WHO(世界保健機関)から最近重要な発表が続いて行われている。最初のニュースは次のようなもので、BBCはじめ各紙が報じていた。
「WHOは5日、世界人口の1割に当たる約7億8千万人がこれまでに新型コロナウイルスに感染したとの試算を公表した。WHOや米ジョンズ・ホプキンス大の集計で確認されていた累積感染者数の20倍以上にあたる。試算の根拠は明かさなかった。
同日の専門家らの会合で示した。緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は『困難な局面になりつつある』と語った。
5日時点のジョンズ・ホプキンス大の集計によると、世界の累計感染者は3,500万人。検査が不十分で全数が把握ができていないという指摘は以前からあった。」
確かに以前から、実際の感染者数は公表されている数値よりも大きいのではとの指摘はあったものの、WHOがこうした発表を行うのは異例であり、計算根拠が示されていないこともあり、その意図が測りかねるものである。
また、同様の内容について触れながら次のような発表も行われている。
「世界保健機関(WHO)は9日、過去24時間内に判明した新型コロナウイルスの新規感染者が世界全体で35万以上に達する過去最多を記録したと発表した。 死者数は6,339人だった。WHOの統計によると、世界規模での累計の感染者数はこれで3,636万1,054人で、犠牲者数は105万6,186人となった。 ただ、WHO当局者は実際の累計感染者数はより多いだろうとし、数倍の規模になる可能性があるとの見方を示している。 世界保健機関は1日当たりの新規感染者の最多更新について、欧州諸国を襲う第2波が人数を押し上げていると指摘。欧州地域全体での1日単位の新規感染者は今や、過去数カ月間、感染者増加の主因だった米国、ブラジルやインドを上回っていると説明した。」
ここでは累計感染者数は、公表値の20倍以上ではなく、数倍となっている。それにしても累計感染者数がWHOが推測しているように公表数値の数倍から20倍以上に達しているとすれば、現在の累計死者数から導かれる致死率は約0.14%~0.6%ということになり、季節性インフルエンザで0.1%~0.2%とされているで数値に近づき、新型コロナウイルスに対する脅威は大きく低下することになる。
もう一方の発表である欧州諸国の実態は、このところ目に見えた感染拡大が起きていて、追加的な制限措置が採られたり、再び都市封鎖が行われたりしているとの報道が相次いでいる。この点では新型コロナウイルスの脅威に対しては従来通りの認識に基づいた対応が採られようとしている。
フランスでは、「エマニュエル・マクロン大統領は14日、新型コロナウイルスの流行拡大を受け、パリなど9都市に夜間外出禁止令を発布した。これらの都市では17日から少なくとも4週間、午後9時から翌午前6時まで外出が制限される。
今回の制限で経済的な打撃を受ける企業には、政府から補助金が支払われる。
フランスで夜間外出禁止が発令されたのは、パリとその周辺のほか、マルセイユ、リヨン、リール、サン=テティエンヌ、ルーアン、トゥールーズ、グルノーブル、モンペリエの各都市。
全体で2,200万人に影響が出る見込み。期間は4週間とされているが、状況によっては6週間に延長される可能性もあるという。
また学校は授業が続けられ、日中であれば他地域への移動も可能。
これとは別に、個人宅に6人以上が集まることも禁止される。しかし大家族は例外だとマクロン大統領は説明した。
さらに直近の情報では、フランスで、2度目のロックダウン=都市封鎖が行われることになった。新型コロナウイルスの感染第2波が猛威をふるっているためで、再び市民生活は大幅に制限されることになっている。
フランスのマクロン大統領は28日夜、国民向けにテレビ演説し、30日金曜日から一部の海外領土を除くフランス全土で原則外出を禁止するロックダウンを行うと発表した。期間は12月1日までで、感染第1波の3月中旬に実施されて以来2回目となる。
フランスのマクロン大統領は28日夜、国民向けにテレビ演説し、30日金曜日から一部の海外領土を除くフランス全土で原則外出を禁止するロックダウンを行うと発表した。期間は12月1日までで、感染第1波の3月中旬に実施されて以来2回目となる。
外出は、自宅から1キロ以内の生活必需品の買い出しなど、必要最低限に限られ、飲食店も閉鎖されるという。春のロックダウンとは違い学校には通学できるとしている。
