軽井沢に移住し、新たに家を建てることを決めた時、庭には小さくてもいいので、ロックガーデンを作り、好きなスミレなどの山野草を育てようと決めていた。このミニロックガーデンを作るにあたり、「ロックガーデン」(1976年 誠文堂新光社発行)と「続々野草のたのしみ」(八代田貫一郎著、1976年 朝日新聞社発行)とを参考にしたが、石は軽井沢ではおなじみの浅間石を使うことにした。
浅間石を専門に扱う店に出かけて15cmから50cmくらいの種々の大きさのものを取り混ぜて100個ほど購入し、暇をみてはこれらを組み上げていき、一番高い部分にはアズマシャクナゲを植え、周辺に小さな草花を植えるためのスポットをたくさん作っていった。
庭に浅間石を組んで作ったミニ・ロックガーデン(2016.4.24 撮影)
このスポットに順次、山野草を植え始めていたのだが、これを見ていたご近所のKさんが自宅の庭で育てている山野草を次々と持ち込んできてくれた。増えすぎて困るから、貰って欲しいということであった。実際Kさん宅の庭に行ってみると、実に多くの種類の草花を地植えや鉢植えで上手に育てていた。
Kさんから頂いた草花は、フウチソウ、ギボウシ、日本スズラン、ゲンジスミレ、レンゲショウマ、ツリガネニンジン、マツモトセンノウ、フシグロセンノウ、日本ハッカ、カッコソウ、イチリンソウ、ヤマオダマキ・・・など実に多くの種であったが、その中にサクラソウが含まれていた。
Kさんから頂いた鉢植えのサクラソウ(2016.5.20 撮影)
このサクラソウは軽井沢のシンボル的なもので、1993年(平成5年)8月1日に、町制施行70周年記念として「町の木」のコブシと共に軽井沢町の「町の花」に選定されている。
軽井沢町観光経済課で発行している軽井沢案内(2018年版)に記載されている「町の花」と「町の木」
野生のサクラソウは、北海道から九州まで、やや湿った火山灰土壌の落葉樹林や草原に見られ、軽井沢周辺では、ミズナラなどの落葉樹林の中の渓流沿いや湿地の周囲などに生息するとされる。軽井沢はこうした条件に恵まれていた。
実際、古い資料には、1955年頃のこととして「沓掛駅(現在の中軽井沢駅)の南にある塩沢湖では、5月下旬から6月上旬にかけて、付近一帯がサクラソウの花で埋まっていた。」と書かれている。 軽井沢にこの見事なサクラソウの自生地があることは、当時の雑誌「遺伝」にも紹介されていたというが、その後、2000年頃にはすでに「塩沢湖の周辺は開発が進み、昔の面影は残っていなかった」という状態になっている。
また、1956年5月20日付け毎日新聞夕刊には次のような記事があり、現在では想像できないような光景があったようだ。
サクラソウ群落を報じる1956年5月20日付け毎日新聞(夕刊)の記事
ここには次のように記されている。
「〇-高原の町、軽井沢はいまかれんなさくら草の話でもちきりである。というのは同町南軽井沢のゴルフリンク内にみだれ咲くさくら草の群落はすばらしく大きなもので、町の教育委員会では、“日本の国花が桜なら、軽井沢の花はさくら草だ“とこの群落を天然記念物に推選しようという運動を起こしている。
〇-この群落の大きさは約三千坪。見渡すとピンク色のじゅうたんを敷きつめたようでみごとだ。草花研究家たちの間でも、“全国でもめずらしいもの”とされているが、根こそぎ持ち去られて、最近では次第に減り始め地もとであわてだした次第。
〇-ゴルフリンクを訪れると、花は七分咲き、ピンク色の花弁が風にゆれ、リュックを背負った親子づれやアベックたちも思わずニッコリ。随分ひろいなアー。花々でいっぱい。夢のようだわ“と女の子が叫べば、男の子はごろんと花のふとんにねころんで満足そう。これからだんだん多くなるハイカーたちを存分楽しませることだろう。」
上記2情報は、2000年2月に設立された軽井沢町内の住民団体「軽井沢サクラソウ会議」が運営しているウェブサイトからの引用であるが、この軽井沢サクラソウ会議では町花であるサクラソウの保全活動を行っており、定期的にサクラソウ調査を行っている。
