今回はヒドリガモ。水鳥にそれほど関心がなかった頃でも、生息地に行くと個体数も多く、よく目についた種の一つであった。特に♂の頭部の赤褐色の色と頭部から額にかけてみられる淡色の筋は特徴的で、遠くから見ていても区別が容易である。雲場池ではそれほど多い種ではなく、たまに見かけるという程度で、2020年12月から2021年1月にかけてと、2021年の10月以降に飛来している。
ヒドリガモ♂(上方の3羽)♀(右上)とキンクロハジロ♂♀(2020.12.31 撮影)
マガモの群れに混じるヒドリガモ♂(2021.1.6 撮影)
雲場池に常にいるという種ではないためか、人の気配には敏感で、池周辺を散歩していると、常に対岸の方に移動して距離を取ろうとするし、更に距離を縮めていくと飛び立っていくことが多い。
雲場池で見られる水鳥(2020.1-2022.1)
いつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育者発行)の記述を見ると、次のようである。
「♂の前額から頭央まで黄白色。喉は黒、その他の頭頸部は栗色。嘴峰29~38mm、翼長220~272mm、尾長98~120mm、跗蹠35~40mm。背と脇とは白と黒との虫くい状はん。胸はぶどう色、腹は白下尾筒黒。翼の雨覆白く飛行時顕著である。嘴は青灰色で先端黒。♀は上面黒かっ色で羽縁黄かっ色。下面腮、喉、胸、脇は赤かっ色で腹は白。
広く欧亜大陸の北部で繁殖し、我国には秋期多数飛来する。昼間は主として海上、湾内、広い湖沼の中央部などで生活し、夜間水田、沼沢地などに飛来する。ピィユー、ピィユーとなき合い、飛行中も盛んになく。
冬鳥として北海道・本州・八丈島・四国・九州・種子島などに渡来する。」とある。
ヒドリガモの場合も、他のカモ類と同様、雌雄の羽衣の違いは明確であり、2021年10月に飛来した頃の写真には、♂の姿はない・・と見えた。しかし、これが一部エクリプスであることに気が付いたのは随分後、今年2月になって写真を改めて整理している時であった。エクリプスというのは♀の羽衣によく似た状態の♂のことである。
先ず、そのエクリプスから見ていただく。♀だと思っていた写真をよく見ると、額の一部に淡い色の混じっているのが見える。また、体側部を拡大して見ると、♂の羽に特有の縞模様(虫くい状はん)が部分的に混じっていることがわかる。
ヒドリガモ♂エクリプス(2021.10.19 撮影)
同上の頭部拡大
同上の腹側部拡大
数日遡り、10月15日に撮影した写真を点検してみると、やはりエクリプスと思われる個体の写真が混じっていた。頭部の色が変化しはじめていて、背から腹側にかけての羽模様にも先の例と同様の「虫くい状はん」への変化がみられる。次の写真は19日撮影の個体とは別の♂エクリプスと思われる。
ヒドリガモ♂エクリプス(2021.10.15 撮影)
この時期、マガモにも何羽ものエクリプスが混じっていた。次はマガモ♂エクリプスとマガモ♀と共にいるヒドリガモ♂エクリプス。
ヒドリガモ♂エクリプス(奥)、マガモ♀(中間)、マガモ♂エクリプス(2021.10.19 撮影)
では続いて、ヒドリガモの姿を雌から順に見ていただく。
ヒドリガモ♀(2021.10.8 撮影)
ヒドリガモ♀(2021.10.11 撮影)
ヒドリガモ♀(2021.10.11 撮影)
続いて換羽し生殖期の羽衣に変わった♂の姿。
ヒドリガモ♂(2022.2.14 撮影)
ヒドリガモ♂(2022.2.16 撮影)
ヒドリガモ♂(2022.2.14 撮影)
ヒドリガモ♂(2022.2.16 撮影)
ヒドリガモ♂(2022.2.14 撮影)
ヒドリガモ♂(2022.2.19 撮影)
次は雌雄のペアの姿。生殖羽の季節になると、違いは明瞭である。
ヒドリガモ♂♀(2020.12.31 撮影)
ヒドリガモ♂♀(2022.2.19 撮影)
ヒドリガモペア(2022.2.12 撮影)
ヒドリガモの大きさは、雲場池に来る水鳥の中では中間くらいで、マガモやカルガモよりやや小さく、ヨシガモと同程度。キンクロハジロよりもやや大きい。他種と一緒に撮影した写真で見較べることができる。
マガモ(右2羽)、キンクロハジロ(中央3羽)とヒドリガモ♂3羽(2020.12.31 撮影)
マガモ♂(右)、ヨシガモ♂(左)とヒドリガモ♂(2022.1.16 撮影)
コガモ(手前)とヒドリガモ♂エクリプス(2021.10.15 撮影)
どの水鳥も同様であるが、羽を開くとその翼の長さや逞しさには驚く。長距離の渡りを考えれば当然のことなのだが、羽を折りたたんで、水面を滑るように泳いでいる姿からすると意外に感じる。
潜水した後水面で羽ばたくヒドリガモ♂(2022.2.16 撮影)
飛び立つヒドリガモ♂(2022.2.15 撮影)