メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

ビリーエリオット日本版観てまいりました

2017年07月30日 | 国内エンタメ

この週末、メガヒヨはBILLY ELLIOT THE MUSICALの日本版を観てきた。
日本版は映画版のタイトルにならい、~リトルダンサー~とサブタイトルがついている。

2006年のロンドン版、2010年、2011年のブロードウェイ版を経ての4回目のビリー・エリオット。
(過去の観劇記はこちら。2010年BW版2011年BW版。)

2015年の制作発表の頃から楽しみにしていたこの作品。
正直いうと、数年前は日本においてこの作品の上演は不可能だと思っていた。ビリー役は少なくとも3人は必要だし。
それでもここ最近の舞台で若い才能を数多く見るうちに、ビリー役の少年が複数見つかるのではないかと希望を持ち始めていた。

ホリプロさんが社運を賭けたビッグプロジェクトだけに事前の宣伝は大規模。
数々の動画を見るうちにこれは思っている以上かもと期待がふくらんだ。

そして観劇当日。キャストの方々はこの顔ぶれ。

お父さんには吉田鋼太郎さん。もう立っているだけで炭鉱夫そのもの!!
英語版は北イングランド訛りで上演されたけど、日本語版においては筑豊弁に訳されている。
自分は東北弁かと勝手に予想してたけど、炭鉱の町ってことで筑豊弁は大変はまっており、吉田さんにもぴったりだった。
ただ残念なのは吉田さんの歌い方が非常に個性的であったこと。情感のある語りで涙を誘うんだけど、発する言葉に音符の存在が感じられなかった。

ウイルキンソン先生には島田歌穂さん。
本当に完璧なウイルキンソン先生だった!!
歌とダンスは申し分なく、ビリーに対する愛情、希望を強く表現し観客であるこちらの心に強く訴えかけてきて。
終盤における距離のとり方も、「現実はそうなんだよね」とじんわりと余韻を残す。
さらにメイクや身のこなしなどのキャラ作りに至っても、80年代をそのまま舞台に再現していた。

そうそう。歌穂さんといえばバレリーナ星からやってきたロビンちゃん。
「がんばれロボコン」を彼女見たさに見ていたメガヒヨは昭和の子ども。
憧れのロビンちゃんから〇〇年、カーテンコールでのチュチュ姿を拝見できて嬉しかった!!

主役のビリーの未来和樹くんは綺麗な声の持ち主。
11,2歳くらいかなと思ったらなんと中学三年生とのこと! というか公演までに声変わりしないで良かったね。
オーディションもトレーニングも本当に大変だったと思うから。

ちなみにレミゼのガブローシュは身長140センチまで、ビリーが147センチまでというから、男の子の子役にとってゴールであり最大の役がこの役なんだね。

マイケルは山口れんくん。
この子も芸達者で、セリフの間がすごく上手い。
♪Expressing Yourselfはショーストップになった。まだ小学5年生というから、この先が楽しみ!

おばあちゃんの根岸季衣さんも良かった。認知症の演技が一転、♪Granma's Songで綺麗な身のこなしに変わるところなんて、こちらの目頭が熱くなった。

それとピアノ伴奏者のブレイスウエスト役の森山大輔さんも印象に残った。
2006年のときはこの役を日本で演じられる役者さんがぱっと頭に思い浮かばなかったので。
日本の役者層もひと昔前より厚くなって嬉しい。

 

それにしてもタイムリーな上演だと思う。
日本もイギリス並みではないけれど、格差社会といわれるようになって。
さらにウイルキンソン先生のように没落する中流も他人事ではないし。

でもどんな世でも突然として飛びぬけた才能が生まれることがある。
それを活かすも殺すも周囲の大人次第。

この作品の訳詞家である高橋亜子先生のツイートによると、ビリーが口にした「電気」とは石炭をエネルギーとしたものとのこと。
自分は今まで体を走る衝動とかそんな意味にしか取っていなかったので、聞いて目から鱗が落ちる思いだった。
石炭とはお父さん、ウイルキンソン先生、その他応援してくれた故郷の人達そのもの。
それらを前提とした「電気」なので、「火花」のように詩的な他の候補の言葉は無しになったとの話だった。

日本語に訳するのも多大な労力が掛かるだろうし、原詩の意味をすべて伝えられないことばかりだと思う。
だけど母国語に訳されてやっと初めて作品の核心に触れられることもあるし、今後も良い作品を良い形で上演し続けていただきたい。

