この冬一番の大寒波が、日本列島を包んでいます。近畿でも大阪は殆ど雪は積もっていません。
1月13日
大阪・いずみホールのシューベルト集シリーズの三大歌曲の一つ、「冬の旅」はユリアン・プレガルディエン(テノール)&鈴木優人(フォルテピアノ)による演奏でした。
同ホールが所蔵するという、1820年代のナネッテ・シュトライヤーというピアニストでもあった女性が制作したものだそうです。
鈴木優人さんは、このシリーズが始まる前にもプレ・イベントで、この楽器による歌曲や連弾のコンサートで、音色を聴かせてくれました。
シューベルト時代のピアノということで、実際はこういう音でシューベルトやベートーヴェンは作曲をし、演奏していたという、核心に迫るコンサートです。
歌い手は、クリストフ・プレガルディエンの息子さんのユリアン・プレガルディエン。お二人とも優れた遺伝子を継いでおられる、という先入観は確かにありますが、そういうことは払拭されるくらい、一音入魂の感動的な演奏でした。
第1曲「おやすみ」のテンポは速めで、若者の悔しさを感じる。第1声の”Fremd”のFの音から、美声で力強くキマッっている。
電光掲示板に詩が写しだされていきますが、その一言一言が説得力のある歌い方で、まるで演劇を見ているようです。ドイツ語がネイティブの方なので、感情を乗せてゆくのに、自然な演技がつくのでしょうか。とにかく解り易い、美声を聴かせるよりも、ドラマを語るのに、様々な声を使い分け、時には音を伸ばし、絶妙な空間も創る。例えはおかしいかもしれませんが、今日本で流行りの”落語”を観ているようで、それに美しい音楽がついていて、フォルテピアノの音が、色彩画のように場面を映し出す。目の前にシーンが完璧に見えてくる演奏でした。
ユリアンの32~3歳という若さも、ちょうど「冬の旅」の主人公くらいの年齢ということもあり、よけいにリアルさがありました。
「菩提樹」では、直立不動、木のように真っ直ぐ立って、懐かしい想い出を語るのです。「春の夢」は、つかの間の幻のようなフォルテピアノの儚げで優しい音。そして目が覚めて「孤独」であることが、いかに絶望的なことか、まだ嵐に吹かれている時の方が良かったと、前半が締めくくられました。
シューベルトは12曲を書いて、次の12曲が書かれるまで、8ヶ月間あったということですが、ステージの上で、ピアノに向かってうなだれて、この人本当に立ち直れるのだろうか~?と客席から心配するほどの演技( ゚Д゚)。
そしてまた後半12曲に向かって歩みます。「宿屋」(死んでお墓に入ること)で休みたいのに、そこからもまだ早いと追い出され、「ライエルマン・辻音楽師」に出会って、苦しくとも生きていかなければならないと悟ります。ライヤーの空虚5度(ドローン)の音が、なんともギシギシと古めいた感じは、フォルテピアノの音を聴いて、なるほど~!これはやはりシューベルト時代のピアノの音がぴったり!現代の洗練されたピアノの音では無理だ、と思った人も多かったようです。
フォルテピアノの魅力もふんだんに発揮されていて、やはり音量がそんなにない分、無駄に声を張っていることもなく、極弱な声まで出せる、ppp~fffまでより表現力に幅が出るという利点があります。随所に効果的に入れられる装飾変奏も、古楽を勉強している奏者ならではの、粋な演奏でもありました。
この楽器で演奏出来るピアニストも歌手もとても幸せなことだと思いますが、多くの場合はモダン・ピアノになりますので、ケースバイケースで、モダンのピアニストさんも、より良い演奏をするために、たいへん工夫をされているのです。
私は一般のピアノ初心者の子供達のレッスンをおもにしていますが、住宅事情などから3分の2くらいは電気ピアノというのが、今の日本の現状です。それでも音楽を学びたい、楽しみたいという気持ちが、一番大切だと思っています。
とにかく一曲一曲が感動的な「冬の旅」で、最新の演奏だと思いましたが、「冬の旅」という音楽は、ある若者の失恋物語というだけでなく、人生と重なる音楽だということも、改めて感じました。
多くの人は、それぞれの環境で、それぞれの苦しみや試練と闘って生きています。幸せなことばかりではありません。苦しみの中でもがき、どうすれば気が済むのだろう、どうすれば幸せになれるのだろうと悩んでいます。
ちょっと怖いことを言いますよ。「人間って、自分が幸せだと思っている人は、ほとんどいないんですよ」ということを聞いたことがあります。無理矢理、幸せだと自分に思い込ませていることが多いと思います(^-^;。
どうして宗教があるのか?やはり何かにすがって、守られているという安心感がないと、人間って弱いものなのです。
芸術はそういうことも教えてくれるし、音楽は束の間、苦しみを忘れさせてくれます。
シューベルトは死に病と闘い、短い生涯で永遠に受け継がれるであろう、芸術を残しました。シューベルトに励まされ、その生きた証に触れ、一曲一曲に人生の場面を共感する。「冬の旅」は「人生の旅」でもあります。
サイン会にて。残念ながらこの二人の組み合わせによるCDはまだ出ていないのです。
三大歌曲のセット券で、シューベルト歌曲を堪能。新たなる最高の演奏も聴けて、優人さん、ユリアンさんと感動の記念写真です!
