軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

総合文化展

2024-11-15 00:00:00 | 軽井沢
 軽井沢町では毎年秋の文化の日を中心にして、「総合文化展」が開催されている。今年も11月1日(金)から4日(月)までの4日間、連休の3日をはさんで第40回軽井沢総合文化展が、中央公民館と老人福祉センターで行われた。

 出展作品は書道、詩歌、絵画、写真、生け花、その他・陶芸・彫刻・篆刻・工芸・手芸・和裁・押し花など多岐にわたるが、子供から老人までの幅広い年代の方々の力作が展示される。

 私も、ここ数年毎回のように写真を出品してきている。また、昨年からは妻も出品するようになった。私は毎回写真を出品しているが、妻の場合、昨年は切り絵を、今年は貴石を使用したペンダント作品を額装して出品した。

 今年出品した私の写真は、このブログですでに紹介したものばかりだが、これをA3ノビサイズに大きくプリントした。昨年までは専門の業者に依頼していたが、プリンターを新しくし、大判の印刷にも対応できるようになったので、今年は自分でプリントして出品した。

 普段はパソコンのモニター画面で見ている写真だが、これをプリンターで印刷すると、思ったような色調に仕上がらないことも経験しているので、専門の業者に依頼したものと同じような画質になるかどうかが心配なところだが、6月に一度、別の展示会用のA3ノビサイズの作品をプリントしていて、プリンターの設定条件などを確認できていたので、今回もなんとかイメージに近い写真に仕上げることができた。

 今回の私の作品は偶々だが、”と”シリーズになった。以下のように二つの主題を組み合わせて撮影したものである。何だか学生時代の写真部の顧問のH先生からは「どっちつかずでうろうろしているうちに起きた交通事故のようだ!」とのご批評を受けそうな気もしているが。


 ① 満月と浅間山
 これは、浅間山の山頂に満月が沈む「パール浅間」の撮影をするために、その事前の準備として1か月前に撮影に出かけた時のもので、まだ満月の位置が上空高くにある時に、浅間山が朝焼けでピンク色に染まるタイミングとなったところを撮影したものである。
 翌月には、狙い通りに浅間山山頂に満月が沈むところを撮影できたが、太陽がすでに昇っていて浅間山はすでに普段通りの色になってしまっていた。
 浅間山の色合いと空のグラデーションの美しさを見ていただきたくて、今回出品作品に選んだ。


 ② 北斗七星とホタル
 この作品は、初めてホタルの撮影に出かけた時のもので、はじめのうちはカメラを三脚に水平にセットしてホタルが前を横切るところを撮影していたが、北斗七星が見えるとの妻の言葉に、カメラを上空に向けて、ホタルが高く飛びあがるのを待って撮影したものである。
 この日現地で会った、ホタル撮影などの夜景を専門にしている方の話によると、比較明合成を行うことで、より多くのホタルの光跡を表現できると教えていただいたので、友人に頼んで試みてみたが、今回は北斗七星があり、比較明合成をすると星の位置がずれてしまうので、1回の撮影でより多くのホタルの光跡が写っているものを選んだ。


 ③ カルガモの雛とシジミチョウ
 カルガモの雛が、切り倒されたショウブの葉の上で休息している姿を撮影していると、シジミチョウが近くにきて、雛の周りを飛び始めた。雛もそれに気がついて、目でシジミチョウを追い始めた時に撮影したもので、雛にとっては初めて見る不思議なチョウの姿であったのだろう。
 ショウブの葉がやや煩わしく思えたので、雛を中心に楕円形に切り出して、四隅の画像を消してみた。

 
 ④ カラスアゲハと蛹
 前の年に卵を採集して飼育していたカラスアゲハが蛹になり、そのまま年を越して翌年春に羽化してきたところを撮影した。軽井沢の厳しい冬を屋外で過ごしていたので、無事羽化できるかどうか気をもんでいたが、蛹から成虫が這い出てきて、棒の反対側に回り込み、やがて翅がしっかりと伸び美しい姿になった。まだ翅を閉じたままの翅裏からの撮影であるが、尾状突起の一部に翅表の青い構造色がわずかに見える。

 妻の作品は、今年の春からショップの商品に加わった手作りのペンダント、ネックレス、ブレスレット、チャーム、イアリングから選んだもので、これを額装して主題のアクセサリーと背景の組み合わせになっている。


 ① アゲートジオード ペンダント2点


 ② ヘマタイト・バリシルバー ペンダント 


 ③ オプシディアン・タイガーアイ・天珠・水晶 ペンダント2点


 ④ アメジスト・タイガーアイ・クリソプレーズ ペンダント3点

 こうした展示会に参加して、毎回思うことであるが、作品展会場に行くのは搬入・飾り付けの時と搬出時だけで、会期中にはショップの関係で私は行くことができない。見ていただいた方々の感想などが聞けるとありがたいのであるが、ただただ展示するだけで終わっているのが現状である。

 今回、趣向が違っていたのは「サクラソウ会議」からの出品で、これは研究発表などのポスター発表の形式で、解説文付きの写真がパネルに貼られ、テーブル上には植物標本が展示されていた。更にその横には生き物を入れた水槽も展示されていた。


テンナンショウ(マムシグサ)のヒミツと題された解説と植物標本(2024.10.31 撮影)

 これらは南軽井沢の馬取山田地区の動植物を取り上げたもので、この地区は絶滅危惧種の動植物の宝庫であることを示し、水槽にはホトケドジョウ、ツチガエル、オオコオイムシが展示されていた。


馬取山田地区の絶滅危惧種の動植物に関する解説と実物の展示(2024.10.31 撮影)

