こんなCDを買った!聴いた!

最近購入した、または聴いたCDについて語ります。クラシック中心です。

『イドメネオ』、やはりベームです。

2020年05月31日 12時04分57秒 | モーツァルト
四月以来、少しは貯まった自室の不要物を少しは整理しよう、ということで、まずは昔取りためたVHSなどのビデオテープを捨てようと思いました。その昔、映画などをたくさん録画し、また画質がいいベータも買って、レンタル屋のVHSからベータにダビングしてました。残念ながら、ベータのデッキがうまく動かないので、もう捨てちゃえ!ということです。最初は身を切られるような気持ちになるのですが、捨てていくとけっこう捨てるのが快感になるのでした。

それはさておき、最近モーツァルトの『イドメネオ』をよく聴いています。私たちのモーツァルト体験で、映画『アマデウス』と1991年の没後二百年の存在は大きい。このときに、モーツァルトの偉大さを再認識しました。『アマデウス』の冒頭のヨーゼフ2世とモーツァルトの会話の中にこの『イドメネオ』が話題になり、このオペラ・セリアの存在を知ることになりました。

モーツァルトは、このオペラ・セリアの分野では十分才能を発揮出来なかったとも言われています。この『イドメネオ』は、モーツァルトも高く評価してしていたと言われます。内容的にはおもしろみはないですが、音楽は実に素晴らしい。一曲一曲をじっくり聴くと、そのよさはやはりモーツァルトやな、であります。オペラ・セリアの最大の傑作ではないでしょうか。

このオペラには、イッセルシュテット、ベーム、プリチャード、アーノンクール、ガーディナー、レヴァインなどの演奏があります。 問題になるのがイダマンテ。初演ではカストラートだったが、1786年のウィーン再演では、テノールが歌いました。現在でも、この二種類の演奏があります。最近のものは、カストラートを女声に替えてのものが多い。これも原点主義でしょうか。ただ、ウィーン再演のときに第2幕の第10曲と第3幕の第11曲が、テノール用にK.490のアリアとK.489の二重奏に替えられているんですねえ。この二曲がない、女声版は少々寂しいです。

私は1977年9月にベームがのSKDと録音したCDを溺愛しているのです。歌手が豪華なプリチャード盤も魅力たっぷりです。それでもベーム盤ですねえ。それはこの演奏から聞いたことで、テノール版が刷り込まれていること。また先述のふたつの曲があること、そして、イダマンテが女声だと、イリア、エレットラと三人が女声でなんだか女声ばかりになり、テノールが加わる方がバランス的によい、という理由からです。とは言え、プリチャード盤のバルツァ、ポップ、グルベローヴァの女声三人とガーディナー盤のオッターのイダマンテにも大いに惹かれますがねえ。

それでベーム盤ですが、これはベーム83才の最晩年のもの。若いころの勢いは感じませんが円熟したベームの凄味が満載です。全体的に折り目の正しい、厳格さが伝わって来ます。オペラではオケと歌手と合唱、この三つのバランスをとるのが指揮者の大きな役割でしょう。ベームはそれが卓越している。晩年の弛緩などはまったく感じず、むしろイタリアのオペラではなく、ドイツのオペラとし演奏する気構えが伝わって来ます。音楽の気品の高さ、生真面目さなど、オペラ・セリアの伝統が確実に表現されているのに加えて、ドイツ的なオペラ・セリアの演奏がここにはあるのでした。やはりベームの演奏が一番しっくりと来ますねえ。

そんなベームの演奏の格調の高さを支えるのが、イリアのエヂッタ・マティスとイダマンテのペーター・シュライヤーです。このふたりはいいですねえ。セリアの歌い手としては申し分ありません。深い表情、にじみ出てくる苦悩、控え目な喜び、私は特に第二幕が好きなんですが、イダマンテ、イリア、イドメネオ、エレットラのアリアが続き、行進曲から合唱、そしてエレットラ、イダマンテ、イドメネオの三重唱、最後に合唱と、この4人の歌唱とオケ、そして合唱は何度聴いても素晴らしいですねえ。また、エレットラのユリア・ヴァラディもマティス、シュラーヤーに負けない真摯な歌唱。最後の狂乱のアリアも控え目ながらも心をうちます。加えて、合唱も立派であります。

私は女声が好きな人間なんで、特にイリアとイダマンテが女声二人もそのよさも感じます。その点では、プロチャード盤で聴けるポップとバルツァの二重唱も捨てがたいのでありました。第20曲の二重唱は、テノール版ではK.489に替えられているので聴けないのも残念であります。加えて、1964年のグラインドボーン音楽祭のライブがありまして、これではイダマンテをパヴァロッティ、イリアをヤノヴィッツが歌ってます。これも魅力たっぷりでありますねえ。

緊急事態宣言が終わりましたが、予想されたことですが、感染者増加が見られています。心配です。一方で、日本は感染封じ込めに成功したといろんなところで言われていますが、日本だけではなく、アジア諸国の中では死者率は最も高い。それには触れないで「日本モデル」などと自画自賛しているようでは、今後が心配ですねえ。
(DG 429 864-2 1994年 輸入盤)

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