すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ガーナ戦&ロシアW杯メンバー発表】チャンスをふいにする遅攻のオンパレード 〜日本0-2ガーナ

2018-05-31 16:21:46 | サッカー日本代表
つまらないミスから2失点

 負けたが結果は関係ない。この西野ジャパンという急造チームに超短期間で3バックを作りガーナに勝て、というのは罰ゲームに等しい。とはいえ日本が点を取れないことはこれでよくわかっただろう。より守備を重視して極力失点しない慎重な試合運びをすべきだ。でないと本番では「勝ち点1」すら取れない。一方、31日に発表されたロシアW杯メンバー32名からは井手口と浅野、三竿が落選した。

 結論から先に言えば、ガーナ戦の日本はつまらないミスから2失点して負けた。1失点目は前半8分、槙野のファウルによるFKを決められたもの。槙野はなぜあんなゴール近くで意味のないファウルをするのか? 彼はハリルに仕込まれて無駄なファウルは減ったはずだが……試合を壊した失点だった。

 2失点目は後半6分。ガーナのゴールキックから中盤で競ってこぼれたボールが日本のライン間にいたガーナの選手に間受けの形で渡り、そこから日本のライン裏に浮き玉のラストパスを出された。

 あわてたGK川島がこれに飛び込みPKを取られたが、川島はまったく飛び込む必要などなかった。また間受けしたガーナの選手には大島が下がってついておくか、長友が中に絞ってマークしておけば防げた失点だった。

 こういうムダな失点をひとつひとつ無くして行く。粘り強く守る。いまの日本がロシアW杯で一定の成績を収めるためには、それしかない。

新ネタの3バックは形になったか?

 急造の3バックは思ったよりマシだった(もっと酷いと思っていた)。ただ日本のビルドアップの場面では、ガーナはワントップなのだから日本のCBは2人でよかった。ならばリベロの長谷部は一時的に一列前に上がるなど、「後ろは3枚」という固定観念にとらわれず相手の対応を見て臨機応変にポジショニングしてほしかった。また3バック自体にしても、ビルドアップのときには両側の2CBがもっとサイドに開いてパスコースを作るべきだ。3人の距離が近すぎた。

 一方、ガーナによる最終ラインからのビルドアップに対しては、ワントップの大迫がミドルサードの敵陣側にポジショニングしてタテを切った。そしてダブルボランチと2シャドーが横一列になり、同様にタテへのパスコースを消していた。

 一方、敵に押し込まれると自陣に5-4のブロックを作る時間帯があったが、ライン設定が低すぎるシーンもあった。また事前合宿での情報では「極力5バックにならないようにする」という話だったが、方針変更したのだろうか? よくわからない。個人的には5-4のブロックを作ることには賛成だが、よく意思統一しておいてほしい。

 またこの日は前半の3-4-2-1のほかに3-4-1-2や4-4-2などのフォーメーションを試したが、2トップに変えれば前への推進力が増すことがわかった程度で、どれも「形になった」とまではいえない。とはいえ2トップは攻撃だけでなく、守備における前からのプレッシングの意味でも捨てがたいオプションといえる。3バックだけでなく、2トップもさらに熟成させてほしい。

ショートパスをこね回す遅攻ふたたび

 総評すれば、「また昔のショートパスをこね回す遅攻のチームに戻ったな」という印象だ。それを「日本らしい」というなら、もはや皮肉にしか聞こえない。特にゴールへ向かう強い求心力がなく、ボックス外だがそこで短くドリブルしてシュートを打ってほしい局面なのにパスしてしまう。「自分で」「前へ」の積極性がない。

 日本はせっかく速いカウンターのチャンスなのに、いったんバックパスして攻めをスローダウンさせてしまう。で、完全な遅攻オンリーと化す。そのうちにせっかくあったスペースを埋められ、2〜3メートルの弱いショートパスを足元につなぐことしかできなくなる。「劣化バルセロナ現象」である。この繰り返しで攻めに変化がなくリズムがまったく同じ。緩急がない。あれでは日本の遅攻にすっかり目が慣れた敵の陣形を崩せない。

 後半にともに途中出場したFW岡崎がウラのスペースへ鋭く走り込み、柴崎がそこへ速いスルーパスを出すシーンはあったが、全体としてそんなタテへの速さは数えるほど。特に本田はえらく動きが鈍重で、フラフラとよく倒れる。敵にボールを奪われるだけの鈍いドリブルと、攻めを遅らせるバックパス、横パスを繰り返してばかりいた。西野監督は本気であのコンディションの本田をW杯へ連れて行く気なのだろうか?

 それとは対照的に途中起用されたFWの武藤はキレのよさとアグレッシブさ、鬼プレスが目を引いた。ハリルジャパン時代には速攻カウンターの起点として、前に張った大迫に奪ったボールをまず預ける速い縦パスがチームの「攻めのスイッチだ」という共通理解があった。だがカウンターをやめた西野ジャパンではその機能がなくなり、大迫は前線で孤立気味になり位置づけが曖昧になっている。であれば、よりゴールに迫る個の力がある武藤の起用(1トップか2トップでの)も考えていいのではないか?

ロシアW杯メンバー23名の最終発表があったが……

 このほか選手別では、ボランチの大島はいい縦パスを出していたが、ボールの競り合いになるとデュエルが弱くインテンシティが低い。そこが彼の大きな課題だろう。一方、途中出場したボランチの柴崎はセンスがピカイチで局面を打開する魅力にあふれていた。

 左ウイングバックを務めた長友はキレキレでコンディション、メンタルともに上デキ。ひょっとしたらキャリア最高値ではないか? 彼を生かしたい。対照的に酒井高徳のボールを持ったときのあわてぶりは目も当てられないが、DFは人数の関係で彼もW杯メンバーに選ばれている。

 レギュラー確定と見られていた山口蛍は、何度もリスキーな横パスとバックパスを繰り返して狙われていた。非常に不安定だ。またコンディションが心配された若手の井手口は最終メンバーから外れた。彼は致命的なバックパスをした以外はボール奪取力、組み立てともに見るべきものがあり、落選は果たしてどうだろうか?

 一方、途中出場した香川と岡崎は「気持ち」は感じられたがコンディションがどうか? 香川は冴えたサイドチェンジとプレッシングで「おっ」と思わせたが、そのうちに試合から消えてしまった。かたや岡崎はウラへの飛び出しが光ったが……。とはいえベテランの経験重視な西野監督のこと、両者ともW杯メンバーに選ばれた。

 3年間かけてハリルが進めた若手への世代交代だったが、今度の新監督は日本人らしい保守性と無難さで時計の針をまた一気に巻き戻した。たとえ満足な結果は残せなくとも、せめて「未来」に向けた光のあるロシアW杯にしたかったが……。

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