 また、会期中は植物の解説と展示標本の制作にかかわったご夫妻が会場に詰めて、説明員を引き受けておられた。

 私は行けなかったが、妻が展示期間中に行ったので、そのご夫妻から説明を聞く機会があり、共通の興味があったことも手伝って親しくなり、後日私どものショップにもお揃いで来ていただくこととなった。

 以下、展示会場の雰囲気と作品群をご覧いただく。


中央公民館2階展示会場への入り口の掲示(2024.11.1 撮影)


中央公民館2階展示会場(2024.11.1 撮影)


書道の部の展示 1/2(2024.11.1 撮影)

書道の部の展示 2/2(2024.11.1 撮影)

詩歌の部の展示(2024.11.1 撮影)

絵画の部の展示 1/3(2024.11.1 撮影)

絵画の部の展示 2/3(2024.11.1 撮影)

絵画の部の展示 3/3(2024.11.1 撮影)

写真の部の展示 1/3(2024.11.1 撮影)


写真の部の展示 2/3(2024.11.1 撮影)

写真の部の展示 3/3(2024.11.1 撮影)


私の写真作品の展示(2024.11.1 撮影)


テーブルセッティングの展示(2024.11.1 撮影)


軽井沢彫りの展示(2024.11.1 撮影)


和裁の部の展示、左奥の壁面に妻の作品が見える(2024.11.1 撮影)


1階、手芸の部の展示会場(2024.11.1 撮影)


1階展示会場(2024.11.1 撮影)














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デジとしょ信州

2024-08-23 00:00:00 | 軽井沢
 軽井沢町議会が発行している「議会だより軽井沢」のNo.143 6月号(2024年7月25日発行)では「DX推進宣言」が取り上げられており、次の5カ条が示された。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用した住民への行政サービスの維持向上を目指す取り組みである。

 ❶ 利用者目線・・・提供者の視点ではなく、利用者の ニーズに即した「DX」を推進します。 
 ❷ 合理的配慮の提供・・・情報保障や意思疎通への配慮として、 「DX」を推進します。 
 ❸ 業務改革・・・既存業務プロセスを根本的に見直し、 効率的かつ効果的な改善を行うために
   「DX」を推進します。 
 ❹ 人材育成・・・デジタル人材として職員を育成し、 全庁的に「DX」を推進します。 
 ❺ 安心・安全・・・個人情報の保護やサイバーセキュリ ティの確保を最優先に「DX」を推進
   します。

 このDX化に向けての取り組みの中には、ペーパーレス化や町HPリニューアルなどが盛り込まれている。 
 
 これに関連する内容として、同じ号で紹介されている議会での「一般質問」では、県が令和4(2022)年8月より県内77全ての市町村と協働し、図書館へ行かず24時間365日、誰でも・いつでも・どこでもタブレットやパソコンなどから電子図書が読める「デジとしょ信州」が始まったという話題が取り上げられた。

 私は寡聞にしてこの「デジとしょ信州」のことを知らなかった。

 6月8日に開催された議会での横須賀桃子議員と、町の担当課の質疑応答の要旨は次のようである。

「問 当町における「デジとしょ信州」の登録数は。また導入当初と比べて件数をどのように分析しているか。

生涯学習課長 5年度末で町民の約1%となる289件の登録だが、県主導による枠組み調整を優先したので、目標は定めなかった。

 幅広く周知するには目標が必要だが。

生涯学習課長 まだ開始から2年なので、目標に関する協議はしていないが、検討したい。

 すでに2年が経過したので目標は定めるべきである。
 そこで伺うが、より多くの人に電子図書館を知ってもらう周知方法や利用率を高める取り組みとしてどのようなことを行っているか。

生涯学習課長 広報かるいざわ等での周知や、学校でのチラシ配布を行った。
 今後、デジとしょ信州の登録方法や、デジタルアーカイブに関する説明会を開催する。

 町は、視覚障がい者に対する点字図書の作成など、読者バリアフリーを推進しているが、今後、障がいの有無にかかわらず全ての人が読書を楽しむための新たな取り組みは。

生涯学習課長 今年度は、中軽井沢図書館に新設する防音室での対面朗読や、音声データの作成を予定している。

 デジとしょ信州を利用するには電子機器が必要だが、町独自にタブレットの貸し出しなどは考えているか。

生涯学習課長 予算が伴うこともあり、貸し出しに関する研究はしていないが、頭の隅に置いておきたい。」

 質疑応答の内容を見る限り、私が「デジとしょ信州」のことを知らなかったのは、特別私のアンテナが低かったのではなかったと思える内容である。

 さて、この「デジとしょ信州」とはどのようなものか。軽井沢町のHPでキーワード検索をしてみたが、直接「デジとしょ信州」のことを説明する内容は見られず、広報誌「広報軽井沢」の図書館紹介のページに次の記事が見られた。


「広報軽井沢」の図書館の案内記事から

 私の場合、軽井沢町の図書館に行って申請すれば利用できる仕組みになっていることが判ったが、もう少し詳しい情報を得たいと思い、県立長野図書館のHPを見ると、次の2回の発表内容とシステムの概念図が掲載されていた。
  • 「市町村と県による協働電子図書館 事業の概要」(2022年4月28日)。
  • 「市町村と県による協働電子図書館 事業の概要(2)」(2022年7月5日)。


