今月(5月)の2日から、宮崎市内にあるみやざきアートセンターで開催中の、ゴジラ生誕60周年記念の展覧会「ゴジラと特撮美術の世界展」、16日(土)に行ってまいりました。
(以下、掲出する写真は撮影可のスペースで撮ったものです)
東宝特撮・怪獣映画のイマジネーションを支えた美術デザイナーの仕事にスポットを当てるとともに、特撮映画の世界観をスクリーンの外で拡げることに寄与した、プロのイラストレーターによるイラスト作品の原画を多数展示するというこの展覧会、特撮・怪獣映画好きには見逃せない垂涎の機会であります。早く行かねばと思いつつ果たせていませんでしたが、ようやく見に行くことができました。
まず最初の展示スペースには、1984年版『ゴジラ』を皮切りにして、平成のゴジラシリーズでメインとなるポスターアートを手がけてこられた、生賴範義さんの原画が勢揃いしていました。
『スター・ウォーズ』シリーズをはじめとする多数の映画でポスターアートを手がけた、宮崎市在住の世界的イラストレーターである生賴さん。その作品は、やはりみやざきアートセンターで昨年開催された展覧会「生賴範義展 THE ILLUSTRATOR」でも、たっぷり堪能することができました(そのときの拙ブログの記事はこちらであります。ちなみに、「生賴範義展」の第2弾となる「記憶の回廊」も、7月から開催される予定です)。
ゴジラシリーズのイラストは、昨年の展覧会での鑑賞に続き2度目の対面となりましたが、あらためて緻密にしてダイナミックな生賴さんの作品に魅了されました。とりわけ、新宿の高層ビル街をバックに仁王立ちして咆哮するゴジラを描いた84年版『ゴジラ』と、3本の首でゴジラの体に巻きつくキングギドラを絶妙な構図で描いた『ゴジラvsキングギドラ』(1991年)のポスターアートは、何度見てもゾクゾクするぐらい秀逸な出来であります。
人類にとっての脅威と恐怖の存在から、すっかり子どもたちのアイドル的な人類の味方となっていったゴジラのキャラクターを、再び人類に立ちはだかる脅威という原点に戻した、84年版『ゴジラ』以降の平成ゴジラシリーズ。そんなキャラクターを印象づける上で、生賴さんの作品が果たした功績は大きいのではないか、ということを、あらためて作品を見ながら思ったりいたしました。
平成ゴジラ、平成ガメラの2大シリーズをはじめとして、さまざまな映画のVFX(視覚効果)に参加しておられる橋本満明さんが描いた、最初のハリウッド版『GODZILLA』(1998年)のキーアート作品も展示されていました。自由の女神像を踏み潰しそうなGODZILLAの脚が印象的だったポスターアートも、橋本さんの作品だったんだなあ。
(会場には、実際に映画に使われたというスーツや造形物を活用して、映画の一場面を再現するような嬉しい展示も。こちらは『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』〈2001年〉から、白眼が禍々しさを際立たせるゴジラと、それまでのファンタジックな怪獣らしいモコモコした感じから、リアルな昆虫っぽさを強調する造形となったモスラであります)
生賴さんに続いて大々的に原画が取り上げられているイラストレーターは、開田裕治さん。出版物やCD、LD(レーザーディスク)などのジャケット、プラモデルの外箱などなど、数多くの媒体で怪獣のイラストを手がけてきておられる「怪獣絵師」の開田さん。それぞれの怪獣たちをキャラクター性豊かにいきいきと描き出すその作風は、まさに「センス・オブ・ワンダー」に溢れています。今回、その開田さんの原画を多数拝見する機会を得られたことも、大きな喜びとなりました。
展示されているそれぞれの作品には、開田さんご自身によるコメントが付されておりました。ゴジラとキングギドラとの戦いの歴史を、横長のパノラマ画面で描き出した作品に付されていた「怪獣映画にはパノラマ画面が似合う」「キングギドラはパノラマ映画の申し子」とのお言葉には大いに頷きました。そう、横長の大きな画面で活躍させてこそ、怪獣たちは映えるんですよね。
また、『ゴジラvsビオランテ』(1989年)以降の6作品に登場する平成ゴジラの頭部を描いた作品には「平成ゴジラには怪獣王らしい風格があって好き」とのコメントが。これにも大いに共感いたしました。昨年お亡くなりになった川北紘一特技監督の発案によって形作られた平成ゴジラは、ゴジラのカッコよさを再認識させてくれたと、わたくしも考えておりますので。
