匿名・実名論争では、ひとりでも多くの方に議論を呼びかけるため、私はスパムチックなトラックバックの使い方をした。批判を覚悟の狼藉だったが、幸い趣旨に賛同していただけ、たくさんのトラバと有意義なコメントを頂戴した。ブログが議論を喚起する力にはまったく脱帽だ。
私のたくらみの趣旨と経緯については、ニュースサイトの「RBB TODAY」で私が連載しているコラムにくわしく書いた。もしご興味のある方は、そちらもあわせてお読みいただけると幸いだ。
さて今回、考えさせられたのはトラバの使い方だ。たとえば匿名論争について、「Aさんならきっと洞察力ある論述をされるだろう」、「Bさんならご自身の立場柄、参考になる体験談が聞けるにちがいない」と思ったとしよう。
で、Aさん、Bさんに意義のある意見表明をしていただければ、議論するためのいいタタキ台になる。みんなでそれをもとに論議を深めることができる──。こう考えたとする。
この場合、私はいわば作家さんに原稿を依頼する編集者みたいなものだ。「依頼」とは、匿名問題について私がエントリーを立て、みなさんにトラバを送ることである。つまりトラバで議論を呼びかけるのだ。
ところがこの場合、Aさん、Bさんが匿名・実名問題について過去に書いたことがなければ、トラバを送れないことになる。強引にやったらトラックバックスパムだ。
さりとてテーマには公益性があり、Aさん、Bさんの意見表明はきっと社会的な利益になるはずだ……。で、前述のコラムに書いた経緯とやり方で、私は「やっちゃう」ことにした。
さて私の行為はいわば「非合法」なわけだが、みなさんはどう思われるだろうか?
上記のコラムの文中では、匿名問題を取り上げているいくつかのブログを紹介した。そのうちのひとつ、「むだづかいにっき♂」のえっけんさんが当のコラムをお読みになり、さっそくエントリーを立ててご意見をくださった。少し長くなるが、一部を引用しよう。
『記事全文を読むと、スパムとされないための工夫はいろいろとされており、こういうやり方であれば僕は不快感は感じないものの、僕は記事の話題と無関係なトラックバック・コメントは歓迎しないのです。「知的で洞察力があるからご意見を聞きたい」と言われたとしたら、まぁ悪い気はしないだろうけれど、その話題に関しては不得手な分野という事もあるだろうし、そうしたコメントがあることで、それまでのコメントの流れを断ち切ってしまうような気がします(もっとも松岡さんのように最新記事の感想をも書く、というのならば、最大限の配慮が感じられ、悪い気はしませんが、そこまで考えて「呼びかけ」を行う人は、一体どれくらいいるだろう?)』
はい、わかっております、えっけんさん。だからえっけんさんには、呼びかけのトラバを送らなかったんです(笑)。
私は「むだづかいにっき♂」をよく読んでいるので、えっけんがトラバに対してどんな考えをお持ちなのか知っていた。
で、「えっけんさんはこの方法はヨシとしないだろうなあ」と思ったので、ご意見は拝聴したかったが呼びかけトラバは送らなかったのだ(すでにえっけんさんは何度か匿名問題を取り上げていたから、というのもある)。
また、えっけんさんがおっしゃることはすべて正論である。そんなわけで微妙な問題をはらみながらも、みなさんからは匿名・実名についていろんなご意見をいただき、私自身もとても勉強になった。トラバ、およびコメントをくださった方々には、この場を借りてお礼を申し上げたい。
いずれにしても今回の件で、私はブログのもつ途方もない可能性に驚かされた。アメリカじゃ、「ブログ廃人」が続出してるっていうけど、わかる気がするなあ。いやホントに。
とはいえ今回は、たまたまお叱りを受けなかっただけだ。最後に自戒を込めて、コラムの方に私自身が書いた結論を付記して懺悔の記録を終えさせていただく。
「もちろんトラバに対する考えは人それぞれだ。また公共性があるからといって、みんながやたらに対象エントリーとは無関係なトラバを打つようになったらカオスである。あくまでトラバを送る先は『他人の家』だってことを忘れてはいけない。最終的にはトラバを送られた側が、それを許容するかどうかの問題なのだろう」
【関連エントリ】
(追記)結論部分を付記した(5/27)
ちょっと前の記事なんでご存知でしょうが、一応関連ということでTB致しますね。
それでは今後ともよろしくです。
ブログ廃人かぁ。
ネトゲ廃人のようなモンですねぇ。
ブログって、ある意味じゃオンラインゲームですし。
ある程度、深入りしすぎると
書いている側じゃなく、読む側からも
拘束されるようになっていくんでしょうね。
コミュニティからの拘束というか。
オンライゲームでも
しばらくログインしなかったりすると
友達から「一体どうしたんだ?」ってメールが
届きはじめますし。
TBって形の強制的にリンクを作るシステムの
おかげで情報が伝播しやすくなりましたが
代償として、ネットワークからの
拘束度が飛躍的に上がっているのが
ブログってシステムなんでしょうな。
気持ちはすごくよくわかるんです。私もつい最近それをやってしまおうかと思った事があったんですが、思いとどまりました。
