別府の北部にある鉄輪温泉の散策で、古き良き湯治場情緒を堪能したわたくし。ここまで来たらせっかくなので、別府観光の目玉「地獄めぐり」をやってみようじゃないか!ということにいたしました。
「地獄」というのは、地上に口を開けた温泉の噴出口のことでありまして、古いものは奈良時代の文献にも記されているとか。赤や青などに彩られ、蒸気やお湯が噴出するという、この世のものとは思えない光景ゆえ「地獄」に喩えられるようになったそうですね。
別府には8つの名所地獄があり、そのうちの6つが、ここ鉄輪に集中しております。残り2つの「血の池地獄」と「龍巻地獄」は、歩いて行くには少々きつい場所にありますので、残念ながら割愛することにし、徒歩で回れる6ヶ所を全部踏破しよう、という、まあなんといいますか中途半端で自慢にもなんにもなりゃしない回りかたなのでありますが、とにかくひょこひょこと、6つの地獄を回り始めたのでございます。
まず最初に訪れたのが「白池地獄」。「白池」といいましても少し青みがかった感じの色で、なんだかカクテルを思わせるような涼しげな色をしておりますねえ。なんだか口をつけて飲んでみたくなるのでありますが•••温度は90度を超えるそうでございまして、飲んだら一大事なのでありますよ。
ここには、温泉の熱を活用した熱帯魚館なるものが併設されておりまして、普段なかなか見ないようなお魚たちが、水槽で悠々と泳いでいらっしゃいました。アロワナやピラルクといった面々もいましたが、中でも目玉なのがピラニアさんたちでありました。
•••それにしても「人食魚ピラニア」っていったって、実際にこのコたちが人食ったというわけでもないでしょうに。なんだかちょっぴり、カワイソウな気もしましたですよ。
白池地獄をあとにして次の地獄へ行こうとしたその時、行く手の方向から「ドン!ガリガリ」という異様な音が響いてまいりました。ビックリして前を見ると、さきほどわたくしの脇をすり抜けていったタクシーが、道に沿って立っている石垣にぶつかったあと、ヨロヨロと蛇行しながら走っていくのが見えたのであります。脇から出てきたカップルがア然としながら見ているのでありまして•••おいおい、大丈夫だったのかねえ、あのタクシーの運転手。まさか、昼間から焼酎かなんか飲んで運転してたんじゃねえだろうなあ。
お次に訪ねた地獄は「鬼石坊主地獄」。泥の池のようなところから、ポコッポコッと湧き出してくる熱泥のようすが坊主頭のように見えることから名付けられたとか。
写真に撮ろうとしたのでありましたが、なかなかタイミングを掴むのが難しく、はっきりしない坊主しか撮ることができませんでした。いやあ、残念でございました。
それにしても、地獄めぐりに来ている観光客の多いこと。この日が連休が終わったあとの平日とは思えないくらい賑わっておりましたよ。それも、けっこう外国から来ていた人たちも目立っていて、観光都市としての別府の底力を、あらためて思い知らされた気がしたのであります。
お次は「海地獄」。まるでどこかのリゾートビーチのような、コバルトブルーの美しい色に惹きつけられる地獄でございます。
なんだか、思わずザブーンと飛び込みたくなってくるような気もしてくるのですが、温度は98℃という、それこそゆで卵ができるような熱さですので、飛び込んだらこれまた一大事なのであります。美しいコバルトブルーは、硫化鉄によるものだとか。敷地内では温泉熱を利用して、大きなものでは子どもが乗ることもできるという、アマゾン原産のオオオニバスが栽培されておりました。