マクロン政権は2度目のロックダウンは避けたいと夜間の外出禁止などの措置を続けてきましたが、第2波の沈静化には至らなかった。」
マクロン政権は2度目のロックダウンは避けたいと夜間の外出禁止などの措置を続けてきましたが、第2波の沈静化には至らなかった。」
イタリアでは、「コンテ首相は18日、新型コロナウイルス感染拡大防止のための追加的な制限措置を発表するとともに、各市町村長に人々の集会を阻止するために公共広場を午後9時以降閉鎖する権限を与えた。
この日に報告されたコロナ新規感染者は1万1,705人と、過去最多を記録。コンテ氏は記者会見で『危機的』な状況だとした上で、政府はコロナ流行発生当初の3月に実施した大規模な封鎖措置の再導入を回避する決意だと表明した。
イタリアでは2月にコロナ流行が始まって以来、3万6,543人の死者が出ており、欧州では英国に次ぎ2番目に多い。
当局は2カ月間の厳格な全土封鎖措置を敷いた結果、夏までに感染第1波を概ね抑え込んだが、足元で再び感染が拡大。これに対応し、当局は公共の場でのマスク着用の義務や集会およびレストランに対する制限など、新たな措置を講じている。」
ヨーロッパの他の国での動きを見ると、新型ウイルス流行の第2波を受けて、各国政府が新たな制限を次々と発表している。
イギリスでは、「10月に入り、1日当たりの感染者数は1万人を超え、第1波を遥かにしのぐペースで増え続けている。幸いにも死者数の増加は限定的だが、感染者数の激増を受けてジョンソン政権は感染状況に応じて3段階に分けた都市封鎖(ロックダウン)を実施せざるを得なくなった。」
ドイツでは、「アンゲラ・メルケル首相は28日、連邦・州政府が新型コロナウイルスの再流行を食い止めるため、1カ月間にわたり部分的なロックダウン(都市封鎖)の実施を決定したと述べた。
感染拡大に歯止めをかけるため、全16州の首相が11月2日からレストラン、バー、フィットネスクラブ、コンサートホール、劇場を閉鎖することで合意した。」
オランダでは、「一部地域でロックダウンが始まり、カフェやレストランが休業している。また、医療機関の逼迫を受けコロナ患者をドイツの病院に移送した。オランダはコロナ禍に見舞われていた3─4月にも患者をドイツに移送していた。 」
スペインでは、「北東部の人口750万人のカタルーニャ自治州では、15日から15日間、バーやレストランの営業がテイクアウトのみに制限される。ジムや文化施設では定員の50%まで、その他の店舗やショッピングセンターでは30%までに収容人数が制限される。
さらに、スペイン政府は25日、感染拡大を食い止めるため、ほぼ全土に再び非常事態を宣言した。午後11時から翌日午前6時までの夜間外出を禁止する。 」
チェコでは、「一部地域で13日から3週間のロックダウンが始まり、飲食店や学校が閉鎖されている。同国では過去2週間にわたって人口10万人当たりの感染者が581.3人と、欧州で最も感染率が高い状態が続いている。」
アイルランドでは、「15日夜から、他世帯の訪問が禁止される。ただし、育児支援などは除外となる。」
ポルトガルでは、「政府は15日から、6人以上の集会を禁止した。結婚式や洗礼式には50人まで参加可能だが、大学でのパーティーは禁止される。」
ポーランドでは、「14日、1日当たりの死者が116人と過去最多を更新。感染者も6,526人とこれまでで最も多かった。」
ベルギーでは、「政府は、現在の感染状況が続けば11月半ばには国内の集中治療室全2,000床が満杯になると警告している。」
といった状況である。
日本では、各種のGoToキャンペーンが実施され、また海外との往来再開の動きがあることと比べると、その大きな差を改めて感じるのである。
こうした状況の中、WHOは次のような、やはり異例とも思える声明を発表したと各紙が伝えている。
「集団免疫をあてにするのは『不道徳』=WHO事務局長が警告
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は12日、新型コロナウイルス対策として『集団免疫』を獲得する方法を排除した。
集団免疫は、ワクチン接種や病気が広範囲に広がることで、地域の大部分が病気への免疫を得たときに生じる。
新型ウイルスについても、ワクチンが開発されない場合は、自然に感染を拡大させるべきだと主張する人もいる。
しかしWHOのテドロス事務局長は、そうした対応について、『科学的にも倫理的にも問題がある』と述べた。
『歴史上、一度もない』
新型ウイルスの流行が始まって以降、世界の感染者は累計3,700万人を超えている。確認された死者は100万人以上に達している。
ワクチンは目下、数百種類の開発が進められている。いくつかが臨床試験に進んでいるが、国際的に承認されたものはまだない。
テドロス氏はこの日の記者会見で、新型ウイルスの長期的影響や、免疫反応の強度および期間については、不明なままだと説明。
『集団免疫は人をウイルスから守ることで得られるもので、ウイルスにさらすことで得られるものではない』と述べた。
また、『公衆衛生の歴史上、病気の発生や、ましてや世界的流行への対策として、集団免疫が使われたことはない』と話した。
テドロス氏はさらに、新型ウイルスに感染した人は多くの国で1割程度にとどまる様子という、血清検査(抗体の有無を調べる血液検査)の結果を説明。
『COVID-19を野放図に広がらせることは、無用な感染や苦しみ、死を許すこになる』と述べた。」
この声明の中でも、前記の「世界人口の1割」の感染について触れられているが、その推定根拠は血清検査であることが明かされた。どの程度の範囲の国々でこの血清検査が行われ、どのような結果であったか、詳細は示されていないが、こうした調査でPCR検査による陽性者の発見を補い、実際の感染者数を推定しているものと思われる。
ここで非難の対象となっている「集団免疫」政策は欧州では唯一スウェーデンが採用しているとされるもので、ドイツと英国では当初この集団免疫政策を採ろうとしたが、多くの批判にさらされて撤回した経緯がある。
WHOのテドロス・アダノム事務局長の批判はこのスウェーデンの政策への同調の動きに向けられていることになるが、最近、英国と米国でこの「集団免疫」獲得論が再燃していることに反応してのものと思われる。
そこで、この批判の対象となっている、スウェーデンにおける「集団免疫」政策の実態とはどのようなものか見ておこうと思う。
最近のスウェーデンの状況については、10月18日付けの「Daily新潮」が、「スウェーデンが『集団免疫』を獲得 現地医師が明かす成功の裏側」として伝えている。その一部を紹介する。
「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、ヨーロッパの多くの国がロックダウンを導入した際、スウェーデンはそれを回避した。その独自路線は当初から物議をかもし、死者数が増えると失敗の烙印を押され、自国のノーベル財団や医師からも批判された。
ところが、同国のカロリンスカ大学病院に勤務する宮川絢子医師は、『スウェーデン当局は、集団免疫を達成しつつあるという見方を発表しています。最近、若者を中心に陽性者数は増加傾向にあるものの、重症者数や死者数の推移が落ち着いたままであることも、その状況証拠になっていると思います。』と話す。・・・」
Johns Hopkins Univ.の公開情報を見ると、スウェーデンの感染者数と死者数の推移は次のようであり、宮川医師の話を裏付けている。
スウェーデンの累計感染者数推移(Johns Hopkins Univ.の2020.10.23 公開情報)
スウェーデンの累計死者数推移(Johns Hopkins Univ.の2020.10.23 公開情報)
記事はさらに次のように続く。
「・・・スウェーデンの人口は1035万人だから、6千人近い累計死者数は、絶対数として少ないとはいえない。しかし、人口4,732万人のスペインにおける3万2千人、同6,706万人のフランスにおける3万2千人、同6,679万人のイギリスの4万2千人とくらべ、多いわけではない。しかも、ロックダウンを実施したこれらの国が、いま感染の再燃を受け、再度のロックダウンを検討し、部分的にはすでに導入していることを思えば、スウェーデンに分があるとしか言いようがあるまい。・・・」
スウェーデンで実際に採用されたコロナ対策はどのようなものであったかを見ると。
「・・・スウェーデンでは、感染のピーク時にも国民生活にほとんど制限を加えなかった、と誤解している人もいるが、そうではない。宮川医師が説明する。『パンデミックが宣言された3月中旬以降、“50人以上の集会の禁止”が続いています。たとえば映画館は席を空け、50人以内になるようにして営業していますが、コンサートはほとんどが中止で、オペラなども開催されていません。文化系の職業に就く関係者のダメージは大きいです。10月1日から“500人以上”に緩和される予定でしたが、国内の感染拡大を受け、延期されました。また“高齢者施設への訪問”も、4月から禁止されていましたが、こちらは10月から解禁されています。』
