軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

雲場池の水鳥(5)コガモ

2020-12-25 00:00:00 | 野鳥
 今回はコガモ。雲場池には稀に飛来しており、年初の2月に初めて撮影した。その後は姿を消してしまい全く見かけなくなっていたが、10月下旬になって、先に戻ってきていたマガモに混じって泳いでいるところを見かけた。

 数日後、今度は雲場池の最奥部の浅い流れの中で、カルガモ、マガモに混じって餌を探しているところに出会った。こうした写真を紹介する。

 いつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育者発行)の記述を見ると、次のようである。

「最小形のカモ。嘴峰31~41mm、翼長160~194mm、尾長62~72mm、跗蹠27~30mm、♂は頭頸部栗茶色で眼の周囲から後頸に金属光沢がある暗緑色の幅の広い線がある。背と脇とには一面に白と黒との密な虫くい状はんがある。胸は黄かっ色で多数の黒色丸形はんがある。翼鏡は金属緑色。♀は上面黒かっ色で黄かっ色はんあり下面は白地に黒かっ色はんがある。
 欧州およびアジアの中北部で繁殖し、冬期はアフリカ・印度・セイロン島などに渡来する。我国では北海道と青森と日本アルプス(上高地)とで少数のものが繁殖することが知られているが、冬期渡来するものの多くはシベリア大陸より来る。冬期は、湖沼、沼沢地、海上などに大群をなして生息し狩猟のよい対象となる。
 北海道・本州で少数繁殖するほか冬期本州・八丈島・四国・九州・対馬・種子島・奄美大島・徳之島などに渡来する。」

 コガモの♀は小型のマガモといった感じでよく似ているが、嘴は細い。ただ翼鏡の色は緑色であり異なっている。♂の翼鏡も同様に緑色光沢がある。

 2月に見かけた時の様子は次のようであり、4羽ほどがマガモに混じり泳いでいた。

雲場池のコガモのペア (2020.2.22 撮影)

雲場池のコガモ♂ (2020.2.22 撮影)

雲場池のコガモ♂ (2020.2.22 撮影)

雲場池のコガモ♂(2020.2.22 撮影)

 この時いたコガモはプッツリと姿を消し、それ以後見かけることはなかった。そして次にコガモがやってきていることに気がついたのは10月下旬になってからであった。

 一足先にやってきたマガモに混じって、小型のカモがいることに気がついた。♀でマガモによく似ていたので、遠目に子供かもしれないと思っていたが、写真を見てコガモと確認した。コガモの特徴である翼鏡の緑色が見える個体もいる。

マガモと一緒に泳ぐコガモ♀ (2020.10.21 撮影)

雲場池のコガモ♀ (2020.10.21 撮影)

雲場池のコガモ♀ (2020.10.21 撮影)


雲場池のコガモ♀ (2020.10.21 撮影)

 その後、雲場池の上流の川の流れの中でマガモ、カルガモと共に餌を食べている姿を見る機会があった。この時は数メートルまで近寄ることができ、そこから撮影できた。

雲場池の上流の川の中でマガモの♀と共に餌を食べるコガモ♀(2020.11.6 撮影)

雲場池の上流の川の中で餌を食べるコガモ♀(2020.11.6 撮影)

雲場池の上流の川の中で餌を食べるコガモ♀(2020.11.6 撮影)

雲場池の上流の川で泳ぐコガモ♀(2020.11.6 撮影)

雲場池の上流の川で羽ばたくコガモ♀(2020.11.6 撮影)

 12月になって、ようやくコガモの♂の姿を遠くから目撃し撮影した。ただこの時は池の反対側に回り近くから撮影しようとしたが、警戒され遠く雲場池を離れて飛び立っていった。写真からは♂♀各3羽ほどが確認された。

雲場池に戻ってきたコガモ (2020.12.7 撮影)


雲場池に戻ってきたコガモ♀ とオオバン(2020.12.7 撮影)



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新型コロナウィルス情報(36)12/18-12/24

2020-12-24 12:00:00 | 新型コロナウィルス
 特に断りの無いものは読売新聞からの情報。

12/18
 ・新型コロナ対策「失敗」 スウェーデン国王が批判 (共同通信社)
   新型コロナウイルスの被害が広がるスウェーデンのカール16世グスタフ国王は
  「死者を多数出す、ひどい状況だ。私たちは失敗した」と述べ、政府を批判し
  た。BBC放送などが17日伝えた。政府は厳しい規制を避ける新型コロナ対策を大
  枠で正当化する一方、高齢者の保護や第2波対策の不備は認めている。
   政府は国民に社会的距離の確保など自主的な対応を要請し、厳しいロックダウン
  (都市封鎖)やマスク着用の強制を避けてきた。免疫を持つ人の自然増でウイルス
  を抑え込む「集団免疫」が主要な目的だと誤って解釈されたこともあり、世界の注
  目を集めた。
 ・コロナ 都内822人感染 医療警戒レベル最高に
 ・新規国債43兆6000億円 21年度予算案 106兆6100億円
 ・マクロン大統領 コロナ陽性
 ・日米共同世論調査 コロナに強い警戒感 米は感染予防軽視響く
   感染防止>経済活動 両国で
 ・サイエンス誌10大ニュース 最大の成果「ワクチン実用化」
   他に、ノーベル化学賞のゲノム編集、室温超伝導。
   ネイチャーが選んだ今年の10人中、7人を新型コロナ関係から選んだ。
 ・JR東 大みそか終夜運転中止
 ・公取委、電通を注意 コロナ給付金巡り、下請けに圧力
 ・都の医療「瀬戸際」 警戒レベル最高 予防徹底訴え 通常医療影響も
 ・国内感染 最多3214人 死者38人
 ・会食で感染 途方で増
 ・長野 新たに7人感染 いずれも軽症
 ・長野 飯田市帰省補助対象期間延長へ 来月末までに

12/19
 ・ワクチン国内初申請 米ファイザー 2月にも接種
 ・医療者向け 2月に体制 接種工程表案 高齢者は3月下旬
 ・ワクチン集中審査 国内初申請 海外での承認データ 参考
 ・仏大統領 十数人と会食 自粛要請反し コロナ診断前日
 ・コロナ対応失敗 国王が政策批判 スウェーデン
 ・【論点】コロナ 年末年始乗り切るには
   「夜の街」と協力不可欠、感染対策 店ごとに評価、偏見防止へ情報共有
 ・2020年
   ①感染拡大 緊急事態宣言 4月7日(一部)、16日(全国)
 ・コロナで中退 大学生1033人に 4~9月
 ・PCR 自費検査拡大 駅前に施設・精度バラツキ 1回1980円
 ・国内感染2836人 死者36人
 ・長野 コロナ男性2人死亡 80歳代と90歳代 新たに10人感染 中等症1人 軽症7、無症状2人
 ・長野 読者が選んだ10大ニュース ①新型コロナ 初の感染者 2月25日
 