怪獣のほかにも、東宝特撮映画に登場した超兵器メカを描いた作品もありました。とりわけ、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年)に登場した、わたくしも大のお気に入りであるメカ「メーサー殺獣光線車」を描いた大きなサイズの作品は、まさに入魂といってもいい素晴らしい出来栄えで、しばし見とれておりました。
細部まで揺るがせにしない正攻法の作品がほとんどだった中、生賴範義さんが描いた『ゴジラvsキングギドラ』と『ゴジラvsモスラ』(1992年)のポスターをデフォルメ化して描いた、ユーモラスで遊び心のある作品もあったりして、なんだかニンマリいたしました。
今回の展覧会で、もう一つの大きな柱となった展示は、長年にわたり東宝特撮映画の美術を担ってこられた、井上泰幸さんの手になる多数のデザイン画や図面、絵コンテであります。シリーズ第1作の『ゴジラ』(1954年)に美術スタッフとして参加し、のちには美術監督として数多くの映画の特撮美術を手がけてきた井上さんの足跡は、日本の特撮映画の歴史そのものでもあります。今回の展示も、シリーズ第2作となる『ゴジラの逆襲』(1955年)以降のゴジラシリーズはもとより、『妖星ゴラス』(1962年)などのSF映画や、『日本沈没』(1973年)などのパニック大作までもが網羅されていて(中には、現在諸事情により観ることができない、1974年製作の『ノストラダムスの大予言』のデザイン画も)、東宝特撮映画の美術を一手に手がけてきた井上さんの幅広い仕事ぶりに圧倒されました。
実際には存在しない怪獣や光景をデザインするイマジネーションの根っこには、井上さんのたゆまぬ探究心がありました。『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)に登場した巨大カマキリ怪獣・カマキラスのデザイン画からは、まず実物のカマキリを精緻に写生して、それを徐々に怪獣らしくデフォルメしていった過程がよくわかりました。また、作品には描かれない背景を含め、独自に情報を集めて綴られた「独学ノート」の一部からも、井上さんの探究心をひしひしと感じることができました。
美術デザインだけでなく、特撮現場の予算を管理することも、美術監督になってからの井上さんの重要な仕事でした。展示されている絵コンテには、特撮セットをつくるために必要な予算の管理表が書き込まれているものも多くあり(その中には、搬入に使うクレーン車の修理代なんて項目も)、特撮映画製作の舞台裏が垣間見えて興味深いものがありました。さらには、『日本沈没』での津波シーンをつくるための「波起こし器」の設計図面も、井上さんの手になるものと知って驚かされました。
東宝の特撮・怪獣映画のイマジネーションを支えた、井上さんの偉大な仕事を物語る一級の実物資料を、ここ宮崎で拝見することができたことは、今回の展覧会での大きな収穫だったとつくづく思います。
(こちらも、映画で使用されたスーツや造形物を活用した展示であります。『ゴジラ×メカゴジラ』〈2002年〉とその続篇『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』〈2003年〉に登場したメカゴジラ=機龍とゴジラです)
『ゴジラvsビオランテ』以降の平成ゴジラや、1999年以降のミレニアムゴジラシリーズに参加された新世代の美術デザイナー、西川伸司さんが手がけたデザイン画や絵コンテも展示されておりました。
西川さんによる何種類かのビオランテの検討用デザイン画の中には、頭部がゴジラの形そのままというものも。ゴジラの細胞と薔薇が融合して怪獣化した、「ゴジラの分身」としてのビオランテのキャラクターが成立していく過程が窺えました。また、歴代のゴジラやキングギドラ、モスラ、メカゴジラの姿形の変遷を、解説コメントとともに描いたイラスト図解も。
この展覧会と同時に、開田裕治さん単独の原画展「THE ART OF KAIJU」も開催されておりました(こちらのみ入場無料)。東宝特撮映画以外のウルトラシリーズや、ガメラ、仮面ライダーを題材にした作品を集めたものです。
