軽井沢からの通信ときどき3D

移住して11年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

難しい話

2025-03-07 00:00:00 | 日記
 リタイアし、のんびりと余生を過ごせばいい身分になったはずであるが、現役時代に思い描いていたのとは違って、いまだにあくせくとしている。世の中の出来事が、これまで以上に気になるからだと思っている。

 それにしても難しい話が多い。世界的な話題としては、やはり戦争のことが一番気がかりである。戦争は殺戮であって、人類の歴史はその戦争の歴史でもあるが、一方で人類が最も大切にしなければならないのは人の命であるはずである。

 ヨーロッパでの出来事とは言え、日本も無関係ではいられず、西側と共にロシアへの制裁に日本も加わっている。

 日本の問題では、難しい問題は拉致被害者についてだと思う。日本で拉致被害者の帰国を待ち望んでいた親世代は次々と亡くなり、今はもう最後の一人を残すまでになってしまったという厳しい現実がある。

 トランプ氏がアメリカ大統領に就任してからは、ガザ地区で停戦が実現し、ロシアのウクライナ侵略についても停戦が実現しそうな空気が一時的にせよ流れている。

 トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談をして、トランプ氏は「長時間にわたる、とても生産的な電話会談を行った。まず、ロシアとウクライナの戦争が引き起こしている大勢の死を止めたいという考えで一致した」とSNSに投稿したと報じられている。

 さて、先日2月24日で、ロシアによるウクライナ侵略開始から3年が経過した。当ブログでは2022年3月1日から、このウクライナ問題について、購読紙に日々掲載される記事の見出しだけを拾い集めて、2024年1月2日まで記録してきた。

 いつか、ウクライナに平和が訪れ、避難していた人々が自宅に戻ることができたというニュースに接することができるだろうと思って、その日まで続けようと思っていたが、長引く戦争はついに3年を過ぎてしまった。

 改めて、2022年2月24日から2月27日までの購読紙の記事を採録すると次のようである。 

***********************************
2022年2月24日
・米大統領「侵攻の始まり」 ウクライナ ロシア制裁 欧日と 外相・首脳協議 中止に
・プーチン氏、軍事介入示唆
・ロシア 進軍どこまで 首都攻撃の可能性 報道も
・日本 米欧の対応を見極め
・首相と米国大使 広島訪問見送り ウクライナ情勢悪化で
・ウクライナ危機 ロシア、中南米と連携加速 対米交渉 有利に進める狙い 極超音速ミサイル
 配備の恐れも
・「平和維持を曲解」 国連総長 ロシア軍派遣批判
・トランプ氏、「独立」承認評価 「プーチン、なんて賢いんだ」
・「状況 アフリカ史と重なる」 ケニア大使安保理演説 分割の経緯 引き合いに
・論考 制裁 これまでにない影響 駐ジョージア・駐カザフスタン元米大使
 ウィリアム・コートニー氏
・在日ウクライナ人「戦争反対」 ロシア大使館近くで抗議

2022年2月25日
・露、ウクライナ侵攻 首都・主要都市攻撃 多方面から 40人以上死 米欧強く非難
・G7、追加制裁確認へ 首脳会議 日本政府きょう発表
・日米欧の結束 試される
・政府、邦人保護に注力 サイバー攻撃を警戒
・原油急騰 100ドル突破
・米制裁 効果未知数 「金融」・ハイテク規制へ 安保理、無力さ露呈 会合中に作戦、
 欧州など即座に非難■中国 直接批判せず
・露、外交に見切り ウクライナ侵攻 対米欧「勢力圏」確保図る
・軍事介入繰り返す NATO接近を阻止
・【社説】ウクライナ侵攻 ロシアに暴挙の代償払わせよ 国連憲章踏みにじる重大な挑戦(読売)
・【社説】ロシアのウクライナ侵攻 秩序と民主を侵す暴挙だ(朝日)
・北方領土交渉 振り出し ウクライナ侵攻 露、包囲網に反発必至
・与野党 非難相次ぐ
・露、ウクライナ侵攻 破壊された平和(写真)
・プーチン大統領演説要旨
・バイデン大統領声明全文
・仲介外交 独仏頓挫 「説得力 過信」指摘も
・NATO「露、侵略選んだ」 緊急会合 東欧の防衛強化急ぐ
・軍事力 露が圧倒 予算10倍 最新兵器投入
・米政権に試練 制裁以外 打つ手乏しく
・ウクライナ徹底抗戦へ 大統領 戒厳令、露と断交
・分析 ウクライナ危機 露の軍事行動 止めるのは困難 ベルギー王立国際関係研究所
 スベン・ビスコップ教授
・追加制裁 国内注視 大手3行など ロシア向け与信1兆円
・露侵攻 原油急騰 一時100ドル突破 供給停滞 高まる懸念
・ロシア株 一時50%安 追加制裁に警戒 国債売りも加速 リスク回避 円高進む
・日米、石油備蓄再放出を検討 他国との連携 視野
・船舶戦争保険 値上げへ 損保大手 ウクライナ周辺
・論点スペシャル 露のウクライナ侵攻 どう見る プーチン的世界観 背景 日本国際問題研究所
 理事長 佐々江賢一郎氏、冷戦後秩序への挑戦 笹川平和財団主任研究員 畔蒜泰助氏
・日本から平和祈る 「戦争いらない」
・未明の街 爆撃音 露、ウクライナ侵攻 首都混乱 おびえる市民
・「欧州のパンかご」◆キエフ・バレエ団
・「プーチンのせいだ」 西部の街リビウ 押し寄せる避難者
・英「傍観せぬ」、仏「連帯を」
・偽情報発信 今後本格化か 日大危機管理部教授 小谷 賢氏
・欧米の制裁 脅威ではない ロシア・政治情報センター所長 アレクセイ・ムヒン氏
・別の形でも欧米に圧力 笹川平和財団主任研究員 畔蒜泰助氏
・バイデン・米大統領 「ロシアにさらなる代償を」
 ゼレンスキー・ウクライナ大統領 「慌てないで 私たちは強い」
 プーチン・ロシア大統領 「我が国 最強の核保有国」
・壊された日常(写真)

2022年2月26日
・露軍、キエフ到達 ウクライナ首都陥落危機 ミサイル攻撃も 政権早期転覆狙う
・警報 地下で息潜め リビウ
・対露ハイテク輸出規制 金融も 日米欧、追加制裁
・NATO、東欧増派協議 首脳会議
・経済安保 体制整備へ 法案 閣議決定 技術流出を防止
・貿易・金融 露に圧力 日米欧など追加制裁 実行性疑問の声も
・G7がプーチン非難 首脳声明
・駐日米大使 G7連携の必要性強調 「国際社会 侵攻支持せず」
・中国、東シナ海で上陸訓練 米けん制か 新型揚陸艇を展開 現地報道
・中国海警船4隻 尖閣領海に侵入
・露軍、首都を挟撃 ウクライナ侵攻 南部・北部も制圧地域拡大 戦力圧倒 短期決着図る
・【社説】ウクライナ侵略 原油高の悪影響を最小限に(読売)
・東アジア安保 影響懸念 ウクライナ侵攻 政府、中国と台湾 念頭
・「侵略しないための9条」 共産・志位氏に反論相次ぐ
・ウクライナ侵攻 日常 はぎ取られて(写真)
・バイデン大統領記者会見要旨
・NATO 増派で板挟み 東欧地域 露への刺激を懸念
・印首相「暴力即時停止」 電話会談 露大統領に要請
・避難民 隣国が支援 ウクライナ侵攻 わずかな荷物 徹夜で続々 ポーランド、食事・医療提供
・露60都市で侵攻抗議 1800人超拘束
・分析 ウクライナ危機 8年間の西側の支援「失敗」 英国立防衛安全保障研究所
 ニック・レイノルズ リサーチアナリスト
・露の報復 製造業警戒 政府追加制裁 レアメタル輸入 滞る恐れ
・JT、ウクライナ工場停止 「キャメル」など製造
・ガソリン補助拡充へ 来月から1リットル最大25円
・欧州天然ガス 6割高 露からの供給不安拡大
・株500円超上げ
・日本郵便 荷物の引き受けを停止 ウクライナ宛て
・視点 ウクライナ危機 プーチン氏 無謀な賭け 露中心 秩序再構築狙う 名古屋外国語大学長
 亀山郁夫氏
・IPC、露非難
・欧州CL決勝 露で開催せず フランスに変更
・首都 市民パニック ウクライナ侵攻 早朝に爆発音「絶望的」