12/20
 ・外出制限強化を英首相発表 “変異種”の感染拡大(FNNプライムオンライン) 
   イギリスのジョンソン首相は、新型コロナウイルスの変異種による感染が拡大
  しているとして、首都ロンドンなどで、再び外出制限を強化すると発表した。
   外出制限の強化は、ロンドンを含むイングランド南東部で、20日から行われる
  もので、正当な理由のない外出を控えるよう求めるほか、生活必需品を扱う小売
  店以外の営業は禁止される。
   また、クリスマス期間中に予定していた緩和措置も、この地域では取りやめに
  なった。
   イングランド南東部では、ウイルスの変異種による感染が広がっていて、ジョ
  ンソン首相は、「従来種に比べ、最大70%感染力が強い可能性がある」と述べ、
  早急な対策の必要性を強調した。
 ・「生活困窮」相談3倍 900自治体窓口 上半期39万件 コロナ影響
 ・厳しい冬 食糧配布 日比谷公園 
 ・ヒット商品 コロナ色濃く マスク4倍、口紅は半減
 ・GoTo停止 菅首相が陳謝 
 ・印、感染者1000万人超
 ・米、ワクチン許可 2例目 モデルナ製 数日中に接種開始
 ・マクロン大統領 「私は元気です」
 ・ファイザー製 スイスが承認 コロナワクチン
 ・コロナ対策強化へ スウェーデン転換 混雑時の交通機関内でのマスク着用呼びかけ
 ・チリ、大統領マスクせず罰金
 ・南ア、コロナ変異種検出 12月以降、感染者急増
 ・【あすへの考】コロナ禍 非正規格差が鮮明 
 ・地震計「ノイズ」低下 コロナで自粛クッキリ 
   人間の活動の変化が地震計に記録されていた
 ・2020年、読者が選んだ海外10大ニュース
   ①新大統領バイデン氏・2020.11.7
   ②WHO パンデミック宣言・2020.3.11
   ⑥トランプ氏が感染・2020.10.2
   ⑦米、WHO脱退・2020.5.29
 ・東海大敗退 コロナに泣く 部員らがコロナ感染、練習不足
 ・コロナ困窮 年の瀬襲う 収入激減・家賃払えず
 ・長野 新たに10人感染 中等症2人、軽症・無症状8人
  
12/21
 ・感染3週間で5万人 累計20万人に迫る
 ・静かな年末年始を 知事会緊急メッセージ
 ・GoTo運用方針 明示を 知事会 「突然の転換」不満も
 ・コロナ変異種 感染力7割増 英首相 3回目都市封鎖へ
 ・米、コロナ追加対策9000億ドル 現地報道 与野党合意見通し
 ・中国、ワクチン緊急使用「数億人」に
 ・【社説】ひとり親世帯 年末年始の生活困窮を防げ
 ・コロナ 百貨店の戦略は 地方はフロア絞り込み、デジタル活用 外商攻勢
 ・イスラエル首相 ワクチン接種公開
 ・タイ、新規感染最多
 ・都、今月の感染1万人超す 死者は35人
 ・都内繁華街 人出減らず GoTo停止発表後初の日曜 ドコモ分析
 ・長野 コロナ1人死亡 13人感染 いずれも軽症か無症状

12/22
 ・コロナ克服へ最大予算 来年度案106兆6097億円 新規国債3割増
 ・コロナ変異種 欧州厳戒 英からの入国制限
 ・ウイルス突起分子に変化 コロナ変異種 重症化率検証急ぐ
 ・アビガンの承認 厚労省継続審議 コロナ治療薬
 ・「大型」編成 景気浮揚 政府、コロナ封じ込めが鍵
 ・英、物流・交通混乱 コロナ変異種 ドーバー海峡往来「停止」
 ・米コロナ93兆円対策合意 バイデン氏 再追加意欲
 ・2021年度予算案閣議決定 コロナ反動 成長4%想定
 ・コロナ感染20万人超す 国内累計 53日間で倍増 死者は48名
 ・モデルナ 来月国内治験へ
 ・都、医療機関支援を強化 重症者1人1日30万円 知事「年末年始ステイホーム」
 ・首都圏 帰省延期を 尾身氏
 ・長野 70歳代男性1人死亡、4人感染 無症状と軽症
 
12/23
 ・特措法改正案 コロナ時短店 支援明記 臨時医療施設 容易に 通常国会提出へ
 ・首相YIES講演 「ワクチン 感染対策の決め手」
 ・開閉会式 大幅に簡素化 五輪・パラ 萬斎さんチーム解散へ
 ・コロナ変異 各国対策 英から入国 40か国制限 物流混乱 郵便もストップ
 ・首相、バイデン氏と会談 重視 早期の実現コロナが壁
 ・コロナ対策で予備費4000億円
 ・モデルナ製 米で接種開始 コロナワクチン
 ・米コロナ対策 上下両院通過 9000億ドル(約93兆円)規模
 ・英仏の工場 トヨタ停止 コロナ変異種
 ・上皇さま87歳に コロナ影響 案じられ
 ・ワクチン「接種したい」47% 「したくない」23%
 ・コロナ死者3000人超す 30日で1000人増 80歳以上が6割
 ・医療機関15% 看護師ら離職 協会調査
 ・新規感染2686人 死者48人 都内563人
 ・首都圏の感染増 危機感 厚労省助言機関 変異種は監視継続
 ・長野 新たに3人感染 いずれも軽症
 
12/24
 ・コロナワクチン 優先接種 3分類5000万人 政府方針 持病、14種対象
 ・感染最多3263人 死者56人
 ・英から入国 一時停止に
 ・英からの入国者数修正 菅首相の「1日1,2人」を「1日平均約150人」
 ・コロナ変異種 英仏の物流 再開 制限一部緩和 軍動員、運転手を検査
 ・露ワクチン「2か月禁酒を」 国民「それなら接種は無理」 当局修正、1杯ならOK
 ・年末年始も休業・時短 小売り・外食 コンビニは大半「24時間」
 ・高速6社 そろって赤字 3月期見通しで初 外出自粛、収入減
 ・年末年始 イベント上限5000人 来月11日まで 首都圏のラグビー、サッカー想定
 ・都に時短の強化求める 尾身分科会長 「何でもやるべきだ」
 ・原則自宅療養に埼玉が方針転換 ホテル追い付かず
 ・都内感染748人 
 ・ぜんそく薬「推奨せず」 治療薬候補
 ・五輪・パラ開閉会式演出 「華美な式典、変える」 新責任者に佐々木さん
 ・長野 コロナ県内8人感染 軽症か無症状 北信広域圏 警戒レベル引き下げ3
 ・長野 県民限定宿泊割実施へ 年末年始GoTo停止受け

 ・Johns Hopkins Univ. 公表情報 世界と日本の累計感染者数推移


世界の累計感染者数推移 2020.12.24 現在 


日本の累計感染者数推移 2020.12.24 現在

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犬山温泉と明治村(2/2)