デジとしょ信州概念図令和5(2023)年度版
 
 この『事業の概要(2022年4月28日)』には、次のように記されている(一部割愛)。

 「(1)図書館用の電子書籍サービス(電子図書館)とは? 
 公共図書館・公民館図書室のウェブサイトからリンクする電子図書館サイトで、ログインし、読みたい電子書籍を選び、借りて、読むことができるサービスです。個人向けの電子書籍とは異なり、公共図書館を通じたサービスが出 版社等から許諾されているものが対象となります。
  ・協働電子図書館は、『一般書の電子書籍貸出サービス』として、株式会社メディアドゥの『OverDrive』 をプロポーザルの結果選定しました。
 ・協働電子図書館のほか、県立⾧野図書館では、独自に『専門書の電子書籍閲覧サービス』を導入しま す。プロポーザルの結果、株式会社紀伊國屋書店の『KinoDen』を選定しました。 

(3)市町村と県による協働電子図書館事業の目的
  全ての県民が、居住する地域や世代の違い、障がいの有無等にかかわらず、いつでも、どこからでも、無償で、必要とする情報(電子書籍)にアクセスできる環境を構築するため、県内の公共図書館・公民館図書室が連携・ 協働し、県民の『学びの基盤づくり』と『公正な社会づくり』に寄与することが事業の目的です。

(4)市町村と県による協働事業である意義
 協働で事業を実施する意義は、市町村と県とが協力し合うことによって、⾧野県内のすべての住民が、地域的・ 身体的・環境的・経済的なバリアを超えて、図書館を介して自由に情報へのアクセスができる環境を構築できること です。 地域の公共図書館・公民館図書室を通じて利用申込を行ったり、利用支援を受けられたりすることは、住民の皆さんにとって電子書籍をより身近に感じていただくことにつながります。また、電子書籍がきっかけとなり、リアルな図書館の良さにも改めて気付いていただくことや、一人一人が、学んだり、読書したりする際、自分にとっての“リアルと バーチャルのベストミックス”を選択できるようになるという期待もあります。さらに、各地域で作成されている歴史や文化、自然など、オリジナルの資料を電子化して、電子書籍の本棚に置 いて活用することも可能になります。」

 また『事業の概要(2)(2022年7月5日)』には、より具体的な事業予算についての説明も見られる(一部のみ転載)。

 「(2) 協働事業のしくみ 
 ・予算面の協働
  電子図書館の導入に必要となる①~③の経費を、各図書館の役割に応じて分担します。
 ① コンテンツ費用(電子書籍の購入費用。「買切型」と、期間や回数が限られる「制限型」が
  ある)
 ② プラットフォーム費用(電子図書館サービスで電子的な本棚を使用するための基本料。月額)
 ③ 初期構築費用(サービスを提供するための Web サイト等の制作費用。初年度のみ)
 市町村は、住民サービスの最前線として、住民ニーズに応じたコンテンツを選書し、①の費用を分担します。 県立図書館には、もともと市町村図書館等への支援という役割が求められています。このため、②③の費用 (サービス提供の基盤的経費)は、県が負担します。令和 4 年度は、初期コンテンツ費の一部(800 万 円)を県も負担します。令和 4 年度は、(公財)長野県市町村振興協会の宝くじ助成事業から、コンテンツ費として 2,000 万 円を助成していただけることになりました。宝くじ助成金は、高齢化少子化や防災対策、公園、教育、社会福 祉などの目的で、市町村が協力し合うことが効果的な事業に助成されるものです。当事業においては、県内 全 77 市町村が事業の趣旨に賛同したことによって、助成を受けることが可能になりました。 これによって、当初の計画より多いコンテンツ数(見込み:18,000 点)でサービスがスタートでき、「制限型」のコンテンツも含めて、ニーズに応じたコンテンツ増強(複本購入)も行える見込みとなっています。 長野県民 200 万人に豊かな読書環境を提供し、ニーズに応えていくために、今後もさまざまな工夫を行い ながら相当数のコンテンツを購入する予定です。」


事業の概要(2)から

 ここから判ることは、県内の自治体のすべての図書館が協力して予算を出し合い、更に宝くじ助成金を受けることで、県独自に「デジタル図書館」をネット上に構築し、これを全ての県民が各自治体の図書館窓口を通じて申請することで、無料で利用できるものにしたということである。

 この話を初めて知った時には、県内の図書館が収蔵している図書のデジタル化を行い、その内容を県民がどこからでもアクセスできる仕組みが出来上がったのかと思ったのであったが、そうではなかった。

 電子図書館サービスが国内でどの程度進んでいるか、調べてみると次のようである。2024年7月1日に公表されたデータによると、サービスは2020年に始まり、直近では566の自治体で電子図書館の導入が行われている。


公共図書館の電子図書館導入状況
(一般社団法人 電子出版制作・流通協議会HPより)

 各県ごとの導入率を見ると次のようであり、長野県は100%と群を抜いていることがわかる。図では割愛されているが、2位は福岡県で、3位が埼玉県である。

各県ごとの電子図書館導入率(同上資料から筆者作成)

 私も早速「デジとしょ信州」の利用申し込みを軽井沢図書館の窓口で行い、IDとパスワードを発行していただいた。

 「デジとしょ信州」のホームページは次の様で、この画面の右上「サインイン」から入り、IDとパスワードを入力して閲覧ができる。

「デジとしょ信州」のホームページ

 ところで、図書館というと、国立国会図書館の電子化はどうなっているのか、気になるところである。

 HPで見ると、すでに資料のデジタル化は2020年度から始まっていて、2025年度を目標に進んでいる。



国立国会図書館収蔵資料のデジタル化概要(国立国会図書館HPより)

 現在までにデジタル化を行った資料数は次のようであり、これらは「国立国会図書館デジタルコレクション」として、インターネットを通じて本文の画像が公開されている。また、インターネットで公開していない資料についても、地域の図書館経由または直接個人向け送信サービスが利用できると記されている。