2022年2月27日
・キエフ攻防 激化 ウクライナ 市街戦 民間にも被害 露軍、南部都市制圧
・停戦協議 調整難航か プーチン氏 揺さぶり 露ウクライナ
・空襲警戒 静まる夜 リビウ
・米欧、露大統領に制裁 異例の資産凍結 外相にも 「暴君の仲間入り」 「無能表す」露は反発
・対露経済制裁 日本も決定
・大国の横暴 安保理無力 中国は棄権
・安保理の決議 否決 侵攻非難 露が拒否権行使
・G7外相 対露協議へ オンライン
・首都死守へ抗戦 ゼレンスキー氏強気崩さず ウクライナ
・露侵攻作戦 遅滞か 包囲「政権自壊」待つ戦術も
・ウクライナに寄港中止へ 日本郵船
・解説 ウクライナ侵攻 NATO接近 露が警戒 クリミア奪還の動き 引き金 歴史や文化
 「兄弟国家」、国際秩序打破 武力で挑んだ
・対露制裁 「決済網排除」賛否割れる 米英積極 資源依存 独など慎重
・NATO 東欧防衛強化
・ポーランドへ長い列 リビウ ガラリ緊迫
・分析 ウクライナ危機 中露接近 侵攻を後押し 米ハドソン研究所政治軍事分析センター
 リチャード・ワイツ所長
・人影消え 響く銃声 ウクライナ 緊迫の首都 邦人記者語る 「状況 世界に伝えたい」
・日本各地で抗議集会
・ウクライナ侵攻 「安全圏」のはずが シェルター整備■献血に人殺到
・ロシアとNATO 深い溝の訳は
・非難決議案「提案国」異例の多さ
・国境付近 大量の地上部隊 キエフ制圧に向けた準備か(衛星写真)
・【社説】ウクライナ侵攻 撤兵求める国際圧力を(朝日)
・【社説】ウクライナ侵攻激化 市民の命 これ以上奪うな(信濃毎日)
・古都 響く警報 漂う不穏 ウクライナ11万人国外避難 西武リビウ「安全な場所なくなった」
・米欧、プーチン氏に制裁 国際決済 ロシア締め出し現実味 強硬論台頭
・ゼレンスキー氏「国を守る」首都離れず
・揺れる国際秩序 ウクライナ危機 視線の先に中国の動き 日本政府 制裁で欧米と歩調
・中国の軍事的圧力に直面 台湾への波及 議論が活発化
***********************************

 続いて、3年が過ぎた今年2月24日から2月27日までの購読紙の見出しを見ると次のようである。

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2025年2月24日
・ウクライナ
 侵略3年 見えぬ停戦 民間人1万2300人死亡
・侵略3年
 兄が「父」に、抗戦 揺らぐ世論、対露貿易縮小、家族の苦悩・決意、戦闘の構図 変化、露の街 並ぶ墓碑、無人機産業 育成、制裁 欧州に誤算、選手らに深い傷、葬送の調べ 連日
・ウクライナ侵略3年
 ヤルタ会談再現 露狙う
 母亡くし兄が「父」
 自由・平和 守る覚悟は 欧州総局長 尾関航也
・スキャナー
 ウクライナ 侵略抗戦3年 揺らぐ世論 領土妥協容認 広がる
 米露首脳会談 見通せず 露、制裁緩和要求か
・【社説】ウクライナ侵略
 プーチン氏に勝利与えるのか 法の支配と主権平等の堅持を
・続く制裁 対露貿易縮小 日本へのLNG米が逆転 インフラ復興へ日本の技
・物価高のきっかけ
・ウクライナ侵略3年
 「子供たち」の未来 守る 「お兄ちゃんは世界一」
 変わる家族 苦悩と決意 幸せ 2人ならみえる 露の攻撃 右腕・視力失う
 露側プロパガンダ 離れた心 クリミアの父と
 国外避難 妻とすれ違い
 アプリ活用 結婚促進
 ウクライナで結婚が減り、離婚が増えている
・ウクライナ侵略3年
 露西部 ウクライナ後退 参戦の北兵士 死傷4000人超か 人海戦術・東部で進軍
 変化する戦闘の構図
 露、核の使用要件緩和
・中国、和平交渉関与望む 欧ウクライナに接近も
・西武ニジニーノブゴロド露軍需の街 増える墓碑 
 前線いた兵士「早く停戦」
・戦後復興 米中対話の余地 
 中国社会科学院 ロシア東欧中央アジア研究所研究員 李勇慧氏
・キーウ:無人機産業 官民が一体 反攻へ育成 
 国内生産4000機➡400万機に 西側諸国への期待 低下
 キーウ国際社会学研究所 アントン・フルシェツキー所長
・公正な和平 日欧協力を
 EU・ポーランド駐日大使 共同寄稿
・英仏首脳 停戦巡り訪米へ トランプ氏と一致点探る
・トランプ大統領 支持率低下 官僚改革、物価高で反感
・対ロシア制裁 欧州の誤算
 打撃受けず、天然ガス、原油高、停戦交渉

2025年2月25日
・拙速な停戦合意 懸念 ゼレンスキー氏 欧州首脳と連帯
・石破首相 ウクライナ関与 必要性強調
・ウクライナ侵略3年
 停戦への道3⃣ 「安全の保証」大国が翻弄
 「ブチャの魔女」奮い立つ 「人は2度殺されない」
 涙 笑顔 積み重なり
 活躍に感化 魔女に新顔 防空部隊 64歳も 夫を殺され 次こそ前線で
・米露交渉チーム 今週末会合 ウクライナ停戦向け サウジで開催か
・ドイツ政権交代へ 総選挙 中道右派第1党 強硬右派倍増
 首相候補 対露強硬派 メルツ党首 長射程 供与前向き
・警察チーム1万人救助 22年結成 戦況悪化 ドネツク州で
・西側支援総額42兆円 米4割、今後は停滞可能性
 米国1141.5臆ユーロ、ドイツ282.9、英国148.1、フランス142.9、日本105.3、
 オランダ96.7、デンマーク91.8
・西部では投資活発 ジェトロ キーウ事務所 柴田 哲男 所長
・鉱物権益譲渡 米に不満 ゼレンスキー大統領 「安全の保証」要求
・米「紛争終結」決議案 ウクライナ侵略 露批判避ける 安保理
・深層NEWS 「トランプ氏は 相手に不信感」

2025年2月26日
・米、露撤退決議に反対 ウクライナ侵略 欧州と亀裂 国連総会
・ウクライナ侵略3年
 停戦への道4⃣ 欧州安保 迫られる自立
 兵士の遺体 続く検視 キーウ
 激しい損傷 身元特定困難 それでも対面望む家族 医師は勧めず
・ウクライナ侵略
 米露が接近 揺らぐ秩序 衝撃の反対票 「包囲網」に異変 「米国第一」
・トランプ氏 前政権方針と「決別」
・日本「現状変更」認めぬ構え
・機雷対処演習に海自参加 昨年9月、黒海で 米ウクライナ主催
・併合地 米と共同開発 プーチン氏 呼びかけ ウクライナ4州 鉱物資源
・「今年中に停戦」 駐日大使が期待 ウクライナ
・深層NEWS 「米欧の亀裂は深刻」

2025年2月27日
・米に鉱物権譲渡 合意へ ゼレンスキー氏28日訪米  協定署名見通し 
 欧米メディア報道
・米露外交団協議 トルコで27日に
・インフレ深刻・GDP減速予測 露経済 戦争依存ひずみ
・外国企業復帰に期待
・トランプ流 高圧的取引 鉱物権益譲渡 合意へ ゼレンスキー氏 妥協応じる
・平和維持部隊構想を議論 トランプ氏、プーチン氏と
・深層NEWS 協定「軍事的抑止」指摘 
***********************************

 米国のトランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2月28日、ホワイトハウスで会談した。ウクライナの鉱物資源を共同開発する協定の合意に向けて進むかに見えたが、会談の後半一気に雰囲気は変化してしまった。
 
 きっかけは、バンス副大統領の発言であったが、これにゼレンスキー氏がかみつく形になった。

 このやり取りはその後TVニュースで放映され、世界中に配信されたが、新聞紙上でも、主なやり取りとして、次のように紹介されている。

・バンス氏・・・平和と繁栄への道とは、外交に関与することだ。
・ゼレンスキー氏・・・2019年に仏独の首脳も交えてロシアと停戦で合意したが、破られた。
 外交とは一体どういう意味か。
・バンス氏・・・あなたの国が破壊されるのを止めることだ。そのような訴えは失礼だ。
・ゼレンスキー氏・・・米国も問題を抱えている。(欧州との間に)海があり、今はわからないかもしれないが、将来感じることになる。
・トランプ氏・・・あなたは我々に指図する立場にない。あなたには切ることができるカード(切り札)を持っていない。
・ゼレンスキー氏・・・カードで遊んでいるわけではない。
・トランプ氏・・・遊んでいる。数百万人の命と第3次世界大戦を賭けたギャンブルをしている。
・トランプ氏・・・今すぐ停戦すれば、銃弾が飛び交うのは止まり、ウクライナの人々が殺されることもなくなる。
・ゼレンスキー氏・・・戦争を止めたいが、「安全の保証」とともにと言っている。
・トランプ氏・・・あなたが取引をするか、我々が手を引くかのどちらかだ。我々が手を引けば、ウクライナは戦い抜かなければならない。

 この激しいやり取りの結果、ゼレンスキー氏は鉱物協定に署名せず、共同記者会見は中止され、アメリカを去ることになった。

 欧州に戻ったゼレンスキー氏は、各国首脳に暖かく迎えられたようであり、ウクライナ情勢をめぐり、イギリス・ロンドンで2日、ヨーロッパの首脳らによる会合が開かれた。各国は、ウクライナとともに停戦計画を作成し、アメリカと再協議を進めることで合意した。 

 アメリカとの協議が再開されたとして、どのような合意に至るであろうか。鉱物資源に関する協定は、2国間で合意すれば済む話であるが、長期にわたるウクライナの安全の保証はロシア抜きには語れない。トランプ大統領と言えども簡単に約束できるものではない。

 欧州は将来ウクライナのNATO加盟を認める方向であるが、ロシアは勿論のこと、アメリカも和平交渉を進めようとする今の段階ではロシア寄りの立場をとっていてNATO加盟反対の姿勢を貫いている。どのような合意の可能性があるのだろうか。トランプ大統領にこの難しい局面を解決する秘策があるのだろうか。





 
 

 
 
 

 
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いつの日か、ふたりは恋人

2025-02-28 00:00:00 | 日記
 昨年12月中旬に、Tさんの秘書Aさんからメールが届いた。新年になったら軽井沢の書店でTさんの初の小説「いつの日か、ふたりは恋人」の出版を記念してトークショウを開く予定だという。その案内である。

 早速、出席の旨返事を書いた。その後、トークショウが終ってから、近くのホテルで食事会を行うとの案内が追加されてきたので、こちらにも出席の返信を送った。

 ところが、私は新年早々風邪をひいてしまい、咳が止まらず、そのうち熱も出てきたので、安静にしている日が続いた。何とか書店でのトークショウと食事会に参加して、この小説の出版のお祝いをしたかったし、Tさんのこの小説についての想いを改めて聞きたかったので、それまでに風邪を治しておきたいと思っていたのであった。

 でも、熱はなかなか下がらず、咳もおさまる様子がなく、結局どちらのイベントも断らざるを得なくなってしまった。

 この小説の内容については、かねてTさんから繰り返し聞いていたし、すでにポケット・ブック版としてTさんの経営(多分)する出版社から出された本をいただいて読んでいた。

 ただ、Tさんはこの本を大手出版社から世に送り出したいと考えていたので、そのために、内容にもボリュームにも手を加えなければならないと考えているようであった。

 トークショウに行けなかったので、後日書店に行き、カフェコーナーの入り口脇の書棚の上に積まれているこの本を買って帰り、読んでみると、やはり内容は大幅に書き換えられていた。著者名も、以前はペンネームであったが、今回の本にはTさんの本名が使われていた。

 また、ハードカバーになって出版されたこの本のカバー表紙の絵も本文中にちりばめられた大小20枚の挿絵も素敵で、帯には山極壽一(第26代京都大学総長)氏の推薦の言葉が記されていた。

 帯には次のように書かれていて、これを読むと本の内容がだいたい分かるのではと思う。

 *******
 唯一無二の恋愛小説
 *******
 恋愛とは個人的な事柄である。でもこの本には耳を傾けたくなる愛の物語がある。一時代昔の愛と社会の掟との葛藤、そして生きる力、命の本当の意味へと突き抜ける宇宙の真実。山極壽一(第26代京都大学総長)
 *******
 パンスペルミア説(宇宙汎種説)を生命存在の前提として語りかける、唯一無二の恋愛小説。
 *******
 本書は、3章が重なり合うように構成された恋愛小説である。各章は春から夏、秋から冬と変遷する。第1章は「この世」の話。高校1年生の初恋から学生結婚そして大学卒業直前の離別までを主人公が語る。第2章は既に他界した恋人が大1章を読み、「あの世」から主人公に自分の心を語る手紙。第3章は「仮の世」のブータンでの再会。恋人は小鳥となり「あの世」から「この世」を仮訪問する。
 ふたりは、ブータンの友人と人間哲学と宇宙を語り、酔生夢死を過ごす。
 *******

今回出版された本(左:2024年11月30日発行)と、以前ポケット版で出版された本(右:2021年7月7日第二版発行) 

 本文中と表紙(カバー表紙も)の挿絵は、三浦 慎氏による。氏は、建築家であり、2021年、軽井沢町庁舎改築周辺整備事業プロポーザルで最優秀提案者(庁舎、複合施設計画・株式会社山下設計と協働)に選ばれている。

 著者の所源亮氏については、この本の「著者紹介」に次のように詳しい自己紹介があるので、これを引用させていただく。

 「所 源亮(ところ げんすけ)
東京都大田区大森で農林省官僚所秀雄と、大正、昭和を風靡した雑誌『令女界』と『若草』を世に出した藤村耕一の長女所やなぎの子として1949年2月22日に生まれる。父が在アメリカ合衆国日本国大使館に赴任したのに伴い、小学校3年からワシントンD.C.(アイゼンハワー政権とケネディー政権)に移り中学校1年まで暮らす。1972年一橋大学経済学部卒業。
1972年イースタンハイブレッド入社。1976年パイオニア・ハイブレッド・インターナショナル社のアジア担当としてフィリピン、タイ、インド子会社の代表取締役を務める。1980年から米パイオニア・ハイブレッド・インターナショナル社(現デュポン・パイオニア社)国際部営業本部長兼パイオニア・オーバーシーズ・コーポレーション取締役として市場開発(50ヶ国以上)及び海外戦略を考案実施。
1982年に帰国し、ソフトウエア会社などを設立したのち、1986年6社を合併しゲン・コーポレーションを設立し代表取締役社長に就任。1994年日本バイオロジカルズ社を設立し、代表取締役社長に就任。2009年に同社を日本全薬工業に売却。2001年創薬バイオベンチャーを設立し代表取締役社長に就任した。そのコンセプトに、「日本発のものを世界に」というメッセージを込めた。
2008年から2013年まで一橋大学イノベーション研究センター特任教授。2014年東京大学名誉教授の松井孝典、英カーディフ大学名誉教授チャンドラ・ウィックラマシンゲ博士とともに一般社団法人ISPA(宇宙生命・宇宙経済研究所)設立。サー・フレッド・ホイル博士が提唱したパンスペルミア説の研究を支援。
医薬開発技術ライセンス企業のGCAT株式会社代表取締役会長、ルフナ大学(スリランカ)客員教授、インドS.M.Sehgal財団理事、一般社団法人ISPA理事、前・西町インターナショナルスクール理事。」

 Tさんの本名が明かされたので、以下では所さんとして紹介させていただくことにして、この自己紹介には出てこないが、所さんは2021年に、軽井沢の旧軽井沢地区に喫茶コーナーを併設した書店「やなぎ書房」を開いた。これまでの経歴からすると、何故と思う行動である。この書店には、岩波文庫すべてと所さんが関心を持つ分野の書籍が集められ、販売されていた。

 この書店のことを知ったのは、ある出来事がきっかけで、それは、軽井沢にあった川端康成氏の別荘の解体であった。

 軽井沢文化遺産保存会のH女史から川端康成別荘が解体されそうなので、保存を求める請願書を町議会に提出したいとの相談が寄せられた。当時私は川端康成別荘のある地区の区会役員であったので、このことを区長に伝え、この請願書に区としても名前を連ねていただけないか相談したのであった。

 請願書は、軽井沢文化遺産保存会、軽井沢ナショナルトラスト、軽井沢別荘団体連合会、軽井沢女性会、軽井沢近代史研究会、そして旧軽井沢区の6団体の連名で軽井沢町議会議長宛、2021年8月6日に提出された。

 事態が差し迫っていることもあり、当時の藤巻町長が自ら不動産業者に電話をかけて、保存の可能性について打診をしているが、結果的には交渉は成立することなく、解体が進んでいった。

 ところが、この時同時に所さんがこの不動産業者と話を進めていた。所さんは不動産業者に解体を断念させるのではなく、解体部材の引き取りを交渉していた。そして相応の費用を支払うことで、将来部分的にでも川端康成別荘を再現できるように慎重に解体を進め、ほとんどの部材を引き取ることに成功していた。

