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ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの訃報

2012年05月25日 23時23分00秒 | ワーグナー
先日、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの訃報に接しました。5月18日に86才で逝去されました。もう引退してかなりの年月がたってますので、過去の演奏家とも言えますが、あまりに大きな存在でしたので、少々複雑な思いでありました。というより、もうこれほどの歌手は出ないのではないか、と思いますし、これまで聴いたことのある歌手の中でも、ずば抜けた力量の歌手であると確信しております。

うちの家人は、それほど音楽を聴く方ではなく、ただオペラなどは「門前の小僧」的に、けっこう知っていますし、有名な作品はだいたいわかるのです。その家人に言わせれば、DFD(長い名前なので、失礼ですがこう表記させてもらいます)はすぐわかるし、その歌には面白みがまったくない。しかし、嫌になるくらいうまい、そうです。そして美空ひばりと、うまいということで共通しますが、ともに何を歌っているのか、歌う言葉がたいそう明確にわかる、ということです。まったく、その通りであります。

DHDは、なんと言っても、ドイツ・リートの偉大な遺産があります。シューベルトを筆頭に、これを凌ぐ歌手は出てこないでしょうねえ。そして、一方でオペラでの業績があります。ただ、若いころは盛んにオペラに出てましたが、いつごろからか、あまり出なくなりましたね。以前にも述べましたが、このひと、バリトンでも高い部類に入る声質のために、なかなか出番が限られておりましたねえ。しかし、このひとが出ると、その演奏は実に締まったものになります。

DHDのオペラでこれはいい、というものを列挙してみます。ローエングリンのテルラムント(ケンペ盤)と式部官(ショルティ盤)、マイスタージンカーのザックス(ヨッフム盤)、トリスタンのクルヴェナール(フルトヴェングラー盤・クライバー盤)、タンホイザーのヴォルフラム(ゲルテス盤)、ラインの黄金のヴォータン(カラヤン盤)。そして、魔笛のパパゲーノ(ショルティ盤)、フィガロの結婚のアルマヴィーヴァ伯爵(ベーム盤)、加えて、椿姫のジェルモン(マゼール盤)、リゴレットのリゴレット(クーベリック盤)、ドン=カルロのロドリーゴ(ショルティ盤)、トスカのスカルピア男爵(マゼール盤)、アラベラのマンドリーコ(カイルベルト盤)などなどが思い出されます。加えて、バッハ。マタイのイエス(クレンペラー盤・フルトヴェングラー盤)やバス(リヒター盤)においては、なんと言ってもこの人ですねえ。それだけではなく、カンタータ第56番「われ喜びて十字架を負わん」や第82番「われは足れり」などもこの人ではないと、と思うような立派な歌唱でありました。

こんな偉大な歌唱の中から、今回はヴォータンであります。カラヤンの指環から。カラヤンの指環は、私はけっこう好きです。非常に透明感があり、オケの音色は極めてきれいです。そして、多くの歌手も、変にクセのあるものではなく、たいそう素直な歌唱なんであります。カラヤンの指環、ラインの黄金ではDHD、ワルキューレはトマス・スチュアートです。ラインの黄金では偉大な権力を誇るウォータンに、DHDの威厳に満ちた声が相応しいということなんです。確かに、安定感たっぷりで健康的な歌声は神々の長であり、多くの神の上ち、みじんも弱さを感じないウォータンにはほんとうにマッチしております。とはいえ、ワルキューレ以降のウォータンも彼がやって欲しいなと思うこともありますねえ。

あ、そうそう。マーラーもいいですねえ。大地の歌もいい。中でも、リッケルトの5つの歌が私は好きですねえ。
(DG POCG-9034/6 1996年 輸入盤)

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2 コメント

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Unknown (バルビ)
2012-05-26 22:05:07
ディスカウの訃報。本当に悲しく思います。私は知りませんでした。教えていただいて、ありがとうございます。また一人、巨人が亡くなりましたね。

歌曲やオペラをあまり聴かなかった私も、少し聴くようになったのも、この人のおかげです。ヴォルフの歌曲の面白さを知ったのもこの人のおかげでしす。

ご冥福をお祈りします。
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コメント感謝です。 (mikotomochi58)
2012-05-27 23:01:40
バルビ 様、コメントありがとうございます。フィッシャー=ディースカウさん、引退してかなりになるのですが、こうやって訃報に接すると、残念な気持ちが募ってきますね。いまでも、リートでは他の追随を許さないですね。私はまだまだこの人の本当を凄さをわかっていないかも知れません。しっかり残された録音を聴いて行きたいと思います。またご教示ください。
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