 インターネットで公開されている資料を閲覧するには、次のHPにアクセスして、キーワード検索する。資料は次の3つのランク分けがされている。

 国立国会図書館デジタルコレクション
 https://dl.ndl.go.jp/

 ① ログインなしで閲覧可能
 ② 送信サービスで閲覧可能
 ③ 国立国会図書館内限定

 ①は文字通り、誰でもインターネットでキーワード検索するなどして、資料の内容を見ることができる。
 ②は、あらかじめネット経由で申請登録が必要になるが、私の場合もそうだが、すでに国会図書館に行き、「登録利用者カード」の発行を受け、パスワードを持っている場合には、このサイトにログインすることで、実質①と同様の扱いになり、資料の閲覧が可能である。


国立国会図書館デジタルコレクションのHP画面

 「デジとしょ信州」と異なっているのは、「国立国会図書館デジタルコレクション」では自らの蔵書のデジタル化を行い、インターネットを通じて閲覧できるようになっていることである。これは、私が「デジとしょ信州」のことを知った時に最初に思い描いたものである。

 先日、伏見康治さんの著作「伏見康治コレクションー1 紋様の科学」(2013年、日本評論社発行)を読みたくて、国会図書館に出かけたことがあったので(2024.7.12  公開当ブログ)、試しにキーワード検索をして探してみた。しかし、この書籍は見つけることができなかった。まだデジタル化ができていないようである。

 国立国会図書館の蔵書点数は現在4600万点以上に達していて、上記表にあるとおり、現時点でデジタル化が済んでいるのは416万点ということである。

 それではと、この本の元となった「数学セミナー」(1967~)を検索してみると、他の多くの記事と共に、「紋様の科学」の一連の記事が見つかり、デジタル化が済んでいることが判った。しかし、これらは全て「国立国会図書館内限定」の扱いになっていて、ネット上では閲覧することができなかった。 

 ただ、伏見康治氏に関連した著作は多数見ることができた。ログインなしですぐに閲覧できる資料はまだ少ないが、ログインすることで、国会図書館まで行かなくても非常に多くの情報にアクセスできることが判った。

 こうした、貴重な資料を居ながらにして閲覧できるということは、このデジタル化の恩恵であり、首都圏と地方の格差を埋める大きな役割を果たしてくれる。便利ないい時代になってきた。

 



 

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Karuizawa Foto Fest 2024(4)フォト考

2024-05-24 00:00:00 | 軽井沢
 今年開催されたKFF 2024の上位入賞作品のひとつに、フジバカマの畑の上を飛翔するアサギマダラの写真が選ばれ、そこには背後の太陽にピッタリ重なって、アサギマダラ特有の半透明な翅を通して光が漏れて美しく輝いている姿がとらえられていた。

 この写真の選評には次のように記されていた。

 「正直最後までこの作品を選ぶべきか迷った。理由は余りに奇跡的な一枚だからだ。・・・(選者は)いかに蝶の撮影が困難か多少わかっている。この作品をもし狙って撮るならば、一体何万回シャッターを切ればよいのか想像がつかない。
 当然、真っ先にフォトショップ等での加工を疑った。いろいろ確認してもらったが、そのような形跡はないらしい。
 次に考えたのは撮影者がどこまで意図して撮ったのかという点だった。・・・最終的にはアーティストの意図や意思の結果である作品を評価したい気持ちがある。
 しかし一方、カメラという機械を用いて産み出される写真作品には、時として偶然性が映り込むし、それが写真というミディアムの魅力の一部でもある。
 色々考えた挙句、目の前の100万分の1の奇跡を、ここは素直に眺めたいと思い選んだ。(柿島 貴志)」

 続いて私の写真について。昨年のKFF 2023の入選作品のひとつに、浅間山の稜線に接するように満月を配した写真がある。

 この作品は入賞していないので、選評はない。ところが、思いがけず著名なプロの写真家氏から今回のアサギマダラの写真の場合と似たような趣旨の質問をいただくことになった。

 先々週の当ブログで紹介したことのある内容なので、詳細は割愛させていただくとして、この作品を写真絵葉書にしたものを、プロの写真家 J.E.A. さんにプレゼントするという機会に恵まれた。その時、この写真を見た彼女から、「これは実写作品ですか?」と尋ねられた。

 時系列的には、私の作品についての質問の方が先で、その後、前述のKFF 2024の入賞作品についての選評を入選作品集で読むことになったが、同じような時期にプロの写真家2氏から、写真作品に対してこうした質問あるいは疑問が提出されたことに、少し考えさせられてしまった。

 一昨年11月にChat GPTが登場して以来、生成AIに関する議論が持ち上がり、今も続いている。生成AIを用いて文章だけではなく、画像や動画も作ることができ、フェイク画像がニュースとして流され大きな社会問題になっているからである。

 私が受けたChat GPTの講習では、「夕焼け、ドラマチック」や「スケートをしている猫」といった言葉を入力して、それに近い画像を即座に作成するところを実演して見せていただいた。

 今回のKFF 2024 の応募要領にも次のように記されていて、現代は生成AIによる作品制作について言及せざるを得ない状況にあり、当然ながらそうした作品の投稿は認められていない。
 