ところで7月末現在、8月9月分のチケットはまだまだ残っている模様。
劇場でもリターナーチケットとして1000円引きで販売されていた。日によっては見やすい席も残っているみたい。
良い作品なので空席は勿体ないし今後の再演につなげるためにも、興味をお持ちの方はぜひアクトシアターに足を運んでもらいたいと思うのであった。


ロビーを彩るお花の数々。日本の劇場はこれを眺めるのも楽しみの一つだね。


メガヒヨ in NY2017 その3《Charlie & The Chocolate Factory編》

2017年07月26日 | NEWYORK

あのロアルド・ダールの有名な児童小説「チャーリーとチョコレート工場」のミュージカル化作品。
同作品の1971年の映画版からいくつか楽曲を受け継いでいる。

4月29日土曜日20:00 LUNT-FONTANNE THEATRE
オーケストラG10 (上手端から4つ目)
レギュラープライス $120.00(事前にチケットマスターで購入。手数料別)

ほぼ発売直後に購入したチケット。
通常前方オーケストラの席は端でも150ドルくらいはするけれど、家族向け作品ということで比較的優しめのお値段120ドル。

Willy Wonka…Christian Borle
Charie Bucket…Jake Ryan Flynn
Granpa Joe…John Rubinstein

Mrs.Gloop…Kathy Fitzgerald
Mrs.Teavee…Jackie Hoffman

あらすじ

母と寝たきりの祖父母4人と暮らすチャーリー・バケットは貧しいながらも明るい少年。
チョコレートが大好きで近所の菓子屋に買い物せずに入り浸り、店主ともおなじみの仲。

ある日憧れのウィリー・ウォンカがくじに当たった5人の子どもを自分の工場に招待すると知り、心ときめかす。
もうすぐ誕生日なので年に一度だけウォンカのチョコレートを手に入れられるのだ。
待ちに待った誕生日。期待に胸を膨らませてチョコレートの包装紙をはがすが、残念ながらくじは外れだった。
その一方、世界のあちこちでどんどん当選者が発表になり、チャーリーはやきもきする。

そんな彼に心を痛めたジョーおじいちゃんが渡してくれたなけなしのお金で買ったチョコレートもやっぱり外れ。
ある日入り浸っていた菓子屋が閉店することになり、チャーリーは後片付けを手伝う。
その目の前には店主の忘れものである1ドル紙幣が。
店主を呼び留めようとしたけれど、彼はそのまま立ち去ってしまった。ためらいつつチャーリーはそのお金でチョコレートを買う。
なんとその包装紙の内側からは、まばゆいばかりに輝くゴールデン・チケットが出てきた。ついに彼も手に入れた。

家に戻り当選を家族に告げると、寝たきりだったジョーおじいちゃんは元気に歩けるほど回復してしまう。
一張羅に着替えて、チョコレート工場見学にチャーリーの付き添いとして参加することに。

当日は世界から集まった個性豊かな子供とその親が工場に集結。
いよいよ秘密のヴェールに包まれた工場の中が明らかになるのだった。

もともとティム・バートン監督の2006年版の映画の大ファンのメガヒヨ。
2013年のロンドンでの舞台化の話を聞いた際には、あの映画の印象が強すぎてそれほど興味を惹かれなかった。

今回のBroadway版を観ようと思ったのは何と言ってもキャスティング!
Christian Borleのウォンカ役だなんて聞いただけでわくわくするし、脇を固める女優陣も芸達者ばかり。
The Producersで存在感ある舞台照明家を演じたKathy Fitzgeraldさんはドイツの太っちょオーガスタスのお母さん役。
Hair Sprayで主人公の親友の厳しいママ役だったJackie HoffmanさんはTVオタクなマイクのお母さん。
さらに同じくThe Producersでホールドミータッチミーで強烈な印象を残したMadeleine Dohertyさんはジョージナおばあちゃん役。
Madeleineさんは役ほどお年を召していないはずだけど、老女を演じたらBroadwayでは無双だよね。

そんなで代役登板の可能性が少ないとされる土曜ソワレ枠にはこのショーを当て込んだよ。
結果としてお気に入りの役者さんを全員観られて良かった!!