やはり理想は、エントリーで記事にするだけで議論が沸きあがる状態です。梅田さんのブログ論やR30さんのブログ終焉論のように。TB飛ばさなきゃ議論が起きないのであればきっとそれはまだ力不足、分不相応なのだと解釈するべきです。
議論の呼びかけ、私が送るにしても関係ある記事がなかったらTB送る勇気ないですし、関連ある記事があるようならそれ以上掘り返すのも気が引けちゃったりします。ですので、そういうときはメール出すと思います。私、ブログ歴は短いですけど、日記サイトを9年以上もやってるので、メール+掲示板システムが普通なんですよね。ブログって、記事ごとのコメントやTBはあっても、全体へは送信できない。そういう場が用意されてないブログでは呼びかけのTBは難しいかなぁと思います。
ただ、議論の呼びかけは大賛成ですね。私自身、誘ってくだされば(思うところがあったら)ぜひ書きたいですし、書いて欲しい人もいますもん。そのための仕組みをどうにか考えたいものですね・・・
私も関係ないところにTBしたことがありますが、松岡さんと同じように、そのとき同時にご挨拶をコメント欄に送りました。
要するに、礼儀をわきまえていれば、不快に思う人は少数なのでは?嫌なら無視すればいいのだし、関心があれば応えればいいだけの話でしょう。
極端な反応をする人もいるみたいですが、まあ、それがその人の個性であり、私ならその個性を尊重して、敬して遠ざかります。
おはようございます。
恐怖の粘着男でございます。
匿名に関するエントリは、当方の中ではまだ終わってません。
が、今ネット難民なので落ち着いたらTB狙撃させていただきます。
先日は連続コメントありがとうございます。(笑)
まあ、コメントもTBもコミュニケーションの一手段ですから、送られた相手側さえ不快に思わなければいいのではないでしょうか。(ちなみに、私は全く不快に思いませんでしたよ)
ただし、私にはそのような洞察力がないので真似できません、笑。
わたしは関連あるTBを送るときでも、「TBさせていただきました。」という言葉+「エントリへの感想ひとこと」を書くようにしてます。
単純に考えて、その方が、相手もウレシイだろうし、気持ちよくネットワーキングできるから。
「お互いに気持ちよくネットワーキングする」という、今風に言えば「WIN・WIN」の関係(笑)への、ちょっとした配慮が大事だと思います。
あと、自分がオンラインに存在して何かを公表してるということは、不特定多数のどんなひとがどんな方法(やり方)ででもコンタクトしてくる可能性があるということは、やっぱり覚悟しておかないとダメだと思います。
表通りでお店をオープンしてりゃ、上品なマダムからヤクザチックなお兄ちゃん、騒々しい子どもまで、誰だって入ってくることはできるんです。
望まないひとが入ってきたからといって、いちいち憤慨したり相手を非難てても仕方ない。
丁重にお断りしてお帰りいただくか、モメたら警察呼ぶかしかありません。
(ん?じゃあ、オンラインでの警察機能って誰が果たしてるんだろう?)
でも、どんな客層にするかは、扱う商品や陳列方法で、ある程度コントロールできますよね。
ごちゃごちゃと猥雑な店では万引きが多発します。
高級エステに浮浪者は入ってこないでしょう。
でもカネに飽かせて教養のない成金ババアが入ってくる可能性はあります。(笑)
確かに礼儀は大切ですが、トラックバックを送った後に、「トラックバックを『送らせていただきました』」とだけコメントするの。
やっぱり昔からBlogやっているから、今、そのような「暗黙の了解」ができていることにやりにくさを感じます。
もともと、「あなたの記事に対して私はこんな記事を書いていますよ」という、お知らせの為のツールで、「送り先のエントリー」が先にあるものだったはずですよ。
そうなると、そこに現れてくる関係って、インタビュアーとインタビュイーの関係になりますよね。
そこを意識すれば、自然と「概要」の書き方が定まってくると思うのですが。
「トラックバック『送らせていただきました』」だけのコメントって、「なんでそんな無駄なことをするのだろう」と思いますし、それなら、(概要を記入できないサービスもあるので)そこにトラックバックの趣旨でも書いてくれたら、コメント欄も生き生きするのになって思います。
「相手のエントリー」が先にあるのは一緒ですが、「相手のフィールで発言する」のがコメント、「自分のフィールドに持ってくる」のがトラックバックという簡単な考えがまかり通っていた頃が懐かしいです。
と、言っていると、またシーラカンス的Bloggerと言われそう。今回の僕のコメントは結構昔のポリシーなのかもしれませんね。
まあ、使い方は人それぞれで良いかもしれないと思うのですが、松岡さんが「自分が送ったトラックバックはスパム的な感じになっているのかもしれない」と考えていることが、僕にはよく分かりません。
だって、関係するエントリーがあるところに送っている訳で、そこはトラックバックが開かれていた訳でしょう?