 「軽井沢フォトフェスト2024(KFF2024)応募要領
  ご応募前に必ずご一読ください
 ■応募資格:プロ・アマチュア問わず、国籍も問わずどなたでも応募できます。
 ■撮影期間:2023年1月1日~2024年1月31日
 ■募集期間:2023年11月1日~2024年2月11日
 ■応募料:5枚まで無料 6枚目以降は5枚単位で2500円(6枚から10枚までは、1枚で
  も5枚でも2500円の追加費用が必要です。例:11枚の場合は5000円となります。)
  6枚目以降の応募は、1〜5枚目の応募と同じ様に応募をお願い致します。後日追加応
  募分の請求書を発行させていただき、指定の銀行口座への振込をお願い致します。
 ■応募作品の条件:対象撮影期間中に軽井沢町・御代田町・小諸市・東御市・嬬恋村、
  長野原町・佐久市、安中市のエリアにて撮影された作品であること。
  応募者が撮影し、一切の著作権を有しているオリジナル作品であること。

  生成AIにより作成した写真(全部、一部を含む)は応募できません。
  未発表か否かは問いません。個人のホームページやSNSに投稿された作品、写真展
  などに出品された作品も応募可能です。」

 このように、最近では、生成AIが登場したことで、日々こうした情報・状況に接する機会が多く、また写真画像の加工技術にも精通しているプロ写真家諸氏にとって、作品の制作と評価に際しては、どうしても心理的影響を与えていると思えるのであるが、写真作品が実際に撮影されたものか、あるいは何らかの加工が施されたものではないかという疑念は、必ずしも今になって始まったことではないという例もある。
  
 私の身近な人に関する話題で、もうだいぶ前の2015年のことになるが、Y新聞社の報道カメラマンである彼が撮影した満月(スーパームーン)の写真が新聞に掲載された。その写真は、画面に大きくとらえられた満月の中に、カップルが月を見上げながら、スマートフォンで自分たちを撮影している様子がシルエットになり映り込んでいるものである。

 この写真はネット上にも公開されたようで、数日後の日曜日のTV番組「サンデーモーニング」で話題になった。この時コメンテーターとして出演していたプロ写真家AS氏がこの写真を見て、「ダブリングではないんですか?」と発言した。司会の関口氏は「本物らしいですよ」と答えていたのが印象的で、今も記憶に残っている。

 この写真も、先の「アサギマダラと太陽」と同様、「若いカップルと満月」がピッタリと重なり合うように撮影されていて、こうしたシーンに出会うことは容易ではないことから、先のAS氏の発言が生まれたのであろう。

 もうひとつ、「10万分の1の偶然」という松本清張の長編小説がある。

 『週刊文春』1980年3月20日号 - 1981年2月26日号に連載されたもので、夜間、東名高速道路のカーブで、自動車が次々に大破・炎上する玉突き衝突事故が発生。この大事故を偶然撮影したというカメラマンの写真は、新聞社主催の「ニュース写真年間最高賞」を受賞するという筋書きである。

 受賞式では、この決定的瞬間の場面に撮影者が立ち会っていたことは奇蹟的、10万に1つの偶然と評された。

 しかし、この事故発生原因とその現場にカメラマンが偶然居合わせたということに疑問を持つものが現れる・・・という話である。(2021.3.12 公開当ブログ参照)

 最終的には、この事故は撮影者が引き起こしたものであることが判明するのである。写真そのものは実際に撮影されたものであるが、撮影対象になっている事故が、故意に引き起こされたというものである。

 普通にはありえないような状況を写し出した写真に出会うと、これを見た人には、プロの写真家でなくても、本物なのだろうかという疑問がわく。

 ここには2通りの疑問があって、写真そのものが実写されたものかどうかという疑問と、被写体が実在の物あるいは自然なものかどうかということになる。

 松本清張の小説「10万分の1の偶然」では、これが意図的に引き起こされた事故を撮影したという設定であるが、先に紹介した私のフォトコンテスト応募作品と知人の新聞報道の例は、すべて実写であることは間違いない。その経験から、今年選ばれたアサギマダラの写真も、実際の物を撮影したものに違いないとの確信を私は持っている。

 これは、プロであれアマチュアであれ、人は何のために撮影するかということと関係していると思える。

 松本清張の小説「10万分の1の偶然」の場合、このプロカメラマンには、誰にも撮ることができないような決定的瞬間を撮りたいという職業的動機が設定されているので分かりやすい。

 写真は「発見の芸術」だと、学生時代に写真部の顧問教師から教わったことがあり、それ以来私はそのことを胸に刻んで撮影してきている。自分が撮っている写真が、芸術的と思ったことはないのであるが。

 そうした撮影姿勢からは、合成写真や、生成AIを利用した写真という発想は生まれてこない。

 絵画であれば、どのように構図を決め、どのように構成要素を配置するか、どのように色をつけるかは作者の意のままである。しかし、写真はそうはいかない。望む構図があるとすれば、自らが動くか、じっとそのタイミングを待たなければならない。これが、写真が絵画と違っている点だと考えてきた。

 そういう意味で、松本清張が10万分の1という数値に込めた思いは、こうした極めて稀れな状況というものは、実際には偶然によって得られるものではなく、意図しなければ撮影できないということであろう。

 私は今年もKFF2024に浅間山と満月の写真を投稿し、選んでいただいた。この写真の場合についていえば、浅間山の山頂に満月が接する、いわゆるパール浅間の状態を、軽井沢町内(当初KFFでは撮影地を軽井沢町内に限定していたので)で撮影できるチャンスは年に12回程度の満月の日の前後2日くらいで、月の出または月の入りを狙うことになる。そして、日の出、日の入り、月の出、月の入りの暦と方位角情報を国立天文台が発表しているデータから得て、浅間山の山頂と撮影場所の関係を地図上で確認して撮影に臨むことになる。最後は天候に恵まれなければならない。

