降るんですか』
呟くように部長が口を開きました。 『…ちょっと降りますね』工場長が投げやりに返事しました。『そうですか…』しかたないなぁ…そんな部長です。 車は住宅街を外れたマンションの一角に止まりました。薄いベージュ色の品の良いマンションです。
総務課長のクルマが駐車場の片隅に停車するのを見て私も近くに駐車しました。
総務課長のクルマから経理員が三名課長と何か話しながら降りました。 こちらも『じゃあ…』
部長の掛け声で 三人が一斉に降り立ちました。それをきっかけに 私はクルマの窓を全開にして重苦しい空気を吐き出しました。
総務課長は私に『すみませんが、私も中に入りますからここで待機していてください…』チェッ!いつもそうなんだな、俺だって中に入りたいよな(笑)。そんな私の思慮も叶わず課長以下マンションへ向かうのを私はぼんやりと見送っていました。

一時間ほど経ったでしょうか。総務課長が出てきました。私と目が合うと小さく頷きながら近付き『もう少し掛かるでしょう』と話しかけて来ます。一体何がそんなに掛かるんだい?
こんな時私達の立場とはこんなものだ、と痛感するものです。
つまり私達は黒子に徹する訳です。 そんな私の気持ちを察してか総務課長はいつの間に用意したのか缶コーヒ―を差し出しました。
私はお礼を言いグビリと一口飲んで 『何があったの』と聞こうとしたときでした。
経理部長が出てきました。
総務課長は速攻部長の元へ駆け寄りました。
*皆さんこうでなきゃあ出世できませんよ(笑)
『お疲れ様です』 課長がおべんちゃらで向かえますと 部長は辺りを見回し『この辺りは雪が降るんですか』 と課長に問うではないですか! 確かこれを聞いたのは三回目だぞ。 私にも訊いていたし、そんなに雪が気になるのかい(笑)
二人は立ち話をしながら時間を待っている風でした。 十分くらいして経理員達が出てきました。工場長も一緒でした。
恐らくは家宅捜索なのでしょう。
?しかしそれにしては工場長の晴れやかな顔…
経理員達には全く見向きもしない素振りでした。部長はと見れば相変わらず課長のヨイショに満更でもない顔でご機嫌です。 はは~ん♪これは【シロ】だね…
私は気が楽になりました。
それでも帰りの車中は多少マシと言うくらいで弾むものではありませんでした。
工場に着きますと工場長は『では』と短く告げて工場へ悠然と帰りました。
さあ、どうなるんだ!
何かの疑惑があって容疑を疑われた工場長はシロ、二日間掛けて調べた捜査は一から出直しになりました… 捜査員…いや経理一同顔色無しですね(笑)
工場長が立ち去って事務所の玄関先で一同立ちすくしていました。そこに例の女性事務員さんが通り掛かりました 。 彼女は会釈しながら『お茶を会議室に用意しておきましたから…』と課長に告げていました。 『ああ、ありがとう』
仕事が山ほどある課長はうんざりした様子で頷くと
『取りあえず会議室にお入り下さいよ』ここで立ち話も冴えないことでした。
『あぁ、君』部長が立ち去る彼女をに声を掛けました。『はい?』思わず振り向いた彼女に『この辺りは雪が降るのですか?』
なんだ、またこの話かよ(笑)
私はうんざりしながら彼女を見ると『はい、雪は降りません』彼女は言い切りました。『え!』しかし驚いたのは私だけでした。だってこの地方は雪が降るはずです。近年暖冬の影響でそうは積もりませんがシーズンに何度も雪が降るはずですよ。
それなのに…なぜあんな事を言ったのでしょうか。
私が考えているうちに皆は事務所へ入って行きました。誰も気にする素振りさえありませんでした。
夕刻経理部長は帰京しました。
新幹線の駅まで送る途中経理部長は淡々とした態度で車窓からの景色を眺めていらっしゃいました。私は余程訊いてみようかと思いましたが、そこは身の程知らず…私達は黒子に徹しなければなりません。私が気になったあの経理部長の問い掛け、誰も気にしなかった返答が何故か私には引っ掛かっていました…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狐は背後に回る〓