集会の制限が象徴するように、スウェーデンの対策の肝はソーシャルディスタンスである。カフェやレストランは、営業を停止させられたり、自粛を求められたりせずにすんだが、『レストランでも間隔を空けて座るという対策が、来年夏まで延長され、立食形式も禁じられたまま。症状があれば自宅待機、という対策も続いています。しかし、マスクはほとんどの人が着けていません。マスクを優先してソーシャルディスタンスをとらなくなれば、そのほうが問題だ、という考えによるものです。』 周辺国のように、だれもが家に閉じこもる期間こそなかったものの、『3月から6月ごろまでは外への人出はすごく少なかった。7月に入って気候もよくなり、感染も収束してきて、夏休みは例年なら国外旅行する人が国内ですごしたので、国内は混雑しました。それに対しては、列車の座席が満席にならないように、予約時に配慮がなされたほかは、特に規制はありませんでした。いまは通常に近い状態と言っていいでしょう。』・・・」
スウェーデンの規制のあり方は、強制を伴うロックダウンは行わず、自粛要請にとどまった日本の対策と近いと述べている。
日本との対策の違いについては、宮川医師が次のように述べたとしている。
「『日本と大きく違ったのは、学校を休校させたかどうか、です。スウェーデンでは子どもが教育を受ける権利が重視され、家庭環境に恵まれない子どもが登校できなくなることで起きる弊害が考慮されました。一斉休校になれば、医療従事者の1割が勤務できなくなるという試算もあり、高校や大学は遠隔授業になっても、保育園や小中学校は閉鎖されませんでした。』・・・」
こうした政府の政策を国民がどのように受け止めているかについては次のようである。
「アンケートによれば、当局の対策は7割程度の国民に支持されています。死者数を見ず、陽性者数ばかり気にする国もあり、ノルウェーなども陽性者数が増えてかなり騒いでいて、そういう状況は日本にも見られます。死者数にフォーカスするスウェーデンとはだいぶ違います。・・・」
スウェーデンの新型コロナ対策について、現地からのレポートの他に、次の指摘も続いて紹介されている。
「・・・東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏は、 『スウェーデンの新型コロナ対策には、重要なポイントが二つあると思います。』と、こう説明する。『一つは、国家疫学者であるアンデシュ・テグネル氏が、しっかりと対策方針を立てて政府に助言し、政府はそれを最大限実践していることです。』
宮川医師の言葉で少し補足すれば、『ロックダウンには、はっきりとした学術的エビデンスがない。』というのが、テグネル氏の主張だった。
唐木氏の話に戻る。『対比されるのがイギリスのジョンソン首相で、最初はスウェーデンに近い緩い対策を打ち出しながら、世論に押されて方針を変更してしまいました。一方、スウェーデンは各国から非難されながらも、新型コロナの感染力がどの程度で、どんな人が感染し、どんな症状が出るのか、確認しながら対策していた。二つめのポイントは、国民が国の対策を支持したことで、対策方針をきちんと説明したことが、大きかったのではないでしょうか。』・・・」
「京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授が言う。『集団免疫を獲得してさっさと収束させるか、ワクチンや薬ができるまで自粛を続けるか。新型コロナはどちらかまで収束しませんが、医療崩壊しないかぎり、トータルの感染者数と死者数は変わらないと考えられます。そうであれば、生活を自制する期間が短いほど経済への影響は小さくてすみ、経済苦に悩まされて自殺する人などを含む、トータルの死者数を抑えることができます。ワクチン開発には時間がかかるでしょう。その間、経済がダメージを受け続けるなら、重症化しやすい人への感染を防ぎつつ集団免疫を獲得し、早めに収束させたほうがいい。』・・・」
スウェーデンの取り組みは「集団免疫」獲得を狙ったものと一般に考えられているが、必ずしもそうではないという宮川医師の言葉が続く。
「・・・『長期間の持続が困難なロックダウンは避け、ソーシャルディスタンスをとりながら高齢者を隔離し、医療崩壊の回避を狙ったのです。6月時点で、ストックホルムでの抗体保有率は20%程度でしたが、新型コロナに対し、感染を防いだり軽症化させたりする細胞性免疫が存在する可能性が次々と報告され、公衆衛生庁は7月17日、“集団免疫がほぼ獲得された”という見解を発表しました。これはいわば副産物です。』・・・」
