すちゃらかな日常 松岡美樹

積極財政などの政治経済をすちゃらかな視点で見ます。ワクチン後遺症など社会問題やメディア論、サッカー、音楽ネタも。

【国家の自殺】牛や鶏を殺せば国から補助金が出る「謎の仕組み」とは?

2025-03-11 16:41:40 | 政治経済
食料自給率が低い日本、こんな政策でいいのか?

 農林水産省は2023年3月〜12月まで、なんと畜産農家が乳牛を殺せば補助金を15万円出すという生産抑制を行った。

 これは「酪農経営改善緊急支援事業」の一環として実施されものだ。

 農水省によれば、理由は生乳の生産過剰である。

 直接的な要因としては、コロナ禍で学校給食や外食産業の需要が激減したのが原因だという。

「乳産物の生産量は、もともと生産者団体があらかじめ生産計画を作り決めています。それが(コロナ禍で)余ってしまった。余ればまず、生産量を絞るのがセオリーです。で、殺処分が行われました」(農水省)

 またこれに先行し、卵を生む鶏を殺しても1羽当たり310円、屠殺する食鳥処理場には1羽につき47円が支払われている。

 鶏は一度に何万羽も屠殺するから、農家には膨大な補助金が入る。例えば2020年には、16億円が支払われた。

 この鶏に対する政策は、2020年以降に鳥インフルエンザが本格化して以降に拡大された。まあ鳥インフルを防ぐためなら仕方ないともいえるが、それにしてもなんだか割り切れない。

人間の勝手な都合で生き物をバンバン殺していいのか?

 農水省は、「余ればまず生産量を絞るんだ」とカンタンに言う。だが殺される牛にとっては、たまったもんじゃない。

 まず第一に、人間のこんな勝手な都合でバンバン生き物を殺すことが許されていいのか? という疑問がひとつある。

 次は食料自給率との関係だ。

 ただでさえ日本は「自給率が低すぎる。上げなきゃダメだ!」とさかんに言われている。なのに生乳や卵を産む生き物を殺すなんて、いかにも極端な政策ではないか?

 食糧危機を叫ぶ切羽詰まった声が片方にあるのに、この動きはそんな流れに完全に逆行しているように見える。

 この奇妙な現象を見れば、まるで日本という国はみずから進んで「自殺しようとしている」かのようだ。

 例えば古くは米の減反政策や、最近では稲や麦、大豆の生産を増やすのを目的にした「種子法」が2018年に廃止されるなど、似たようなヘンな流れが続いている。

 いったいなぜ、日本はこんな「国家の自殺」ともいえる政策を取り続けるのだろうか?

農家は補助金をもらう代わりに「資産」を失う

 まず牛や鶏の殺処分に関しては、農水省の言い分では「思ったより生乳や卵の生産量が多かったから」のひとことに尽きる。

 だが農家は何年もかけて牛の購入資金から設備費、飼育費などを投資している。牛は農家にとって財産なのだ。それをいかにも安直に「殺して解決する」なんて、あり得ないだろう。

 また農家は牛の頭数が減れば、将来的な収入が安定しなくなるという可能性もある。

 突き放し(感情抜きで)この現象を見ると、まず市場全体の「需給バランス」というマクロの視点で殺処分が行われた、ということになる。

 だが一方で家畜は農家にとって資産だから、ミクロの視点=個々の農家の都合で考えれば、経営の縮小や資産を失う大きなデメリットにもなる。

 なのにこの政策は、目先の需給バランスに帳尻を合わせた一時的な埋め合わせにすぎない。いかにも近視眼的で、長期的な視点に欠けている。

 事態を改善するには、もっと大胆な政策転換が必要だろう。

国債発行して国が買い上げればいいじゃないか?

 二度あることは三度ある、という。

 官僚がこんな緊縮的な発想のままでは、今後もまた同じこと(殺処分)があるかもしれない。そのときのために、最後にひとつだけ提言しておこう。

 例えば余った生乳を国が買い上げ、加工して日持ちする状態にして備蓄すればいいんじゃないか?

 なんなら後日、国が「ヒノマル印の加工乳製品」として、国民に安く売れば喜ばれるはずだ。

 これなら加工業者にとっても収入になるし、農家は国に生乳を買い取ってもらえて牛は殺さずにすむ。

 万々歳だ。

 え? 国が買い取るなんて、そんな予算がどこにあるんだって?

 いやいや、このブログではさんざん何度も書いているが、日本には「円」という自国通貨がある。

 そして国は通貨発行権を持っている。また自国通貨建て国債は、論理的に破綻するなんてあり得ない。

 だったら国が国債をガンガン発行し、それで資金を作って買い上げれば済む話じゃないか?

 そもそも牛を殺して補助金=「国のカネ」を出すくらいなら、生乳を買い取るのに同じ「国のカネ」を使ったほうがずっと生産的だ。ポジティヴだろう?

 何よりこれなら食料自給に貢献できるし、農家のためにもなって一石三鳥だ。

 なにしろ牛を殺すほどの非常事態なんだから、これくらい大胆な政策転換をするべきだろう。

政権交代して積極財政を行う「シン・財務省」を作れ

 もっともこのプランには、ひとつ大きな難点がある。

 それは財務省が決して「ウン」と言わないだろう点だ。

 だったらもう、いっそのこと政権交代し、その暁には新政権のもとで財務省を解体・再編して積極財政を行う「シン・財務省」を作るしかない。

 これを実現しない限り、いまの緊縮財政オンリーのドケチな財務省のままでは日本に未来はないだろう。

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