マリンバ奏者にとっては、奇跡のような1冊。「安倍圭子マリンバ作品解説 表現へのアプローチ」
マリンバ界のレジェンドのお一人で、マリンバに携わる者なら誰もが知っている、安倍圭子先生ご自身による解説本です。自筆譜の写真、それぞれの作品の背景も記されています。こんなに美しい楽譜を書いておられるのか、と感動します。
先生の書かれる文章も、昔から思っていたことですが、まさに「音楽」のような文章でとても素敵なのです。毎回、コンサートのプログラムに載せられてる先生の詩も、しっとり、しんみり、じんわりくる言葉の数々で、心が震えていました。この解説本にも、先生の想い、心の風景が詰まっています。
私は、マリンバの自作自演という演奏スタイルを目指していたので、まさに安倍圭子先生は理想の姿でした。大学時代、普段の生活の中から感じたことや、自分が見た風景などを音符にして、それをマリンバで演奏する術を知らなかった私は当時、安倍先生のコンサートを聴いて、私の言葉にならない想いを安倍先生がマリンバ演奏で叶えて下さったと感動し、いてもたってもいられず、先生にお手紙を書いたことがあります。そうしたら先生はすぐにお電話を下さって「嬉しいわ~。こんどのコンサートも是非いらっしゃい。」と言って下さいました。もちろんですが、行きました。
私が、大学院を修了した時に書いた独奏マリンバについて研究した論文があるのですが、安倍先生の作品についても論文の中で書いていたので、その論文をおこがましくも先生にお送りしたところ、わざわざお電話を下さいました。まだまだ研究の足りない稚拙な一学生の論文を、お忙しいのに読んで下さったのだろうか、と驚いたのを覚えています。
私が感じる安倍先生の音楽は、音を詩のように紡いでいくと、先生の心の風景がみえてくるような特別な世界です。誰にも真似ができません。先生ご自身が演奏される音楽を聴くと、ずしん、と心にきます。
今は小学生から安倍圭子先生の作品を演奏する時代となっています。すごい時代だな~。私が初めて先生の作品を学んだのは高3の時でした。
小中高生、音大生、マリンバ愛好家、もちろんプロにもおすすめの一冊です。