こちらも、それぞれのシリーズが持つ魅力が一点一点の作品に凝縮されていて魅了されました。とりわけお気に入りだったのが、『ウルトラQ』のLDジャケットのために描かれた、夕日をバックにしたカネゴンの絵。ユーモラスだけどちょっと哀愁もあるカネゴンのキャラクターを活かした、詩情あるいい作品です。また、歴代のウルトラシリーズに登場した怪獣たちが大集合した作品も圧巻でした(こちらも、隅のほうにちょこんと描かれているカネゴンがいい味出してました)。
異彩を放っていたのが、ゴジラシリーズをはじめとした数多くの映画で音楽を手がけた作曲家・伊福部昭さんの仕事を集大成したLPレコードのジャケット画でした。黒一色の点描で精緻に描かれた一連の作品には、色彩感豊かな怪獣画とはまた違った魅力がありました。
土曜日の午後ということもあって、会場には親子連れも多く訪れておりました。子どもたちが「ゴジラゴジラ!」とはしゃぎながら、生賴さんや開田さんの作品を目にしている光景を見ると、なんだか嬉しい気持ちになりました。
会期は来月(6月)の7日までです。この展覧会を通じて、多くの子どもたち(もちろん大人も、ですが)に、特撮映画の魅力が伝わればいいなあ、と願います。わたくしも、会期中にもう1回行っとこうかなあ。
展覧会の図録があればすぐさま買いたかったのですが、まだ出ていなくて予約を受け付けている、とのことでした。完全予約限定版というその図録、3672円と値段は少々張るものの、これはやはり買っておきたいと迷うことなく代金を前払いし、予約を申し込みました。会期終了から2ヶ月後に送付されるとのことで、大いに楽しみであります。
物販コーナーを覗くと、書籍やDVD、原画の複製、フィギュアなどなど、好き者ごころをくすぐるようなグッズがたくさんありました。 中には、福島県二本松市の酒造会社が作った、ウルトラシリーズの怪獣や宇宙人をあしらったお酒なんてのも。「ダダの梅酒」とか(笑)。
東宝特撮映画関係をはじめとした書籍類にも欲しいものが何冊かありましたが、それらは自分の勤務先である書店からも注文できるので、ここはやはり、そこらでは売っていないものを買っておくことにいたしました。で、迷った末に選んだのは、こちら。
開田裕治さんと、その妻である開田あやさんが、各地を回って綴った文章をまとめた小冊子。円谷英二監督生誕の地である福島県の須賀川市や、長崎県の「軍艦島」こと端島、さらには昨年開催された「生賴範義展」を見に宮崎市を訪れたときのことなどが綴られていて、なかなか楽しそうです。
(以下、掲出する写真は撮影可のスペースで撮ったものです)
東宝特撮・怪獣映画のイマジネーションを支えた美術デザイナーの仕事にスポットを当てるとともに、特撮映画の世界観をスクリーンの外で拡げることに寄与した、プロのイラストレーターによるイラスト作品の原画を多数展示するというこの展覧会、特撮・怪獣映画好きには見逃せない垂涎の機会であります。早く行かねばと思いつつ果たせていませんでしたが、ようやく見に行くことができました。
まず最初の展示スペースには、1984年版『ゴジラ』を皮切りにして、平成のゴジラシリーズでメインとなるポスターアートを手がけてこられた、生賴範義さんの原画が勢揃いしていました。
『スター・ウォーズ』シリーズをはじめとする多数の映画でポスターアートを手がけた、宮崎市在住の世界的イラストレーターである生賴さん。その作品は、やはりみやざきアートセンターで昨年開催された展覧会「生賴範義展 THE ILLUSTRATOR」でも、たっぷり堪能することができました(そのときの拙ブログの記事はこちらであります。ちなみに、「生賴範義展」の第2弾となる「記憶の回廊」も、7月から開催される予定です)。
ゴジラシリーズのイラストは、昨年の展覧会での鑑賞に続き2度目の対面となりましたが、あらためて緻密にしてダイナミックな生賴さんの作品に魅了されました。とりわけ、新宿の高層ビル街をバックに仁王立ちして咆哮するゴジラを描いた84年版『ゴジラ』と、3本の首でゴジラの体に巻きつくキングギドラを絶妙な構図で描いた『ゴジラvsキングギドラ』(1991年)のポスターアートは、何度見てもゾクゾクするぐらい秀逸な出来であります。
人類にとっての脅威と恐怖の存在から、すっかり子どもたちのアイドル的な人類の味方となっていったゴジラのキャラクターを、再び人類に立ちはだかる脅威という原点に戻した、84年版『ゴジラ』以降の平成ゴジラシリーズ。そんなキャラクターを印象づける上で、生賴さんの作品が果たした功績は大きいのではないか、ということを、あらためて作品を見ながら思ったりいたしました。
