軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

紋様、対称性と平面充填(3/3)

2024-07-26 00:00:00 | 日記
 50年ぶりに新しく発見されたという、「アインシュタイン・タイリング」の面白さにすっかりはまってしまい、子供の頃に親しんだ五芒星のことや、大学生時代に読んだ伏見康治氏の「紋様の科学」の記事ことを久しぶりに思い出し、2回にわたりあれこれ書いてきた。

 この「紋様の科学」から、正五角形に関連した図形による平面充填とペンタドミノによる平面充填について紹介し、伏見康治氏が、ペンローズ・タイリングP1と同等の正五角形配列について考察し、また単一のタイル形状による、非周期平面充填について具体例を示していたことを紹介した。

 これに刺激される形で、正五角形による平面充填を考えていて、正五角形と菱形(ダイヤモンド)の2つの形状のタイルで、5回対称性を持ち、並進対称性を持たない平面充填ができることを「紋様、対称性と平面充填(1)」で紹介した。この配列パターンを仮にM1としておく。

 詳しく調べたわけではないので、ペンローズ氏がこの簡単な配列M1をどのように評価していたのかは分からないが、ペンローズ氏がP1、P2、P3の3種類のペンローズ・タイリングで目指した特徴をこのM1もまた備えていることがわかる。

 ところで、アインシュタイン・タイリングによる非周期平面充填が発見されてしまった今となっては、意味のないことかもしれないが、「紋様の科学」を読んでいて、もう一つの興味深い平面充填パターンM2があることに気が付いたので、今回はこれを紹介させていただく。

 このM2パターンもM1と同様、これまでにどこかで紹介されているのがオチだと思うが、念のためである。

 「紋様の科学」の記事中では平面充填と関連付けた話題ではなかったが、伏見康治氏は、正多角形がつくる環のことを考察している。この中で10個の正五角形が作る環についても次のように触れているのである。

 「正五角形の現れる幾何学上の例題はもちろん沢山あるはずである。しかしつぎに掲げる事実はその辺の教科書には出ていないようである。・・・この種の幾何学上の定理はたいてい大昔に誰かが証明ずみというのが落ちだから、新しいと主張するつもりはない。・・・
 さて、ある同形同大の正多角形を、ひとつおいて隣の辺で、互いにつなぎ合わせて環をつくるとしよう。・・・
 (これが実現できるのは)4コの解答しかないことがわかる[図A]。・・・」

 
図A(「紋様の科学」を引用して筆者作図)

 伏見康治氏はここまで書いて、次に正五角形による平面充填の話題に進んでいくのであるが、この図Aで左端にある10個の正五角形がつくる環(以下、正五角形10員環)を単位として平面充填をすすめると一体どのようになるかという興味がわいてきたので図を書いてみることにした。

 ペンローズ・タイリングP1ではパターンの中心にある正五角形を共有する形で5個の正五角形10員環が配置されているのがわかる。その後も周辺に広がる正五角形の配列には、正五角形10員環がたびたび登場するのがみられる。この場合、中心部の5個の正五角形10員環の内側の「すきま」は自動的に3個の正五角形で埋められている。


図1.ペンローズ・タイリングP1の中心に現れる、5個の正五角形10員環の配置

 次に、正五角形を中心におくのではなく、5個の正五角形10員環を、2個の正五角形を共有する形で配置する時に現れる「五芒星」をタイリングの中心に据える平面充填を考えてみることにする。この場合には、P1と異なり、正五角形10員環の内側にはおおきな「すきま」が残る。
 
 図2.正五角形が作る10員環を5個、環状に配置した図
 
 こうしてできた配置の外側には、上図2.のように大きい正五角形が見えてくる。この外側にさらに正五角形10員環を配置し、次図のように一回り大きい正五角形に内接する形をとることができる。


図3.5個の正五角形10員環の外に10個の正五角形10員環を配置した図

 このように正五角形10員環を単位として外へ外へと拡大していくと、最初5個から始まった正五角形10員環の環は10個、15個・・・と数を5個ずつ増やしながら、ひとまわり大きい正五角形に内接する形でタイリングを進めることができる。これにより、平面充填をさらに外側へと進めていっても、タイリング全体としては、5回対称性を保証できるのではと思う。

図4.さらに外側に15個の正五角形10員環を配置した図

 この辺で正五角形10員環の内側と外側にできる「すきま」の充填についても考えなければならない。内側のすきまには10員環を構成している正五角形と同形の正五角形を3個収容できる。その配置については10通りのバリエーションが考えられる。次のようである。

図5.正五角形10員環の内部の充填パターン 

 この10通りの中から、タイリング全体の5回対称性を確保できるように、配置すると、1例として中心部分では次の配置を得る。

図6.中心部分の正五角形10員環のすきまを5回対称性を保ちながら、正五角形で充填した図

 同様に図3で、正五角形10員環の内側のすきまだけを埋め尽くすと次の図7.のようになり、さらに図3.で正五角形10員環の内外のすきまをすべて埋めていくと図8.のようになる。図8.では正五角形の内10員環を構成するものを淡青で、それ以外の正五角形は淡緑で塗り分けた。