是非是非フォルテピアノによる演奏、また聴かせてくださいね!
1月13日
大阪・いずみホールのシューベルト集シリーズの三大歌曲の一つ、「冬の旅」はユリアン・プレガルディエン(テノール)&鈴木優人(フォルテピアノ)による演奏でした。
同ホールが所蔵するという、1820年代のナネッテ・シュトライヤーというピアニストでもあった女性が制作したものだそうです。
鈴木優人さんは、このシリーズが始まる前にもプレ・イベントで、この楽器による歌曲や連弾のコンサートで、音色を聴かせてくれました。
シューベルト時代のピアノということで、実際はこういう音でシューベルトやベートーヴェンは作曲をし、演奏していたという、核心に迫るコンサートです。
歌い手は、クリストフ・プレガルディエンの息子さんのユリアン・プレガルディエン。お二人とも優れた遺伝子を継いでおられる、という先入観は確かにありますが、そういうことは払拭されるくらい、一音入魂の感動的な演奏でした。
第1曲「おやすみ」のテンポは速めで、若者の悔しさを感じる。第1声の”Fremd”のFの音から、美声で力強くキマッっている。
電光掲示板に詩が写しだされていきますが、その一言一言が説得力のある歌い方で、まるで演劇を見ているようです。ドイツ語がネイティブの方なので、感情を乗せてゆくのに、自然な演技がつくのでしょうか。とにかく解り易い、美声を聴かせるよりも、ドラマを語るのに、様々な声を使い分け、時には音を伸ばし、絶妙な空間も創る。例えはおかしいかもしれませんが、今日本で流行りの”落語”を観ているようで、それに美しい音楽がついていて、フォルテピアノの音が、色彩画のように場面を映し出す。目の前にシーンが完璧に見えてくる演奏でした。
ユリアンの32~3歳という若さも、ちょうど「冬の旅」の主人公くらいの年齢ということもあり、よけいにリアルさがありました。
「菩提樹」では、直立不動、木のように真っ直ぐ立って、懐かしい想い出を語るのです。「春の夢」は、つかの間の幻のようなフォルテピアノの儚げで優しい音。そして目が覚めて「孤独」であることが、いかに絶望的なことか、まだ嵐に吹かれている時の方が良かったと、前半が締めくくられました。
シューベルトは12曲を書いて、次の12曲が書かれるまで、8ヶ月間あったということですが、ステージの上で、ピアノに向かってうなだれて、この人本当に立ち直れるのだろうか~?と客席から心配するほどの演技( ゚Д゚)。
そしてまた後半12曲に向かって歩みます。「宿屋」(死んでお墓に入ること)で休みたいのに、そこからもまだ早いと追い出され、「ライエルマン・辻音楽師」に出会って、苦しくとも生きていかなければならないと悟ります。ライヤーの空虚5度(ドローン)の音が、なんともギシギシと古めいた感じは、フォルテピアノの音を聴いて、なるほど~!これはやはりシューベルト時代のピアノの音がぴったり!現代の洗練されたピアノの音では無理だ、と思った人も多かったようです。
フォルテピアノの魅力もふんだんに発揮されていて、やはり音量がそんなにない分、無駄に声を張っていることもなく、極弱な声まで出せる、ppp~fffまでより表現力に幅が出るという利点があります。随所に効果的に入れられる装飾変奏も、古楽を勉強している奏者ならではの、粋な演奏でもありました。
この楽器で演奏出来るピアニストも歌手もとても幸せなことだと思いますが、多くの場合はモダン・ピアノになりますので、ケースバイケースで、モダンのピアニストさんも、より良い演奏をするために、たいへん工夫をされているのです。
私は一般のピアノ初心者の子供達のレッスンをおもにしていますが、住宅事情などから3分の2くらいは電気ピアノというのが、今の日本の現状です。それでも音楽を学びたい、楽しみたいという気持ちが、一番大切だと思っています。
とにかく一曲一曲が感動的な「冬の旅」で、最新の演奏だと思いましたが、「冬の旅」という音楽は、ある若者の失恋物語というだけでなく、人生と重なる音楽だということも、改めて感じました。
多くの人は、それぞれの環境で、それぞれの苦しみや試練と闘って生きています。幸せなことばかりではありません。苦しみの中でもがき、どうすれば気が済むのだろう、どうすれば幸せになれるのだろうと悩んでいます。
ちょっと怖いことを言いますよ。「人間って、自分が幸せだと思っている人は、ほとんどいないんですよ」ということを聞いたことがあります。無理矢理、幸せだと自分に思い込ませていることが多いと思います(^-^;。
どうして宗教があるのか?やはり何かにすがって、守られているという安心感がないと、人間って弱いものなのです。
芸術はそういうことも教えてくれるし、音楽は束の間、苦しみを忘れさせてくれます。
シューベルトは死に病と闘い、短い生涯で永遠に受け継がれるであろう、芸術を残しました。シューベルトに励まされ、その生きた証に触れ、一曲一曲に人生の場面を共感する。「冬の旅」は「人生の旅」でもあります。
サイン会にて。残念ながらこの二人の組み合わせによるCDはまだ出ていないのです。
三大歌曲のセット券で、シューベルト歌曲を堪能。新たなる最高の演奏も聴けて、優人さん、ユリアンさんと感動の記念写真です!
是非是非フォルテピアノによる演奏、また聴かせてくださいね!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます