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バイロイトの『ローエングリン』その5

2023年04月09日 23時57分00秒 | ワーグナー
先週、『レコード芸術』誌が7月号をもって休刊することが報じられました。いやいやびっくりですねえ。昔に比べると、記事も内容も、頁数も広告も薄くなってきましたが、他誌に比べるとやはりレコ芸!ということでしたよねえ。昨今のCD離れやクラシック離れも影響しているでしょう。中学生のころから愛読しているものとしては、実に寂しい。せめて『音楽の友』誌と合併するとかして欲しかったですねえ。もう雑誌の時代は終わったのかも知れませんね…。

それは仕方ないな、ということで…。今回は『ローエングリン』であります。ヘンデルの歌劇やオラトリオを盛んに聴いている昨今。久々にワーグナーを聴きたくなりました。今年になって『タンホイザー』と『マイスタージンガー』を観て、ワーグナー熱は高まっているのも事実。また実演を観たいなあ、と思っているのですが、なかなかありません。でも、『トリスタン』は、生で観たいですが、あまり動きがないのが4時間とると、なかなかでしょうねえ。

それはさておき、『ローエングリン』ですが、これまでもいくつか取り上げていますが、まだ取り上げていない名盤として、今回は1953年のバイロイト音楽祭のライブです。ヨゼフ・カイルベルト指揮のもの。ヴォルフガング・ヴィントガッセン(T)、エリナー・スティーバー(S)、ヘルマン・ウーデ(Br)、アストリッド・ヴァルナイ(S)、ヨーゼフ・グラインドル(B)、ハンス・ブラウン(Br)、ゲルハルト・シュトルツェ(T)、ヨゼフ・ヤンコー(T)、アルフォンス・ヘルヴィヒ(Br)、テオ・アダム(B)、バイロイト祝祭合唱団、ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)、バイロイト祝祭管弦楽団。1953年7月~8月、バイロイト祝祭劇場での録音です。戦後、初めてのバイロイトでの『ローエングリン』ですね。

やはり、バイロイトの演奏はいいですねえ。特に、1960年代までのもには、なかなかの充実度であります。まずは、カイルベルトですが、まず序曲からして、ゆったりとしたテンポで、非常に丁寧な演奏です。輪郭がしっかりとして実に安定している響きの中から、白鳥の騎士への憧憬が浮かび上がるようであります。また、エルザの大聖堂への入場でも、実に雄弁な語り口で壮大なスケールで大聖堂の威容が目前に迫ってきますねえ。そして、場面場面でも歌唱とのバランスが非常に巧みです。やはり、カペルマイスターの面目躍如であります。また、バイロイトの合唱もいいですねえ。特に、このローエングリンでは合唱がいろんな場面での重要な役割なんですが、迫力があり、場面に応じた歌声が聴けます。

そして、この1953年の公演、主役4人の存在感は半端ではないですねえ。中でも、ヴィントガッセンとヴァルナイです。ヴィントガッセンのローエングリンは、翌年のヨッフムとの公演のものだけですかね。私的には最高のヘルデン・テノールと信じているのですが、ヴィントガッセンのローエングリンが聴けるのは実にうれしい。この人のローエングリンは、気高さやその美声と存在感では他を抜きんでていると思いますね。ローエングリンの崇高な光輝く騎士のように、ヴィントガッセンの美声が響きます。そして、ヴァルナイですねえ。この人の声と巧さはやはりスゴい。第二幕ではスティーバーのエルザとの絡みがありますが、スティーバーのエルザは少々物足りない。少し低めの声なんですが、ヴァルナイと比べるとねえ。ただ第二幕では、ヴァルナイは少々押さえ気味。オヤ?と思っていると、大聖堂への入場のあとの豹変したオルトルートではヴァルナイも一変して実に堂々とした自己主張が聴けて、このあたりの巧さもいいですねえ。そして、ヴィントガッセン。第1幕の登場の場面の神々しさ、そして第3幕でのエルザとは、実に柔らかい歌唱。最後の「はるかな国」ではもう言うことはありません。やはり、ローエングリン、いいなあ。

でも、ほんとに『レコード芸術』残念ですねえ。若いときの紙面では、いろんなレコード会社の広告も多く、これも楽しみでした。なんとか季刊くらいで頑張ってくれれば嬉しいですがねえ。8月からは、『音楽の友』を買うしかないかなあ。
(TELDEC 4509-93674-2 1994年 輸入盤)

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2 コメント

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Unknown (popotoku)
2023-04-16 20:54:32
カイルベルトは未聴ですがヴァルナイとヴィントガッセンは好きです。特にヴァルナイは54年のローエングリンや57年の指輪などを気に入っています。
それにしても当時のバイロイトはヴィーラント・ワーグナーの新しい演出がすばらしい効果をあげていましたね。
今のバイロイトも先鋭的な演出が多いですが、あまり共感できないのは自分が時代についていけないのか、演出が独りよがりすぎるのかどちらでしょうか?
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コメントありがとうございます。 (mikotomochi58)
2023-04-18 22:23:52
popotoku 様、コメント感謝です。ヴィントガッセンは私が最初に聞いたジークフリートでした。またヴァルナイは、カイルベルトのステレオ盤で再び脚光を浴びましたね。フラグスタート、ニルソンとならぶBリュンヒルでですね。私が最初に見た指環などの舞台の写真は、すべてヴィーラント・ワーグナーによるものでしたので、これがけっこうデフォルトとなっています。まあ、昨今のバイロイトも含めて、賛否両論はあるでしょうが…。また、ご教示ください。
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