図7.正五角形10員環の内側のすきまだけを正五角形で充填した状態


図8.正五角形10員環の内外のすきまをすべて埋めつくした状態

 このようにして、中心に五芒星を配置し、その周りに正五角形10員環を環状に配置することで、ペンローズ・タイリングP1と同じ4種(正五角形、五芒星、ボート、ダイヤモンド)のタイルを用いつつ、異なる配列の5回対称性をもつ非周期平面充填タイリングが出来上がる。

 これまで5種類の5回対称性の非周期平面充填パターンを紹介してきたが、これらをまとめて示すと次のようである。

 中心に正五角形がくるもの、正五角形に内接する四辺形の組み合わせによるもの、そして五芒星を配したものがある。


P1 ペンローズ・タイリング


P2 ペンローズ・タイリング


P3 ペンローズ・タイリング


M1 タイリング

M2 タイリング

 単独では平面充填を行うことができない正五角形であるが、その代わりに様々な興味深い平面配列パターンを提示してくれることを確認して、3回のシリーズを終えることとする。


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紋様、対称性と平面充填(2/3)

2024-07-19 00:00:00 | 日記
 前回、伏見康治氏がその著書「紋様の科学」の中で、正五角形による(すきまを伴う)平面充填について次のように記していることを紹介した。

 「・・・正五角形の分子があったとせよ、そのような分子が5個の結合の手で互いにつながって、縮合して巨大な物質になったとすると、そのような物質は、けっして普通の意味で結晶にならない。つまり、何か細胞があって、その2方くり返しの形にはなっていないのである。そのような物質には、何か絶対的な中心があって、そのまわりには、5つ割り回転対称の性質があるけれども、その他の対称性はもっていない。分子の密度は全平面にわたって平均して一様にすることができるけれども、けっして並進の対称操作をもっていないのである。--そういう不規則性の存在を示すのが目的であった。」

 一方、正五角形を用いた平面充填を考えていたペンローズ氏は、平面充填構造、ペンローズ・タイリングP1を発見した。ペンローズ・タイリングP1は伏見康治氏が考えていた正五角形によるタイリングと実質的には同一のものであったが、両者のこのタイリング構造に対する受け止め方が違っていたようである。

 そして、ペンローズ氏はP1をさらに発展させて、P2とP3と呼ばれている2種類の5回対称をもつペンローズ・タイリングを発見している。次のようである。 

             
ペンローズ・タイリングP2(筆者作成)

         
ペンローズ・タイリングP3(筆者作成)

 どちらも正五角形を基本とした図形を中心に配置し、外に向かって無限に広がる5回対称性を持った非周期性配列となっている。

 非周期性のゆえに、実際の結晶ではありえないとされていたこうした5回対称性の配列パターンであるが、その後このうちのP3の配列パターンをもつ実在の結晶が発見され、大きな話題になった。2011年のノーベル化学賞を受賞した準結晶の発見である(2018.7.6 公開当ブログ)。

 正五角形は平面をすきまなく埋めつくすことはできないが、球面に沿ってすきまなく埋めつくすことはできる。正十二面体の存在がそれを示しているが、準結晶の構造はこうしたことを思い出させるものである。

                 
 正十二面体構造(筆者作成)

 準結晶の発見は1984年、その1年後1985年には炭素フラーレンが見いだされた。60個の炭素原子からなり、炭素の5員環を含む立体構造であり、正五角形を含む20面体構造になっている。

     
C60 フラーレン構造(筆者作成)


 ところで、伏見康治氏は「紋様の科学」のなかで、もうひとつ興味深い話題を提供していた。すきまなく平面をうずめながら、しかもなお不規則の現れる配列である。その1例として、5個の正方形を連結して作られるペントドミノのうち、Wの形をしたものを用いて、この不規則配列を作成した。次のようである。

 「紋様の科学」では着色していない図が示されているが、ここでは4種の向きの異なるW形ペントドミノを色分けして再現した。

  
ペントドミノで全く規則性のない配列を作る試み(「紋様の科学」から筆者作成)

 さて、現在、「非周期平面充填」を実現したモノタイルが話題となっているが、上記の試みはその初期の取り組みの一つと言える。
 
 「最初の非周期的タイル張り(平面充填)は、1966年に発見された、20426種類のタイルを使うものである。その後、より少ない種類数のタイルによるタイル張りが発見され、1974年にはイギリスの物理学者ロジャー・ペンローズが非周期的タイル張りの可能な2種類の菱形のタイル『ペンローズ・タイル』を考案したが、非周期的モノタイル(単一で非周期的タイル張り可能なタイル)が存在するかどうかは長らく未解決であり、『アインシュタイン問題』と呼ばれていた。・・・」(ウィキペディア「タイル張り」より引用)

 伏見康治氏が用いたW形ペントドミノは、この例で示したように非周期平面充填を実現しているとみられるが、氏は次のように述べている。
 「数学的証明はない、しかしここまでWタイル形状の付け加えがうまくいった以上、これから先も限りなく続けられるだろうと考えるのは、許されるだろう」。

 このW形ペントドミノも、ペンローズが用いた2種の菱形タイルの組み合わせも、非周期平面充填を実現できるが、同時に配列を変えることで、周期配列も可能である。次のようである。

                   
ペントドミノの周期配列例(筆者作成)


