ボクシングでいえば、撃ち合おうとするとクリンチに持ち込まれ、ズルズルと相手のペースにされた試合だった。ペルー戦の敗戦をことさらあげつらうつもりはない。だが日本のサッカー界は、世界における日本代表の位置づけを、もう見直すべき時にきている。「大いなるカンちがい」は百害あって一利なしだ。
立ち上がり、ペルーはハーフウェイラインあたりからしきりにプレスをかけてきた。日本のボール運びは1~2タッチ以内でスムーズだが、ペナルティエリアに入るとことごとくはじき返されてしまう。
これが「ボールキープ・ゲーム」なら日本の圧勝だ。だがいかんせん、サッカーは点を取って勝敗を競うゲームである。なんだか日本は「別のルール」で試合をやってるみたいだった。きっと選手たちは負けた気がしないだろう。だがこれが今の日本の実力なのだ。
特に前半は2列目、3列目の飛び出しが少なく、相手ゴール前でサムシングを起こす気配がなかった。トップにボールを当てたあと、周囲の動きがあまりにも少なすぎる。「あとは頼むよ」てな感じだ。あれでは鈴木はたまらないだろう。クサビの選手はある意味「つぶれ役」だが、「つぶれただけ」で終わってしまうのだ。
ペルー側から見ればトップに入ってくるボールと、もとから張ってる選手だけをケアすればいいんだから、こんなにラクな話はない。
サッカー・ネタでは、何度も同じことを書くハメになって参ってしまう。だが修正点が直らないんだからしかたない。パス&ゴーをしなさい、あなたたち。少年サッカー団の教科書にも書いてありますよこんなものは。
サントス、三浦の両サイドは生きていた。だがサイドから折り返しが入ったときも、まったく同じパターンだ。シューターは鈴木と玉ちゃんだけで、クロスに反応して飛び込んでくる2列目がいない。
センタリングが入る時点では、もうペルーはゴール前に人数をかけてガチガチに固めてる。なのにあれじゃあ、「何か」は起こりようがない。将棋でいえば、穴熊な相手に飛車だけで攻めてるようなもんだ。
後半24分に稲本が入り、彼がしきりに前へ飛び込むようになってゴールの匂いがしてきた。だが時すでに遅し。最後は絵に描いたようなカウンターでご臨終とあいなった。ナムアミダブツ。
唯一の救いは、途中から入った大黒様と稲本が片鱗を見せたことだろう。
大黒はボールの受け方がよく、常に相手にダメージをあたえる動きをする。守備側から見ればやっかいな相手だ。ああいうニトログリセリンみたいにデインジャラスでゲルト・ミュラーな男は、代表じゃ久しぶりに見る気がする。
もし私がカントクだったら、後半のド頭から使うけどな。てかキリンカップなんだから先発で使うわ。
それと三浦にもふれておこう。クロスとシュートだけなら、彼は超一流の選手だ。中村も鋭いボールを蹴るが、あれはアート。三浦のはカミソリだ。あんなふうにククッと落ちながら曲がるんじゃたまらないな、相手は。キーパーのほぼ正面に飛んだシュートなのにキャッチングできないんだから、こぼれ球も狙えて一石二鳥だ。
だが惜しむらくは……。前にできたスペースの生かし方、ボールの受け方をマスターしてれば、いい選手なのになあ(ポツリ)。サイドでやるならこれって必修科目だ。ボールをもったときだけ輝くんじゃなくて、周囲の選手に連動し、有機的なユニット単位で切り裂けなきゃ。だいぶマシにはなったが、同じことはサントスにもいえる。
それにしてもペルー戦を見て、もうジーコでいくなら3点取られたら4点取って勝つサッカーをするしかテがないんじゃないか? と思えてきた。小笠原が中村に変わっても、前に飛び込まないのは同じだ。ならボランチの一角は稲本で決まり。とすればもう片方はふつう守備専になるが、んなこた言ってらんないから小野チンで。
もうこのチームはバランサーがどうの、ワイパーとアンカーがこうの、なんて言ってたら点取れないわ。FWだけを入れ替えたって何も解決しないぞこれ。そういう知性のないサッカーは好みじゃないけど、ヤケクソだ。バランスなんて考えず、もう百姓一揆でぶちかましてこい(まじで捨て鉢だな、わし)。
それからもうひとつ。冒頭でも書いたが、日本のサッカー界は関係者、サポーターも含めて世界における日本の立ち位置を再確認すべきだ。以前、「次の目標はW杯でベスト8だ」なんて言ってるおめでたい人がたくさんいて「おいおい」と思ったが、とてもそんなレベルじゃないぞ。
大切なのはくり返しW杯に出続けること。そして「決勝トーナメントの常連」になることだ。