Christian Borle氏は今回も期待を裏切らなかった。
前回拝見したのは『Something Rotten!』のシェイクスピア役。今回は色男ぶりを封印して、頭が禿げかかった初老のチョコレート工場主を演じる。
Christianご本人も頭を剃っての役への入れ込み。

粛々と、感情を表に出さずに工場ツアーを進めていく様はまさに原作通り。
最後になってチャーリーに心情を明かし「一緒にチョコレートを作ろう」と微笑みあうのだが、それまでの無表情から一転してメリハリがあって良かった。

他に印象強かったのが、2006年版の映画と違ってチャーリーとジョーおじいちゃんが多少強気なキャラで描かれているところ。
あらすじでも触れたけど、チャーリーは買い物をしないのにお菓子屋さん(店主の正体はウォンカ氏)に入り浸ってるし、
ジョーおじいちゃんに至っては終盤でウォンカ氏と賞品についてもめてファイティングポーズを取ってるし!!
(演じるはPippinオリジナルのタイトルロールであるJohn Rubinsteinさん。最近はピピン父王でリバイバルにご出演されてたね。)

演出の違いとはいえ、やっぱりティム・バートン版の謙虚な彼らの方が好みかな。

だけどこの舞台版では、未来のチョコレート工場を担うにふさわしいチャーリーの可能性についてより多く触れている。
普段口に出来ない分、チョコレートその他お菓子への愛着が強い彼。頭の中で夢のお菓子を創造し、次々と絵に描いている。
作品の大きなモチーフが世代交代なだけに、チャーリーの才能を♪A Letter From Charie Backetにて丁寧に観客に説明したのは良かったと思う。

ところで先述の通りこの作品は2013年にWestEnd版が上演されているのだけど、Broadway版はだいぶ変更があったらしい。
まずWestEnd版ではチャーリーのお父さんは生きているが、Broadway版では故人となっている。これは1971年版映画に従ってかな?
結末も違うとのこと。WestEndではウォンカ氏は工場から旅立つのだが、Broadwayではそのまま残留。
そして一番大きな変更点は、チャーリー以外の4人の子どもたちはWestEndでは子役だったけど、Broadwayでは大人によって演じられている。
前者は未見なので何とも言えないけど、もし日本版が制作されるとしたら子役の人数が少なくて済むBroadway版で上演されるのではないかと思ったり。

ウォンカ氏の工場で次々に退場していく子どもたちを演じた4人の俳優さんたちはとても良かった。
オーガスタス役のF.Michael Haynieさんは役作りをするにあたって、トランプ大統領を意識したんじゃないかな。
なんかじわじわと似ていた。
バイオレット役のTrista Dollisonさんは、♪Queen of Popで元気いっぱい歌って踊りまくっていた。
Popってガムのパチンって音と歌のPopを兼ねているよね。可愛いらしい一方、例の実験途中のガムを噛んでしまったシーンでは半端ない女優根性を見せてくれた。
ベルーカ役のEmma Pfaeffleさんはバレエの名手。もともとイギリス人設定のこの役はバレエのナンバーも有ってかロシア人に変更されている。そしてパパはロシアン・マフィア(笑)
ベルーカ退場のシーンはリスの着ぐるみ達との激しいバレエ。子どもが見るには過激な表現もあるのだけど、大丈夫なのかコレ。
それにしてもTristaさんもEmmaさんも子どもになりきるのが上手い! 実際14歳くらいにしか見えないよ。
スネオ頭なマイク・ティービー役のMichael WartellaさんはBroadway.comのビデオ・ブログに出演中。
この方もいい歳のはずだけど、チャーリーと並ぶとちゃんと子どもに見えるのがすごい。

そうそう。ウンパルンパも忘れちゃいけない。
この舞台では現在の技術で出来る限り最高のウンパルンパが表現出来ていたと思う。
仕掛けはYモバイルの踊るふて猫とほぼ同じく。まさしくアイディアの勝ち!
そりゃあDeep Royさんの映画版ウンパルンパが最高だけど、あれを舞台で再現するのはまず無理だものね。

なんて絶賛べた褒めだけど、残念なこともひとつ。
これは典型的なファミリーミュージカルなので、客層は家族連れが中心。
特にメガヒヨの座ったシートは家族連れ向きのお値段なので、お子さんが数多くいた。
民度はかなり低く、上演中ずーっとお菓子を音を立てて食べ続けていたリアル・オーガスタスなんてのも近くにいてげんなり。
ある程度覚悟して、静かだったらラッキーくらいの気持ちでいると心穏やかに観劇できるかも。