ペンローズ・タイルP3の2種のひし形の周期配列例(筆者作成)

 ところが、昨年発見された「非周期モノタイル」は非周期にしか平面を埋め尽くすことができないとされ、これまでのモノタイルや組み合わせタイルとは一線を画するものとなっている。そのためこの種のタイルは「アインシュタイン・タイル」と呼ばれる。次の図では、12の異なる向きをもつモノタイル形状を色分けして配置した。形状と配置方法は、このタイリングを報告した2023年6月発行のサイエンス誌の表示に従った。

                   
     アインシュタイン・タイルの形状(筆者作成)


2023年に発見された「アインシュタイン・タイリング」(筆者作成)

 さて、ペンローズ以来50年ぶりの発見とされる「アインシュタイン・タイル」であるが、ペンローズ・タイリングP3で起きた準結晶の発見のような物理学の進展につながるだろうか。今後の展開が期待される。




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紋様、対称性と平面充填(1/3)

2024-07-12 00:00:00 | 日記
 小学生の頃、一筆書きに興味を持って、紙やノートにいろんな一筆書きの模様を描いて楽しんでいた。その中でも、当時はその名前を知らなかったが、五芒星の形を飽かず書いていたことを思い出す。次のような星形は一筆書きが可能であった。


五芒星(左)と外接正五角形、星型 
 
 この五芒星はその対称性から、星型正多角形のひとつとされている。こうした子供のころからの対称性への興味からか、後年大学では金属結晶の研究をテーマに選んだ。

 大学4年生の時の研究テーマは「アルミニウム単結晶の転位構造」であった。「転位」とは結晶構造の乱れである。完全な単結晶であれば、現れることの無い転位構造であるが、実際にアルミニウムの単結晶をブリッジマン法で作ってみると、僅かに向きの異なる単結晶の集合体になっていることがある。その境界にはアルミニウム原子配列の僅かな乱れ=転位が現れる。その乱れた領域がきれいなパターンを描くことがあって、これを電子顕微鏡で観察していた。

 大学院でのテーマは合金の相分離に関するもので、「スピノーダル分解」を選んだ。例えば2種類の金属からなる合金の場合、金属元素の種類にもよるが、温度により均一に混じりあうこともあれば、2相の互いに比率の異なるランダムな領域に分かれることもある。

 先ず高温で均一に混じりあった状態を作り、これを急冷して低温でも均一な状態を作った後、徐々に温度を上げていくと、その温度で安定な2相に分離していくが、その時の分離の進み方にスピノーダル分解というものがある。これを研究していた。

 卒業後の就職先には一転ガラス会社を選んだが、これは2種類の成分からなるガラスの場合にも、このスピノーダル分解が起きることを知ったからであった。

 ちょうどこの頃購入して読んでいた本に、「SYMMETRY」(HERMANN WEYL著、1952年 PRINCETON UNIVERSITY PRESS 発行)があった。また図書館で見た雑誌「数学セミナー」には伏見康治教授の「紋様の科学」が連載されていたのでこれも興味深く読んだ。


「SYMMETRY」(HERMANN WEYL著)のカバー表紙(上)と表紙(下)

 本「SYMMETRY」は今も手元にあるが、「紋様の科学」の方は、コピーをとり大切にしていたはずだが、今探してみると見当たらない。調べてみると「紋様の科学」はその後単行本として伏見康治コレクションの第1巻として発行されていることがわかり、先日上京の折に国会図書館でその内容を再読する機会をもった。この本の「解説」を見ると、「紋様の科学」は「数学セミナー」に1967年5月から1969年12月まで30回にわたって連載されたという。


伏見康治コレクション第1巻「紋様の科学」(伏見康治著 2013年、日本評論社発行)の表紙

 「SYMMETRY」では、左右対称から始まり、並進対称、回転対称などへと話が進み、古代の図案に見られる文様、幾何学図形、建築物、動植物、雪の結晶などが紹介され、最終章では鉱物結晶の数学的な側面へと話が進む。

 本の最後には、今回のブログのテーマである平面充填に関する次のようなパターンも紹介されているが、「SYMMETRY」の記述はここまでである。Weil氏は、「このような装飾文様について、できればもっと詳しく分析したい。・・・」としながらも、これ以上は触れられていない。


ムーア建築の文様(「SYMMETRY」より)

 
 
 
中国の窓格子文様(「SYMMETRY」より)

 「紋様の科学」にはより多くの紋様が紹介されていて、「Chapter 1」は日本の「家紋」から始まっている。それは「・・・家紋とは概して対称的の形状を以て表された図象であって、・・・」という本の中での引用にもみられるように、対称的な図形に話題を導いていくものであった。

 続く「Chapter 2」は「対称操作の群」で、ここでは回転や鏡映を取り上げ、数学的な記述に移っていく。この後、様々な、紋様に関する話題が続くがこれらを一気に飛ばして、「Chapter 25 乱れ」に進むと、この章では正五角形による平面充填の話題が紹介されていて、次のように始まる。