 アサギマダラの写真についていえば、アサギマダラの大群がフジバカマに集まってくる場所と日時などについての情報を得、周到に用意したうえで太陽の位置と撮影アングルを選ぶことで、一見、極めて稀にしか起きないようにみえる状況を、確実に捉えるための確率を大きく上げて撮影に臨んだ結果だと、選者も納得されたのであろうし、私にもそうした「決定的瞬間」を捉えた素晴らしい作品だと思える。



 

 

 
 

 

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Karuizawa Foto Fest 2024(3)こぼれ話

2024-05-10 00:00:00 | 軽井沢
 さまざまな点で昨年の第1回KFF 2023からの変更があったKFF 2024であったが、中でも応募の方法と、入選作品の発表方法については戸惑うことがあり、いくつか思いがけない出来事が起きた。

 昨年、作品応募時には、先ず長辺を最大2000画素程度にリサイズした写真データを送り、第1次審査で選ばれた作品については、その後、画素数の大きい生データを送るように要請された。

 これは、審査時の利便性と、野外展示用大版のターポリンへの印刷時にも、画面の粗さが目立たないようにするためのものだと理解していた。

 今回も、はじめに応募する時には同じように、長辺の画素数を2000画素にリサイズしたものを送付していた。

 募集締め切りの後、しばらくして2月になると、私の場合応募点数が規定の無料審査対象枚数の5枚を超えて応募していたので、超過分に対する請求書が届いた。

 その後は開催月の4月が近づいてきても、事務局から生データの送付要請連絡がなく、今年は選に入らなかったのだと理解していた。

 同じころ、私の作品が入選することを楽しみにしてくれていた知人から、問い合わせのメールが届いた。彼によると、「たしか3月のある日、軽井沢フォトコンテストで検索し、ホームページを開いたところ、(入選作品の)画像がずらりと見れました。野外展示はしないとあり、あれ?と思いました。」と書かれていて、今年君はどうだったの・・とのことであった。

 このメールを見て、KFFのホームページをチェックしてみたところ、それらしい記事は見当たらず、知人には、「私のところには連絡がないので、何かの間違いではないか、今年私は入選しなかったようです・・」と伝えた。

 それきり、KFFのことは頭から消えてしまい、ガラスショップのオープンが迫っているので、慌ただしく日々を送るようになった。冬の間は、ガラス器類をショウケースから出して、梱包して箱に詰め、地震対策としていたからであった。

 4月1日には冬籠りから開けて、ショップをオープンした。4月中旬のある日、ショップに3人の外国人女性客が訪れた。中の一人の年配の女性客はガラス器やガラス製のペーパーウエイトを熱心に見ていたので、話しかけるとペーパーウエイトのコレクターだという。残念ながら気にいっていただいたその作品は非売品で、ディスプレイ用として置いてあるものであったので、その旨伝えて、諦めていただいた。

 帰りかけたその外国人客を出口まで見送っていき、傍らにあった写真絵葉書のスタンドを見せて、これは昨年開催されたKFF 2023での、自身の入選作品で作ったもので、希望者にプレゼントしているものだと説明した。

 昨年は、KFF開催を側面から支援しようと思い、あらかじめ入選作品についての連絡があったので、写真絵葉書を作り、KFF 2023の会期中ショップに来ていただいた方々に無料で配布していた。

 その残りがあったので、今年も4月1日からまた店頭に置いて、希望者に差し上げていたのであった。

 外国人客に、お好きなものをどうぞお持ちくださいというと、このときはもう2人になっていたが、スタンドからそれぞれ1点ずつ写真絵葉書を選んでいただけた。

 そして、中の若い方の外国人客が、私たちはそのKFFの関係で軽井沢に来ているのだという。さらに、2人から今選んだ写真絵葉書にサインをしてほしいと頼まれた。これまで、多くの方々にこの写真絵葉書をプレゼントしてきたが、サインをしてほしいと言われたのは今回が初めてのことであった。

 デスクに戻って漢字でサインをしながら、アッと気がついた。年配の女性の顔に見覚えがあったからである。この女性は、昨年のKFF2023で配布されていたパンフレットに写真が載っていた女性プロ写真家その人に間違いないと思えた。

 この時お名前は失念していたが、聞くと間違いないという。そして、若い方の女性客のすすめに従って、その女性写真家氏と私のツーショット写真を、彼女のライカと続いて手元にあった私のスマホで撮影していただいた。

 この2人がショップを立ち去る時に、昨年はこのように複数点が入選したが今年は1枚も採用されなかったので、がっかりしていると話すと、彼女は、諦めないで写真を撮り続けるようにと励ましてくれた。

 2人を見送ってから、年配の女性写真家氏の名前を調べておこうと思い、ショップのパソコンで、当ブログ記事「Karuizawa Foto Fest 2024(1)」(2023.9.22 公開)を探して、この時使用していた2023KFFイベント情報を見つけ、彼女の名前が、ジェーン・エブリン・アトウッドさんであることを確認した。

 昨年、各家庭に配布されたKFF 2023の開催案内で紹介され、私の記憶に残っていたアトウッドさんの写真は次のようであった。


KFF 2023の開催案内に紹介されていたジェーン・エブリン・アトウッドさん

 また、KFFのHPなどで紹介されている彼女のプロフィールは次のようである。

 「プロフィール:写真家 1947年ニューヨーク生まれ。『盲目の子どもたち』というテーマで、1980年に第1回W・ユージン・スミス賞を受賞。以降、ライカ社のオスカー・バルナック賞、アルフレッド・アイゼンスタット賞など権威ある賞を受賞。また報道カメラマンとして、1995年に阪神淡路大震災、2001年アメリカ同時多発テロの取材も行っている。世界各地で展覧会を行い、2022年にはシャネル・ネクサス・ホール(東京・銀座)にて日本初個展となる『Soul』を開催した。1971年からフランスに在住、現在もパリを拠点に、精力的に活動している。」