2020-12-18 00:00:00 | 日記
 鵜飼見物をした翌日、犬山温泉の南東約7km、車で20分ほどの場所にある明治村に向かった。入り口でもらったパンフレットには、博物館・明治村とあり、ここが明治期の建物を移築して保存している野外博物館であることを改めて認識した。

 実際に来てみると、事前に見学を予定していた帝国ホテルと品川硝子工場の他、北里柴三郎ゆかりの建物も移築されていることがわかり、新型コロナ騒動に悩まされている中、日本の細菌学の父とされる北里柴三郎博士の業績に触れることができ、タイムリーな訪問になった。

 村内にはこの明治村建設の発案者であるお二人に関連した建物もあって、そこには詳しい説明もあったが、先ずここでそのお二人のことを明治村のHPから引用して紹介しておくと、次のようである。

 「明治時代は、我が国が門戸を世界に開いて欧米の文物と制度を取り入れ、それを同化して近代日本の基盤を築いた時代で、飛鳥・奈良と並んで、我が国の文化史上極めて重要な位置を占めている。明治建築も従って江戸時代から継承した優れた木造建築の伝統と蓄積の上に、新たに欧米の様式・技術・材料を取り入れ、石造・煉瓦造の洋風建築を導入し、産業革命の進行に伴って鉄・セメント・ガラスを用いる近代建築の素地を築いた。これらの建築のうち、芸術上、歴史上価値あるものも、震災・戦災などで多く失われ、ことに戦後の産業の高度成長によって生じた、大小の公私開発事業により、少なからず姿を消していった。取り壊されてゆくこれらの文化財を惜しんで、その保存を計るため、今は二人とも故人となられたが旧制第四高等学校同窓生であった谷口吉郎博士(博物館明治村初代館長)と土川元夫氏(元名古屋鉄道株式会社会長)とが共に語り合い、二人の協力のもとに明治村が創設されたのである。」

 明治村はこのようにお二人の崇高な理念により企図され建設されたものであることを知った。

 また、博物館明治村には上記の館長のほかに村長がいる。歴代の村長は第一代 徳川夢声氏(1965-1971)、第二代 森繁久彌氏(1990-2004)、第三代 小沢正一氏(2004-2012)であり、一時空白の時期もあったようであるが、2015年の開村50周年を機に四代目村長に作家・エッセイストの阿川佐和子氏が就任している。次はHPに紹介されている阿川氏の就任式のスピーチである。

 「歴代の村長は亡くなられて交代していましたので、山本社長から初めて就任の打診を受けた時は、私もそんな年かとびっくりしました。
 村長就任に関しては、『何で引き受けちゃったのだろう』というのが率直な感想です。
 私はよく、『一体君は何をやりたいのだ?何が専門なのだ?』と言われることが多く、不安になることもあるのですが、かつてある方に『世の中のさまざまな人の話をつなぐことこそが君の専門職だ』ということを言われました。それ以降、私はさまざまな物事に対して、接着剤の役割を果たすことができると感じるようになりました。
 明治村には、明治時代以来の日本人の知恵・伝統と外国からの新しい技術を融合したものが残されています。その裏には、たくさんの人の力や技、知恵があります。私は、できる限り多くの人に楽しく伝えていく役割を、村長の任として果たしていきたいと考えています。
 私が村長に就任したからには、全国の子どもたちに『明治村まだいってないの?だせーっ。』と言われるくらい面白い村にしていきたいと思っています。」

 私も、子どもではないが、創設者お二人の想いを知らない「だせーっ」一人だったようである。

 この博物館・明治村の地図はパンフレットに次のように描かれていて、広さは約100万m²、南北約1100m・東西約620mである。ここに、展示建造物件数67件(重要文化財11件、愛知県指定文化財1件)が全国各地から移築されている。 

博物館明治村・村内地図

 私達は広い駐車場のある北口から入場した。上の地図では左上にある。歩き始めて地下通路を抜けると、最初の目的である帝国ホテル(地図の67番)はすぐ目に入ってきた。

帝国ホテル 1/3(2020.9.23 撮影)

帝国ホテル 2/3(2020.9.23 撮影)

帝国ホテル 3/3(2020.9.23 撮影)

 明治村に移築されているのは当時の本館「ライト館」の玄関部分の一部だけであるが、建築様式を感じることができる。旧帝国ホテルの壮大な全体像は、東武ワールドスクエアに1/25模型があるので見ることができる。

 左右対称のシンメトリー構造、深い軒などは京都宇治の平等院鳳凰堂をモチーフとしているとされる。設計はもちろんフランク・ロイド・ライト(1867.6.8-1959.4.9 アメリカ人)である。
 1923年(大正12年)7月、4年間の工事期間を経て二代目の帝国ホテルが竣工した。この大正12年といえば、9月1日に関東大震災が東京を襲った年として記憶されるが、まさに落成記念披露宴の宴が準備されている時に地震が起きた。

 周辺の多くの建物が、倒壊したり火災に見舞われる中、加工しやすく燃えにくい大谷石で作られた帝国ホテルライト館は、ほとんど無傷であったという


帝国ホテルの外壁(2020.9.23 撮影)

 しかし、開業から40年余りの短さで、老朽化や地盤沈下、270室という客室の少なさを理由に1968年春ごろまでに取り壊された。明治村への移築再建には十数年を要したとされる。


帝国ホテルの玄関(2020.9.23 撮影)

 村内の建物のいくつかは売店、カフェ、喫茶室、食堂、バーなどとして利用されていて、帝国ホテルの2階部分にも喫茶室があったが、この時はまだ開いておらず、ホール内部だけを見て、次の工部省品川硝子製造所(地図の45番)に向かった。

品川硝子製造所 1/3(2020.9.23 撮影)

品川硝子製造所 2/3(2020.9.23 撮影)

品川硝子製造所 3/3(2020.9.23 撮影)

 建物内では「品川硝子ショップ」として各種ガラス製の土産物が販売されており、傍らには浅草の神谷バーで有名なデンキブランが飲める「デンキブラン 汐留バー」が開設されていた。

 建物入り口脇に設置されている説明パネルには次のように記されている。

「旧所在地   東京都品川区北品川
 建設年    明治10年頃
 解体年    昭和43年
 移築年    昭和44年
 建築面積   37.1坪
 構造     煉瓦造平屋建
 寄贈者    三共株式会社
  
 明治6(1873)年に、民間のガラス工場としてイギリス人技術者を雇い入れた品川興業社が開設した。明治9年頃に、工部省が買上げ、拡張・整備の一環として、明治10年ごろ窯場に隣接して建てられた。ここでは建築材料として需要の多い板ガラスなどの国産化に向けて各種実験を試みたが、成功しなかった。
 その後、この工場は再び民間へ払い下げられ、後に三共合資会社製薬場となった。ここで高峰譲吉や鈴木梅太郎の創製による薬品も製造された。
 当時の洋式工場に多く見られたように煉瓦造であり、棟の上に載せられている越屋根は換気用に取り付けられたものである。」
 