 「正五角形についてーまんだら
 平面くり返し模様の議論を始めるそもそもの段階で、正五角形というものはその存在を否定されてしまった。結晶群論の創始者たちが、5つ割り回転対称と、周期的くり返しとが相容れないことに気がついて1,2,3,4,6の可能性を掲げたところで、正五角形の登場が禁止されてしまったように見える・・・
 さてそれはそれとして、正五角形の各辺の上に同大の正五角形を立てたのでは、その間にすき間ができて、寄せ木細工または敷石というわけにはいかない(筆者注:図B-左)。しかし、このまわりの5個の正五角形は、ひとまわり大きな正五角形に内接している点に注目しよう。・・・割れ目を無視すれば、全体の図形はやはり1つの正五角形になっているのである。それで、この『ききょう』の花のような図形と同じものを5個、その外周五角形の辺の上にたてて、もうひとまわり大きな、5つ割り対称の図形を考えることができる(同:図B-中央)。こうしてできた図形には外接五角形があり、したがってまた同じやり方で、その外側に同形同大の図形を5個ならべることができる(同:図B- 右)。等、等、等。こうした手続きの”くり返し”で平面を”おおいつくす”ことができるであろうが、その中心付近の状態は、図Cにうかがうことができる。
 ”おおいつくす”ことができるといっても、もともとすきまがあることを承知の上でのことであって、上の ”くり返し” 操作のあとの段階では、このすきまも比例的に相当大きくなっていく。図Cの中で、人工衛星を連想させるような、白いすきまが、遠くになるほど大きくなって、現れている。このすきまが大きくなるのが気に入らない読者は、うすく書き込んだように、そのすきまを正五角形でうずめていただいて一向さしつかえない。うずめ方によっては、美しい星形が現れるだろう。・・・」


図B「紋様の科学、Chapter 25より」(筆者作成)


キキョウの蕾(左)と花に見られる5回対称性(2024.7.8 撮影)


図C 「紋様の科学、Chapter 25より」(筆者作成)

 伏見康治氏はこの後、正五角形による平面充填に関する考察を行うことについて、次のように述べている。 

 「・・・しかしこんな細工を何のためにしているのであろうか。正五角形の分子があったとせよ、そのような分子が5個の結合の手で互いにつながって、縮合して巨大な物質になったとすると、そのような物質は、けっして普通の意味で結晶にならない。つまり、何か細胞があって、その2方くり返しの形にはなっていないのである。そのような物質には、何か絶対的な中心があって、そのまわりには、5つ割り回転対称の性質があるけれども、その他の対称性はもっていない。分子の密度は全平面にわたって平均して一様にすることができるけれども、けっして並進の対称操作をもっていないのである。--そういう不規則性の存在を示すのが目的であった。*1」

 このページの脚注*1には次の注記が示されている。

 「ところが、この問題をさらに追及したペンローズは、正五角形に関連したふたつの菱形で、全平面が隙間なく覆えることを発見した。」

 この脚注*1ではふたつの菱形とされているが、ペンローズ氏が発見した5回対称を持ちながら平面を埋め尽くすことができるタイル形状すなわちペンローズ・タイルと、平面を埋め尽くす配列すなわちペンローズ・タイリングには3種類のものが知られていて、第1のもの(P1)は正五角形と3つのタイル(五芒星、ボート、ダイアモンド)からなり、第2のもの(P2)は2つの四辺形(カイト、ダート)、第3のもの(P3)が2つの菱形(ファット、シン)で構成される。脚注*1はこのうちP3のことを指しているものと思われる。
 
 ところが、上記「紋様と科学、Chapter 25」の図Cですき間を正五角形で一定のルールに従って規則正しく埋めつくしたものが、実は3種あるペンローズ・タイリングの最初のタイプP1とされるものと基本的に同一である。

 伏見康治氏の「紋様の科学 Chapter 25 乱れ」は1969年に「数学セミナー」に掲載されており、ペンローズ・タイリングP1の発見は1974年とされているので、伏見康治氏はペンローズ氏よりも早く、同じような課題について考えを巡らせていたことになる。

 伏見康治氏が正五角形だけによる平面充填を意識し、正五角形以外を「すきま」と捉えていたのに対し、ペンローズ氏は「すきま」をタイルの1種と考えて、正五角形と「すきま」とをあわせた4種類のタイルで、五回対称の平面充填紋様を考えていたと言えるだろう。

 正五角形をすべて黒く塗りつぶしていた図Cを、元に戻して正五角形の色を変え、「すきま」を別の色の正五角形をで埋めると、ペンローズ・タイリングP1が現れる。
 
図Cの正五角形の配列中の2種のすきまをペンローズ・タイリングP1と同じ配列の正五角形で埋めた状態(筆者作成)

 ここで、すこし面白いことに気づく。

 伏見康治氏は最初の正五角形に始まり、次々と大きさを変えながら正五角形を周辺に拡大していくこの手法により、正五角形間の「すきま」を伴いながらも平面を無限に埋めつくすことができる配列を見出し、これが5回対称性を持ちながらも並進対称操作をもたない不規則配列であることを示した。

 ペンローズ氏の考えかたについては、直接氏の著作を読んだことがないので詳しいことは判らないが、最初の正五角形から始まり、周囲に正五角形、ダイアモンド、ボート、五芒星を厳密なルール(マッチング規則)を守りながら配列していく方法をとり、これにより5回対称性と非周期的配列とを確保しながら平面を無限に充填している。尚、正五角形については、同形状ではあるが3種類の異なるマッチング規則を与え、3種類に色分けして分類している。
  
ペンローズ・タイリングP1(筆者作成)

 いずれにしても、完成したペンローズ・タイリングP1を見ていると、無限のバリエーションのあることが理解される。そのことは、伏見康治氏が示した「すきま」を正五角形で埋める操作を考えるとわかりやすい。次の2つの図で、最初に現れる小さい「すきま」とその次に大きい「すきま」とを正五角形で埋める2つの方法を示した。いずれもタイリング全体の5回対称と、並進対称操作を持たないという性質は保持される。


図Cの2種のすきまを正五角形で埋める方法1(筆者作成)


図Cの2種のすきまを正五角形で埋める方法2(筆者作成)

 正五角形を中心に置き、外に向かって無限に広がるこの配列の特徴は、伏見康治氏が指摘しているように、「けっして並進の対称操作をもっていない」ということである。そういう(数学的な)課題があることを、「紋様の科学」は示した。

 伏見康治氏の「すきま」のある配列がそうであるように、ペンローズ氏の「すきま」をさらに埋め尽くした配列もまた、同様に「けっして並進の対称操作をもっていない」ということになる。

 一方、正五角形による平面充填配列を考える時に、伏見康治氏が進めたように正五角形の大きさを変えながら外に向かって拡大するパターンを配列するのではなく、元の正五角形の外側に上下反転させた正五角形を一辺が接するように順に並べ、これを繰り返す方法でも、無限に外に向かって広がる充填配列を作ることができるのではないか。

 ペンローズ・タイリングP1でいえば、中心から始まる3色の正五角形の外側に正五角形を配置する時に、「ボート」を作らず「ダイヤモンド」だけを「すきま」として残しながら埋めていけば、「すきま」は大きくならず、すなわち「ボート」や「五芒星」を作ることなく、正五角形とダイヤモンド(菱形)の2種類のタイルで平面を埋め尽くすことができる。次のようである。
       
正五角形と菱形による5回対称の平面充填(筆者作成)


                              
上記パターンの5回対称性を示す図

 両氏が共にこの単純な配列を採用しなかったのは、この配列のもつ「美しさ(不足)」が関係しているのだろうか。しかしこの配列もまた5回対称性を持ち、並進対称操作を持たないという点では変わるところがないと理解されるはずである(数学的証明はないが)。

続く




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第三次世界大戦

2024-07-05 00:00:00 | 日記
 戦後生まれの我々が大学卒業を迎えた時、仲間の誰の発案であったのかは思い出せないが、1冊の文集を発行し、その中でクラスメートにアンケートを行った。
 その時のアンケートの項目の一つに「第三次世界大戦は起きるか?」という設問があった。
 「起きる」、「起きない」、「起こしてはならない」・・・といった回答が寄せられていたが、あれから55年、幸いなことに今日まで第三次世界大戦は起きていない。

 しかし、戦後の世界は綱渡りの状態で、辛うじて世界大戦の勃発を避けてきている状態である。
 
 第三次世界大戦は核戦争になり、人類の自滅をもたらすとしばしば考えられている。

 その核戦争に最も近づいたのは、1962年のキューバ危機時ではないかと思うが、この時は実際に、誤って核攻撃命令が出されたものの、現場の士官の判断で核ミサイル発射が水際で停止されていたことが、2002年になって明らかにされた。このことはウィキペディアにも記されている。

 そのウィキペディアからもう少し引用すると、

 「・・・歴史を踏まえると、世界大戦というのは決して『世界大戦』を始めるつもりで始められたわけではない。
 たとえば現在『第一次世界大戦』と呼ばれている戦争は、1914年6月28日にボスニアの州都サラエヴォを訪問中だったオーストリア=ハンガリー帝国帝位継承者夫妻(フランツ・フェルディナント大公と妻のゾフィー・ホテク)がセルビア人に暗殺される事件(サラエボ事件)が起こったことを受けて、オーストリアがこれを『スラブ系民族運動を抑えるチャンス』と捉え、最後通牒を経て7月28日に(ドイツの支持も得つつ)あくまでセルビア一国に対してだけ宣戦を布告したことに始まる。
 開戦した者は『世界大戦』を始めたつもりは無く、あくまで一国だけを相手に戦争をするつもりだったのであり、しかも開戦者側は数週間程度ですんなり勝利できると考えていた。だが、開戦者の予想を超えて参戦する国々が増えてしまい、泥沼の世界大戦となってしまった。

 第二次世界大戦も同様で、端緒はドイツとスロバキアがポーランドに侵攻し(ポーランド侵攻)、これを受けてイギリスとフランスが集団的自衛権を根拠にドイツに宣戦しただけである(この当時、アメリカは日中戦争に義勇部隊を送っていただけでモンロー主義に基づきヨーロッパの戦争には関与していなかった)。・・・」

 このように、過去の2つの世界大戦は、紛争当事者が世界大戦にまで拡大するとは予想しない中で起きてしまったことが分かる。

 現在、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略戦争が未だ収束することなく続いていて、泥沼の様相を呈している。

 侵攻開始当時、多くの専門家がまさか21世紀の世界で、こうした事態が起きるとは予想もしなかったとコメントしていたが、ロシアは実際にウクライナの首都キエフ(キーウ)を攻撃した。

 一旦侵略が始まってしまうと、今度は、核超大国のロシアが、いずれ核兵器(戦術核)を使用するのではないかといった懸念も、専門家から出るようになった。

 ウクライナ戦争開始から2年余、戦況がこう着する中、ロシアのプーチン大統領は次のような声明を発表したと報じられた。

 「2024年6月15日 BBC NEWS報道
 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は14日、ウクライナでの停戦条件として、ロシアが併合したと主張する領土からウクライナ軍が撤退することを求めた。また、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を完全にあきらめることも和平交渉開始の条件とした。
 プーチン大統領はこの日、ロシアが各国に派遣する大使をモスクワに集めた会議で発言。ロシアが部分的に占領している4つの地域(ドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリッジャ各州)から、ウクライナ軍が撤退することを求めた。
 さらに、ロシア軍の進撃を止めさせるには、NATO加盟をウクライナが正式にあきらめる必要があるとも述べた。
 プーチン氏は集まった大使たちを前に、『(ウクライナ政府が)そうした決定の用意があると宣言すれば(中略)我々はただちに、文字通りその瞬間に、戦闘停止を命令し、交渉を即座に開始する』と話した。・・・
 
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれに反発し、まるでナチス・ドイツのヒトラーのような『最後通告』だとし、同日、イタリアのテレビ局に対して、『一連の発言は、最後通告だ。ヒトラーが〈チェコスロヴァキアの一部をよこせ、そうすればここで打ち止めにする〉と言ったのと同じことだ。』と非難した。 

 ゼレンスキー大統領は以前から、クリミアを含むウクライナの全領土からロシアが撤退するまで、ウクライナはモスクワと交渉しないと繰り返している。
 ウクライナ大統領顧問のミハイロ・ポドリャク氏は、(プーチン大統領の)この提案を『完全な見せかけ』で、『常識を逆なでするものだ』と批判した。

 アメリカのロイド・オースティン国防長官もロシアの要求を一蹴し、『プーチンは主権国家ウクライナの領土を不法占拠している』、『その彼がウクライナに対して、和平実現のためああしろこうしろと指図できる立場にない』と批判した。

 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、プーチン氏の提案は『誠意あるものではない』と述べた。

 カーネギー国際平和財団ロシアユーラシア・センターのロシア研究者、タティアナ・スタノワヤ氏は、ウクライナ和平を協議するこの首脳会議が始まるのを前に、会議の評価を落とすことを意図したタイミングでの発言だと指摘。譲歩の余地を示さずに『最大限』の要求をしている内容だと説明した。」

 「最後通告」とは穏やかではない。少し遡るが、6月1日に、知人のT氏からの次のようなメールが届いていた(一部省略)。

 「世界情勢は、最悪になってきました。
 イスラエルのパレスチナ人虐殺は、ついに先月国際司法裁判所(ICJ)によって、民族虐殺であると最終判断が下りました。それにもにもかかわらず、イスラエルはそれを全く無視し、2百万人を超えるGazaのパレスチナ人虐殺を、さらに激しく、行なっています。・・・ 
 10月7日のハマスに対する報復では合理化できる規模ではありません。歴史的にもイスラエルの行動は正当化することができません。
 米国をはじめとする先進国は、ICJの判定をスルーしてほぼ無視しています。反対の声をあげているのは米国とカナダの一部の大学生だけです。最近ロシアは明確にイスラエルに対し厳格な対応をすることを表明しました。
 在シリア・イラン領事館爆破、スロバキア首相暗殺未遂、イスラエルによる核搭載空爆機の未遂、米国とNATOによるウクライナに対する軍隊駐留支援疑惑などロシアが明確にしているRed Line(戦争布告の限界線)を超えています。
 ロシアによる核兵器による戦争布告準備は、訓練の実施、声明など明確に世界に示されています。これを単なる『脅し』と米国、NATOと日本は、甘く認識していると思います。僕は本気だと理解しています。
 こんな状況の中、米国の余程の譲歩がない限り、・・・第三次世界大戦は始まると思います。
 弊社は、その準備としてできることは、全てしました。
T. 2024.6.1」

 そしてさらに、前記のプーチン大統領の声明を受けて、6月15日にT氏から届いたメールは次のようであった。

 「事は重大です。プーチン大統領が呼びかける和平交渉に緊急に入らない限り、第三次世界大戦が始まります。
 プーチンは、書面を準備して、読んでいます。ラブロフ外務大臣も外務官僚も出席の上、正確に戦争に至る過程と最終の和平交渉提案を説明・公表しています。ですからこれが予告です。核発射の事前予告はしないともすでに伝えられています。・・・
 ロシアは、・・・明確な国防方針(核使用に関するred line)を定め公表しています。さらに、核配備を完了(キューバ配備も)、演習もしています。アメリカNATO・G7は、ウクライナ代理戦争のこの局面で、軍人と兵器をウクライナに送り込みロシア本土攻撃をしました。完全にロシアのred lineを超えています。
 ロシアの核使用教義は防衛思想に立っています。アメリカの核使用教義は、攻撃教義に立っています。われわれは、この違いを認識しなくてはなりません。・・・
 今、アメリカとロシアの間には外交は全くありません。最後にプーチン大統領とバイデン大統領が電話で話したのは,2021年12月30日です。この合意は、2022年1月にアメリカの官僚によって完全に無視されました。
 みなさま、個人でこの危機に向かって下さい。
T. 2024年6月15日」