最後にAudiのコマーシャルでもおなじみ、名曲Pure Imaginationの動画を貼っとくね。
このBroadway版では映画と同じく、チョコレートの滝のシーンで歌われるよ。
WestEnd版では終盤のナンバーとのこと。(…そっちの方がいいかも)

変わり種としてトムとジェリーバージョンなんてのも!
1971年版の映画はアメリカではなじみ深い作品なんだね。


メガヒヨ in NY2017 その2《GROUNDHOG DAY編》

2017年07月23日 | NEWYORK

4月29日土曜日14:00 AUGUST WILSON THEATRE
オーケストラE13 (下手端から2つ目)
ディスカウントプライス $119.50(事前にチケットマスターで購入。手数料別)

Phil...Andrew Call
Rita...Barrett Doss

あらすじ
Philはテレビ番組の気象予報士。人気を鼻にかけ、常日頃から周囲を見下すような態度を取っている。
そんなある日、ウッドチャックによる春の訪れを占う祭り(Groundhog Day)を取材するために田舎町を訪れる。
彼にとって退屈な祭り。やっつけ仕事で都会に戻ろうとするが、悪天候のために引き返して宿に再び泊まることに。
ベッドで目を覚ますと一度見たような光景が。何と彼は前日にタイムリープしていたのだ。

当初は何かの錯覚かと思いやり過ごしていたが、何度も何度も訪れる2月2日の朝を迎えるうちに事の重大さに気づく。
何もかもがリセットされるので、美人をくどき落としたり、大金を盗んで豪遊したりとやりたい放題するが気持ちは虚しくなるばかり。
やけを起こして車で暴走したり、挙句の果ては悲観して自殺を試みる。
しかし気が付くと、2月2日朝のホテルのベッドの上に舞い戻りしているのだ。

そんなうち、Philは番組プロデューサーのRitaを口説いてみようと試みる。
しかし何度チャレンジしても、聡明な彼女は一向にその気にならない。
何とか彼女好みの男性に近付こうと、Philは際限なく繰り返す時間をつかって地道な努力を続ける。
次第に彼の内面に大きな変化が訪れるのだった。

 
同名の映画を原作としたミュージカル。(邦題は「恋はデジャ・ブ」(笑)。全く違うので注意!)
主演のAndy KarlさんをRockyぶりに拝見するのを楽しみにしていた。
しかし残念ながら彼はプレビュー間もなくに大けがをし、舞台には復帰しもののマチネは代役による上演となってしまった。

という訳でこのたびPhil役は通常Gus(暴走シーンの同乗者)を演じているAndrew Callさんで観た。
Andyさんにセクシーさやオーラではかなわないものの、Andrewさんは高飛車なPhilが変わっていく様子をよく演じていたし、歌も立派にこなしていた。
有名な映画の舞台化ということに並び、このショーの売りはあっと驚く舞台装置。
初回プレビューを観た知人の話によると、上演が20分中断してしまったくらい複雑な仕掛け。
幕が開くと登場する町のセットは一見質素に見える分、それらが変貌してあっと言わされてしまうのだけど。
特に主人公は1秒が勝負という場面が多いので、代役の方もそれなりの水準でないと務まらないんだなと思った。

ヒロインのRitaを演じるのはBarret Dossさん。颯爽とした雰囲気の女優さんで、キャリアウーマン役にぴったり。
Ritaはじめ主人公以外のキャストは何度も同じシーンを同じテンションで演じなければならないのだけど、さすがBroadwayの俳優さんたちはまったくスキが無かった。
特にGroundhog Dayを取り仕切るBusterを演じるJosh Lamonさん。この方のウッドチャック溺愛ぶりのは必見!!
(どこかで拝見したことがあるなと思ったら、昨年のFinging NeverLandに出演なさっていた。)

そうそう。忘れちゃいけないのがウッドチャックのPhil。そう、主人公と同じ名前。
動物としてのPhilはぬいぐるみとして登場するのだけど、もう一人ゆるキャラの着ぐるみとしてのPhilも登場する。
彼がまた存在感抜群!!
映画だと主人公が何度も水たまりに足を突っ込んでしまうシーンがあるけれど、舞台では着ぐるみのPhilとの絡みに変更されている。
何度も繰り返されるそれはタイミング抜群で最高!!
中の人はRaymond J. Leeさん。彼は暴走シーンの同乗者のひとり、Ralphも演じている。(ちょっとロバートの秋山さんに似ている(笑))
あ、そうそう。着ぐるみのPhilがビッグバンドでディズニーシーのミッキーさん並みのパフォーマンスをするシーンがあるのだけど、あれもRaymondさんが中に入ってるのかな?
とにかく今回のシーズンのBroadwayはあちこちで着ぐるみが見られたのだけど、最高峰はこのウッドチャックのPhilに間違いなし。
ぜひこれからご覧になる方は注目してみて頂きたい。



幕間の緞帳。
色んな演目で緞帳でプロジェクションマッピングを採用してるね。画面が動くから眺めてて飽きないよ。


メガヒヨ in NY2017 その1《WAITRESS編》

2017年07月18日 | NEWYORK

昨年度のNY旅行、おととしのフランス旅行についてのブログを放置してしまったメガヒヨ。

いつかは更新を…と思っているうちに、今年のNY旅行も行ってきてしまった。
しかも2か月経過しちゃってるし…。

そんなんで、今までのはもうリセット!!
今年観たものは忘れないうちに観劇記だけ書こうかと思う。

4月28日 金曜日20:00 Brooks Atkinson Theatre
オーケストラB9(下手端より3つ目)
レギュラープライス $179 (事前にチケットマスターで購入。手数料別)

Jenna...Sara Bareilles
Dawn...Caitlin Houlahan
Becky...Charity Angel Dawson
Dr.Ponatter...Chris Diamantopoulos
Cal...Eric Anderson
Ogie...Christopher Fitzgeraldz
Earl...Will Swenson

あらすじ
アメリカの小さな田舎町でウェイトレスとして働くJennaはパイ作りの名人。
日常のあらゆることにインスパイアされて、新作のパイを次々と作り出している。
そんな彼女に妊娠が発覚。支配的な夫との間に出来た子供は、正直望まないものだった。
産婦人科を訪れたJennaだったが、主治医は引退しており新任の医師が彼女を診察した。
Jennaがもともと主治医のために持ってきたパイのおこぼれに預かった新任のDr.Pomatter。
あまりの美味しさに夢心地な気分になる。
最初はDr.Pomatterにいい印象を持っていなかったJennaだが、紆余曲折を経て二人は不倫の恋に落ちる。
そんな中お腹の子どもはどんどん大きくなり続け…

今回の旅の観劇枠は9つ。出発直前までとっておいた残りの枠をこの作品に決めたのは、いわずもがなWill Swenson氏のため!
ヒロインから金はせびるわ、暴力ふるうわ、挙句は泣いて精神的にいたぶるわのダメ亭主Earlがこの度の彼の役。
毎度期待を裏切らないWill氏。このWaitressにおいても完璧に悪役に徹していた。

Murder Balladといい、ヒロインの悩みの種というこの手の役は彼にとってもう鉄板ですな。

そしてそして主役Jennaはこの作品の作詞作曲を手掛けたSara Bareilles(サラ・バレリス)さん。
彼女がこの役を演じると発表された瞬間、チケット定価は30ドル上がった。
その美しさや作詞作曲・演技までこなす多才で人々を惹きつけるが、それだけでなく様々な社会奉仕活動もされている。

今から6年前、東日本大震災からの復興の見通しが立たなかった日本もそう。
2011年5月、多くのアーティストが来日をキャンセルする中、Saraさんは公演を決行。
その後も一週間東北に滞在し、ボランティア活動を行ったとのこと。
日本人として本当に頭が下がる思い。

彼女の歌声は初めて聞いたのだけど、心に染み渡るってこういう事を言うんだと改めて感じた。
Sugar, and Butter, and Flour, and Motherってところで涙があふれてきちゃって…。

着目するのは歌だけでなく、身体能力もかなり高い。
とあるシーンでは体の柔軟性を披露したりと一流の舞台女優でもあった。


Waitressといえば脇を固める二人も重要。
姉御肌のBeckyにはCharity Angel Dawsonさん。
二幕はじめのI Didn't Plan Itは異次元の声量で場を沸かせた。

ブラインドデートでとんでもない男性と出会ってしまうDawnにはCaitlin Houlahanさん。
(この役のオリジナルキャストはお母様が日本人のKimiko Glennさん♪)
Caitlinさんはこれまたよく通るアニメ声。それと独立記念日のコスプレが可愛かったな。

映画版で存在感のあったDawnのデートの相手、OgieにはChristopher Fitzgeraldさん。
『Wicked』のBoqや『Young Frankenstein』のIgor役でも名高い。
今回も期待を裏切ることなく、アメリカンオタクに扮する怪演を披露してくれた。
彼はこの役でTony賞助演男優賞にノミネートされている。

あと『Priscilla』のDivaだったAnastacia McCleskeyさんも産院のナース役で出演されていた。
Beckyのアンダーでもあるので、彼女のI Didn't Plan Itも聞きたかったかも!!


すっかりWaitressのとりこになったメガヒヨ。
この夏帝劇では『Beautiful』を上演するらしいけど、そのキャストで『Waitress』をやって欲しいとまで思い始めた。(失礼)
でも結構はまるんじゃないかな。主演の歌姫二人に悪そうな夫、人の好さそうな医師に小柄な同僚…。アンサンブルにも歌ウマさんがいるし。
あ、でも不倫にはシビアな日本だからやっぱり難しいかも!? 結構過激なシーンもあるしね。


終演後。Will Swenson氏に日本からお土産を持ってきたのでステージドアに向かうよ。


楽屋口前は滅多に見ないほどの人だかり。
若いお嬢さんたちにモテモテだったのがJoe役のDakin Matthewsさん。
この方もチャーミングな偏屈じいさんを演じていて、観客一同ホロリとさせた。


そしてそしてWill Swenson氏!!
お客さんが三重にもなっているところを、何とかサインをいただきプレゼントを渡すことが出来た。
(この写真の撮り方。日本でちょっと前話題になったマナーのなってない出待ち客そのものですね。大変失礼。
後ほど本人にも断ったうえで写真を撮らせていただいたのだけど、人混みでもみくちゃ状態だったもので結局これがベストショットになってしまいました。)


シュガー、バター、シュガー、バター♪
英語が不得手なメガヒヨでも一回で覚えられた♪What's Insideの出だし。

口ずさみながらホテルに戻る。
そしてその帰り道で買っちゃったよ、ベリーパイ(笑)
良いショーを観た幸せな気持ちで、真夜中のおやつに舌鼓を打つのであった。


ちょいさかのぼって4月の国内観劇

2017年07月17日 | 国内エンタメ

国内観劇については3月分6月分をポストした。だけど4月にも二本ばかり観に行ってた。
以下二本について簡単に語ってみるとするよ。

4月なかばに観たのが紳士のための愛と殺人の手引き。
自分が観た回は柿澤勇人さんだった。

市村正親さんが8役演じるとしか前もって知らずに臨んだこのミュージカル。
これぞエンターテイメントとばかりに楽しめた。

市村さんの変身ぶりは素晴らしく、司教役のときはF列目で観ていたにも関わらず気が付かなかった。
また主役の柿澤勇人さんを拝見したのはたぶんこれが初めてだと思うのだけど、才能ある役者さんだと思った。
脇を固める宮澤エマさんは役にぴったりの可憐さ。
シルヴィア・グラブさんもキャラクター的には役にはまってたんだけど、柿澤さんとの年齢差を強く感じちゃったかな。
もともとこの方のことは歌も上手くて大好きなんだけどね。
あと高谷あゆみさんが出てたのが嬉しかったな。こういう実力派の貴重な女優さんには、幅広く長く活動していただきたい。

そしてそして『王家の紋章』。
昨年夏の初演と合わせて計4回観たよ。
そのうち3回は台風だの事故だので電車が大幅に遅れて、劇場に入れたのが時間ギリギリという危なっかしさ
まったく王家の呪いか!!

もともと原作漫画のファンであるメガヒヨ。新妻聖子さんのキャロル完コピぶりに驚愕した昨年の夏を思い出す。
もう一人のキャロル役である宮澤佐江さんも品が有って美しかったけど、小柄さと歌唱力では新妻さんが上回ってたもので。

そうそう。初演であったシーンが再演では大幅に削除されていたりもした。
分かりやすいところでは奴隷のセチママが車輪に轢かれるシーンと、メンフィスがキャロルの腕を折る(腕ポキ)の箇所。
骨折した状態でキャロルがさめざめと泣きながら歌うナンバーもカットされてたな。
まぁこのナンバー削除に関しては、次のシーンがころっと明るい曲になるもので必要ないと考えていたのでいいかも。
どちらかと言えば、腕を折って後悔するメンフィスのナンバーを入れるべきと思ってたもので。

だけど車輪のシーンは削除すべきではなかったんじゃないかな。
あれが無いと原作を読んでいないお客さんは、キャロルが自分の危険を顧みないほどの人格者って後になるまで分からないからね。

あとメンフィスがキャロルを姫だっこするところも完全削除されていた。
初演は少なくとも2回はあったはず。
まぁいくら新妻さんも宮澤さんも細いとはいえ、重い衣装をつけたまま成人女性を抱き上げるのは体に負担がかかりそうだしね。
メンフィス役の浦井健治さんはシングルキャストなもので、万一腰をやられちゃったら大変なことになっちゃうし。
姫抱っこはダンサーの方が責任もって果たしてくれたからいいのかな。

浦井さんといえば、彼の歌の巧さに4回目くらいにしてやっと気が付いた。
何せ視覚的にいろいろ飛び込んでくるミュージカルだから。
クライマックスでのソロは後ろでセチが踊りまくっているのだけど、毎回どうしてもそちらに意識が行っちゃって

それにしても主役級が歌いまくり、バックでダンサーが踊りまくるこの構図はまさに昭和の歌謡ショー。
そんなノスタルジックな演出も作品にはあってたな。
いずれ宝塚でも上演されるだろうから、そのときには頑張ってチケットを取って観てみたいな。
(正直、海外進出は脚本をいじりまくらないと無理だと思う。あまりにも日本的なもので。)

余談その1
今回、前回ともエポスカードの貸し切り公演で観劇した。
良席確約ってわけでもないけど、チケ難演目で席が結構確保できるのでよく利用させてもらっている。
演目によっては割引、そしてお土産がつくのも魅力。
今回のお土産は昭和なゼリーの詰め合わせ! これは少々嵩張った(笑)

余談その2
帝劇からの帰りは丸の内のオシャンティなブティックを眺めるのが好きなのだけど、今回こんなライアン兄さんなスーツがあった!!
 チケットぴあさんより拝借。
懐かしの80年代風ってとこかな? 今ちょうどリバイバルしてるね。
ディスプレイした店員さん、もしかして王家の紋章を観ていたのかも(笑)


6月・国内作品悲劇二本勝負!!

2017年07月16日 | 国内エンタメ

今年も半分過ぎたな~なんて思ってたら、7月ももう半分過ぎちゃった!!

そんなんで今更ながら、6月に観た国内のミュージカルの話でもするね。

まずは『パレード』。Broadway初演から20年近く経ってからの日本初お目見え。
メガヒヨにとって初めてのJason Robert Brown作品。(映画版Last Five Yearsは除く)

この作品は前から興味があった。記念すべき初めてNY訪問の年、1999年度のTony賞のパフォーマンスで心惹かれた。

題材となったのは、アメリカ裁判史上でも有名な冤罪判決。
南部アトランタのユダヤ人の工場長が政治的な理由で、工員の少女を暴行し殺害した犯人に仕立て上げられたとするレオ・フランク事件。
Bway初演時と同時期に上演されていた『Ragtime』の原作でも、この事件に関する記述がある。
それほどに20世紀初めのアメリカを象徴する出来事である。

第一幕では平穏無事に毎日を過ごしていた上流階級の主人公が、足元を掬われるかのように政治的な陰謀によって汚名を着せられる様がありありと描かれていた。
いきなり逮捕されて裁判に引きずり出されるレオ・フランク。マスコミも印象操作のような報道で彼に汚名を着せる。
召使も工員たちも彼の身に覚えのないことを裁判でまくしたてる。
ついに下されたのは死刑。
一方、罪を着せる側は盤上でゲームの駒でも進めるかのように平然としている。
観ていてとても辛く、あんなに深く落ち込んで過ごした幕間は初めてだった。

翻って第二幕。か弱い存在だった主人公の妻が再審を求めて立ち上がる。
彼女の健闘により、知事も判決を見直す姿勢を取る。さらに北部のユダヤ人からの支援も得てかすかな希望が見える。
だがそれも虚しく、暴徒と化した市民により主人公に悲劇的な最期が訪れる。
打ちのめされた妻。しかしそのままアトランタの地に毅然として住み続ける。夫の潔白を証明するかのように。
重いテーマだったけど、彼女の姿勢で観客の自分は何とか救われた。

主演の石丸幹二さん、妻ルシールを演じた堀内敬子さんはじめ、日本のミュージカル界でも歌唱力の高い方々が集結したこの舞台。
オリジナルを知らないので翻訳に関してはコメントできないけど、メロディに作品の要素がしっかり乗っていた。

こういう人種問題を扱ったミュージカルは、オリジナルが伝えたいことのすべてを語るのは無理な話かも知れない。
一言に黒人といっても地域差もあるようで、オリジナル版はそういうところまで気を遣った演出になっているけれど、日本だとなかなかそうもいかないし。
(仮に演じ分けても観る側に分かる人は少ないものね。)

ちなみに…。
いろいろ考えさせられながら劇場を出かけたところ、同じく観劇後のお客さんの会話で
「あの検事はなんでコンリーを問い詰めなかったのかな。選挙での黒人票を狙ってたのかもね。」
という会話が耳に飛び込んできた。黒人公民権はこの事件の50年以上も後のことなんだけどなぁ(笑)

重ねて言うけど、外国作品は演じる側が仮に100%再現しきったとしても、受け取る側が100%それをキャッチできるかどうかは微妙なところ。
ただ100%は無理だとしても、洗練された演出と役者の力量により80%も伝われば大成功ではないだろうか。
この舞台はその成功例の一つだと思う。

あともう一つ。
このパレードを観た直後は「アメリカの南部、人種差別ハンパない!! 恐ろしや。行きたくないなぁ。」と正直感じた。
しかしこれはあくまで脚本家のAlfred Uhry氏と作詞作曲のJason Robert Brown氏(ユダヤ人)が作り上げた舞台。
近代史を基にした作品は政治的要素が絡みやすく、全部が全部事実として受け取るのは少々危なっかしいと考え直した。

レオ・フランク事件は後々の証言により無罪が立証されているけれど、アトランタにはまだ彼が犯人だと思っている層も少なからずいるとのこと。
神様が語ってくれない限り、事件の真相は決して明らかにならない。
良い作品だったけど、舞台は舞台として受け取りたいと思った。


さて翌週観に行ったのは『ノートルダムの鐘』。
ツイッターなどで好評の声をよく聞き、久々に浜松町の四季劇場に脚を運んだ。

この劇場もこけら落としから数年はお世話になったなぁ。
竣工当時は3Fのバルコニー席が不評で(2FC席に大幅な見切れ発生、傾斜姿勢が疲れるなどなど)、取り壊せなんて声もあったっけ。


当日のキャストはこんな感じ。
キャストでは野中さんと原田さん以外分からない…。
スタッフの方にこそ知っている俳優さんが多いよ。

とはいえ若いキャストさん達はいい仕事をしてくれていた。
特にエスメラルダ役の岡村美南さんが良かったな。
歌も上手くて色気も醸し出していた。
男性アンサンブルの中にも声量が豊かでよく響く人が何人かいたな。

自分がこけら落とし当時の年齢だったら、目に留まった俳優・女優さんの名前をいっぺんに覚えて、次回のためにチケット取りまくったんだろな。
今は差し向けるエネルギーに限りがあるので、また舞台で拝見出来れば嬉しいくらいの気持ちかな。
でも全般的にミュージカル俳優の層が着々と厚くなっているのはいい事だよね。
今は四季と外部の壁も低くなっているみたいだし。

ところで。この作品の一幕での主役はカジモドではなくてフロローではないかと思っている自分。
久々に観た野中さんは外見は昔と変わらず若々しく、幕開け始めのシーンでもそれほど違和感なく青年時代のフロローを演じられていた。
だけど作品の要であるHell Fireはお疲れモードだったかも…。
あのナンバーは劇場内に響き渡るくらい、その場を支配するべきものだからね。
録音オーケストラにも負けていたので、一番楽しみにしていた曲だけに残念だったな。

ただこの作品に通じるテーマ、「人の崇高さはその外見・身分によるもので無く、魂そのものによって語られるべき」というものは人類にとって普遍。
冒頭のどもりも無く外見も至って普通のカジモドが、顔に背中にハンデを負わされるシーンは魂と外見が別ものということを如実に表している。
この作品の舞台は中世フランスだけど、現代日本の自分にもよく伝わって来た。

キリスト教の原罪の定義、ジプシー(ロマ族)の立ち位置などまだ学ぶ点は多いけど、政治力学を感じる『パレード』より『ノートルダムの鐘』の方が作品として構えずに受け入られたかな。
でもどちらも観に行って良かったと思うメガヒヨなのであった。