決勝トーナメントに進むのと、そこからひとつ勝つのとじゃ、えらいちがいだよ。その狭間には深くて険しい谷がある。日本はとてもそこまでいってない。ちょっと前までトラップもロクにできない選手がゴロゴロいたんだからさ、日本代表には。
とにかくW杯の決勝トーナメントに足跡を刻み続ける。W杯でいいサッカーを見せ続け、世界の脳裏に「日本」を焼きつける。そうすればサッカー・ネイションとの人的交流や、クラブ単位でのつながりも定着するだろう。これって日本サッカーのレベルアップにとっては大きな財産だ。
今だってユベントスやらレアルやらが来日してて、一見、交流があるように見える。でも「儲かるから行く」ってんじゃだめなんだ。相手が日本に敬意を払い、「タメになるから行く」って思わせるようにならなきゃ。
そのためには歴史の蓄積が必要だ。たとえばチェコなんて今でこそ世界の強豪ってことになってるが、世界レベルでは2流国、3流国の時代が長かった。チェコは急に強くなったわけじゃない。ヨーロッパの強国に囲まれて、虐げ続けられた歴史がある。
日本は決勝トーナメントで何度も叩き潰されるだろう。だけどサッカーには負けなきゃわかんないことって多い。だからタメになるんだ。決勝トーナメントで向こう50年間、負け続ける。そのときやっと我が代表は、「次へのパスポート」を手にするのだ。
●この記事がおもしろかった人はクリックしてちょ♪
人気blogランキングに投票!
立ち上がり、ペルーはハーフウェイラインあたりからしきりにプレスをかけてきた。日本のボール運びは1~2タッチ以内でスムーズだが、ペナルティエリアに入るとことごとくはじき返されてしまう。
これが「ボールキープ・ゲーム」なら日本の圧勝だ。だがいかんせん、サッカーは点を取って勝敗を競うゲームである。なんだか日本は「別のルール」で試合をやってるみたいだった。きっと選手たちは負けた気がしないだろう。だがこれが今の日本の実力なのだ。
特に前半は2列目、3列目の飛び出しが少なく、相手ゴール前でサムシングを起こす気配がなかった。トップにボールを当てたあと、周囲の動きがあまりにも少なすぎる。「あとは頼むよ」てな感じだ。あれでは鈴木はたまらないだろう。クサビの選手はある意味「つぶれ役」だが、「つぶれただけ」で終わってしまうのだ。
ペルー側から見ればトップに入ってくるボールと、もとから張ってる選手だけをケアすればいいんだから、こんなにラクな話はない。
サッカー・ネタでは、何度も同じことを書くハメになって参ってしまう。だが修正点が直らないんだからしかたない。パス&ゴーをしなさい、あなたたち。少年サッカー団の教科書にも書いてありますよこんなものは。
サントス、三浦の両サイドは生きていた。だがサイドから折り返しが入ったときも、まったく同じパターンだ。シューターは鈴木と玉ちゃんだけで、クロスに反応して飛び込んでくる2列目がいない。
センタリングが入る時点では、もうペルーはゴール前に人数をかけてガチガチに固めてる。なのにあれじゃあ、「何か」は起こりようがない。将棋でいえば、穴熊な相手に飛車だけで攻めてるようなもんだ。
後半24分に稲本が入り、彼がしきりに前へ飛び込むようになってゴールの匂いがしてきた。だが時すでに遅し。最後は絵に描いたようなカウンターでご臨終とあいなった。ナムアミダブツ。
唯一の救いは、途中から入った大黒様と稲本が片鱗を見せたことだろう。
大黒はボールの受け方がよく、常に相手にダメージをあたえる動きをする。守備側から見ればやっかいな相手だ。ああいうニトログリセリンみたいにデインジャラスでゲルト・ミュラーな男は、代表じゃ久しぶりに見る気がする。
もし私がカントクだったら、後半のド頭から使うけどな。てかキリンカップなんだから先発で使うわ。
それと三浦にもふれておこう。クロスとシュートだけなら、彼は超一流の選手だ。中村も鋭いボールを蹴るが、あれはアート。三浦のはカミソリだ。あんなふうにククッと落ちながら曲がるんじゃたまらないな、相手は。キーパーのほぼ正面に飛んだシュートなのにキャッチングできないんだから、こぼれ球も狙えて一石二鳥だ。
だが惜しむらくは……。前にできたスペースの生かし方、ボールの受け方をマスターしてれば、いい選手なのになあ(ポツリ)。サイドでやるならこれって必修科目だ。ボールをもったときだけ輝くんじゃなくて、周囲の選手に連動し、有機的なユニット単位で切り裂けなきゃ。だいぶマシにはなったが、同じことはサントスにもいえる。