品川硝子製造所の説明板(2020.9.23 撮影)

 説明板にあるように、明治村に移設されているこの建物は、建築面積37.1坪と小さなもので、事前に想像していたものとは異なっていた。実際、窯場に隣接して建てられたものとのことで、硝子の製造場ではなく、各種実験を試みていた場所のようである。

 工場全体の様子や製造工場がどのようなものであったかが気になるところであるが、それについての詳しい情報はここでは得られなかった。

 先に紹介した佐藤潤四郎氏の著書「硝子の旅」にはこの品川硝子製造所について次のように記されている。

 「ガラス工業発祥の地
 昭和四十年(1965)十二月十八日に、日本最初の洋式ガラス工場として発足した興業社の設置された場所に『品川硝子製作所記念碑設立』の除幕式が挙行された。
 現在は三共製薬株式会社として、沢山の建物の集合で昔日の俤はみられない。その工場の敷地の一部を品川区に寄付され、そこに記念碑が建設されている。・・・
   碑 文
 『此ノ地ハ本邦最初の洋式硝子工場興業社ノ跡デアル、同社ハ明治六年時ノ太政大臣三条實美ノ家令丹羽正庸等の発起ニヨリ我ガ国ニ初メテ英国ノ最新技術機械施設等ヲ導入シ外人指導ノ下ニ広大ナ規模ト組織ニ依ツテ創立サレタルモノデアル。
 然ルニ最初ハ技術至難ノタメ経営困難ニ陥リ同九年政府ノ買上ゲル所トナリ官営ノ品川硝子製作所トシテ事業ヲ再開シタ、・・・』」

 当時の工場の建物についての記述はと「ガラスの旅」をさらに読み進むと、司馬遼太郎の「翔ぶが如く」に用いられた風間完画伯の挿絵「品川ガラス製造場」が紹介されていて次のようである。


翔ぶが如くの挿絵として使用された風間完画伯の絵

 しかし、これは実際には後年の「品川白煉瓦製造所」へと発展した時期の工場全景と考えられると書かれているので、品川硝子製作所の工場はその一部とみられ、話はややこしい。

 日本ガラス工芸学会の会誌「GLASS」の第6号と第7号(共に1979年発行)には、井上暁子氏の品川硝子に関する2篇の報告が見られ、このうち第6号には、取りこわし前の品川硝子の建物(部分)として、現在明治村に移築された建物の写真が示されている。これを見ると、現地でみた建物そのものであると判る。ただ、ここではこの建物がどのような目的で使用されていたかについての解説はない。

 第7号には「化学実験所として、窯場に隣接して建坪五十六坪の平屋建ての薬品庫が完成しているので、これが化学実験所として使用されていた可能性がある」と指摘している。この建物は状況としては前記の説明板の内容と似通っているが、建坪が異なっているので、別の建物のことかもしれない。

 このように、今回は残念ながら品川硝子製造所の全様、そして移設された建物がその中でどのような役割を担っていたかについて、確かな情報は得られなかった。

 ここから順番にいくつもの建物や内部の展示品を見ながら進み、次の目的である北里研究所本館・医学部前に出た(地図の25番)。中には常設展示として、「北里柴三郎記念室」と「結核との闘いの歴史」がある。


北里研究所本館・医学部(2020.9.23 撮影)

 内部に入るとすぐ若き日の北里柴三郎の銅像(複製)が目に入る、これは明治27(1894)年5月、香港でペストが発生し、北里柴三郎や青山胤通ら数人が調査に派遣され、到着後短期間でペスト菌を発見したことを受けて、同年東大図書館で行われた慰労歓迎会の席上、歓迎会長近衛篤麿から贈られたものである。

 このほか、奥の部屋には関連の研究道具、業績を記した解説パネルが多数設置されていた。

 新型コロナ騒動の真っ最中、COVID-19 感染症治療の候補薬として期待され、治験が行われているイベルメクチンの開発者で、ノーベル賞受賞者の北里大学の大村 智博士と、「日本の細菌学の父」と呼ばれている北里柴三郎ゆかりの建物や関連した品々を見ることができたことは感動的であった。


ペスト菌発見を記念して贈られた銅像(複製)(2020.9.23 撮影)

銅像の横に設置された説明板(2020.9.23 撮影)

 この建物を出て、現在の村長である阿川佐和子さんのパネルなどがある煉瓦通りを奥の方に歩いて行くと、第四高等学校・物理化学教室の建物があった。第四高等学校は現在の金沢大学である。

 中に入ってみると、ここにこの明治村建設の発案者である同校同窓生の2人の肖像と関連展示がされていた。

第四高等学校・物理化学教室建物内の谷口吉郎・土川元夫 顕彰室(2020.9.23 撮影)


谷口吉郎・土川元夫 両氏の肖像の下に設置されている説明板(2020.9.23 撮影)


谷口吉郎氏(1904.6.24-1979.2.2)の肖像(2020.9.23 撮影)

土川元夫氏(1903.6.20-1974.1.27)の肖像(2020.9.23 撮影)

 明治村という素晴らしい施設の建設を行ったお二人に想いを致しつつこの場所を後にして、今回のわれわれの見学コースの終点であり、明治村の正門でもある場所に着いた。

 ここからは村営バスに乗り、出発地点の帝国ホテル脇まで戻ることになる。正門近くには、次のような「明治村の沿革」と「明治村からの言葉」という、来村者に宛てた心のこもったメッセージが刻まれていた。



帰路乗車した村内をめぐる村営バス(2020.9.23 撮影)

 この後、帝国ホテル前でバスを降りて、近くの明治の洋食屋(地図のN)で昼食にしたが、食事の後、もと来た北口に向かって歩いていると、「小熊写真館」(地図の65番)という表示が目に入った。この小熊写真館は私が以前赴任していたことのある上越高田に今もある写真館である。その古い建物がここに移築されていた。

 懐かしく、近くに行ってみると、見覚えのある「レルヒ大佐」の写真が玄関脇に飾られていた。レルヒ大佐は日本にスポーツスキーを伝えたとされる人で、オーストリア人である。これにより、上越は日本のスキー発祥の地とされている。
 
新潟県高田(現上越市)の小熊写真館(2020.9.23 撮影)

新潟県高田(現上越市)の小熊写真館、レルヒ大佐の写真が見える(2020.9.23 撮影)

 私が上越に赴任したことを知って、あるとき研究所時代の後輩のTさんが「スキーの誕生」(中野 理著 1964年金剛出版発行)という本をプレゼントしてくれた。レルヒ大佐のことを綴った内容の本である。
 読み終えたら返すという私に、「もういらないから」ということでこの本は今私の本棚にある。