ここでちょっとおやつを頂こうと買い求めたのが「地獄蒸し焼きプリン」という、なんだかスゴそうな名前のプリンであります。
少し硬めに蒸し上げられた生地は甘さも控えめで、なかなか美味しゅうございましたよ。カラメルがちょっぴり苦めだったのが「地獄風」とでも申しましょうか。
お次は「山地獄」。地獄自体は、ゴロゴロと積み重なった石の間からもうもうと蒸気が上がっているという、わりと地味めなものでしたが(それでも温度は90℃はあるとか)、ここの呼び物はなんといっても、やはり温泉熱を利用して飼育されているさまざまな動物さんたちでありました。
カバさんやゾウさん、フラミンゴさん、ダチョウさん、ラマさん、マントヒヒさん、そしてニホンザルさん•••といった動物さんたちを、けっこう真近に眺めることができるミニ動物園といった趣でありました。ゾウさんは少々窮屈そうな場所に閉じ込められている感じでカワイソウな気もしたのですが•••。一方で、カバさんはあくまでも呑気そうでしたし、おサルさんたちは互いに毛づくろいなんぞしたりして、押し寄せる観光客などどこ吹く風といった風情でございました。
そうこうしているうちに時刻もお昼。近くにある食堂に立ち寄り、大分の名物家庭料理、だんご汁を頂きました。平べったい麺にたっぷりの野菜を味噌で煮込んだ実に素朴な料理。いろいろ飲み食いしたあとのお腹に優しく収まっていきました。美味しかったです。
昼食のあと立ち寄ったのは「かまど地獄」。一丁目から六丁目まで、さまざまにバラエティに富んだ地獄が詰まっていて、まさに別府の地獄を凝縮したかのような感がございました。
「二丁目」で蒸気を吹き上げる岩の上に鎮座まします鬼さんは、コワいというよりもなんだか愛嬌があっていい感じでしたねえ。また、「血の池地獄」に行けなかったぶん、ここで真っ赤な地獄を見ることができたのも良かったですね。
ここでは「温泉ピータン」なるゆで卵を頂きました。白身の部分が土色に染まっていて、白身に塩を、黄身にはしょう油を少し垂らして食べてみたら、いやあ、これがなかなか旨かったですねえ。いま思えば、いくつかおみやげに買って帰ればよかったなあ。また食べてみたいですね、これは。
最後に訪れたのは「鬼山地獄」。やはり98℃はあるという熱池地獄を過ぎた奥にはワニ園があり、大小さまざまなワニさんたちが飼育されております。
全長が7メートル近くはあるという巨大なアリゲーターやら、大小のワニさんたちが小山のように積み重なっているさまなどは、なかなかの迫力がありましたねえ。
とはいえ、その多くはあまり動くこともなく、口をポカンと開けたりしたままの状態でじーっとしておりました。が、一匹だけ「グガーーッ!」と、まるで怪獣かなにかのような声を上げて咆哮したのがおりまして、ビックリしましたねえ。あれは仲間のワニを威嚇していたのか、はたまたうるさい観光客に向けてドスをきかせていたのか。いやあ、凄味がございました。
それにしても、いろんなワニさんたちを見ているのは飽きないもので、ここではけっこう長い時間を過ごしたのでありました。
そうこうしているうちに、いよいよ別府とのお別れのときが近づいてまいりました。わたくしは鉄輪を離れ、再び別府駅へと戻りました。
構内でおみやげと、別府の古い絵葉書についての本を購入し、さあ帰るぞと特急切符を取り出そうとしたら•••
な、ない!切符がない!