それにしてもペルー戦を見て、もうジーコでいくなら3点取られたら4点取って勝つサッカーをするしかテがないんじゃないか? と思えてきた。小笠原が中村に変わっても、前に飛び込まないのは同じだ。ならボランチの一角は稲本で決まり。とすればもう片方はふつう守備専になるが、んなこた言ってらんないから小野チンで。
もうこのチームはバランサーがどうの、ワイパーとアンカーがこうの、なんて言ってたら点取れないわ。FWだけを入れ替えたって何も解決しないぞこれ。そういう知性のないサッカーは好みじゃないけど、ヤケクソだ。バランスなんて考えず、もう百姓一揆でぶちかましてこい(まじで捨て鉢だな、わし)。
それからもうひとつ。冒頭でも書いたが、日本のサッカー界は関係者、サポーターも含めて世界における日本の立ち位置を再確認すべきだ。以前、「次の目標はW杯でベスト8だ」なんて言ってるおめでたい人がたくさんいて「おいおい」と思ったが、とてもそんなレベルじゃないぞ。
大切なのはくり返しW杯に出続けること。そして「決勝トーナメントの常連」になることだ。
決勝トーナメントに進むのと、そこからひとつ勝つのとじゃ、えらいちがいだよ。その狭間には深くて険しい谷がある。日本はとてもそこまでいってない。ちょっと前までトラップもロクにできない選手がゴロゴロいたんだからさ、日本代表には。
とにかくW杯の決勝トーナメントに足跡を刻み続ける。W杯でいいサッカーを見せ続け、世界の脳裏に「日本」を焼きつける。そうすればサッカー・ネイションとの人的交流や、クラブ単位でのつながりも定着するだろう。これって日本サッカーのレベルアップにとっては大きな財産だ。
今だってユベントスやらレアルやらが来日してて、一見、交流があるように見える。でも「儲かるから行く」ってんじゃだめなんだ。相手が日本に敬意を払い、「タメになるから行く」って思わせるようにならなきゃ。
そのためには歴史の蓄積が必要だ。たとえばチェコなんて今でこそ世界の強豪ってことになってるが、世界レベルでは2流国、3流国の時代が長かった。チェコは急に強くなったわけじゃない。ヨーロッパの強国に囲まれて、虐げ続けられた歴史がある。
日本は決勝トーナメントで何度も叩き潰されるだろう。だけどサッカーには負けなきゃわかんないことって多い。だからタメになるんだ。決勝トーナメントで向こう50年間、負け続ける。そのときやっと我が代表は、「次へのパスポート」を手にするのだ。
●この記事がおもしろかった人はクリックしてちょ♪
人気blogランキングに投票!
俺もTBさせてもらいますね。
凄く楽しく読まさせてもらいました。
俺も美樹さんの意見に同感です!
日本のFIFAランキングは明らかに過大評価だから
もっともっと経験を積んで真の実力を
身につけて欲しいと思います。
代表のこの先が心配になる敗戦でした。来月は大丈夫でしょうか?1試合も簡単な試合はありませんが、たまには安心して見てみたいものです(笑)
サッカーにおける知性とは、勝つことなんだろう、形ではなく、飛び込むことなんだろう。体張ることなんだろう。その必要性を共通認識することなんだろう。と思う。
はじめまして、yutaと言います。
おもしろく読ませていただきました。
「パス&ゴーをしなさい」という台詞が、とても悲しくて、笑ってしまいました。華麗なパス回しの「ボールキープゲーム」に、闘争心は感じられないですね。残念です。
折り返しトラックバックしました。
今回ここで書かれている内容ですが、もう諸手を挙げて100%同意いたします。
一体全体どうやって点を取ろうと選手各々が考えているのか、その辺りからはっきりさせて欲しいものです。
自分も書きましたが、ボール回しから決定機を作るようなアクセントがありませんでしたね。
パス&ゴーしなさいは自分がキャプテンをしているフットサルチームでも口を酸っぱくしていっています。そんくらい基本ですよね(笑)
記事、大変興味深く読ませていただきました。
内容に関しては、思っていた事を書いていただいたような感じがして、スッキリトした気分になったほどです。
ペルー戦に関しては、ボールを拾いに行くところで、ペルーの選手に当たりにさえ行っていませんでした。
ファイトしていなかったというんですかね。
システム云々の前に、目の前の相手とファイトしないようでは、ゲームは自ずと手の中から逃げてしまいます。
UAE戦。
選手が闘う姿勢を持ったのかを期待しながら見たいですね。
なかなか気持ちよく試合を見させてくれませんね~(笑)