平成ゴジラ、平成ガメラの2大シリーズをはじめとして、さまざまな映画のVFX(視覚効果)に参加しておられる橋本満明さんが描いた、最初のハリウッド版『GODZILLA』(1998年)のキーアート作品も展示されていました。自由の女神像を踏み潰しそうなGODZILLAの脚が印象的だったポスターアートも、橋本さんの作品だったんだなあ。
(会場には、実際に映画に使われたというスーツや造形物を活用して、映画の一場面を再現するような嬉しい展示も。こちらは『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』〈2001年〉から、白眼が禍々しさを際立たせるゴジラと、それまでのファンタジックな怪獣らしいモコモコした感じから、リアルな昆虫っぽさを強調する造形となったモスラであります)
生賴さんに続いて大々的に原画が取り上げられているイラストレーターは、開田裕治さん。出版物やCD、LD(レーザーディスク)などのジャケット、プラモデルの外箱などなど、数多くの媒体で怪獣のイラストを手がけてきておられる「怪獣絵師」の開田さん。それぞれの怪獣たちをキャラクター性豊かにいきいきと描き出すその作風は、まさに「センス・オブ・ワンダー」に溢れています。今回、その開田さんの原画を多数拝見する機会を得られたことも、大きな喜びとなりました。
展示されているそれぞれの作品には、開田さんご自身によるコメントが付されておりました。ゴジラとキングギドラとの戦いの歴史を、横長のパノラマ画面で描き出した作品に付されていた「怪獣映画にはパノラマ画面が似合う」「キングギドラはパノラマ映画の申し子」とのお言葉には大いに頷きました。そう、横長の大きな画面で活躍させてこそ、怪獣たちは映えるんですよね。
また、『ゴジラvsビオランテ』(1989年)以降の6作品に登場する平成ゴジラの頭部を描いた作品には「平成ゴジラには怪獣王らしい風格があって好き」とのコメントが。これにも大いに共感いたしました。昨年お亡くなりになった川北紘一特技監督の発案によって形作られた平成ゴジラは、ゴジラのカッコよさを再認識させてくれたと、わたくしも考えておりますので。
怪獣のほかにも、東宝特撮映画に登場した超兵器メカを描いた作品もありました。とりわけ、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年)に登場した、わたくしも大のお気に入りであるメカ「メーサー殺獣光線車」を描いた大きなサイズの作品は、まさに入魂といってもいい素晴らしい出来栄えで、しばし見とれておりました。
細部まで揺るがせにしない正攻法の作品がほとんどだった中、生賴範義さんが描いた『ゴジラvsキングギドラ』と『ゴジラvsモスラ』(1992年)のポスターをデフォルメ化して描いた、ユーモラスで遊び心のある作品もあったりして、なんだかニンマリいたしました。
今回の展覧会で、もう一つの大きな柱となった展示は、長年にわたり東宝特撮映画の美術を担ってこられた、井上泰幸さんの手になる多数のデザイン画や図面、絵コンテであります。シリーズ第1作の『ゴジラ』(1954年)に美術スタッフとして参加し、のちには美術監督として数多くの映画の特撮美術を手がけてきた井上さんの足跡は、日本の特撮映画の歴史そのものでもあります。今回の展示も、シリーズ第2作となる『ゴジラの逆襲』(1955年)以降のゴジラシリーズはもとより、『妖星ゴラス』(1962年)などのSF映画や、『日本沈没』(1973年)などのパニック大作までもが網羅されていて(中には、現在諸事情により観ることができない、1974年製作の『ノストラダムスの大予言』のデザイン画も)、東宝特撮映画の美術を一手に手がけてきた井上さんの幅広い仕事ぶりに圧倒されました。
実際には存在しない怪獣や光景をデザインするイマジネーションの根っこには、井上さんのたゆまぬ探究心がありました。『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)に登場した巨大カマキリ怪獣・カマキラスのデザイン画からは、まず実物のカマキリを精緻に写生して、それを徐々に怪獣らしくデフォルメしていった過程がよくわかりました。また、作品には描かれない背景を含め、独自に情報を集めて綴られた「独学ノート」の一部からも、井上さんの探究心をひしひしと感じることができました。