 その噂を間接的に聞き知ったH女史とその知人のS女史の依頼で、やなぎ書房を訪ねたのが、所さんとの最初の出会いであった。S女史はこの時、近くオープンするサロン的なギャラリーを建築中で、その一部の窓枠に川端別荘の解体部材を再利用して用いたいと考えていて、様子を見てきてほしいと私が依頼されたのであった。

 書店に所さんを訪問すると、数名の女性店員と所さんがいて、喫茶コーナーでコーヒーをごちそうになりながら話を聞くことができた。川端別荘の解体部材は確かに確保されていて、軽井沢の氏の所有地に保管されていること、川端別荘からはそのほかに、現在までこの別荘を利用していた川端康成氏のご子息が保有していたロシア関係の蔵書なども引き取ったという話を伺った。これらの書籍はやなぎ書房の別室に置かれていたので、見せていただけた。

 この解体部材については、軽井沢文化遺産保存会との協議で、軽井沢町内に川端別荘の一部を再現する計画が持ち上がり、いくつかのプランが検討されたものの、現在までのところまだ実現には至っていない。その詳細は、軽井沢文化遺産保存会発行の「軽井沢の文化遺産&資料集 2」に報告がある。

 その後、所さんから「軽井沢の夜話」を開催するので、聞きに来ませんかとのお誘いを受け、都合4回ほど参加することになった。第1回目は当時千葉工業大学長で、東京大学名誉教授の松井孝典氏の講演「宇宙から俯瞰する人類1万年の文明、ウイルスはどこから来たのか」という興味深い題であった(2021.10.22 公開当ブログ参照)。

 第2回目以降も宗教の話、経済の話と続き、今回の小説「いつの日か、二人は恋人」の第3章と、注釈の内容につながる話題が計画的に提供されていった。

 ワインや食事を楽しみながらの楽しい「軽井沢の夜話」で、こうした場でも、主題の話の合間に、所さんの経験談が織り込まれ、そのなかには若き日の思い出が語られることも多かった。
 その後何回か所さんと会う機会のある度に小説「いつの日か、二人は恋人」の話題も出て。この小説には若き日の所さんの実際の経験が語られていることを知った。 

 小説「いつの日か、二人は恋人」に話を戻すと、第1章では所さんの若き日の体験が生々しく語られているのだと思う。第2章は、既に他界した恋人が「あの世」から主人公に書いた手紙という構成なので、これはフィクションの世界。第3章は、所さんの哲学が語られている。

 壮大な宇宙哲学の中に織り込まれた若き日の苦い思い出とともに、この世に私たちが生きる意味を考えさせられる稀有な小説ができあがった。 



  
 
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量子もつれ(2)

2025-02-14 00:00:00 | 日記
 「量子もつれ」という、とても不可思議で難解な話題についてのTV放送(2024.12.28, NHK)を見て、その中で紹介された科学者デヴィッド・ボームという名前に覚えがあったことから、学生時代に勉強した量子力学の本のことを思い出して、少し前に記事を書いた(2025.1.24 公開)。

 TV放送では、量子もつれが実在することを、実験的に証明した3人に、2022年のノーベル物理学賞が授与されたことを軸に話が進められた。

 この放送で伝えられたもう一つの話題は、この量子もつれの存在が明らかにされたことで、直ちに始まったその応用についてであった。具体的には、量子暗号技術、量子コンピューターの開発と量子テレポーテーションである。これもまたとても難解な話である。

 量子もつれを利用するためには、もつれ状態にある光子や電子などの量子を作り出さなければならないが、ノーベル賞を受賞した3人の科学者は一体どのような実験を行ったのだろうか。番組では彼らの実験内容の詳細までは紹介していない。

 それを知りたくて、「宇宙は『もつれ』でできている」(ルイーザ・ギルダー著、山田克哉監訳・窪田恭子訳 2016年 講談社発行)を購入して読んでみた。

「宇宙は『もつれ』でできている」のカバー表紙

 この本には、先のTV番組で紹介された量子もつれについての理論と実験研究の歴史がより詳しく描き出されている。監訳者は前書きで、この本のことを次のように紹介している。

 「本書の最大の魅力は、数式をまったく使うことなく、量子力学の構築に携わった物理学者たちがどんな考えやきっかけからどのような着想を得て、そしてどんな議論を通じてこの理論を精緻化していったかを、個々の人物のエピソードをふんだんに交えつつ、巧みに描写している点にある。・・・
 ルイーザ・ギルダーは、2000年にアメリカの名門・ダートマス大学を卒業した若い科学ジャーナリストだが、描写が実に巧妙で、往時の物理学者たちの会話を見事に再現している。存命の科学者たちへのインタビューも含め、20世紀初頭からの約1世紀におよぶ量子力学構築の物語を、まるで現場に居合わせているかのような迫力で体感させてくれる。・・・
 量子力学の理論としての正当性に難問を投げかけ、やがてその正当性を明確に示すことにつながった『量子もつれ』(Quantum Entanglement)。その奇妙でふしぎな現象は、アインシュタインやボーアをはじめとするあまたの物理学者たちの頭を悩ませ、時に人間関係をももつれさせながら、量子論の精緻化に貢献してきた。ギルダーが見事に解きほぐす『もつれの物語』を、ぜひ堪能していただきたい。」

 最初に量子もつれの実験を行ったジョン・クラウザーとスチュアート・フリードマンについて、ルイーザ・ギルダーは次のように書いている。

 「クラウザーは問題の核心から話し始める。『原子ビーム、これはかっこいい名前がついているが、実際にはごく単純なものだ。・・・
 もっとも簡単なのが、タンタル箔を用いた実験だ。タンタル箔を半分に折ってしわをつけたまま開き、そこに何か小さな粒をのせてガラス鍾(真空状態)に入れる。ガラス鍾に電流を流すと、タンタル箔は高温になる。銅、アルミニウム、カルシウムなどの融点の低い物質を入れてしばらくすると、すべて蒸発してチャンバーの壁じゅうに広がっているのが見える。穴の開いたシートを[オーブンの開け口の前に]置き、もう1枚穴の開いたシートを[最初のシートの前に]置けば、原子ビームのでき上がりだ!』
 チャンバー内の気体は、四方の壁に拡散せずに狭まってビームとなる。『簡単なつくりさ』 」

 これは真空中で金属を蒸発させる一般的な話だが、次は実際の測定装置での手順である。

  「クラウザーとフリーマンは、カルシウムを約14gの『小さな円筒状の塊』に切って、手を触れずにオーブン内に落とす。円筒形の真鍮製真空チャンバーに密閉されると、3時間から5時間でカルシウムは蒸発点まで加熱される。
 熱されたオーブンの穴から、カルシウム原子が・・・ビームとなって出てくると、装置の中心に向かってまっすぐ飛んでいく。ここで、二つめの円筒形真鍮製真空チャンバーの底面にはレンズが取り付けられており、そのレンズを通過した光線が、飛んでくる原子ビームを待ち受けている。こうして原子の一つ一つが励起され、薄緑色と紫色のもつれた光子を放出するのである。」

 もつれた光子がどのように発生し、どのようにして装置の中を反対方向に進むように調整できるのかまでは説明されていないが、波長の異なる光は、左右反対方向に進む。その光路にはブリュースター角に調整された多数のガラス板からなる偏光子が設置されていて、光電管に導かれる(次図参照)。


クラウザーの実験装置の内部(「宇宙は『もつれ』でできている」から、筆者作図)
 
 思いのほか私にも身近な部品や装置が用いられていた。真空装置の中に低融点金属を入れて、加熱することでガラス基板などに蒸着薄膜を形成する技術は、ごく普通に行われていて、入社後配属された研究所では、日常的に蒸着装置を使用していた。偏光板に至っては、勤務先の企業で製造していた。これらの偏光板は液晶素子やサングラスに用いられてきたし、今では液晶TVで大量に用いられている。

 クラウザー達の実験装置では偏光性能を向上させるために、有機フィルムの偏光板に換えて、ブリュースター角(約56度)に配置した多数のガラス板を重ねたものを使用した。

 装置の心臓部について見ると、真空中で加熱され、蒸気になって原子ビームとなったカルシウム原子に強い励起光を照射すると、カルシウム原子からもつれ状態になった薄緑色と紫色の光が放出される。実験装置は、この2色の光を左右に導き、ガラス偏光板を通して光電管に導く設計になっている。

 このようにして、カルシウム原子から発生した光子が、左右の光電管に向かった時、検出される光子の状態と頻度がベルの不等式を満たすかどうかの実験が行われた。結果はもちろんベルの不等式は成立せず、左右に分かれた後も、光子はもつれた状態を保っていたことが強く示唆される。