バッグのあちこちをひっくり返してみましたが、結局は見つかりませんでした。どうやら、どこかで落っことしたようでありまして、仕方なくまた帰りの特急切符を購入するハメになりました。•••いやはや、最後の最後でやっちまったのでございまして•••とほほだよ。
何はともあれ、宮崎へと帰る特急列車に乗り込むことができました。車窓から外を見ると、別府観光の立役者であり、「子どもたちをあいしたピカピカのおじさん」でもあった、油屋熊八の後ろ姿が見えました。
熊八さん、アナタが育て上げた別府は本当に楽しくていいところでしたぞ。またぜひ、お邪魔しに来ますから、その時にはまたよろしく•••。
熊八さんの後ろ姿にそうつぶやきながら、わたくしは別府をあとにしたのでありました。
ずいぶんと長くかかってしまいましたが、別府へのオトナの遠足ばなし、これにて幕でございます。お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
ではまた、次回の旅のこころまでーッ。•••て、最後も小沢昭一さんのマネかよ。
「地獄」というのは、地上に口を開けた温泉の噴出口のことでありまして、古いものは奈良時代の文献にも記されているとか。赤や青などに彩られ、蒸気やお湯が噴出するという、この世のものとは思えない光景ゆえ「地獄」に喩えられるようになったそうですね。
別府には8つの名所地獄があり、そのうちの6つが、ここ鉄輪に集中しております。残り2つの「血の池地獄」と「龍巻地獄」は、歩いて行くには少々きつい場所にありますので、残念ながら割愛することにし、徒歩で回れる6ヶ所を全部踏破しよう、という、まあなんといいますか中途半端で自慢にもなんにもなりゃしない回りかたなのでありますが、とにかくひょこひょこと、6つの地獄を回り始めたのでございます。
まず最初に訪れたのが「白池地獄」。「白池」といいましても少し青みがかった感じの色で、なんだかカクテルを思わせるような涼しげな色をしておりますねえ。なんだか口をつけて飲んでみたくなるのでありますが•••温度は90度を超えるそうでございまして、飲んだら一大事なのでありますよ。
ここには、温泉の熱を活用した熱帯魚館なるものが併設されておりまして、普段なかなか見ないようなお魚たちが、水槽で悠々と泳いでいらっしゃいました。アロワナやピラルクといった面々もいましたが、中でも目玉なのがピラニアさんたちでありました。
•••それにしても「人食魚ピラニア」っていったって、実際にこのコたちが人食ったというわけでもないでしょうに。なんだかちょっぴり、カワイソウな気もしましたですよ。
白池地獄をあとにして次の地獄へ行こうとしたその時、行く手の方向から「ドン!ガリガリ」という異様な音が響いてまいりました。ビックリして前を見ると、さきほどわたくしの脇をすり抜けていったタクシーが、道に沿って立っている石垣にぶつかったあと、ヨロヨロと蛇行しながら走っていくのが見えたのであります。脇から出てきたカップルがア然としながら見ているのでありまして•••おいおい、大丈夫だったのかねえ、あのタクシーの運転手。まさか、昼間から焼酎かなんか飲んで運転してたんじゃねえだろうなあ。
お次に訪ねた地獄は「鬼石坊主地獄」。泥の池のようなところから、ポコッポコッと湧き出してくる熱泥のようすが坊主頭のように見えることから名付けられたとか。
写真に撮ろうとしたのでありましたが、なかなかタイミングを掴むのが難しく、はっきりしない坊主しか撮ることができませんでした。いやあ、残念でございました。
それにしても、地獄めぐりに来ている観光客の多いこと。この日が連休が終わったあとの平日とは思えないくらい賑わっておりましたよ。それも、けっこう外国から来ていた人たちも目立っていて、観光都市としての別府の底力を、あらためて思い知らされた気がしたのであります。
お次は「海地獄」。まるでどこかのリゾートビーチのような、コバルトブルーの美しい色に惹きつけられる地獄でございます。
なんだか、思わずザブーンと飛び込みたくなってくるような気もしてくるのですが、温度は98℃という、それこそゆで卵ができるような熱さですので、飛び込んだらこれまた一大事なのであります。美しいコバルトブルーは、硫化鉄によるものだとか。敷地内では温泉熱を利用して、大きなものでは子どもが乗ることもできるという、アマゾン原産のオオオニバスが栽培されておりました。
ここでちょっとおやつを頂こうと買い求めたのが「地獄蒸し焼きプリン」という、なんだかスゴそうな名前のプリンであります。