Tさんからプレゼントされた「スキーの誕生」の表カバー

 Tさんはスキーが得意で、上越市からも近い火打山にヘリコプターで行き、春スキーを楽しむことがあると言っていた。

 そのTさんが冬山で遭難したという新聞記事を見つけて、同僚のEさんが知らせてくれたのは、それから数年後のことで、私がまだ上越に勤務している時であった。


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新型コロナウィルス情報(35)12/11-12/17

2020-12-17 12:00:00 | 新型コロナウィルス
 特に断りの無いものは読売新聞からの情報。

12/11
 ・コロナ 加速する食糧危機 パレスチナ44万人緊急支援
 ・コロナワクチン 接種 住民票の市区町村 厚労省案
 ・【広告】新型コロナウイルスとどう向き合ってきたか-第3波を見据えて-
   病院経営VOL7.4 日本医学出版発行。
 ・コロナ下 負担増回避 与党税制大綱決定 固定資産税除き「無風」
 ・介護報酬 引き上げへ 政府調整 コロナ対応に配慮
 ・【社説】大阪・関西万博 コロナ禍での準備は柔軟に
 ・カナダ、ワクチン承認 ファイザー製 来週にも接種
 ・米、承認判断へ FDA専門家会合 ファイザー製ワクチン
 ・国税州 8兆円減見通し 今年度55兆円 減少幅 リーマン以来
 ・シャンシャン まだ会える コロナで返還延期 来年5月末まで
 ・通常医療と両立「困難」 厚労省助言機関 「感染最多水準続く」
 ・女性の自殺 11月19%増 
 ・夜の街「感染出さぬ」 消毒強化・従業員に自主検査 銀座3度目「時短」
 ・都内感染 初の600人 全国2970人、死者25人 千葉、埼玉など最多
 ・都の医療「逼迫始まる」 警戒レベル据え置き
 ・旭川に外出自粛要請へ 北海道
 ・雪まつり「中止」 札幌市長  
 ・長野 高齢者施設 集団感染危惧 対策徹底でも 介助など濃厚接触
 ・長野 新たに29人が感染 長野の病院で18人確認 中等症2人、他は軽症又は無症状

12/12
 ・GoTo停止継続 提言 感染「ステージ3」三分類し対策 政府分科会 
   年末年始「帰省慎重に」。
 ・大阪・札幌 除外延長へ 政府
 ・全国での停止「まだ考えず」 菅首相
 ・税収減自治体 国が支援へ コロナ 地方消費税を補填
 ・新規国債発行 20兆円超 政府
 ・赤字国債特例 5年延長 政府方針 法案審議なしで発行
 ・米、ワクチン使用許可へ ファイザー製 来週にも接種開始
 ・政府 ワクチン6000万人分確保 英アストラゼネカ製 厚労省発表
   供給開始は2021年初頭以降。
   米モデルナと5000万回分、ファイザーとは1億2000万回分で基本合意。
 ・コロナ病床 人員不足 大阪・東京 専用施設 フル稼働遠く 
   療養用ホテル確保に苦慮。
 ・コロナ復興基金 EU首脳が合意
 ・JAL 感染者サポート 国際線 渡航先の医療費など
 ・HIS 250億円赤字 10月期 02年の上場以来初
 ・政府予備費 GoToなど3856億円追加支出 
 ・イート延長 515億円計上へ 3次補正予算案
 ・年末年始「静かに過ごして」 参拝、帰省 分散呼びかけ
 ・国内感染2794人 重症554人 死者41人
 ・自衛隊看護官 大阪に派遣へ
 ・力士新たに7人感染 軽症
 ・長野 知事「帰省、初詣分散化を」
 ・長野 コロナ17人感染 中等症1人、16人は軽症か無症状

12/13
 ・コロナ感染 最多3040人 死者22人 重症者578人
 ・米、ワクチン接種許可 ファイザー製 近く使用開始
 ・コロナ感染 世界7000万人 16日で1000万人増 死者は159万人超す
 ・病床使用率 全国32.7% 3道県は50%超、逼迫進む
 ・韓国コロナ 最多950人感染 1日当たり 首都圏が7割
 ・キム・ギドク氏 コロナで死去 韓国の映画監督
 ・都内 最多621人感染 地方も散発的に拡大
 ・宿泊療養中の50代男性死亡 神奈川
 ・京都の舞妓ら10人が感染 
 ・コロナ死亡率 男性1.4倍 国際チーム分析 免疫力の差 影響か
 ・長野 コロナ感染 最多32人 7人は感染経路不明 中等症2人、29人は軽症か無症状

12/14 
 新聞休刊日
 
12/15
 ・GoTo年末年始停止 全国で28日~来月11日 東京・名古屋 先行し除外
   政府が方針転換。
 ・「密」な1年 2020年の今年の漢字は蜜
 ・【広告】新型コロナからいのちを守れ! 西浦 博著 中央委公論新社発行
 ・感染防止 やっとカジ GoTo停止
   経済と両立 首相苦境。
   病床逼迫 深刻さ増す。
   東京時短 来月11日まで 協力金一律100万円。
   イート食事券 追加発行 来年3月から 上乗せ率は引き下げ。
 ・【社説】GoTo停止 感染抑止優先で安心を与えよ
 ・GoTo停止 自民「対コロナ優先」理解 野党「首相の責任追及」
 ・日本人会通じ在外邦人支援 対コロナ外務省方針
 ・総務省秘書コロナ感染
 ・景況感 2期連続改善 12月日銀短観 「GoTo」効果 先行きは懸念
   資金繰り支援 延長議論へ 日銀。
 ・博士課程の学生支援へ 政府、1000人に年230万円 アルバイト収入減対策
 ・3次補正予算案19兆円 一般会計 当初から7割増に
 ・アストラゼネカ 米バイオ製薬アレクシオン社を買収へ 4兆円
 ・習氏 年内訪韓見送りへ コロナ「第3波」で困難
 ・米にサイバー攻撃か 露集団関与の見方 現地報道
   在米ロシア大使館は否定。
 ・米、ワクチン接種開始へ ファイザー製、出荷始まる
 ・中国製ワクチン 臨床試験を中断 ペルー
 ・エスワティニ 首相コロナで死去
 ・映画興行収入 最低に コロナで休業 影響 鬼滅は300億突破
 ・札幌の雪まつり会場開催は中止 オンライン代替検討
 ・かき入れ時 大打撃 旅行業界「あまりに唐突」 客「仕方ない」「決定遅すぎ」
 ・時短要請延長 居酒屋「我慢するしか」 経営難で応じぬ店も
 ・重症最多588人 感染1678人 死者47人最多
 ・長野 コロナ新たに20人感染 中等症2人、18人は軽症または無症状
 ・長野 変わる年末年始ダイヤ 感染警戒、働き方改革影響  