最近行われた調査では、「町内265地点でサクラソウの生育が確認された。1ヶ所に300ヶ以上花が咲いていた優良生育地は、40ヶ所以上、10ヶ以下の場所が70ヶ所。生育地は、町南部の草原・湿地だった場所に多く分布していた。また、1970年代ごろまでに分譲された古い別荘地でも、多数が確認された。」と報告している。
実際、散歩していると町内の民家の庭先にも、Kさん宅同様ちらほらとサクラソウの姿を見ることができる。我が家のロックガーデンに分散して植えたサクラソウも3年目を迎えるが、何とか定着してきたようである。
ロックガーデンで咲くサクラソウ 1/2(2018.5.21 撮影)
ロックガーデンで咲くサクラソウ 2/2(2018.5.21 撮影)
サクラソウと同時期に咲く日本スズラン(2018.5.22 撮影)
カツラの木の根元で咲くサクラソウ(2018.5.21 撮影)
アズマシャクナゲの陰で咲くサクラソウ(2018.5.21 撮影)
このサクラソウ、「山草辞典」(1980年 月刊さつき研究社発行)によると、次のようである。
【特徴】茎は15~40cmになり、葉に毛が多く、チリメン状のしわが多い。花は5弁の紅紫色で、茎頂に5~10花輪生状につける。美しいので庭に栽培され、多くの園芸品種があり、性質は強く育てやすい。
【分布】北海道、本州、九州に分布し、山野の河原の湿地や、原野に生える。陽光を好むが、夏は草むらとなって、他の植物の陰に隠れて生育することが多い。
増殖は、地下茎と種子の両方で行われるという。まだ種子を採取したことはないが自然に周囲に落ちた種子から小さな芽が出ているところも見られる。
軽井沢に自生していたサクラソウは開発の影響で激減し、絶滅危惧種に指定されているが、元来丈夫な種のようで、条件さえ合えば元気に生育するように見える。我が家のロックガーデンのサクラソウもいろんな場所に定着して、今年も元気に花を咲かせている。
サクラソウと同じ仲間のカッコソウ。この種も絶滅危惧種に指定されているが、我が家のロックガーデンでは元気に花を咲かせ、増えている。
昨年開花時のカッコソウ(2017.5.6 撮影)
今年のカッコソウ(2018.5.5 撮影)
浅間石を専門に扱う店に出かけて15cmから50cmくらいの種々の大きさのものを取り混ぜて100個ほど購入し、暇をみてはこれらを組み上げていき、一番高い部分にはアズマシャクナゲを植え、周辺に小さな草花を植えるためのスポットをたくさん作っていった。
庭に浅間石を組んで作ったミニ・ロックガーデン(2016.4.24 撮影)
このスポットに順次、山野草を植え始めていたのだが、これを見ていたご近所のKさんが自宅の庭で育てている山野草を次々と持ち込んできてくれた。増えすぎて困るから、貰って欲しいということであった。実際Kさん宅の庭に行ってみると、実に多くの種類の草花を地植えや鉢植えで上手に育てていた。
Kさんから頂いた草花は、フウチソウ、ギボウシ、日本スズラン、ゲンジスミレ、レンゲショウマ、ツリガネニンジン、マツモトセンノウ、フシグロセンノウ、日本ハッカ、カッコソウ、イチリンソウ、ヤマオダマキ・・・など実に多くの種であったが、その中にサクラソウが含まれていた。
Kさんから頂いた鉢植えのサクラソウ(2016.5.20 撮影)
このサクラソウは軽井沢のシンボル的なもので、1993年(平成5年)8月1日に、町制施行70周年記念として「町の木」のコブシと共に軽井沢町の「町の花」に選定されている。
軽井沢町観光経済課で発行している軽井沢案内(2018年版)に記載されている「町の花」と「町の木」
野生のサクラソウは、北海道から九州まで、やや湿った火山灰土壌の落葉樹林や草原に見られ、軽井沢周辺では、ミズナラなどの落葉樹林の中の渓流沿いや湿地の周囲などに生息するとされる。軽井沢はこうした条件に恵まれていた。
実際、古い資料には、1955年頃のこととして「沓掛駅(現在の中軽井沢駅)の南にある塩沢湖では、5月下旬から6月上旬にかけて、付近一帯がサクラソウの花で埋まっていた。」と書かれている。 軽井沢にこの見事なサクラソウの自生地があることは、当時の雑誌「遺伝」にも紹介されていたというが、その後、2000年頃にはすでに「塩沢湖の周辺は開発が進み、昔の面影は残っていなかった」という状態になっている。
また、1956年5月20日付け毎日新聞夕刊には次のような記事があり、現在では想像できないような光景があったようだ。
サクラソウ群落を報じる1956年5月20日付け毎日新聞(夕刊)の記事
ここには次のように記されている。
「〇-高原の町、軽井沢はいまかれんなさくら草の話でもちきりである。というのは同町南軽井沢のゴルフリンク内にみだれ咲くさくら草の群落はすばらしく大きなもので、町の教育委員会では、“日本の国花が桜なら、軽井沢の花はさくら草だ“とこの群落を天然記念物に推選しようという運動を起こしている。
〇-この群落の大きさは約三千坪。見渡すとピンク色のじゅうたんを敷きつめたようでみごとだ。草花研究家たちの間でも、“全国でもめずらしいもの”とされているが、根こそぎ持ち去られて、最近では次第に減り始め地もとであわてだした次第。
〇-ゴルフリンクを訪れると、花は七分咲き、ピンク色の花弁が風にゆれ、リュックを背負った親子づれやアベックたちも思わずニッコリ。随分ひろいなアー。花々でいっぱい。夢のようだわ“と女の子が叫べば、男の子はごろんと花のふとんにねころんで満足そう。これからだんだん多くなるハイカーたちを存分楽しませることだろう。」
上記2情報は、2000年2月に設立された軽井沢町内の住民団体「軽井沢サクラソウ会議」が運営しているウェブサイトからの引用であるが、この軽井沢サクラソウ会議では町花であるサクラソウの保全活動を行っており、定期的にサクラソウ調査を行っている。
最近行われた調査では、「町内265地点でサクラソウの生育が確認された。1ヶ所に300ヶ以上花が咲いていた優良生育地は、40ヶ所以上、10ヶ以下の場所が70ヶ所。生育地は、町南部の草原・湿地だった場所に多く分布していた。また、1970年代ごろまでに分譲された古い別荘地でも、多数が確認された。」と報告している。
実際、散歩していると町内の民家の庭先にも、Kさん宅同様ちらほらとサクラソウの姿を見ることができる。我が家のロックガーデンに分散して植えたサクラソウも3年目を迎えるが、何とか定着してきたようである。
ロックガーデンで咲くサクラソウ 1/2(2018.5.21 撮影)
ロックガーデンで咲くサクラソウ 2/2(2018.5.21 撮影)
サクラソウと同時期に咲く日本スズラン(2018.5.22 撮影)
カツラの木の根元で咲くサクラソウ(2018.5.21 撮影)
アズマシャクナゲの陰で咲くサクラソウ(2018.5.21 撮影)
このサクラソウ、「山草辞典」(1980年 月刊さつき研究社発行)によると、次のようである。
【特徴】茎は15~40cmになり、葉に毛が多く、チリメン状のしわが多い。花は5弁の紅紫色で、茎頂に5~10花輪生状につける。美しいので庭に栽培され、多くの園芸品種があり、性質は強く育てやすい。
【分布】北海道、本州、九州に分布し、山野の河原の湿地や、原野に生える。陽光を好むが、夏は草むらとなって、他の植物の陰に隠れて生育することが多い。
増殖は、地下茎と種子の両方で行われるという。まだ種子を採取したことはないが自然に周囲に落ちた種子から小さな芽が出ているところも見られる。
軽井沢に自生していたサクラソウは開発の影響で激減し、絶滅危惧種に指定されているが、元来丈夫な種のようで、条件さえ合えば元気に生育するように見える。我が家のロックガーデンのサクラソウもいろんな場所に定着して、今年も元気に花を咲かせている。
サクラソウと同じ仲間のカッコソウ。この種も絶滅危惧種に指定されているが、我が家のロックガーデンでは元気に花を咲かせ、増えている。
昨年開花時のカッコソウ(2017.5.6 撮影)
今年のカッコソウ(2018.5.5 撮影)