 私は、プロの写真家さんに、自分の撮影した写真絵葉書にサインをして差し上げたことになる。
 
 さらに、何となく気になって、パソコンメールを開くと、そこにKFF事務局からの次のような連絡が届いていた。


4月15日に届いたKFF事務局からのメール

 ここに記されていた「作家リスト Artist List」を開くと、私の名前もそこに並んでいた。諦めていただけに、驚き喜ぶことになった。ただ、入選作品についての情報はこの時はまだ公開されていなかった。

 さらに、このメールに添付されている昨年のKFF2023のだまし絵風のターポリン写真は、私の「浅間山と満月」の写真が写っているものであった。この写真は、先ほどジェーン・エブリン・アトウッドさんが選んだ写真絵葉書のもので、そこに私がサインしたものであった。

 サインをしてお返しする時、この写真絵葉書を見て、彼女は「実写作品ですか?」と質問をし、私は「もちろん実際に撮影したものです、私の背後からは朝日が昇ってきているところでした」と答えたのであった。

 アトウッドさんともう一人の女性客に選んでいただいた絵はがきは、次のようである。

ジェーン・エブリン・アトウッドさんが選んだ写真絵葉書


同行の若い女性が選んだ写真絵葉書
 
 帰宅後、そのことを妻に話すと、「あなたはその女性写真家さんのサインをもらわなかったの?」と聞かれたが、あの時は全く思いつかず、後になってとても残念なことをしたと、ちょっと悔しい思いがしたのでした。

 そして、4月27日に迎えたKFF 2024の開会式。そこで初めて入選作品が、入選作品集を通じて公表された。私の作品は3点選ばれていて、すべて追分公園に展示されていることがわかった。その内の1枚は、再び浅間山と満月を撮影したものであった。だが、今度は浅間山山頂に満月がくるように配していた。昨年の撮影から約1年、撮影時期と撮影場所とを計算して撮影に臨んだもので、浅間山が冠雪していないのは残念であったが、構図はほぼ予定したものであって、先週の当ブログで掲載させていただいた。

 ところで、私の知人が3月頃に見た入選作品とは何だったのだろうかという疑問はまだ残ったままであった。

 KFF 2024の開会式翌日、各家庭に軽井沢観光協会発行の広報誌「GREEN BREEZE」第55号が届けられ、その表紙には早々と「軽井沢フォトフェスト 2024」グランプリ(日高 慎一郎氏 撮影)が紹介されていた。


軽井沢観光協会の広報誌「GREEN BREEZE」第55号の表紙

 そして、裏表紙を見るとそこには「写真でつながる2023軽井沢フォトコンテスト結果発表!」とした記事が掲載されていた。

 
軽井沢観光協会の広報誌「GREEN BREEZE」第55号の裏表紙

 私は、この軽井沢フォトコンテストのことは知らないでいたのだが、ほとんど同じ時期に軽井沢観光協会では2つの写真コンテストを進めていた。

 そして、記事を見ていくと、グランプリ他5つの賞の受賞作品名が発表されていて、これらの受賞作品はHP、instagram で公開中とある。

 これで、謎が解けた気がした。私の知人が見ていたという軽井沢フォトコンテストの写真はこちらの結果発表であったのだ。
 
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Karuizawa Foto Fest 2024(2)

2024-05-03 00:00:00 | 軽井沢
 今年も4月27日から5月26日までの会期で軽井沢フォトフェスト(KFF)2024がスタートした。写真愛好家はこの日を待ちわびていたのではないかと思う。かく言う私もその一人なのだが。

 昨年は4月1日のスタートであったから、今年はほぼ1か月遅いスタートになった。ちなみに、来年の(仮)予定がすでに発表されていて、2025年4月26日から5月25日とされている。

 オープニングセレモニーの会場は、昨年同様、軽井沢駅に近い矢ケ崎公園で、11時から始まるとアナウンスされていたので、少し早めに妻と車で出かけた。昨年は矢ケ崎公園に隣接している無料駐車場に停めることができたのであったが、今年はなんとなくここは無理ではないかと思い、まっすぐ大賀ホール前の町営駐車場に向かった。しかし、ここも「満車」の赤い表示が出ていて、数台が入り口に並んで待っていた。

 以前、浅田次郎さんの講演会が大賀ホールで行われた時も同じようであって、矢ケ崎公園の反対側にある民間の有料駐車場に停めたのであった。今回はこの駐車場も満車状態で途方に暮れてしまった。自宅に戻り徒歩で出直すには時間がない。思い余って、妻が会場近くの知人宅に電話をして、車を停めさせてもらえるよう頼んでくれた。

 快く了解が得られ、おかげで何とか開会式の時間に間に合うように会場に着くことができた。

 関係者はすでに整列していて、すぐに開会式が始まった。主催者や来賓の挨拶に続いて、塩沢一洋審査委員長から今回の審査の状況と、入選作品の中から選ばれた佳作入賞作品5点と、日高慎一郎さんのグランプリ作品が紹介された。今年のグランプリ作品もまたとても素晴らしいものであった。


11時には関係者が勢ぞろい(2024.4.27 撮影)


実行委員代表の方々(2024.4.27 撮影)


土屋三千夫・軽井沢町長ほか来賓の皆さん(2024.4.27 撮影)

審査員を代表して、塩沢一洋 写真家 成蹊大学教授のご挨拶(2024.4.27 撮影)

シャンパンで開会を祝す(2024.4.27 撮影)

開会式会場の背後には大賀ホールがあり、傍の桜が美しい(2024.4.27 撮影)

