この前の週末は、久々に家でごろごろの二日間でした。その間、村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読みました。村上さんの作品はいつもは文庫本を待ってでしたが、これはBOOKOFFで250円で買いました。一気に読めたし面白かったのですが、いつもの村上さんの男の子の成長物語とでもいうんでしょうか。これは彼のあい変わらぬところですよね。そこに病んだ女性と喪失感を癒してくれる女性が登場して…。なんや『パルシファル』みたいですね。ちょっと違うかな。でも、村上さんの小説は大好きです。
そんなわけで、今回はブラームス。クラリネット五重奏曲ロ短調作品115であります。この曲、ブラームスが身辺整理などをし始めた最晩年に、マイニンゲンの宮廷楽団のリヒャルト・ミュールヘルトのクラリネットを聴いたことがきっかけとなって、4曲のクラリネットの室内楽を作曲したことは有名なお話です。その一曲がこの曲なんです。しかし、モーツアルトの同じ曲とは、かなり趣がことなりますし、私は長いこと、この曲はどうも苦手だったんですねえ。
というのも、この曲のよく言えば寂寥感、悪く言えば貧乏くささが、どうも肌、いや耳に合わなかったのです。第1楽章のテーマから我慢できない、第2楽章になればもうどうしょうもない、あとはもう嫌だ…、ってところでしょうか。でも、あるときふと第2楽章のフレーズのひとつが、なぜか頭の中で鳴ったのでした。それからこの曲が心の中に入ってきたのでありました。そんな経験ってないですかね。それは、少し前に聴いたCDが印象深かったのだと思います。
そのCDとは、アルフレード・プリンツとウィーン室内合奏団による演奏のもの。1980年4月ウィーンでの録音であります。まあこの曲の超有名な演奏のひとつであります。しかし、プリンツのクラリネットですが、このとろけるような音色は実にいいですし、そしてそれでいて理知的なところが私は好きです。そして、なんとも弦と非常によく合っている響きも実に鮮やかであります。クラリネットと弦の音色が驚くほど同化しているのも、このふたつの個性が似かよっているからでしょうねえ。そして、ウィーン室内合奏団。ヘッツェルのヴァイオリンを筆頭に、これも美音の極致。中でもヘッツェルのヴァイオリンはいいですよ。プリンツと同様、とろけてしまいそうな美音であります。他の三人も、同様であります。
第1楽章の冒頭から弦とクラリネットの美音に聴いている方も、とろけてしまいそうです。このふたつの楽器が一緒に演奏することは必然的なものであるように聞こえるのであります。そして、この演奏には寂寥感とか、秋のうら淋しさなどといった印象はほとんどなく、そういった次元を越えて言ってしまったような演奏になっています。前半の二楽章で全体の2/3を占めており、印象も非常強いのです。第2楽章も、第1楽章以上に音色の美しさには目を見張るものがあります。アダージョもゆったりした流れの中に、プリンツの伸びやかなクラリネットと澄んだ弦の織りなす音楽は、もはや彼岸の美でありますね。そして第3楽章。このアンダンティーノでは弦の鮮やかな演奏が光っています。混じりっけのない音色が心に染み込んできます。第四楽章はブラームスお得意の変奏曲。クラリネット対弦楽器の相克のようなせめぎ合いが展開され、一歩もひけを取らないプリンツでありました。
でも、村上さんの描く女性は、素敵ですね。よく似合ったタイプの女性が登場しますが、姿形までも、わかるようで、本当にいいなあ、といつも思いますね。
(DENON COCO-70673 2004年 CREST1000)
そんなわけで、今回はブラームス。クラリネット五重奏曲ロ短調作品115であります。この曲、ブラームスが身辺整理などをし始めた最晩年に、マイニンゲンの宮廷楽団のリヒャルト・ミュールヘルトのクラリネットを聴いたことがきっかけとなって、4曲のクラリネットの室内楽を作曲したことは有名なお話です。その一曲がこの曲なんです。しかし、モーツアルトの同じ曲とは、かなり趣がことなりますし、私は長いこと、この曲はどうも苦手だったんですねえ。
というのも、この曲のよく言えば寂寥感、悪く言えば貧乏くささが、どうも肌、いや耳に合わなかったのです。第1楽章のテーマから我慢できない、第2楽章になればもうどうしょうもない、あとはもう嫌だ…、ってところでしょうか。でも、あるときふと第2楽章のフレーズのひとつが、なぜか頭の中で鳴ったのでした。それからこの曲が心の中に入ってきたのでありました。そんな経験ってないですかね。それは、少し前に聴いたCDが印象深かったのだと思います。
そのCDとは、アルフレード・プリンツとウィーン室内合奏団による演奏のもの。1980年4月ウィーンでの録音であります。まあこの曲の超有名な演奏のひとつであります。しかし、プリンツのクラリネットですが、このとろけるような音色は実にいいですし、そしてそれでいて理知的なところが私は好きです。そして、なんとも弦と非常によく合っている響きも実に鮮やかであります。クラリネットと弦の音色が驚くほど同化しているのも、このふたつの個性が似かよっているからでしょうねえ。そして、ウィーン室内合奏団。ヘッツェルのヴァイオリンを筆頭に、これも美音の極致。中でもヘッツェルのヴァイオリンはいいですよ。プリンツと同様、とろけてしまいそうな美音であります。他の三人も、同様であります。
第1楽章の冒頭から弦とクラリネットの美音に聴いている方も、とろけてしまいそうです。このふたつの楽器が一緒に演奏することは必然的なものであるように聞こえるのであります。そして、この演奏には寂寥感とか、秋のうら淋しさなどといった印象はほとんどなく、そういった次元を越えて言ってしまったような演奏になっています。前半の二楽章で全体の2/3を占めており、印象も非常強いのです。第2楽章も、第1楽章以上に音色の美しさには目を見張るものがあります。アダージョもゆったりした流れの中に、プリンツの伸びやかなクラリネットと澄んだ弦の織りなす音楽は、もはや彼岸の美でありますね。そして第3楽章。このアンダンティーノでは弦の鮮やかな演奏が光っています。混じりっけのない音色が心に染み込んできます。第四楽章はブラームスお得意の変奏曲。クラリネット対弦楽器の相克のようなせめぎ合いが展開され、一歩もひけを取らないプリンツでありました。
でも、村上さんの描く女性は、素敵ですね。よく似合ったタイプの女性が登場しますが、姿形までも、わかるようで、本当にいいなあ、といつも思いますね。
(DENON COCO-70673 2004年 CREST1000)
私もこの盤が好きです。
安いし、名盤だと思います。