メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

ミス・サイゴン25周年記念公演inロンドン

2017年04月08日 | 国外・舶来エンタメ

今更ながらのレポート。
3月は体調を崩していて、公開よりだいぶ経ってから観に行った。

このメガヒヨ、ミス・サイゴンを初めて観たのは日本初演。
エンジニアは市村正親さん、キムは本田美奈子さんだった。
何の予備知識も無しに観たら、話にまったくついて行けなかった一回目。
「三年後」というところを聞き落としてしまったので、クリスの奥さんがいきなり出てきてきょとんとしてしまったり。

それでも曲が素晴らしかったので、二回目を観に行った。
内容は理解できるようになっていたけど、アジア人女性を犠牲にして話のオチをつける西洋人の仕事にイライラしたりして。

それから数年。1999年にニューヨークに初めて行った際、Lea Salongaさんが久々のキム役復帰と聞いたので迷わずに観た。
ロンドン初演から10年経ってもLeaさんの初々しさは変わらず、歌声は素晴らしかった。
でもアメリカ版の演出にはどん引いたことは否定できず。
Will Chaseさんがクリス役だったのだけど、この方はいい意味でもアレな意味でも芝居が大きい。
結婚式のシーンでは「うわっっ!! まじ!? 聞いてねぇっっ!!」って露骨に出てたので、日本版との違いに驚いてしまった。
キムの臨終シーンでも、息を引き取った彼女にぶっちゅ~とキス。
うわわ、エレンがガン見してるってば それにそんな事する位に彼女に情が有ったのなら、こうなる前にもっと早く行動を取れなかったのか。

制作した西洋人の、アジア人に対する上からの目線をどうしても感じてしまった。
悶々としながらBroadway Theaterを後にしたのであった。

そんなんで、20年近くミス・サイゴンからは離れていたメガヒヨ。
ネットで評判の良かったロンドン公演が2500円で観られるのならと、有楽町の日本劇場に足を運んだ。
やっぱりこの作品の音楽は大好きだからね。

6:25からの上映ということで、職場から直行のお客さんが多く売店は長蛇の列。
横浜の職場からベル・ダッシュしたメガヒヨも、3時間もの上映に備えて割高なパニーニだの、塩辛いポップコーンだのを確保。
外からの食べ物は持ち込み禁止だものでね。
こういう企画を今後も続けてもらうには、劇場にお金を落とすのが一番。

久しぶりに観たミス・サイゴンは、あらゆる意味で心に刺さった。
戦争のさなか人身売買に身をゆだねざるを得なかった女性の痛みが伝わって来たし、いかがわしい商売に手を染めつつもエンジニアのバイタリティはすごいと思った。
また『ヘアー』などを観る機会もあったので、クリスがベトナム派遣後に一度国に戻ったものの身の置き場が無く、再びベトナムの地を踏んだという背景も理解できた。
結局クリスは普通の人だったというのが、悲劇だったよね…。
凡人には思い浮かばない方法で状況を解決できるスーパーマンでなく、またキム親子を見捨ててアメリカで知らんふり出来る冷血漢でもなかったから。

キャストに関しては、エンジニア役のJon Jon Brionesさんがいかがわしさ満載で、存在感が大きかった。
キム役のEva Noblezadaさんはとにかく可憐。初演のLeaさんと同じく10代でこれだけの大舞台を務めあげるなんて素晴らしい。
クリス役のAlistair Brammerさんはいい声してるけど、大画面のせいか胸毛に目がいってしまい(笑)
まぁGIって設定だからそれらしくていいけど。
エレン役のTamsin Carrollさんは葛藤の演技が素晴らしかった。キムに対する同情と、クリスへの愛が心の中でぶつかって。
今までのエレンの中で一番感情移入出来た。

ジョン役のHugh Maynardさんは一幕目では結構ファンキーな兄ちゃんで、彼がブイドイ歌うのか?と思ったけど二幕目ではキャラがぐるっと変わる。
初演版よりゴスペル色が強くなった、心にしみるブイドイだった。
ツイ友さんにファンが多いトゥイ役のホン・グァンホさん。確かに評判通り素晴らしい歌声!
今までに観たトゥイは男のプライドに掛けてキムを取り戻したい人が多かったけど、このグァンホさんのトゥイは本当にキムのことが大好きなんだなぁと。

あと一番印象に残ったのはジジ役のRachelle Ann Goさん。突き抜ける高音がとにかく好み!
25周年のスペシャルカーテンコールでLeaさんとの♪The movie in mindのデュエットも良かったな。
Leaさんに「あの子上手いわね…」とまで言わせて。
Rachelleさんは故郷フィリピンではLittle Mermaidのアリエルまで演じた売れっ子とのこと。
フィリピンって結構色んなミュージカルが上演されているんだよね。そしてLeaさんはじめ様々な才能を世界に送り出してるし。
一度機会があったらマニラで舞台を観てみたいなぁ。絶対レベルが高そう。

あ、そうそう。演出も今までで一番良かった。
特にラスト。クリスは息を引き取る前のキムに反射的にキスをし、絶命後は深く抱きしめる芝居。
その間エレンは強くタムを抱きしめている。
この後、この世に残された彼らも平穏ではいられないとは思うけど、ほのかな救いのある結びだった。

さて。この25周年記念ミス・サイゴンの上映は4月13日木曜日で日劇では終了とのこと。
だけどフイルムはこの後札幌・東北各市など全国をまわる予定。

http://miss-saigon-movie-25.jp/index.html

上映館の近くにお住まいの方には是非観ていただきたいと、強くお勧めするメガヒヨであった。