 ただ、この実験方法については一部の不備が指摘され、量子もつれの存在がより広く認められたのは、アラン・アスペの実験結果が得られてからのことであった。

 「(実験の現実的な問題点は)クラウザーらの実験装置の両端に取り付けられた、巨大で壊れやすいパイル型偏光子の設定を迅速に変更できない点にあった。アスペは美しい代替案を考えついた。その主な成分は水であった。・・・
 アスペは説明した。『それぞれの偏光子には、スイッチのついた設定装置に向きの異なる二つの偏光子を取り付けたものを使います。いつでもスイッチを切り替えて、一方の偏光子だけに光を通すことができます。スイッチは素早く入射光を切り替えるため、光速信号が装置の両端にいかなる〈相互的な関係〉も生じさせる時間を与えないのです。』・・・
 アスペの『スイッチ』は、水を満たしたガラス箱でできている。二つのスイッチは13m以上離れていて、光子の発生源となるカルシウムカスケードのビームの両側につけられている。水の入った箱は、人間の耳がとらえるよりもはるかに高域の音波(超音波)を伝える。・・・
 アスペの超音波は、水面に濃淡の縞模様をつける高振動と、水面を揺らさない平らな低振動を繰り返すよう設定してある。縞模様は回折格子として作用し、光を屈折させて脇にある偏光子に送る。縞模様がなければ光はまっすぐ透過して正面の偏光子に当たる。波は縞模様と平面の循環を素早く繰り返し・・・これは、光速信号が、二つのスイッチを隔てる13mの距離を進む間にスイッチを4回切り替えられることを意味する。・・・」

 こうして、量子もつれの存在が確認されると、さっそくその応用が考えられるようになり、TV番組でも紹介されたように、量子コンピュータの開発へとつながっていった。

 さらに、番組では紹介されなかったが、量子もつれなどの量子現象と生命とのかかわりについての研究も進んでいった。

 量子力学における波動関数を見出すとともに、量子もつれの命名者でもあった、シュレーディンガーは「生命とは何か」(1944年発行)の著者としても知られる。


「生命とは何か」のカバー表紙

 この著書で、シュレーディンガーは生命現象と量子力学との関係についても触れているのであるが、当時はまだDNAも発見されておらず、ましてや量子力学でなければ理解されないような生命現象というものもまだ認識されていなかった。

 ところが、近年になって生物の示す様々な行動の中には量子力学でなければ説明のつかないものがいくつも見いだされるようになっているとされる。

 著書「量子力学で生命の謎を解く」(ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・アクファデン著、水谷 淳訳 2015年 SBクリエイティブ発行)にはそうした研究成果がいくつか紹介されている。

「量子力学で生命の謎を解く」のカバー表紙

 このことは、以前アサギマダラの1000㎞以上におよぶ海を越えての渡りのことを書いた際に少し触れたことがあったが(2017.1.20 公開)、その時はまだ「量子もつれ」について何も知らなかったので、それ以上考えることもなかった。

 今回、以前よりも量子もつれに対する理解が深まってきたので、改めてこの本の示している内容について読んでみた。

 この著書のカバーには次のように書かれている。

 「量子力学はふつうだ。不気味なのは、量子力学が記述しているこの世界のほうなのだ。
 量子力学を使って生命現象の謎を解き明かす『量子生物学』は、現在、急速なスピードで発展し、大きな盛り上がりを見せています。量子生物学によって、これまでの生物学では解けなかった様々な謎が解明されてきています。・・・
 量子生物学が解明した謎と、大いなる仮説
 ●渡り鳥は、どのようにして目的地までの生き方を知るのか
 ●サケは、なぜ数年間の航海を経て、生まれた場所に戻ることができるのか
 ●植物は量子コンピュータなのか
 ●生物と非生物の違いはどこにあるのか
 ●われわれの意識はどのようにして生まれるのか
 ●生命の起源は何か 」

 生物の示す不思議な能力と、量子力学的でなければ説明できないそのメカニズムについて、この著書では上記の6例が示されているが、その中でもヨーロッパコマドリが示す、磁気受容能力は「量子もつれ」との関係が認められているという。

 最近の報告例においても、「1.量子生命科学とは」(須原 哲也、日本生物学的精神医学会誌 35巻 第3号、2024)に、次の記述が見られる。

 「量子生命科学は新しい計測技術の開発と共に、生命の中の量子性を探ることをめざした領域として、2017年には幅広い領域の研究者を集めた量子生命科学研究会の形で発足した。・・・
 量子論的生命現象の解明は、現状で量子論的説明が提案されているのは渡り鳥の磁気コンパスで、・・・
 鳥の網膜にあるクリプトクロムタンパクが光を吸収してラジカル対を形成し、このラジカル対に生じる量子効果によって磁場を感知しているというものである。・・・」

 ここで言われている量子効果とは量子もつれのことであることが、「量子力学で生命の謎を解く」で示されている。この著書から一部を引用すると次のようである。

 「頭を左右に素早く傾けて海の方が晴れていることを確かめた鳥(ヨーロッパコマドリ)は、夜の空へ向かって飛び立つ。冬の深まりとともに夜が長くなったため、優に10時間は飛び続けないと休憩できない。
 鳥は195度の方位(真南から西へ15度)に進路を取る。これから何日もほぼ同じ方向へ飛び、天候の良い日には300キロは移動する。・・・
 この鳥は気づいていないようだが、辺りにはほぼ同じ方向へ飛んでいるコマドリがたくさんいて、そのなかにはすでに何度も旅しているものもいる。コマドリは優れた暗視能力を持っているが、・・・地上の目印は見ていないし、夜に渡りをするほかの多くの鳥とは違って、晴れた夜空の星の並びを頭の中の星図と照らし合わせるのでもない。かなり驚くべき技術と数百万年にわたる進化のおかげで、毎年秋に3000キロほどの渡りをする能力を身につけているのだ。
 もちろん動物界では渡りはふつうにおこなわれている。たとえばサケは毎年冬、北ヨーロッパの川や湖で卵を産み、孵った幼魚は川を下り海へ出て北大西洋へ向かい、そこで成長する。三年経つと若いサケは、自分が産み落とされたのと同じ川や湖へ戻って卵を産む。アメリカ大陸に棲むオオカバマダラというチョウは、秋に合衆国を横切って南へ何千キロも渡る。チョウたち、あるいはその子たち(旅の途中で卵を産む)は、春になると北へ向かい、自分がさなぎになったのと同じ木へ戻ってくる。・・・
 動物がどのようにして遠い場所までの行き方知ることができるかは、何百年ものあいだ謎だった。だが今では、さまざまな方法を使っていることが分かっている。日中は太陽を、夜は星を使うものもいるし、地上の目印を覚えているものもいるし、方角を嗅ぎ取ることができるものさえいる。しかしなかでももっとも謎めいているのは、ヨーロッパコマドリが持っている、地磁気の方向と強さを感知できる知覚で、この能力は磁気受容と呼ばれている。ほかにも多くの生物がこの能力を持っていることがいまでは分かっているが、一番興味を惹かれるのは、ヨーロッパコマドリが行き先を知る方法である。・・・
 磁気受容は不可解な能力だ。問題は地磁気が極めて弱いこと。地上では30から70マイクロテスラ、うまくバランスを取った摩擦の小さいコンパスの針を動かすには十分だが、普通の磁石に比べたらその磁力は100分の1ほどしかない。そこからある難問が浮かび上がってくる。動物が地磁気を感知するには、体内のどこかで起きる化学反応がそれに影響を受けなければならない。・・・しかし、細胞の中の分子と地磁気との相互作用によってもたらされるエネルギーの量は、化学結合を切ったり作ったりするのに必要なエネルギーの10億分の1にも満たない。だとしたら、コマドリはどうやって磁場を感知できるのだろうか?・・・動物がそんなことをできるような分子レベルのメカニズムは、少なくとも従来の生化学の範囲にはけっして存在しないように思われていたのだ。

 しかし、・・・フランクフルトで活動するドイツ人鳥類学者の夫妻ヴォルフガング・ヴィルチュコとロスヴィサ・ヴィルチュコが、・・・コマドリは確かに地磁気を感知していることを疑いようもなく実証する画期的な論文を発表した(Science, vol.193, 1976年)。さらに、驚くことに、・・・コマドリは磁極と赤道の違いしか見分けられないのだ。ヴィルチュコ夫妻の1976年の研究によって、コマドリの磁気感覚はちょうど伏角(地球の磁力線と地面が作る角度のこと)コンパスのように作用していることが明らかになった。問題は、その生物的な伏角コンパスがどのようなしくみなのか、その手掛かりがまったくないことだった。当時、動物の体内で地磁気の伏角を感知できることを説明するメカニズムなど、知られていないばかりか想像さえできなかった。じつはその答えは・・・量子力学という奇妙な科学と関係があったのだ。」