2010年06月21日 10時37分57秒 | 日記
さて地方工場に滅多に来ない取締役経理部長は幹部のお迎えに余裕の表情でした。
そんな穏やかな部長を見て私はホッとしました。
なにか不祥事があったならば、大変な事になります。それが部長の様子からして視察に来た感じでした。
部長以下経理社員四名は一日中会議室に籠っていました。それは終業時間をはるかに超えて深夜にまで及びました。
最初工場長が入りましたが直ぐに退室しました。それからは各部署の責任者が次から次と出入りを繰り返していました。
事務所の女子社員がお茶を運ぶ以外一般社員は立ち入り禁止でした。
そんな様子を私はベテランの女子社員から聞くことが出来ましたそれに依りますとどうも課長以上からいろいろ聞き出しているみたいで何を調べているかは分かりませんでした。
ただ購買関係者に時間をさいているのはやはり金が絡んでいるからでしょう。
夜十時を回ってその日は終わりました。私は部長を近くのホテルまで送り届けました。車中で部長からなにか話が聞けるかなと期待していましたが、たった一言 『この辺りは雪が降るのですか?』 『はい年に何回か降りますね』
『そうですか…』 『…』
部長はそれだけ話すと後は仏頂面(ぶっちょうづら、シャレであります(笑)で取り付く島もありません。
次の日もやっぱり厳戒態勢です。
朝から工場長が会議室に入りますと他の出入りが全く途切れました。
途中経理員が通信連絡で何度も出入りをしています。経理員は声を落として話しているらしく話の内容はさっぱりです。
会議室は小さく仕切られていてその小部屋に部長と工場長が入ったきり一時間以上経っているのです。私は興味津津のベテラン女子社員をけしかけて情報を探るように頼んでいたのです。 『ねえねえ♪高村さん昼からクルマ出して下さい、ですって』スパイ役の彼女がコッソリ知らせに来てくれたのは昼前でした。
私は準備がてらクルマを取りに出ると総務課長が声を掛けて来ました。 『高村さん一時に工場から出るので準備お願いします』
『はい、どこまでですか』私は行き先を尋ねました。 『工場長のご自宅です。私も一緒に行きますから大丈夫です』
自宅…こりゃあ事件だね。私にはピンと来ましたね。食事を急いで済ませていると例の彼女か近付いて来て『加藤工場長ヤバイのですか…』
そう尋ねてきても私には加藤工場長がどんな人なのか知りません。
しかし今から考えると彼女は只のやじ馬とは思えない神妙な顔つきでしたね…
午後一時きっかりにクルマは出ました。
助手席には経理員 後部座席は工場長と経理部長です。 先頭を総務課長の車が走りました。 車中は水を打ったように沈んでいます。咳払い一つありません。その内に横の経理員が私を相手に世間話を始めました。
しかしそれも続きません。後ろの席が重過ぎるのです。こんな雰囲気で運転したのは私も始めてでしたね。 それでも若い経理員は雰囲気を変えようと頑張ります。『この辺りの特産品なにがあるのですか』私も喋りたいのですが特産品なんか知りません。仕方ないので『よくは知らないのですが牛肉は有名ですよ』と繋ぎました。
『牛肉ですか♪焼き肉食べたいですね』浅はかな答えです(笑)
そうしてぎこちない問答をしていると住宅街へとクルマが入っていきます。
どうやら近付いて来たみたいです。 私はホッとしました。だって島送りの囚人を乗せているようでしたから笑)…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狐は背後に回る