少し硬めに蒸し上げられた生地は甘さも控えめで、なかなか美味しゅうございましたよ。カラメルがちょっぴり苦めだったのが「地獄風」とでも申しましょうか。
お次は「山地獄」。地獄自体は、ゴロゴロと積み重なった石の間からもうもうと蒸気が上がっているという、わりと地味めなものでしたが(それでも温度は90℃はあるとか)、ここの呼び物はなんといっても、やはり温泉熱を利用して飼育されているさまざまな動物さんたちでありました。
カバさんやゾウさん、フラミンゴさん、ダチョウさん、ラマさん、マントヒヒさん、そしてニホンザルさん•••といった動物さんたちを、けっこう真近に眺めることができるミニ動物園といった趣でありました。ゾウさんは少々窮屈そうな場所に閉じ込められている感じでカワイソウな気もしたのですが•••。一方で、カバさんはあくまでも呑気そうでしたし、おサルさんたちは互いに毛づくろいなんぞしたりして、押し寄せる観光客などどこ吹く風といった風情でございました。
そうこうしているうちに時刻もお昼。近くにある食堂に立ち寄り、大分の名物家庭料理、だんご汁を頂きました。平べったい麺にたっぷりの野菜を味噌で煮込んだ実に素朴な料理。いろいろ飲み食いしたあとのお腹に優しく収まっていきました。美味しかったです。
昼食のあと立ち寄ったのは「かまど地獄」。一丁目から六丁目まで、さまざまにバラエティに富んだ地獄が詰まっていて、まさに別府の地獄を凝縮したかのような感がございました。
「二丁目」で蒸気を吹き上げる岩の上に鎮座まします鬼さんは、コワいというよりもなんだか愛嬌があっていい感じでしたねえ。また、「血の池地獄」に行けなかったぶん、ここで真っ赤な地獄を見ることができたのも良かったですね。
ここでは「温泉ピータン」なるゆで卵を頂きました。白身の部分が土色に染まっていて、白身に塩を、黄身にはしょう油を少し垂らして食べてみたら、いやあ、これがなかなか旨かったですねえ。いま思えば、いくつかおみやげに買って帰ればよかったなあ。また食べてみたいですね、これは。
最後に訪れたのは「鬼山地獄」。やはり98℃はあるという熱池地獄を過ぎた奥にはワニ園があり、大小さまざまなワニさんたちが飼育されております。
全長が7メートル近くはあるという巨大なアリゲーターやら、大小のワニさんたちが小山のように積み重なっているさまなどは、なかなかの迫力がありましたねえ。
とはいえ、その多くはあまり動くこともなく、口をポカンと開けたりしたままの状態でじーっとしておりました。が、一匹だけ「グガーーッ!」と、まるで怪獣かなにかのような声を上げて咆哮したのがおりまして、ビックリしましたねえ。あれは仲間のワニを威嚇していたのか、はたまたうるさい観光客に向けてドスをきかせていたのか。いやあ、凄味がございました。
それにしても、いろんなワニさんたちを見ているのは飽きないもので、ここではけっこう長い時間を過ごしたのでありました。
そうこうしているうちに、いよいよ別府とのお別れのときが近づいてまいりました。わたくしは鉄輪を離れ、再び別府駅へと戻りました。
構内でおみやげと、別府の古い絵葉書についての本を購入し、さあ帰るぞと特急切符を取り出そうとしたら•••
な、ない!切符がない!
バッグのあちこちをひっくり返してみましたが、結局は見つかりませんでした。どうやら、どこかで落っことしたようでありまして、仕方なくまた帰りの特急切符を購入するハメになりました。•••いやはや、最後の最後でやっちまったのでございまして•••とほほだよ。
何はともあれ、宮崎へと帰る特急列車に乗り込むことができました。車窓から外を見ると、別府観光の立役者であり、「子どもたちをあいしたピカピカのおじさん」でもあった、油屋熊八の後ろ姿が見えました。
熊八さん、アナタが育て上げた別府は本当に楽しくていいところでしたぞ。またぜひ、お邪魔しに来ますから、その時にはまたよろしく•••。
熊八さんの後ろ姿にそうつぶやきながら、わたくしは別府をあとにしたのでありました。
ずいぶんと長くかかってしまいましたが、別府へのオトナの遠足ばなし、これにて幕でございます。お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
ではまた、次回の旅のこころまでーッ。•••て、最後も小沢昭一さんのマネかよ。
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