 クラウザーが量子もつれの実験結果を論文にして発表したのは1967年であった。続いて、アスペが実験方法に改良を加えて、より正確に量子もつれの存在を確認して、論文を発表したのが1982年である。

 ヴォルフガング夫妻の発見を受けて、ヨーロッパコマドリの持つ磁気受容能力と量子力学が示す量子もつれとを関連付けて提唱したのは、ドイツ人化学者のクラウス・シュルテンであった。これは、アスペの実験の数年前のことであった。

 「彼は遊離基(フリーラジカル)が関与する化学反応で電子はどのように移動するのかという問題に興味を持っていた。遊離基とは一番外側の電子殻にひとりぼっちの電子を持っている分子のことである。それ以外の電子は原子軌道のなかでペアを作っている。電子のスピンの不気味な量子的性質を考えるときには、この遊離基が重要となる。ペアを組んだ電子はスピンを互いに反対方向へ向ける傾向があるため、全体のスピンは打ち消し合ってゼロになる。しかし、遊離基のなかにあるひとりぼっちの電子にはスピンを打ち消す相棒がいないため、全体としてスピンが残り、その遊離基は磁気的性質を持つようになる。そのスピンが磁場の方向に向く。」

 シュルテンは『高速三重項反応』と呼ばれるプロセスで生成する遊離基の『ペア』が、それに対応して互いに『量子もつれ』状態にある電子を持つのではないかと提案していた。 

 彼は、ヴィルチュコ夫妻によるコマドリの渡りの研究と、生物コンパスの化学的メカニズムが見つかっていないという問題のことを知り、自分が研究している電子がそのメカニズムになるのではないかとひらめいたのであった。そして、1978年の論文の中で、鳥のコンパスには量子もつれ状態にある遊離基のペアが使われているのだと提唱した。

 しかし、鳥のコンパスが量子的なメカニズムを持っているというこの説は、20年以上顧みられることはなかった。この間に、ヴィルチュコは、磁気受容には光の助けが必要なことを見出していた。

 「ヴィルチュコ夫妻がクラウス・シュルテンと会ったのは、1986年、フレンチアルプスで開かれた学会の場だった。どちらもコマドリの磁気受容には目に入ってくる光が必要であることは確信していたが、・・・遊離基ペア仮説が正しいかどうかはまだ納得していなかった。・・・すると1998年、ショウジョウバエの目のなかに色素たんぱく質のクリプトクロムが発見され、・・・それが光による概日リズムの同期を担っていることが証明された。そして、・・・クリプトクロムは光と相互作用して遊離基を発生させるタイプのたんぱく質であることが知られていた。
 シュルテンらはこの発見に飛びつき、クリプトクロムが、いままで見つからなかった鳥の化学コンパスの受容体にほかならないと提案したのだった。
 その研究結果は2000年に発表され、のちに量子生物学を代表する論文の一つとなった。・・・

  こうした優れた研究によって磁気受容に対する関心が爆発的に広がり、いまでは、さまざまな種の鳥、イセエビ、アカエイ、サメ、ナガスクジラ、イルカ、ハチ、さらには微生物といった幅広い生物種で磁気受容が見つかっている。ほとんどの種ではいまだメカニズムが調べられていないが、・・・コマドリから、さらには植物を含む何種もの生物で、磁気受容にクリプトクロムが関係していることが分かっている。・・・
 
 アインシュタインの言った不気味な遠隔作用は、地球の歴史の大部分を通じて、生物たちに長距離を動き回る手助けをしていたのかもしれないのだ。」

 「量子もつれ」については以上であるが、ここで話題になったヨーロッパコマドリはイギリスでも特に大切にされているようで、以前コッツウォルズに行ったときには、宿泊したマナーハウスの生垣にもいたし、妻がお土産に買った2種類のクリスマスカードにも登場していた。

 1枚はコマドリの写真が、もう1枚は絵が使われているがどちらもなかなか可愛い。


ヨーロッパコマドリの写真を用いたクリスマスカード(2013年頃購入)


ヨーロッパコマドリの絵を用いたクリスマスカード(2013年頃購入)

 尚、この絵の方は、最近購入したショートブレッドの容器缶にもほとんど同じ絵が描かれていて驚かされた。

ショートブレッドの缶(2025年購入)
 
 

  




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投票立会人と昨年の選挙

2025-01-31 00:00:00 | 日記
 昨年は、国内外で大きな選挙がいくつも行われた。世界レベルで見ると、最も影響が大きく、世界中の関心を集めたのは、やはりアメリカ大統領選挙であったと思うが、国内でも衆議院選挙はもちろんのこと、都知事選挙、兵庫県知事選挙などでは地元有権者だけではなく、多くの国民の関心を集めた。

 2024年10月27日執行の衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査で、私は、今回も投票立会人に選任され、投票日の終日、会場となった新公民館でその務めを他の3人と共に果たした。

 一昨年は、3回も選挙がありその都度投票立会人を務めていたので、様子は判っていた。当地では、朝7時から夕方7時までの立会いである。

 いつもどおり今回の選挙投票所にも、旧軽井沢公民館が使われたが、この公民館は古い公民館のそばに新築されたばかりでまだ竣工式は済んでいなかった。ただ、大広間はじめ会議室の利用はすでに始まっていた。

 投票場にはその大広間を用いて行われ、新築間もないピカピカの木の床であったが、区長と分館長の計らいで、そこにマットを敷いて、投票にくる皆さん、特に高齢者の方や足の不自由な方々が下足のまま入館し投票ができるようにして対応した。


新しい公民館を利用した投票所(2024.10.27 投票終了後撮影)

 投票場の雰囲気はやはり厳粛なものであるが、中にはご近所のよしみで、我々立会人に「居眠りしてては駄目だよ!」とか「長時間ご苦労様!」と声をかけてくれる人もいる。

 当地区も高齢化が進み、若い住人が少なくなっていて、投票に来る人達を見ていると、それ以上に若者の姿が少ないと思える。

 お年寄りが杖を突きながら来たり、家族に付き添われながら来たりしている姿をみると、若い人たちももっと投票に来てはどうだろうかと思ってしまう。

 実際、これまでの全国の投票率データを見ると、年代が下がるほど投票率が低下する傾向にあって、前回衆院選ではNHKの記事によると次のようである。


 
 今回の軽井沢町の選挙結果は町の公式HPに早速掲載されていて、投票率は56.48%であった。この数値は全国平均53.85%を若干上回る結果であったが、近年の投票率は低下傾向で、1990年頃のような熱気は感じられない。


軽井沢町の投票結果(軽井沢町HPより)
 

 今回の選挙の結果はご存じの通りで、事前に予想されたことではあるが与党に厳しい結果になった。


2024年の衆院選挙結果(NHK報道より)

 選挙演説では、与党からは「政権担当能力があるのは、自民・公明の連立政権だけである。」という主張が行われ、一方の野党は「政権交代こそが最大の政治改革だ」と訴えた。

 今回、これまでの4倍と大幅に議席数を伸ばした国民民主党だが、その目玉政策は「手取りを増やす」であり、「若者支援」を訴えていた。こうした政策提示が若者の関心を呼び戻し、選挙会場に足を向けさせることにつながったのだろうか。今回の選挙の動向調査結果が発表されるのを待ちたい。

 一昨年秋に、自民党内のパーティー券収入のキックバック問題と、その収支報告書への不記載が明らかになり、この時点では、これほどまでの政変につながると予想した人はそう多くなかったのではと思うが、その後繰り返された事柄も含め、政治と金にまつわる問題を見た国民が選挙で示した判断が今回の選挙結果である。

 選挙翌日の購読紙の論説は次のようであった。

 「長期政権のぬるま湯につかり、有権者の意識とかけ離れた『党の論理』を捨てきれなかった自民党に、厳しい審判が下った。
 これまでの自民党政治家と違う感覚で政権を運営するのではとの石破首相への期待は、瞬く間に失望に変わった。
 予算委員会なしでの衆院解散や、政治資金問題に関わった前議員らの公認問題と2000万円の活動費支給を巡る対応などで、総選挙で掲げた『国民の納得と共感』よりも自民党の事情と都合を優先する姿勢が露呈し、国民の怒りの火に油を注いだ。(読売新聞から)」

 今回の衆議院選挙の結果をみて、若い人たちが、一票を投じることで、自らの意見を国の政策に反映させることがきるのだと感じ取り、積極的に政治に参加するようになってもらいたいものと思う。

 実際、この世の中で起きている重要なことには、選挙を通じてしか変えていくことができないことがとても多いはずである。

 その少数与党の運営による第217回通常国会が、今月1月24日に召集され、6月22日までの150日間の会期で始まった。若者の関心を集めた「年収103万円の壁」がどこまで引き上げられることになるか、与野党の駆け引きを見守っていきたい。

 我々の生活に直接影響するわけではないが、今も多くの人が関心をもって推移を見守っている兵庫県知事を取り巻く問題については、出直し選挙に至る経緯や、その後の事態の推移については、複雑怪奇で、遠く離れた場所で見ていると事の真相がとても分かりにくい。

 大学時代の同級生の多くは地元兵庫県や大阪に住んでいて、関心の度合いもも高く、皆さんそれぞれに意見を持っているようであり、グループメールなどでも意見を求められることもあったが、私などには安易に口を挟める状況にない。

 ただ選挙戦そのものについては、都知事選などもそうだが、SNSが選挙結果に大きな影響を及ぼすようになったことは別な意味で興味深い。

 斎藤元彦知事がパワハラの疑いで告発され、県議会から不信任を決議され、失職の道を選び、再び知事選に立候補して再選されたわけであるが、選挙戦では若者などがSNSを通じて応援し、再選の原動力になったとされる。選挙のスタイルがここでも大きく変わっていることを感じさせた。

 その知事に対する百条委員会が現在も開かれていて、元県議会議員で百条委員会の委員でもあった竹内英明氏が1月18日に自殺するなど、事態は更に混迷しているように見える。

 この元県議の自殺に関しては、購読紙の社説に次のような記述があったので、記録しておきたい。

 「人の死まで中傷する残酷さーSNS上の悪意
  ・・・兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを調べる県議会百条委員会の委員だった前県議が死亡した。自殺とみられている。
 兵庫県の問題では、別の死者も出ている。極めて異常かつ深刻な事態だといえよう。
 ・・・T党首は、・・・前県議の死後には『前県議は逮捕される予定だった』と語り、まるで逮捕を苦に自殺したかのような動画を投稿した。
 これに対し、県警本部長は議会で、・・・『全くの事実無根』と否定した。・・・T氏は県警の対応を踏まえ、動画を削除して謝罪した。・・・
 T氏の投稿は、多くの人が拡散し、前県議の名誉は著しく傷つけられた。T氏、そして安易に虚偽の情報を広めたSNSユーザーたちの責任は重い。・・・(1月23日付読売新聞社説より抜粋)」

 さて、トランプ劇場はまだ1月20日に始まったばかりである。1月22日の購読紙の1面には『トランプ大統領令25本超』、『パリ協定離脱・南部国境に軍』の見出しが見られる。

 トランプ大統領が就任初日に打ち出した主な施策とトランプ氏が署名した主な大統領令は次のように紹介されている。

● トランプ氏が就任初日に打ち出した主な施策
 【関税】
  ▶ 2月からメキシコ、カナダからの輸入品に最大25%を課すと示唆
  ▶ 外国からの収入を徴収する新機関「外国歳入庁」を創設
 【不法移民対策】
  ▶ メキシコ国境に「国家非常事態」を宣言し、軍を派遣
  ▶ 出生地に基づき国籍を付与する「出生地主義」の見直し
 【対外政策】
  ▶ パナマ運河の返還を要求
  ▶ デンマーク領グリーンランドの領有に意欲
  ▶ メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称
 【エネルギー政策】
  ▶ バイデン政権が行った電気自動車(EV)の普及策撤回
  ▶ 化石燃料の増産を推進するため、採掘規制を見直し
 【国際的枠組みからの離脱】
  ▶ 温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの再離脱
  ▶ 感染症対策などを行う世界保健機関(WHO)から脱退

● トランプ氏が署名した主な大統領令
 【米国第一】
  ▶ 対外開発援助を90日間停止し審査
  ▶ 米国の核心的利益を守る外交政策の推進
  ▶ WHO(世界保健機関)からの離脱
  ▶ パリ協定からの離脱
 【国境・治安対策】
  ▶ 不法移民、麻薬の流入などを防ぐための国境封鎖
  ▶ 「出生地主義」の見直し
  ▶ 死刑制度の確実な運用
  ▶ 不法滞在者の強制送還
  ▶ 麻薬カルテルを「外国テロ組織(FTO)」に指定
 【官僚機構改革】
  ▶ キャリア官僚の政治任用職への転換推進
  ▶ 「米国の価値観」などを基準に連邦政府職員を採用
 【エネルギー】
  ▶ 電気自動車(EV)普及策の撤回 
  ▶ 化石燃料の増産を推進
 【多様性の否定】
  ▶ 性別は男と女の二つしかないと定義
  ▶ 多様性などを推進する「DEI」政策の終了
 【SNS】
  ▶ TikTok禁止法の適用を75日間猶予
  ▶ 前政権が「偽情報」対策などの名目で行ったSNSに対する「検閲」を容認しない

 以前、2017年にもトランプ大統領は「パリ協定離脱」を発表し、その際に当ブログに「ナガサキアゲハとトランプ大統領」というタイトルで記事を書いたことを思い出すが、その時はまさか8年後に同じような事態が起きるとは予想もしなかった。

 この8年間に何が起きて、何が起きなかったのか、改めて考えてみたいと思っている。

 海の向こうのことで、我々が直接関与することのできないアメリカ大統領選挙であるが、その影響は言うまでもなく強大であり、世界を変える力を持っている。

 今回の大統領令には、世界の人々の生命にかかわることがいくつも含まれている。しかし、そうした巨大な権力に対してわれわれ海外に住んでいる者ができることは無きに等しい。民主主義の手続きから言えば、日本の政治・政治家を通じて働きかけることが、唯一国内にいてできることなのだろうが、何もかも「ゴマメの歯ぎしり」でしかない。

 そんなことを思っているところに、次の「終末時計」のニュースが届いた。

 「ワシントン 28日 ロイター: 米誌『レティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』は28日、人類滅亡までの残り時間を象徴的に示す『終末時計』を『89秒前』と発表した。
 昨年より1秒、理論上の絶滅点である真夜中に近づき、1947年の創設以来最短となった。
 ウクライナ侵攻を続けるロシアの核の脅威や、人工知能(AI)の軍事利用、気候変動などを要因に挙げた。
 ブレティンの科学・安全保障委員会のダニエル・ホルツ委員長は『今年の決定に影響を与えた要因である核リスクや気候変動、科学技術の悪用の可能性、人工知能などさまざまな新興技術は目新しいものではない。しかし、主要な課題への取り組みは不十分で、多くの場合、これがますますネガティブで憂慮すべき影響につながっている』と指摘。『終末時計を午前0時の89秒前に設定することは、世界の全ての指導者に対する警告だ』とした。
 同誌は、アルバート・アインシュタインやJ・ロバート・オッペンハイマーら著名科学者によって1945年に創刊された。」

  
人類滅亡までの残り時間「89秒」を象徴的に示す「終末時計」(ロイター)

 こうした数字の発表自体にも賛否様々な意見が寄せられているが、ウィキペディアに示された「推移」を見ると、2025年がどのような年として位置づけられているかがわかる。因みに2023年と2024年は90秒前である。


世界終末時計の推移、1947-2023(ウィキペディアより)

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コロナ感染記

2025-01-24 00:00:00 | 日記
 世界的なパンデミックを引き起こし、大混乱を招いた新型コロナであったが、軽井沢のきれいな空気のおかげか、人ごみにでることを避けてきた結果か、この5年間はなんとかやり過ごしてきた。

 そのコロナに、夫婦そろって感染してしまった。昨年7月末のことである。接客業であることを考えて、ワクチンは二人とも受けてきたが、賛否もあり直近2回の接種は受けておらず、第11波とされるこのウィルスにはすでに効果が失われていたようである。

 コロナが第5類になって1年余、意識的にもかなり緩みが出ていたところで、母の七回忌を大阪で行うことになり、ここに出かけて感染してしまった。
 
 出かける少し前には、久々の長距離移動の旅になることもあり、妻とは感染予防をしなければね・・と話していたのに、いざ出かけるときにはマスクも持っていくのを忘れるという弛み様であった。

 新幹線での移動、駅や地下鉄の混雑の中の移動、20人ほどの家族との墓参と会食。考えてみると、感染の機会はどこにでもあった。

 喉の異変に気がついたのは、帰宅後2日目であった。夕方喉の痛みを感じたが、熱は平熱であった。妻に聞くとやはり喉が変だという。この時、コロナ感染を疑ったが、様子を見ようということで翌朝を迎えた。