12/16
 ・英で新型コロナ変異種を確認 南東部での感染拡大と関連か(NNA ヨーロッパ)
   英国のハンコック保健・社会福祉相は14日夜、イングランドで新型コロナウイ
  ルスの変異種が確認されたと発表した。ケントやその周辺を中心に少なくとも60
  以上の自治体で確認されており、南東部での急速な感染拡大との関連が疑われて
  いる。ただ、より深刻な症状を招いたり、ワクチンが効かない可能性は低いとみ
  られる。
   イングランド公衆衛生当局パブリックヘルス・イングランド(PHE)による
  と、新種の感染は13日までに1,108件確認されている。ウイルスが細胞に侵入す
  る際の「鍵」となるスパイクタンパク質にも変異が見られることから、感染力が
  強まり広がりやすくなっている可能性もあるという。
   ウイルスの変異は珍しいことではないが、専門家は、今回の変異種が確認され
  た地域が感染拡大地域と重なる点と、ウイルスに変異が多くスパイクタンパク質
  に著しい2つの変異が見られる点を懸念している。なお、世界保健機関(WH
  O)は、この新種が従来のものと性質を異にする証拠は見られないとしている。
   新型コロナウイルスの変異例としては、夏季にスペインで新型が見つかったほ
  か、11月にはデンマークのミンク農場で人にも感染する変異種が確認された。
 ・コロナ感染防止4.3兆円 総額15.4兆円 3次補正予算案を決定 
   今年度歳出175兆円に 一般会計
 ・GoTo業者50%補償 全国一斉停止 旅行キャンセル時 広島市除外前倒し調整
 ・米ワクチン年内に2000万人 接種開始 コロナ死者30万人超え
 ・菅内閣3か月 調整役不在 浮き彫り コロナ対応後手
 ・仏の外出制限 夜間限定に緩和 美術館や映画館の再開は来年1月以降に延期
 ・シンガポールワクチン承認 ファイザー製
 ・GoToトラベル Q:なぜ一斉停止に 年末年始 人が集中
 ・緊急措置 延長相次ぐ 3次補正案 閣議決定 雇用や資金繰り支援
 ・死者53人、重症592人 ともに最多 
 ・飲食店時短要請 各地に広がる
 ・長野 長野の80代男性死亡 新たに14人感染 重症1人、中等症1人、12人は軽症か無症状
 ・長野 知事、GoTo停止「やむを得ず」

12/17
 ・35人学級 小学全学年で 政府方針 25年度までに コロナ対策も目的
 ・「勝負の3週間」感染25%増 地方拡大鮮明に 最多水準続く 助言機関
 ・塩野義、ワクチン治験開始 コロナ
 ・アビガン承認 21日議論
 ・【社説】コロナワクチン 速やかな接種へ万全を尽くせ
 ・首相「5人以上で会食」陳謝 政府・与党には擁護論も
 ・トラベル停止 業界混乱 運用ルール複雑・問い合わせ殺到 
   「広島市着」も先行除外へ
 ・訪日客97%減 11月、5万6700人
 ・イベントも年末年始停止
 ・再就職支援に1330億円 21年度予算案 コロナで雇用悪化
 ・日銀、60億ドル買い入れへ 外為特会から コロナ感染拡大備え
 ・独英クリスマス規制強化 コロナ第2波 対応不十分だった
 ・大連4か月ぶりコロナ感染確認 無症状者4人
 ・武漢市副市長を規律違反で調査 中国
 ・大みそか終夜運転「中止を」 1都3県知事 初詣客の密集回避
 ・死者53人 重症618人 
 ・長野 「医療崩壊寸前」危機感 累計1000人超 北信圏 拡大続く
 ・長野 新たに15人感染 中等症1人 13人は軽症か無症状 1人は不明

 ・Johns Hopkins Univ. 公表情報 世界と日本の累計感染者数推移


世界の累計感染者数推移 2020.12.17 現在 


日本の累計感染者数推移 2020.12.17 現在
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続・新型コロナウイルス(4)サイトカインストーム

2020-12-11 00:00:00 | 新型コロナウィルス
 大阪の高校同窓会から12月1日発行の会誌が届いた。早速読み始めると、同窓会長の挨拶と現校長のあいさつに続き、特集COVID-19として同窓生である平野俊夫氏(現・量子科学技術研究開発機構理事長)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に思う:ポストコロナは存在するか?」が掲載されていた。



 平野俊夫氏については随分前から、前大阪大学総長ということで知っていたし、今年になってからは、免疫学者としてTVのワイドショウに出演されたり、中央公論7月号に「医療体制を整備し、COVID-19を克服せよ ~集団免疫とワクチン・治療薬の最前線~」という内容の文章を寄稿されていたこともあり、氏が発信されるものに注目していた。また、個人ブログを書かれていることを知り、こちらも拝見していた。




 その、個人ブログ「人生心の旅」を訪ねてみると、2020年9月13日付で「ポストコロナは存在するか?」という内容の文章が載っていて、そこには「桃陰だより37号寄稿文より、一部抜粋」とあったので、今回届いた会誌でその全文を読むことができるようになった。

 会誌の内容を読み進むと、全体としては20万年という人類史を俯瞰した大きな話であるが、ブログには載っていなかった内容として、COVID-19についてのやや専門的な記述も見られた。次のようである。

 「・・・では、少し目の前のCOVID-19を冷静に考えてみよう。世界の感染者数は4700万人を突破し、死者の数も120万人を突破した。日本でも10万人以上が感染し死者の数は1700人を超えたが、人口100万人当たりの死者の数は世界平均の約150人や欧米の数百人に比べると約14人前後であり、日本を含むアジアでは感染しにくく、かつ重症化しにくいという状態が続いている。しかしながら世界全体を俯瞰すると深刻な状況が続いていることには変わりない。また今後ウイルスに変異がおこり強毒化する可能性は否定できない。

 このような状況ではあるが、COVID-19に関しては明るいニュースも含めて様々なことが明らかになってきた。50歳以下の人が重症化するリスクは非常に低く、感染者の80%以上は無症状か軽症で治癒する。また高齢者や肥満者や喫煙者、あるいは糖尿病や循環器疾患などの基礎疾患を有している人を中心に重症者の約20~30%が血栓を伴う重症肺炎や多臓器不全になり命を落とす。すなわち、高齢者や基礎疾患などを有するハイリスクな人への感染を防ぐことと、重症化を防ぐことが最重要課題である。・・・

 重症化は免疫の暴走であるサイトカインストームで起こる。免疫抑制剤であるステロイド製剤やサイトカインストームに効果があるとされるインターロイキン6(IL-6)の阻害剤(商品名アクテムラ)が有効であるという結果も報告されている。また、炎症を引き起こすレニン・アンジオテンシン系の阻害薬(高血圧の治療薬)が重症化阻害に有効であることも報告されている。このようにCOVID-19に対する(ワクチン開発や)治療方法に明るい話題が増えてきた。

