すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

RSSで広く薄くつながる僕らのキモチ

2005-05-20 23:25:21 | インターネット
 RSSの普及で、サイトの更新チェックは革命的に楽になった。もうお気に入りのサイトに「出かける」必要なんてない。家にいながらにして新しい記事だけを選んで読める。だが裏を返せば濃密だったお気に入りサイトとのつながりは、どんどん薄くなっている。私たちはいまやRSSという細い蜘蛛の糸でかろうじてつながるガンダダだ。

 毎日ネットサーフィンしていると、お気に入りサイトは雪だるま式にふえる。「あ、いいな」と思ってブックマークしても、巡回先が広がるにつれ気がつくと二度と見てなかったりする。ネット上にあふれる情報量は、すでに1人の人間の処理能力をはるかに上回っているからだ。

 そこで革命を起こしたのがRSSだった。RSSのおかげで私たちは、いちいちサイトへ出かけなくてすむ。新しく書かれた記事だけを選択的に読める。「アクセスしてみたら更新してなかった」なんて空振りがないから、そのぶんチェックできるサイトの数は飛躍的にふえた。

 事実、私はRSSリーダの「Headline-Reader」を使っているが、いまやこれがほぼメインブラウザ化している。愛用していたタブブラウザとの使用比率は、6:4から7:3くらいになっている。

 だがここでひとつ問題がある。RSSリーダを使っていると、お気に入りサイトが引っ越しても気づかない可能性があるのだ。ブログ「デジモノに埋もれる日々」のCK氏は、「URLというブランド力 - 機械処理を介して繋がる人々」の中で、自サイトの固定客が体験した笑えない笑い話をこう披露している。

「私の旧ブログ(Doblog版)を定期的に巡回してくださっていた方がいました。仮にAさんとします。Aさんは、私のブログが新MT版に場を移していることに、数ヶ月もの間気が付かなかったというのです」(一部、改行した)

 Aさんはティッカー型のRSSリーダを使っていた。で、「そういえば最近、デジ埋のエントリがないな~」と不審に思いながらも、なんと引っ越したことに数ヶ月も気づかなかったらしい。んー、ありえるわ、これ。

 さてそこで素朴な疑問がわく。私はRSSってあんまりくわしくないんだけど……。たとえばURLが変わったとき、新しいURLを含めて書き込んで、新サイトへ自動的に飛ばすようにできないんだろうか? 技術的には案外カンタンそうに思えるが、そういやこういの、だれも言ってなくない? どうなのよこれ?

 またCK氏はRSSが登場する以前には、「サイト引っ越しましたよ」「はい、ブックマーク変更しておくね」てな管理人と固定客のコミュニケーションがあった、とも指摘する。いわれてみると確かにそうだ。

 考えてみれば、これって便利になった現代のコミュニケーションすべてにいえる気がする。

 たとえば私の仕事なんかも、いまどきはメールとファックス、電話ですべて完結する。打合せのために編集者の方が拙宅へお見えになったり、私が編集部に出かける機会はめっきり減った。顔をつき合わせたコミュニケーションはなくなり、ネットワークとツールがそれを補完している。

 もちろんどっちがいい悪いの問題じゃない。これにはメリット、デメリットが両方ある。

 RSSを使えばより多くのサイトをチェックできるのと同じく、メールで打ち合わせがすむおかげで、こなせる仕事量は物理的にふえた。時間も有効に使える。ただしそのかわり相手の顔を見て、体温を感じながらでなければ生まれない新しい発想や切り口は、芽を摘み取られているかもしれない。

 記者が地べたを這いずり回って取材することを「足でかせぐ」という。そんなふうにして書いた原稿は、「記者の足音が聞こえてくるような記事」なんて呼ばれる。また人間が泥臭く努力することを称し、「汗をかく」って表現が使われる。

 その意味じゃ現代のコミュニケーションは汗をかかなくていいし、足でかせぐ必要もない。人間が動き回って人との距離を埋める行為を、ネットワークが瞬間的に代替してくれる。

 人は便利さに慣れるともう後戻りできない。特に私みたいに不精なヤツはなおさらだ。この流れは止めることは不可能だろう。

 とすればそんな世界に放り込まれた私たち現代人は、いままで以上に精いっぱい感性を研ぎ澄まし、心が磨耗しないよう覚悟を決めておく必要がある。いつも相手の顔を脳裏に描き、あちらの気持ちをイメージしなければならない。匿名論争でもお題になった、「相手の立場になって考える」ってやつだ。

 でなければ、あなたと私をつなぐRSSという名のガンダダの蜘蛛の糸は、いつぷっつり切れてしまってもおかしくはない。

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