 体温を測ると、妻は高めに出たが私はまだ変化がなかった。発熱した妻はすぐに病院に行き、検査を受けた。私は、ショップに出勤し、待機していたが、妻から検査結果がコロナ陽性であったと聞き、すぐにショップを閉めて帰宅した。

 夕方、私も熱が出始めたので、妻が処方してもらった薬を分けてもらい、翌日医師の診断を受けた。結果はやはりコロナ陽性/インフル陰性で、飲み薬を処方してもらった。1週間ほどでのどの痛みと発熱は次第におさまり、大事に至ることはなかったが、発症後すぐに起きた別の異変が味覚と嗅覚の異常で、食べ物の味が全く感じられなくなった、匂いの方も同様で、約3週間後ようやく回復するまで、毎日味気ない食事が続いた。

 私の場合、味覚も嗅覚も同じように回復していったが、妻は半年後の今も嗅覚が戻らないという。

 コロナ感染の話はこれだけであるが、数か月後の11月にまた喉に異変が出た。今度もすぐに医師に相談したが発熱もなく、飲み薬を処方してもらい、これを5日間飲んで回復した。

 このころ、マイコプラズマが流行していてこれを疑ったが、とくに医師からはそうした話は出なかった。

 そうして迎えた年末。娘が休暇を利用して正月をすごすためにやって来た。12月生まれの娘の誕生日のプレゼントを探して、軽井沢のショッピング・プラザに出かけたり、おせち料理の食材を買いに佐久のショッピングモールに出かけたりしたが、いずれもかなりの混雑している中に出かけることになった。

 元旦には、初日の出を撮影するために、碓氷峠に車で出かけた。よく出かけている浅間山の撮影ポイントに近い場所であった。

 正月の二日目になり、喉に違和感が出、咳をするようになった。熱はない。気にした娘が龍角散を買ってきてくれて、これを飲み、少し楽になったが咳は完全には収まらず、休み明けの6日になってようやく医師の診断を受けた。

 咳症状は次第に収まり、11日には義兄夫婦から招待されていた、東京での食事会に出かけることができた。今回の咳は、年末に人ごみの中に出かけたことが原因かと思っていたので、東京駅から義兄が予約してくれていたホテルまではタクシーで直行、ホテルから食事会場までも義兄夫婦と一緒にタクシーを利用するなどして人ごみを避けた。

 ホテルに宿泊した翌日の朝食はビュッフェスタイルで、3連休の中日でもありかなりの混雑であった。この日の過ごし方は、少し前から妻と博物館に行きたいねと相談していたが、軽い咳がまだ出ていたので、人ごみの中に出ることを避けて、ホテルに併設されている集古館だけを見て、来た時と同様、東京駅にタクシーで直行し、早々に軽井沢に戻ってきた。

 飲み薬はちょうど前日で切れていたが、熱は出ていなかったので、そのまま様子を見ることにしていたところ、16日に37度ほどの微熱がでた。すぐに医師に相談をし、飲み薬を処方していただいた。

 1月にはこの後、17日、19日、21日と予定が入っていた。17日は区会の小会合で、私が委員長をしているものなので、欠席するわけにいかず、19時から2時間ほどの会議に参加した。

 翌日目が覚めた時には、熱は38度になっていた。夕方には薬の効果もあり平熱近くまで下がるが、翌朝にはまた38度に上昇していた。

 この日、19日の16時からはTGさんの小説の出版記念のトークショウが近くの書店で開かれる予定で、その後18時から親しい人たちを招いて食事会も予定されていて、私も招待されていた。

 このTGさんの小説は昨年10月に新潮社から出版されていて、今年は3月5日の外国人記者倶楽部を皮切りに、軽井沢、国立、青山などでトークショウが予定されていて最後はブータンで終えるとのことであるが、今回はその練習を兼ねたものということであった。

 ぜひ参加したいと思ってあれこれ体調管理に気を遣ってきたのであったが、咳と熱を考えるとキャンセルせざるを得ないとの判断に至り、当日朝欠席の連絡をすることになった。

 この日の夜には案の定38度になった。翌日昼頃の検温ではこれまでの最高の38.2度を記録した。

 21日には、今度は区の役員会と演芸会・新年会が控えている。役員会では定例の会計報告があり、演芸会・新年会では総合司会を任されている。

 当日の朝も37.5度の発熱があったので、役員会では原稿をどなたかに読み上げてもらい、司会は代役をお願いしようと考え様子を見ていたが、ギリギリのところで出席することにした。

 ただ、食事の始まる前までの司会にとどめ、宴会の開始を告げて以降は、宴会担当の司会者が別途指名されていたので、その方にこの日の最後まで、司会を続けていただくようお願いして、退席した。

 年初からの咳に始まり発熱と、すでに3週間を超えるこれまでに経験したことの無い長引く症状に困惑しているが、これも齢のせいなのだろう。それともコロナ感染が何か影響しているのだろうか。

 以前当ブログで免疫のことを調べた時に引用した、若者と老人がインフルエンザに罹った時の症状の差があった(2020.11.13 公開)。次のようである。
 
 「冬の朝、同じバス停でバスを待っている青年と老人が、同じインフルエンザウイルスに曝されたとしよう。青年がインフルエンザウイルスに曝された場合、青年はインフルエンザにかかりにくいが、かかったとしても、定型的な一次免疫反応の経過をたどって、数日のうちに治癒してしまう。一時免疫反応というのは、はじめてこの抗原(インフルエンザウイルス)に出会った時の定型的な反応である。
 ウィルスが細胞内に入り込み自己複製を開始すると、まずインターフェロンの合成が始まり、ウィルスの増殖を抑えようとする。
 マクロファージが異常を察知して、IL1などの炎症性物質を出す。IL1は発熱物質なので、熱が出、体は汗をかく。ウィルスの粒子や蛋白はマクロファージに取り込まれ、消化された断片はクラスⅡ抗原に結合してヘルパーT細胞を刺激する。
 ヘルパーT細胞からは、B細胞やキラーT細胞を刺激したり、炎症を引き起こすインターロイキン群が生産される。
 ウィルスが感染した細胞では、ウィルスの構造蛋白がクラスⅠ抗原に結合して細胞の表面に提示される。それをキラ-細胞が認識、刺激を受ける。ウィルスを発見したB細胞も動員されるが、それはまだ、ウィルス中和能力の低いIgM抗体を遊離するばかりである。
 とにかくこうして起こった免疫系の大騒動によって、インフルエンザの症状はクライマックスに達する。
 しかし間もなく、B細胞はヘルパーT細胞の指令(その多くはインターロイキンの働きに帰せられる)を受けて、ようやく中和能力の高いIgG抗体を大量に分泌しはじめる。
 IgG抗体はウィルスに直接取り付き、他の細胞への感染性などの動きを抑えてしまう。これがウィルスの中和である。インターロイキンの影響下で、キラーT細胞はウィルス感染細胞を次々に殺してゆく。壊された細胞から飛び出したウィルスにはIgG抗体が待ちかまえて中和する。
 やがて炎症はおさまり、サプレッサーT細胞が、それ以上免疫反応が過剰にならないようにヘルパーT細胞の働きを抑え、反応は終息する。青年は、再び青空のもとを疾走し、病気の残骸を吹き飛ばすかのようにサッカーのボールを蹴る。」

 これが、若者がインフルエンザウイルスに感染し、治癒するまでの流れである。さて、次に青年と比較して、我々老人がインフルエンザウイルスに出会ったときの体の反応は次のようになるという。

 「老人のインフルエンザはいささか違う。それほど高い熱が出ないのに、全身がけだるい。初期の防衛反応であるインターフェロンやIL1の生産が悪く、ウィルスは広範に広がる。
 T細胞の反応もおかしく、インターロイキンのいくつかは過剰に作られるが、あるものはあまり作られない。そのために片寄った炎症が肺などに現われ、通常は問題にならないような細菌が増殖して肺炎を起こしたりする。
 B細胞は、ウィルスを中和できるような抗体をあまり作らない。病気は長引き、肺炎などの二次的な合併症を起こすようになり、それはしばしば致命的である。
 インフルエンザが治ったとしても、血液中のガンマグロブリンの濃度は異常に高く、炎症性のインターロイキンもなかなか消失しない。ときにはひそんでいた免疫異常、たとえば自己組織を破壊するような抗体による障害が、風邪を契機に出現することもある。・・・ 」

 これは新型コロナが出現する前の本に書かれていることなので、インフルエンザをコロナと読み替えて差支えないだろう。

 免疫力は老化に伴いこれほどまでに変化するものらしい。私はすでに後期高齢者の年齢も過ぎているので、この本の例にしっかり当てはまる。最後のところにある、風邪を契機に出現する可能性のある免疫異常や抗体による障害が出ていないことを願いたいものである。



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