 さらに、致死率は当初考えられていた約5%よりも低いと考えられる。抗体検査の結果から、おそらくPCR検査で確定された感染者数より、実際は10~50倍は多いと考えられているので、致死率は当然10分の1~50分の1となる(0.5%~0.1%)。
 また、集団免疫閾値(集団の何%が免疫を獲得すれば感染流行が収束するかの%)も当初60%と考えられていた。しかし、その算定根拠である基本再生産数(一人の感染者が感染させることができる人数)は、1)ウイルスの性質、2)感染される人の遺伝的要因や免疫的要因、3)社会的要因の3つで決まるのであり、ヨーロッパのそれと日本のそれは異なるし、都会と農村地域でもことなる。集団免疫閾値が低ければ、予想される死者の数は少なくなる。また免疫反応はウイルスが侵入して直ちに反応する自然免疫と、遅れて反応する獲得免疫があり、感染することにより生じる獲得免疫だけを考えると集団免疫閾値が高くなり、予想される死者の数も多くなる。獲得免疫は免疫記憶を有しており、同じ病気には2度はかからないか、罹っても軽くて済む(ワクチンは獲得免疫を利用する)。一方、自然免疫は病原微生物の種類に関係なく素早く反応できるが免疫記憶は有していない。しかし、BCG接種などで本来の病原菌とは関係ない病原微生物に対する自然免疫反応が強くなる現象が報告されている(訓練免疫とも呼ばれている)。仮に集団免疫閾値が60%であれば、自然免疫と獲得免疫を合わせた免疫力と他の遺伝的要因とを合した病原微生物に対する総合抵抗力を、集団の60%の人が獲得していれば良く、感染し獲得免疫を有する人が60%に達する必要は全くない。・・・

 おそらく、複合要因の組み合わせの結果COVID-19に関しては欧米人よりはアジア人の方が感染も少なく重症化も少ないのではと考えられるが、将来生じる新たな感染症に関しては逆になることもあり得る。・・・ 

 このように、COVID-19は、日本を含むアジアの人々にとっては当初考えられていたほどの脅威はないかもしれないが、今後強毒化する可能性もあるので油断は大敵である。・・・
 世界は協調しなければ新型コロナウイルス感染症を克服することは出来ない。・・・
 今こそ、『地球市民』としての自覚と、『相手の立場を尊重し、信頼し、助け合う、連帯と協調の精神』が重要だ。」

 ここで、「重症化は免疫の暴走であるサイトカインストームで起こる」ことが示されている。言いかえれば、重症症状は直接ウイルス感染により起きているのではなく、ウイルス侵入によりわれわれの免疫システムが過剰に反応し、暴走を起こして起きている症状ということになる。

 平野氏は、別途「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はサイトカインストーム症候群である」という論文を日本医師会のHP上で公開し、そのメカニズムを詳しく説明している(2020年5月28日)。

 この論文の冒頭には次の記述がある。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARS-CoV-2ウイルスにより引き起こされる感染症である。
 約80%の感染者は無症状か軽症で経過するが、約20%は重症肺炎となり、そのうち30%は致死的な急性呼吸促迫症候群(ARDS)となる。
 現時点で有効な抗ウイルス薬や、ARDSに対する確立した治療方法はなく、1日も早い治療薬の開発が望まれる。
 SARS-CoV-2はACE2を受容体として感染し、自然免疫系とAngII-AT1Rを介して、NF-kBとSATA3転写因子の活性化を誘導する。STAT3はNF-kBの活性化を増強することにより、IL-6などの炎症性サイトカイン産生を増強する。
 この増幅回路はIL-6アンプと呼称される。関節リウマチなどの慢性炎症性疾患発症に重要な役割を果たし、抗IL-6受容体抗体トシリズマブはこれらの疾患の治療に有効である。
 COVID-19に見られるARDSは、サイトカインストームにより生ずると考えられる。CAR-T治療における致死的な副作用であるサイトカインストームに対して、抗IL-6受容体抗体トシリズマブは有効である。
 本論文では、サイトカインストームがIL-6アンプの活性化により生じていることを考察するとともに、抗IL-6受容体抗体トシリズマブや、AngII-AT1R阻害薬のCOVID-19治療への可能性について言及する。」

 このあと本文が続くが、あまりに専門的になるのでここでは割愛するとして、最後のまとめだけを見ておくと、次の様であり、新型コロナウイルス感染症重症化のメカニズムが理解され、対処法も出てきていることから、死者数の減少が期待できるのは朗報である。

 「このように、ウイルスや細菌感染のみならず外傷により引き起こされる肺の損傷はACE2-AngII-AT1Rシグナルを活性化するとともに、自然免疫系を活性化し、その結果としてTNFα/IL-1β-NF-kBとIL-6-STAT3が相乗的に働きIL-6 アンプ活性化を介して制御されないサイトカイン産生を誘導してサイトカインストームに至ると考えられる。 したがって、COVID-19に見られるARDSの治療にはIL-6-STAT3阻害剤やAngII-AT1R阻害剤が有効であると考えられる。 ただし、IL-6などのサイトカインは抗ウイルス活性があるので、感染初期に投与すると逆効果になると考えられるので、投与時期は血中IL-6濃度やD-ダイマーなどの組織損傷マーカーなどを指標に慎重に選ぶ必要がある。これらの阻害剤はウイルスや細菌のみならず外傷などで引き起こされるサイトカインストームが原因のARDSはもちろんのこと腎機能不全など他の臓器不全にも効果が期待できる。」 

 この論文の内容は、専門用語が多くただちに素人には理解できる内容ではないが、先に紹介した中央公論7月号の平野氏の記事にもサイトカインストームに言及した箇所があり、次のようである。こちらは専門家相手の論文ではないので、多少わかりやすくなっている。

 「・・・新型コロナウイルスに対する免疫が成立しても、一過性で長続きせず、集団免疫もワクチン開発も不可能となった時、最後の砦は治療薬である。また、この感染症の80%が無症状か軽症ですむことを考えると、致死的な急性呼吸器不全に至る重症肺炎を防ぐ有効な治療薬の開発が社会距離戦略を緩和し、社会活動を正常に戻すためにも大きな力となる。

 SARSウイルスが細胞に感染する(細胞に侵入する)には、細胞表面にあるACE2というタンパク分子に結合する必要があること(このようなタンパク分子をウイルス受容体と呼ぶ)、さらにACE2に結合するウイルス蛋白であるスパイク分子が細胞表面にあるタンパク分解酵素(TMPRSS2)で切断される必要があることがこれまでの研究でわかっていた。これらに基づき、新型コロナウイルスもACE2を受容体として、TMPRSS2依存的に細胞に感染することが超スピードで3月には明らかになった。これらの研究成果は治療薬開発の重要な基礎となっている。