美術デザインだけでなく、特撮現場の予算を管理することも、美術監督になってからの井上さんの重要な仕事でした。展示されている絵コンテには、特撮セットをつくるために必要な予算の管理表が書き込まれているものも多くあり(その中には、搬入に使うクレーン車の修理代なんて項目も)、特撮映画製作の舞台裏が垣間見えて興味深いものがありました。さらには、『日本沈没』での津波シーンをつくるための「波起こし器」の設計図面も、井上さんの手になるものと知って驚かされました。
東宝の特撮・怪獣映画のイマジネーションを支えた、井上さんの偉大な仕事を物語る一級の実物資料を、ここ宮崎で拝見することができたことは、今回の展覧会での大きな収穫だったとつくづく思います。
(こちらも、映画で使用されたスーツや造形物を活用した展示であります。『ゴジラ×メカゴジラ』〈2002年〉とその続篇『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』〈2003年〉に登場したメカゴジラ=機龍とゴジラです)
『ゴジラvsビオランテ』以降の平成ゴジラや、1999年以降のミレニアムゴジラシリーズに参加された新世代の美術デザイナー、西川伸司さんが手がけたデザイン画や絵コンテも展示されておりました。
西川さんによる何種類かのビオランテの検討用デザイン画の中には、頭部がゴジラの形そのままというものも。ゴジラの細胞と薔薇が融合して怪獣化した、「ゴジラの分身」としてのビオランテのキャラクターが成立していく過程が窺えました。また、歴代のゴジラやキングギドラ、モスラ、メカゴジラの姿形の変遷を、解説コメントとともに描いたイラスト図解も。
この展覧会と同時に、開田裕治さん単独の原画展「THE ART OF KAIJU」も開催されておりました(こちらのみ入場無料)。東宝特撮映画以外のウルトラシリーズや、ガメラ、仮面ライダーを題材にした作品を集めたものです。
こちらも、それぞれのシリーズが持つ魅力が一点一点の作品に凝縮されていて魅了されました。とりわけお気に入りだったのが、『ウルトラQ』のLDジャケットのために描かれた、夕日をバックにしたカネゴンの絵。ユーモラスだけどちょっと哀愁もあるカネゴンのキャラクターを活かした、詩情あるいい作品です。また、歴代のウルトラシリーズに登場した怪獣たちが大集合した作品も圧巻でした(こちらも、隅のほうにちょこんと描かれているカネゴンがいい味出してました)。
異彩を放っていたのが、ゴジラシリーズをはじめとした数多くの映画で音楽を手がけた作曲家・伊福部昭さんの仕事を集大成したLPレコードのジャケット画でした。黒一色の点描で精緻に描かれた一連の作品には、色彩感豊かな怪獣画とはまた違った魅力がありました。
土曜日の午後ということもあって、会場には親子連れも多く訪れておりました。子どもたちが「ゴジラゴジラ!」とはしゃぎながら、生賴さんや開田さんの作品を目にしている光景を見ると、なんだか嬉しい気持ちになりました。
会期は来月(6月)の7日までです。この展覧会を通じて、多くの子どもたち(もちろん大人も、ですが)に、特撮映画の魅力が伝わればいいなあ、と願います。わたくしも、会期中にもう1回行っとこうかなあ。
展覧会の図録があればすぐさま買いたかったのですが、まだ出ていなくて予約を受け付けている、とのことでした。完全予約限定版というその図録、3672円と値段は少々張るものの、これはやはり買っておきたいと迷うことなく代金を前払いし、予約を申し込みました。会期終了から2ヶ月後に送付されるとのことで、大いに楽しみであります。
物販コーナーを覗くと、書籍やDVD、原画の複製、フィギュアなどなど、好き者ごころをくすぐるようなグッズがたくさんありました。 中には、福島県二本松市の酒造会社が作った、ウルトラシリーズの怪獣や宇宙人をあしらったお酒なんてのも。「ダダの梅酒」とか(笑)。
東宝特撮映画関係をはじめとした書籍類にも欲しいものが何冊かありましたが、それらは自分の勤務先である書店からも注文できるので、ここはやはり、そこらでは売っていないものを買っておくことにいたしました。で、迷った末に選んだのは、こちら。
開田裕治さんと、その妻である開田あやさんが、各地を回って綴った文章をまとめた小冊子。円谷英二監督生誕の地である福島県の須賀川市や、長崎県の「軍艦島」こと端島、さらには昨年開催された「生賴範義展」を見に宮崎市を訪れたときのことなどが綴られていて、なかなか楽しそうです。