2010年06月18日 09時38分30秒 | 日記
オランダ戦明日ですよ(笑)私の予想は1―4です。裏筋は0―1です。 つまり日本が偶然先制すれば本気をだしたオランダの猛攻を浴びることでしょう。ただ日本がひたすらゴメンナサイでいけば雉も鳴かずば撃たれまい~(笑)
…で最少被害で許して下さるかも(笑)つまり負け方もリーグ戦の戦い方だと認識すべきです。
ここで途中からご覧の読者の方に簡単にご説明しますうちの会社は一流企業です。売り上げは悠に一兆円を超え従業員は一万人です。 事業基盤は国内需要向きと海外向けとあります。国内は安定していますが海外は好不調の波がはげしいのです。
この荒波をこぎ出している船頭さんは鬼塚専務です。 副が高辻役員、もう一艘あります。 船頭さんは根本常務、同じく副は宮崎役員です。
この2艘の船がえいこら♪えいこら♪と走っています(笑) お気付きだとは思いますが、鬼塚丸が少し大きい船であります。
本社(東京)では完全に分かれていますが、西日本の営業拠点があるここ京都ではそうもいきません。同じ建物の中で呉越同舟です。私はその両方の役員さんの面倒を見ている次第です♪
東男(あずまおとこ)に京女と言いますようにこの京都では様々な男女の話が生まれて来ます。艶話,痴話(笑) など人間模様有り笑い有りと取り混ぜたブログになっています(笑)
ところで皆さん 狐は猟師の後ろに周る!
ご存じでしょうか?ことわざと言いますか、昔のお話です… つまり猟師が山で猪狩りをする時の話です。狩りは山の中を猟犬を先導にしながら前へ前へと進みます。猪を追い詰める為です。賢い狐はとばっちりを避ける為にその猟師の後ろ側から追いていくのです。
無論振り向かれても分からないくらいの距離は保っています。
これは狐が考え付いた生きる知恵なのでしょう! 私達も見習わなければならないでしょう 知恵があるのか生まれながらの素質でしょうか(笑)
最近これとよく似た話がありました!
ある地方工場ですが、本社から経理部長以下数名が出世したことがありました。工場は製品を作る所ですね。材料や副資材など多数搬入はあるとしても支払いは本社が行います。また製品を出荷しましても入金はやはり本社へ入ります。つまり工場では多少の支払いは発生しましても大きな金額にはならないのであります。年に数回経理の下っ端が工場経理の勉強を兼ねて来るのが慣習となっていました。
それが経理部長自らの出張です。
私達には知らない事情があったのでしょうね。
私は経理部長をその工場までお送りする仕事になりました。
取締役経理部長,このクラスは役員車を使う権利があります。この場合も新幹線で最寄り駅までは一緒です。(ただしグリーン車と自由車の違いはあります)
役員は駅から社用車で移動です。平社員はここからが大変です。ローカルな電車やバスを乗り継いで工場まで行きます。当然時間は倍以上掛かりますから出発は朝一番になりますね。
それは役員よりも早く工場に着いていなければならないからです。
この日も工場に到着した役員は工場長以下幹部連中にお迎えを受けていらっしゃいました。そしてその中に本社の見慣れた社員が居るのを見つけて『おう君ら泊まったんか♪』だって(笑)
朝一の苦労も知らないで~
若い連中はブーブー言っていましたが、これ実は役員さんがよくやる手口なんですよ(笑) 役員さんだって昔は平でしたよ。同じ苦労したからこそ、わざと言っているんじゃないかと気がついて欲しいよね(苦笑)
こんな何気ない一言にどう対応しているのか、役員さんは試しているんだぜ(笑)
前にも言いました通り役員の仕事には将来の幹部を見出す事も重大な任命だからです。
話を戻しましょう…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

男の願望(七)

2010年06月17日 10時06分56秒 | 日記
伊藤さんは真面目な人柄です。控え目と言いますか大人しい性格が地味な風貌と合わせて 目立たない存在となっていました。 容姿は普通…コツコツやる頑張り屋さんでした。
これは結果論でしたが、田川部長はオーソドックスにアタックしていたら多分願望を達していたのじゃあないでしょうか。
その証拠に同僚の女性社員からの話ですと、伊藤さんは田川部長に少し気があったように見えたそうです。
そうとも知らない田川部長は【策士、策におぼれる】を地で行ったのでありました。これが△△課長なら空気を読んで作戦を切り替え普通にアタックして成就していたでしょうね。要は経験・センスの差がでました。
ある日伊藤さんは些細なチェック項目を確認せずに事務処理を行いました。このレベルは以前田川部長に確認した時に
『伊藤さんが判断して下さい』と了承を取っていたからです。
しかし事は意外と大きかったのでした。
つまり納期遅れを招いたのでした。 発注数量の間違いでした。問題となった製品は二か月の時間を要します。発覚した時には既に二週間しかありませんでした。お得意先は前述のM電器です。部内は騒然としました。部内の売り上げの比率が取り引き開始以来猛烈に上がっていて今期の業績を左右しかねないくらいになっていたからです。田川部長は早速荏原へと走りました。
ミスとは言えないくらいの事が甚大な損害になりそうな雰囲気でした。当然伊藤さんは蒼然とするしかありません。泣くにも何がなんだか判らなかったのでしょう。幸いな事に部内では伊藤さんを責める雰囲気は全くありませんでした。むしろ『どうしてこんな騒動になったのかな?』 と皆首をひねっていました。
この業界では発注は三重(さんじゅう)に行うのが常識化されていました。つまり誤発注や見落としを未然に防ぐ為でした。それが今回に限り一度きりだったのでした。
それでもやはりお客様第一ですから表立てて言う者はいませんでした。 新しいお得意でしたから誰も詳しいことが判らなかったのでしょう。
翌々日田川部長が帰社しました。
納期は何とか間に合う事で治まった様子でした。
別の工場に無理を言って間に合わせたのでした。
これにて一件落着♪
…ここで何もなかったら『さすが田川部長!』となったのでしょう(笑)しかし田川部長は次の作戦に移っていたのでした。
ちょうどM電器の購買課の担当者が京都に来ました。 あまりの好タイミング…こりゃ△△課長の差しがねでしょうね(笑)
田川部長は担当者に会いに行く準備を済ませ、いよいよ作戦実行です。 『伊藤さんちょっと…』
『はい』
予め同行を指示されていた伊藤さんは席を立ちました。スラリとした後ろ姿が田川部長の席まで進みました。
『じゃあ行こうか!』さすがの田川部長も伊藤さんの顔を正面には見られませんでした。 その時『部長、円山本部長がお呼びですが…』
『えっ!』
円山本部長は田川部長の上司、次期役員と周知の認める切れ者…高辻役員の懐刀です。

『はは~ん今夜のM電器の件だな』田川部長は思いました。納期のトラブルは回避できた が今後の事もあるのでその点の注意かな?
あるいは円山本部長も顔を出すと言うつもりなのかな。
『ちょっと待っていてね』伊藤さんに告げると田川部長は本部長室へと向かいました。
『失礼します』
『はい!どうぞ』 本部長室は六畳くらいの役員室の隣りにありました。 円山本部長は最近役員待遇に昇格していましたから狭くても個室となります。
部屋には大きな机がひとつあるだけ…鞄や書類が無造作におかれていました。
その真ん中に円山本部長は書類に目を通していました。
『あの田川ですが…』
『ああちょっとまってや』関西出身円山本部長は人懐っこい笑顔と柔らかな関西弁が部下からも慕われている好人物でした。 しかしこの場合は違いました。 普段ならこんな時も『ごめんやで』と笑顔で答えるのが、素面です。
沈黙が部屋に流れます…
何か言おうとした時でした。『コンコン♪』外からノックです。
『ああ悪いけど後にして…』ドア越しに円山本部長は返事しました。
『はい!』聞き覚えのある声が去って行きました。
『今の誰だっただろ…』ぼんやり考えていたら、円山本部長の声がしました、
『待たせたね』
いつになく険しい顔つきで円山本部長は言いました。 どうしたんだろう?
『田川部長今夜のM電器の件やけど藤沢課長と亀山部長に行ってもらうよ』
『えっ』何を言われているのかわかりません。 M電器は自分の担当なのだ。藤沢はその下だからまだしも亀山なんか関係ないだろ!
『田川部長…』
言葉を切った円山本部長はじっと見詰めました。
何なんだ…何なんだよ!叫びたいくらい円山本部長からプレッシャーが掛かってきました。
『明日から東京に行ってもらうで』『とうきょう?』反芻する田川部長を無視したように円山本部長は続けます。
『全部バレてるから言い訳は利かんよ』
『一体何が…』つぶやくのが精一杯だった。顔から冷たい汗が吹き出していました。それを見た 円山本部長は顔を歪ませ…
『あほしたな! △△さんが一昨日馘になったんやぜ』田川部長の顔から吹き出した汗が流れ落ちました。
『すみません~』
情けない声が一筋出たのが田川部長の最後でした。

M電器の納期トラブルは内密に調査されていたのです。相手先には高辻役員が、急ぎを受けた工場には円山本部長かそれぞれに赴き事情を調べたのでした。 それで△△課長と田川部長の出来レースと判明したのです。工場はなんと二月前から依頼を受けていたのも判りました。
ただ何の目的でこんな納期遅れを捻出したのか始めは見当がつきませんでした。ところがその前に△△課長の社内不倫が露呈しました。解雇を自己退社にするのを条件にM電器の役員が問詰めたところ田川部長からの依頼と判明し連絡を貰って驚いた高辻役員が円山本部長と相談役した結果
未遂と終わった田川部長は左遷、代わりに亀山部長を引き継がせたのでした。
田川部長は肩を落として…それは傍目に見ても気の毒なくらいの落ち込み様でした。
待たされていた伊藤さんはまさか自分を罠に掛けようとした悪人とは知らずに田川部長に
『大丈夫ですか』 と気遣っていたそうです。

田川部長は願望よりいつの間にか途中のプロセスに酔ってしまったのではないでしょうか。だって①のところでアタックしていたらまぁ男の願望を達していたかもね…
田川部長はその夜最終の新幹線で東京へと帰るつもりで駅に来ました…
驚いたことにその上りホームに伊藤さんが来ていたのです。 田川部長がその姿を見つける伊藤さんが笑顔で会釈しました。なんてことなんだ。田川部長は無性に涙が出て来ました。『ありがとう、ありがとう、ありがとう』田川部長は何度も繰り返しお礼を言いました。『お元気で…』伊藤さんもいつの間にか涙声に変わっていました…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする