あっという間に大学入試の英語民間試験の導入、延期されました。英語の四技能を高校で学習することを指導し、入試が変わらなければ授業も変わらないということでの入試改革であったはず。4技能を問う試験がセンター入試ではできないから民間に、という発想がそもそも無理があったんですかねえ。入試の原則の公平性が保てない。延期はいいのですが、背後に失言追求を避ける政治的判断も見え隠れ…?。受験生ファーストでしっかり対策を考えてほしいものであります。
さて、今回はマーラー。交響曲第2番ハ短調『復活』であります。演奏は、オットー・クレンペラー指揮ACO。独唱はジョー・ヴィンセントとキャスリーン・フェリアー。1951年7月21日のオランダ音楽祭におけるライブ録音です。クレンペラーの復活は、シュワルツコップとPOによる名盤があります。私も、こっちの方は知っておりましたが、この演奏は存じ上げませんでした。Otakenからの復刻盤で知りました。タワーさんのネットで853円であったので、いろいろ買うついでに安いので買ったのでありました。
このCDとその演奏、魅力だったのは、フェリアーの原光が聴ける!ということ。この人のアルトの歌声は、ワルターとの大地の歌などが有名ですが、やはりいい。そして、クレンペラーの快速演奏です。全曲の演奏時間は、約72分。マゼールの107分を筆頭に、バーンスタイン93分、テンシュテット88分など、まあ80分は優に超える。短いのでも、ノリントンの78分ですから、この演奏の快速ぶりがわかります。そして、OTAKENの復刻による音質改善です。この復刻の音源は、「未開封非売品見本盤」からだそうです。それは、「実際にどのような音がするかをプレスして調べてみる為のレコードで、通常の販売盤と比べプレスされる枚数が極端に少なく、スタンパーが最も良い状態の時のプレス盤」であり、通常盤よりも音がいいそうです。そんなことに引かれて、買ってしまったのでした。どうも、音質改善とか、「奇跡の再生音で『復活』」などと書かれると弱いですねえ。
それで、この復刻CD、宣伝文句は決して嘘ではなかった。といっても、もともとのCDはもっていないので、どれくらい改善したか比較はできない。でもその音の鮮明さと生々しさ、その迫力は、これまでのモノラルのCDとは比べものにならないですね。もう第1楽章冒頭からその素晴らしい音に驚かされます。ここまで音質がよくなると、演奏自体の印象も大きく変わりますねえ。特に、このCDからは、クレンペラーの演奏が手に取るようにわかるのでありました。いままでの古い録音でも、こんな音質改善があれば、受ける印象も随分かわるでしようねえ。今後も期待したいですね。
クレンペラーの演奏ですが、一言でいうなら、こんなに短くあっさりした復活は知らない、ということ。演奏時間が短いので当たり前ですが、実感としてあっという間に終わってしまう、とは言い過ぎでしょうが、まああの延々と続く感覚がないのです。そして、クレンペラー、迫力やスケールの大きさなどはさすがです。
第1楽章の冒頭のえぐるような低弦、第3楽章のティンパニの強打、第5楽章の合唱などなど。しかし、粘りつくような感覚がほとんど感じられない、サラりと曲が進んでいくのです。こんなにどんどん前に進んでいいのかな、と思ってしまうのでした。
そして、フェリアーの歌唱です。低い母性を感じさせるアルトの、澄んだ艶のある歌声。地の底からのような力強い、明確な歌が響き渡ります。発音も極めて明瞭で、高音に至る幅も広く、実に安定した歌であります。わすか4分ほどでありますが、アルトの心地よい歌唱にとっぷり聴き惚れてしまいます。でも、なんだか『大地の歌』を思い出してしまうのですが、やはり、あの歌唱が強烈なんですねえ。
英語民間試験の導入延期の次は、記述式の採点について議論がされているようです。これもなにを今更、ですね。なんだか「大山鳴動して鼠一匹」どころか蚤一匹もないかもしれませんねえ。徹底した議論をお願いします。
(Otaken TKC-341 2011年)
クレンペラーは、醒めた演奏をするのが、特徴で、まるで、コンベア上に、旋律を載せ、次々と運ぶような演奏ですね。他の指揮者が盛り上がるところでも、さっぱり、盛り上がらず、下手に演奏しているように、聴こえ、音楽が、バラバラになります。でも、何か、感動するんですよね。彼の演奏する、「真夏の夜の夢」なんか、テンポが、ゆうたりしているのに、チャーミングなんですね。こんな指揮者は、今は、いないです。これからも、聴いていきたい指揮者ですね。