 米国在住経験と、国際的なビジネス経験があり、バイリンガルで海外の情報にもアクセスができて、友人も多いT氏のことだから、私たち普通の日本人よりもよほど多くの情報に接し、分析をしているであろう。

 そのT氏からのメールということもあり、普段のんびり構えている私も深刻に受け止めなければという気持ちになった。

 ただ、私たち普通の日本人に、こうした危機に備えて、何かできることとはあるのだろうか。
 危機管理の要諦は最悪の事態への備えだとされる。資産家であり、現役の事業経営者であるT氏には、危機に備えて手を打たなければならないことはいくつもあるのであろうが、年金生活者の私など、どのように危機管理をすればいいのか、全く想像もつかない。

 6月18日、小池東京都知事は3期目を目指して立候補を表明し、3選に向け「世界一の都市・東京を確立する。キーワードは『首都防衛』。都民の命と暮らしを守り、経済を発展させていく」と決意を述べた。
 その『首都防衛』では、地震や火災から命を守るため、木造住宅密集地域の解消と無電柱化を推進するほか、ミサイルの飛来に備えたシェルターの整備を進めるとした。 

 当地は軽井沢という特別な地域であり、地元の建設業者から聞くところによると、資産家諸氏の別荘の中には、地下核シェルターを備えているところもあるという。ビル・ゲーツ氏の地上2階地下3階の巨大な別荘もある。しかし、そうした備えのできない一般人は、人間の叡智に期待して、核戦争には至らないことをただただ願うしかない。

 評論家の池上昭さんが、少し前に書いた次のような文章がある。一部を抜粋してご紹介する(2024.6.16 東洋経済オンラインより)。

 「池上彰:『第三次世界大戦は起きない』と考える理由  
 戦後79年、日本は一度も戦争の当事者国になっていない。しかし世界では、絶えることなく戦争や紛争が続いてきた。そして2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻。2023年10月には、イスラム組織ハマスとイスラエルの間で戦闘が始まった。・・・
 第三次世界大戦は起きるか:
 いまウクライナとパレスチナでは戦闘が行われています。この戦火が3度目の世界大戦を呼び起こすのかーーそう案じる声も聞かれます。第三次世界大戦の可能性について考えます。・・・
 (世界大戦の定義に)基づくなら、ロシア・ウクライナ戦争は世界大戦ではありません。ところが、もしウクライナ軍にNATO軍が加わり、ロシア対NATOという構図になれば、第三次世界大戦になり得ます。なぜならNATO軍は、欧州合同軍(EU)、大西洋連合軍(アメリカ)、海峡連合軍(イギリス)、カナダ・アメリカ計画グループ(カナダ)など各国の軍隊で構成されているからです。
 しかしプーチンは、ロシア対NATOの戦争は避けたい。だから核兵器の使用をほのめかして脅しているのです。NATO側も、対ロシア戦争にならない程度にブレーキをかけています。したがって、いまのままであれば、ロシア・ウクライナ戦争が第三次世界大戦に拡大することはないでしょう。

 では、イスラエルとハマスの戦いはどうでしょう。
 もしイランがイスラエルと全面戦争になれば、イスラエルは核保有国ですから核ミサイルをイランの首都テヘランに向けて発射するかもしれません。しかも、アメリカは間違いなくイスラエルを支援します。・・・
 (アメリカの)空母から戦闘機や爆撃機が発艦し、ミサイル巡洋艦が一斉に数百発のミサイルを発射すれば、核兵器を使わなくてもテヘランは壊滅します。アメリカは、その力をイランに見せつけたのです。
 フーシ派の兵力は約2万人で、イスラエルが射程圏内に入るミサイルを擁しています。そして、アメリカとイスラエルが「敵」であることと、ハマスとの連帯を公言しています。その後ろ盾がイランです。だからといって、イランがイスラエルとの全面戦争に踏み切ることはないでしょう。
 イスラエルの核兵器とアメリカの空母2隻の存在が歯止めになっているからです。フーシ派による攻撃はイスラエル側の力を分散させ、ハマスを後方支援するための、あくまでも“ちょっかい”なのです。
 つまり、イスラエルとハマスの戦いもロシア・ウクライナ戦争と同様に、第三次世界大戦につながることはないでしょう。ただし、どちらも第三次世界大戦への「危機的な状況」を招いたことは間違いありません。
 ウクライナとパレスチナで多くの血が流れ、それは今も続いています(2024年2月末)。そして悲惨な映像を見て、人々の間に危機意識と恐怖が生まれました。その恐怖が、「次の戦争」に対する抑止力になっています。2度の世界大戦を経験した人類が、その歴史から少しは学んだと言えるかもしれません。」
 