スウェーデンでの新型コロナ対策では「集団免疫」が強調されているが、実際に採用した政策は、「医療崩壊」と「経済崩壊」とのバランスを考えたものということであり、その政策は成功しているとの認識が広がっているようである。
次に、ヨーロッパ主要国と、スウェーデンの感染者数と死者数の推移を比べて見ておこうと思う。スウェーデンの状況は他のヨーロッパ4か国比で、6月と8月に新規感染者の発生に特異なピークが見られるといった違いがあること、死者数の減少速度が遅いといった差が見らる。
スウェーデンとヨーロッパ主要国、アメリカ、日本の感染者数(上・橙色)、死者数(下・白色)の推移(2020.10.19日付けの Johns Hopkins Univ.公開情報から)
10月19日までの累計から算出した致死率を次表に示すが、スウェーデンの数値はイギリスと同程度であり、ヨーロッパの4か国の平均値5.2に近いものとなっている。
スウェーデンとヨーロッパ主要国、アメリカ、日本の致死率
(2020.10.19日付けの Johns Hopkins Univ.公開情報から筆者作成)
人口100万人あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移では、スウェーデンはやはり6月以降最近までヨーロッパ各国比で多かったものの、10月に入ってからは他国が増加を見せる中で、感染者数の急増は見られず、一部逆転が起きている。
人口100万人あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移(札幌医科大学HPのデータを基に追記)
人口100万人あたりの新型コロナウイルス死者数の推移にも、スウェーデンに際立った特徴は見られない。むしろ直近ではイタリア、イギリスではスウェーデンを上回る死者が出ている。
人口100万人あたりの新型コロナウイルス死者数の推移(札幌医科大学HPのデータを基に追記)
新型コロナへの感染者数と死亡者数を現時点で見ると、ヨーロッパ主要国との差は見られないということになる。
こうして感染者数と死者数をみてくると、他国とは大きく異なる政策を採ってきたと思われたスウェーデンでは、主要ヨーロッパ国と同レベルの被害状況であることが理解される。
では、もう一つの側面、経済への影響はどのようであったか。2020年第2四半期までの数値をヨーロッパ統計局が公表しているので見ておく。
その前に、経済崩壊については、10月15日、IMFは「世界、2025年までに2,900兆円の損失」という発表を行っている。深刻な事態である。
さて、2020年第2四半期のGDP前年比数値では、ユーロ圏全体で-15%、スペイン-22.1%、イギリス-21.7%、フランス-19.0、イタリア-17.3%、ドイツ-11.7% に対して、スウェーデンはー8.3%と比較的低水準にある。
ただ、同じ北欧のデンマーク-8.5%、フィンランド-5.2%という数字も見ておく必要があるだろう。
ヨーロッパ統計局の表から一部を筆者引用
先に引用した記事の最後には医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏の次の言葉が引用されている。
「スウェーデンは結果的に利口な対策でしたが、4~5月の時点ではわからないことだらけで、イチかバチかの側面があったでしょう。それに日本とは社会的背景も国民性も異なるので、日本も真似をすべきだったとは言い切れません。しかし、データが揃いつつあるいまは違う。冬に向けて第3波がやってきたとき、また緊急事態宣言、外出自粛や休業要請というのは合理的ではありません。ロックダウンをしなくても収束に向かい、集団免疫も得られることが、スウェーデンのデータからわかるし、そもそもこのウイルスは、日本人には大きな脅威にならないことがわかっている。外出自粛で感染防止に執心するだけでなく、たとえばステイホームの結果としての孤独が、自殺が増えるという最悪の事態に発展していることも考えるべきです。」
こうした事実や指摘を見ると、WHOからの発表、「約7億8千万人がこれまでに新型コロナウイルスに感染したとの試算」と「集団免疫批判」は、何を意図して行われたものだろうかと思えてくるのである。