 治療薬は大きく分けると2種類に分類可能である。1つはウイルスの増殖や細胞への感染などを阻害する抗ウイルス薬だ。新型コロナウイルスはRNAウイルスであることが明らかになっている。同じくRNAウイルスであるインフルエンザの治療薬として開発された ファビピラビル(商品名アビガン)や、やはりRNAウイルスであるエボラ出血熱の治療薬として開発されたGS-5734(同レムデシビル)などはRNAの増幅を阻害することにより新型コロナウイルス増殖を抑制することが期待されている。また膵臓炎の薬として開発されたTMPRSS2の阻害薬であるナファモスタット(同フサン)やカモスタット(同フオイパン)はウイルスの細胞侵入を阻害することが期待されている。これらの抗ウイルス薬は感染初期から中期に効果が期待できるが、後期に発生する急性呼吸器不全を伴う重篤な肺炎にはあまり期待できない。しかし、これらの候補治療薬が有効であれば重症者の数は減り、致死率も下がるだろう。

 もう1つは、致死的な呼吸器不全に至る「重篤肺炎」に対する治療薬だ。新型コロナウイルス感染症では、感染者の約20%が重症の肺炎になる。さらに重症肺炎になった患者の30~40%が急性呼吸器不全を伴う重篤な肺炎に陥り死に至る。時には全身の臓器が機能不全に陥る多臓器不全も生じる。もし致死的な急性呼吸器不全を阻止できれば、致死率は低下する。

 急性呼吸器不全や多臓器不全になると、これらの臓器の細胞が破壊される結果、呼吸器機能や腎臓機能などが失われる。このような重篤な肺炎は、新型コロナウイルスが引き金となってはいるが、実はウイルス自身が引き起こしているのではなく、体の免疫応答の暴走で起こる自己破壊的な現象である。これはウイルスなどに対して感染防御に働いているタンパク質サイトカインの1種であるインターロイキン6(IL-6:Interleukin-6)などの様々な免疫応答制御分子が爆発的に産生されるサイトカインストーム(サイトカインの嵐)により、患者自身の肺組織を自己破壊する現象だ。したがって前記の抗ウイルス薬は有効ではない。

 私自身は、1986年にIL-6を発見し、以来34年にわたりIL-6の作用の仕組みや、IL-6の異常でなぜ関節リウマチなどの自己組織破壊的な炎症性疾患が発症するのかを研究してきた。そして、IL-6が増幅される仕組みを解明し、このIL-6増幅回路(IL-6アンプ)の異常により関節リウマチなどの炎症性疾患が発症することを明らかにした。こうして、IL-6阻害薬のトシリズマブ(同アクテムラ)が関節リウマチに効果がある医学的根拠を明らかにしたのだ。関節リウマチは関節でIL-6アンプがじわじわと長期間にわたり活性化されている状態である。長年積み重ねてきたこれらの基礎研究の結果から、新型コロナウイルス感染症に見られる重篤な肺炎は、IL-6アンプの活性化が爆発的に肺で生じることによりIL-6をはじめ様々な炎症性サイトカインが過剰に産生されて引き起こされるサイトカインストームであることを提唱した論文を4月にアメリカの免疫学雑誌である『Immunity』に発表した。

 白血病の治療にCAR-T療法と呼ばれる非常に優れた治療方法があるが、この治療における重篤な副作用はサイトカインストームで生じることがすでに明らかになっている。特筆すべきことは、IL-6の作用を阻害する抗体医薬であるトシリズマブがCAR-T治療の副作用であるサイトカインストームに対して有効であるということだ。したがって、新型コロナウイルス感染症に見られる重篤肺炎はトシリズマブなど、IL-6の作用を阻害する薬剤で治療できる可能性がある。すでにアメリカや日本でトシリズマブをはじめ複数のIL-6阻害薬の臨床試験が進行中だ。これが有効であれば、重症肺炎で死亡する感染者の数は減り、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザ並みの感染症になる可能性もある。」

 サイトカインストームについてより分かりやすく説明がされているので、だいぶ理解が進んできたが、まだまだ難解なところも多い。そこで、平野氏のものではないが、COVID-19がサイトカインストームであることを、われわれ素人にもより解りやすく表現したYouTubeがあったので最後に紹介する。

 松田 学氏と田丸 滋氏(日本プラズマ療法研究会 理事長)の対談であるが、この中で田丸氏は次のように述べている。

 「・・・新型コロナウイルスは正式にはSARS-2(より正確には SARS-CoV-2)じゃないですか。SARSの遺伝子が20%変化したコロナウイルスで、もともとコロナウイルスは風邪ですから・・、ただ感染力が強い、それから悪性化しやすい。当時、中国の武漢の肺のCT画像がNHKでちょろっとでましてね。それ見れば、臨床の先生方だったらあの画像見れば一発でサイトカインストームを起こしているのはあたりまえの画像なんでね。・・・BS-NHKで夜の2時にアメリカのウイルス学者と日本の著名な先生方2人と、番組が硬くなっちゃうんで『パラサイト・イブ』を書いた作家さんと4人で対談する方式で1時間の番組だったんだけど、サイトカインストームがどうして起きるかというメカニズムの解明の話をしてるんですね、アメリカの細菌学者が。
 コロナウイルスが体に入ると、鼻腔と口腔で一番最初に闘いに行くのが免疫細胞の樹状細胞とマクロファージですが、負けそうになるとこの子たちが、下気道と肺にいる、俗にいう白血球、好食リンパ球とB細胞、T細胞が迎え撃つために、この子たちがインターロイキンというメッセンジャー物質を出すんですよ。サイトカインのひとつですね。
 ところがコロナウイルスはメカニズムは判ってないけれども、このインターロイキンを出させなくする。情報をもらっていない子たちの所に突然来るわけです。だから自覚症状がない、普通風邪だったら鼻水が出たり、のどがイガイガするじゃないですか。ここ素通りで行くんですね。で、こんど下の子ね、下気道とか肺で闘う子たちが情報なしに敵がくるんで、びっくりしちゃってインターフェロンを大量に発生しちゃうんです。それで免疫暴走、サイトカインストームを起こして重症化するというメカニズムですね。
 最初の免疫は自然免疫ですね。抗体で出るのはIgAなんで、抗体検査したってここで勝っちゃった人は抗体が出ない。獲得免疫持ってませんから、IgMもIgGも出ない。・・・」(YouTubeからの文字起こし筆者)

 と、平野氏の専門的な論文とはまた違って、われわれ素人にも直感的に解りやすい表現になっている。皆さんはどうだろうか。

 新型コロナウイルスは、見方によっては単なる風邪のウイルスという言い方もできるが、細胞の免疫機能を破壊し、その働きを妨げるという側面を併せ持っている点で単なる風邪コロナウイルスとは異なっているようである。
 自然免疫が十分強く、こうした新型コロナウイルスを初期段階で撃退できる若者や、あるいは老人でも免疫力の強い人たちには単なる風邪で済んでしまうのだが、高齢でまたは基礎疾患などがあり自然免疫力が弱く、ここを突破されると、獲得免疫が働き始めるよりも先に、サイトカインストームという免疫暴走症状を起こして重症化や重篤化をひき起こす。
 これは以前専門家が言っていたことであるが、新型コロナウイルスは、やはり厄介なかつ悪意のある”よくできた”ウイルスなのだという表現に妙に納得するのである。
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