 現状の分析からは、ただちに第三次世界大戦になることはないとの見解である。普通に考えればその通りだと思う。

 ただ、プーチン大統領の声明発表前後にも以下のように、事態は困難な状況へと進んでいる。

* G7がロシアの凍結資産の運用益でウクライナを支援することを決定した。 6月14日
 「6月13日にイタリアで始まった主要7か国首脳会議(G7サミット)では、ロシアの凍結資産を利用して、年末までに500億ドル(約7兆8,5000億円)をウクライナに支援する枠組みで各国が合意した、と報じられている。 日本や米国、英国、カナダが新たに創設する基金に融資をし、それをウクライナの復興や軍事支援として利用する枠組みだ。・・・」

* NATOのストルテンベルグ事務総長の核兵器配備に関する声明が出された。 6月17日
 「北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、ロシアや中国からの脅威の高まりを踏まえ、核兵器を保管庫から出して配備する方向で協議していると、英紙テレグラフに語った。・・・」

* 地球の反対側のアジアでは、プーチン大統領が6月19日に北朝鮮を訪問し、ロシアと北朝鮮の「軍事同盟」が復活している。
 「北朝鮮の朝鮮中央通信は20日、ロシアのプーチン大統領と 金正恩朝鮮労働党総書記が19日に締結した新条約『包括的戦略パートナーシップ条約』の全文を公表した。露朝のいずれかが武力侵攻を受ければ、遅滞なく軍事的援助を提供することが明記された。冷戦時代の軍事同盟の復活を意味する。・・・」

* 紅海では、イエメンのフーシ派が、米空母の攻撃に成功したと6月22日に発表し、 米中央軍がこれを「全くの誤り」と否定するという事態が起きた。
 「イエメンの親イラン武装組織フーシ派は22日、紅海で複数のミサイルを使用し、アメリカの空母『ドワイト・アイゼンハワー』を攻撃したと発表しました。
 攻撃の時期や被害などの詳細は明らかにしていませんが、作戦は『成功した』と主張しています。
 これに対し、アメリカ中央軍は『成功した』というフーシ派の主張は、『全くの誤りだ』と否定し、『悪意ある無謀な行動が続くことで、地域の安定が脅かされ、船員の命が危険にさらされている』と強く非難しました。
 アメリカ中央軍は、この24時間の間に紅海で、フーシ派の無人水上艦3隻を破壊したと発表しています。
 イスラム組織『ハマス』への連帯を示すフーシ派は、『パレスチナ自治区ガザでのパレスチナ人の包囲が解除されるまで、作戦を続ける』と強調していて、紅海やアデン湾で商船への攻撃を繰り返しています。・・・」

* ロシア、核ドクトリンの見直し開始を大統領府が表明 6月24日
 「 ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、同国が核ドクトリン(基本原則)の見直しを開始したことを明らかにした。
 プーチン大統領は20日、核兵器使用に関するドクトリンの変更を検討していると述べていた。
 ペスコフ報道官は『プーチン大統領はドクトリンを現在の状況と一致させる作業が進行中であることを明らかにしている』と発言。詳細は明らかにしなかった。
 ロシア下院国防委員会のカルタポロフ委員長は23日、政府が自国への脅威が高まっていると判断した場合、核兵器使用のドクトリンを見直し、使用について判断する時間を短縮する可能性があると述べている。」

* ICC ロシアのショイグ前国防相とゲラシモフ参謀総長に逮捕状 6月26日
 「オランダ・ハーグにあるICC=国際刑事裁判所は、ロシア軍がウクライナの電力インフラをミサイルで攻撃したことをめぐりロシアのショイグ前国防相とゲラシモフ参謀総長に対して戦争犯罪などの疑いで逮捕状を出したと発表した。
 尚、ICCは、ウクライナ情勢をめぐり、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちを移送したことが国際法上の戦争犯罪にあたるとして、ロシアのプーチン大統領などにすでに2023年3月17に逮捕状を出している。 」

* アメリカ ロシア 国防相電話会談 1年3か月ぶり 6月26日
 「アメリカのオースティン国防長官とロシアのベロウソフ国防相が電話で会談した。米ロの国防相による電話会談は1年3か月ぶり。
 オースティン長官は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、米ロ両国が意思疎通を維持することの重要性を強調したとされ、ロシア側の発表によると、両国防相は、ウクライナ情勢をめぐって意見を交わしたとしたうえで、ベロウソフ国防相は、アメリカによるウクライナへの武器の供与に関連し、緊張が高まる危険性を指摘したとしている。」

* ウクライナ、EU・リトアニア・エストニアと安保協定に署名 6月27日
 「 欧州連合(EU)およびEU加盟国のリトアニアとエストニアは27日にブリュッセルで開かれた首脳会議で、ウクライナのゼレンスキー大統領と安全保障協定に署名した。 
 今回の協定は、リトアニアおよびエストニアと締結した協定とともに、ロシアの侵攻に対する防衛を続ける中でウクライナとその同盟国との間で締結された他の同様の協定を補完することが目的という。
 ウクライナとの安全保障協定をめぐっては、すでに英国やドイツ、フランスなどの主要国も二国間で締結している。 」

 今もう一度、クラスメートに、55年前のアンケート「第三次世界大戦は起きるか?」を問いかけた時、皆はどのように答えるだろうか。


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