矢ケ崎公園の反対側では参加者にシャンパンが振舞われ、傍らではチェロ演奏も行われた(2024.4.27 撮影)

 塩澤一洋氏が話された「総評」は、別途販売された「KFF2024 入選作品集」にも同様の内容が掲載されているので、こちらから引用させていただくと、次のようである。

 「総評:昨年より作品全体の質が高い!! 審査員の一致した所感です。応募枚数を一人5枚まで無料(それ以上は有料)とした変更がクオリティの向上に寄与したことは間違いないでしょう。撮影対象エリアも軽井沢町のみであった昨年から、周辺の3町4市1村へと大幅に拡大し、作品のバラエティが豊かになりました。 応募総数998点。作者の名前を伏せたままひとつひとつ大切に鑑賞したあと、3段階の審査で評価を重ね、審査会を開いて、入選、入賞、そしてグランプリを選出いたしました。それぞれの視点、観点、気持ち、意思がさまざまな工夫によって表現された珠玉の作品たち。撮影し、ご応募いただきましたみなさま、どうもありがとうございました。(塩澤一洋)」

 開会式で紹介されたのは、グランプリ作品1点と、佳作入賞作品5点であったが、この入選作品集には、「KFF 2024 FINALISTS」 として、全入選作品の写真と共に作者名が記されている。私の作品も3点選んでいただいていたことがここで初めて分かったのでした。

 同様の作品集は昨年も入選者に配布されていたので、これらを比較してまとめると、作品の応募総数、入選作品数、そして同一作者の入選作品数は次のようである。


KFF 2023とKFF 2024における応募作品数と入選作品数などの状況

 塩澤氏が述べておられるように、今年のKFF2024は昨年とは異なる点がいくつかあって、すでに紹介した会期変更の他、撮影対象地域が大きく変わるなどしている。

 昨年は軽井沢町内に限られていた撮影対象地域が今年から周辺の8市町村に拡大された(2023.9.22 公開当ブログ参照)。

 また、昨年は作品の応募は枚数に関係なく無料であったが、今年は応募枚数を一人5枚までを無料とし、それ以上は5枚までごとに2500円と有料化された。

 そして、展示会場については、昨年の4会場から、旧軽井沢の諏訪ノ森公園と、中軽井沢の湯川ふるさと公園(上流部)がなくなり、矢ケ崎公園と追分公園の2か所となったことも変更点である。

 こうした変更の効果が、クオリティの向上に寄与したことは塩澤氏の述べられた通りだと思える一方で、応募総数の減少と入選作品数の減少につながっていると思われる。

 撮影対象地域の大幅な増加は、応募総数の増加につながっているはずと思われるのに、実際には減少していることから、応募の(一部)有料化の効果で相殺されているのかもしれない。

 入選作品数の減少は展示会場面積を減らしているので、当然の結果だと思える。

 同一作者の入選作品数が減っているのはどう理解すればいいのだろうか。ここには、同一作者の入選作品を3点以下にするという、主催者の強い意図が感じられるが、この点についての言及はないので、実際のところは不明である。

 結果として、入選作品が昨年比で66%に減少したにもかかわらず、入選者数が同じく9%増加しており、より多くの作者の作品が入選し、展示されることになっているので、これはこれで喜ばしいことだと思える。

 入選作品集で、今年の撮影地について調べてみると次のようである。昨年は当然100%軽井沢町であったのにたいして、今年軽井沢は64%にまで低下している。

 ちなみにグランプリ作品の撮影地は小諸市、佳作入賞5作品の撮影地は軽井沢町が2、佐久市、小諸市、御代田町が各1作品となっている。


KFF2024 入選作品の撮影地

 次に示すのは、昨年送られてきた写真公募案内と、KFF 2024 入選作品集の表紙である。
 

写真公募案内(はがきサイズの表面と裏面とを示している)


KFF 2024 入選作品集の表紙(写真は野辺地ジョージ氏による)

 矢ケ崎公園の会場の一角では、前述の入選作品集のほか、幾種類かのグッズの販売も行われていた。私は、記念にと入選作品集を購入するべく列に加わっていたところ、妻が販売されているグッズの中から面白いものを見つけてきて見せてくれた。

 昨年開催されたKFF2023で展示に使用された、ターポリンに印刷された写真を切り取って、バッグに仕上げたものである。その側面には見覚えのある「リス」の写真があった。私の入選作品であった。

 迷うことなく購入したそのバッグは、しばらくは我が家の「リス」の写真の傍に飾っておこうと思う。


入選作品のターポリンを使用して作られたバッグとその写真

 無事2回目を迎え、更なる発展が期待できそうなこのKFF、来年の開催も決定しているので、これからも楽しみにしたい。

 展示会場でじかに見る写真は、細部の描写など、ネットで公開されているものとは一味違ったものになっている。首都圏や関西在住の私の友人各位には難しいことだが、お近くの方々にはぜひ現地会場に足を運んでいただけたらと思う。

 最後に今回のKFF 2024に入選した私の3作品について。すでに当ブログで紹介したものばかりであるが、現地でご覧いただけない諸氏のために再掲載させていただく(入選作品集に掲載順)。展示会場の写真にも作品集にも写真の「題名」はないが、ここでは説明を兼ねて撮影日と共に付記させていただいた。


KFF 2024 入選作品 「朝の雲場池」(2023.12.3 撮影) 追分公園に展示

KFF 2024 入選作品 「浅間山山頂に沈む満月」(2023.12.28 撮影) 追分公園に展示

KFF 2024 入選作品 「カルガモ親子」(2023.6.30 撮影) 追分公園に展示

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