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第19回宮崎映画祭観覧記(その4) 思った以上に面白く楽しめたラブストーリー『ルビー・スパークス』

2013-08-29 22:33:49 | 映画のお噂
宮崎映画祭の会期も折り返しを迎えた昨日(28日)。仕事からの帰りがけに2本、立て続けに鑑賞してきました。1本目はアメリカ映画『ルビー・スパークス』、2本目はフランス映画『スカイラブ』です。

『ルビー・スパークス』(2012年、アメリカ)
監督=ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス 出演=ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アネット・ベニング、アントニオ・バンデラス

デビュー作を出して以来スランプに陥り小説が書けない上、恋人や友達もいない青年小説家カルヴィン。夢の中に出てきた素敵な女性を「ルビー・スパークス」と名付けてヒロインにし、小説を書き始める。
そんなある日、突然カルヴィンの自宅にキュートな若い女性が現れる。なんと、その女性はカルヴィンが書いている小説のヒロイン、ルビーが実体化した姿であった。こうして、2人は奇妙ながらも楽しい日々を送ることになるのだったが•••。
自分が生み出した理想の女性が現実に現れる、という、非モテ男の夢というか妄想を具現化したかのような(笑)、奇想天外なラブストーリーを作り上げたのは、『リトル・ミス・サンシャイン』(2006年)の監督コンビ、ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリス。ふだん、恋愛ものはほとんど観ないわたくしなのですが、これはなかなかの拾い物。恋愛に対して不器用極まりなかった冴えない男•••個人的にはなんだか親近感が湧きましたが(笑)•••が、真実の愛に目覚めていくさまが笑いを交えながら描かれていて、けっこう楽しく観ることができました。
何より、ヒロイン役のゾーイ・カザンがすごくキュートで魅力的でした。わたくしは初めて知った女優さんですが、実は本作で脚本と共同製作も兼ねているという、なかなかの才女。『エデンの東』(1954年)などで名高い名匠、エリア・カザン監督のお孫さんでもあるとか。

『スカイラブ』(2011年、フランス)
監督=ジュリー・デルビー 出演=ジュリー・デルビー、エリック・エルモスニーノ、オーレ・アッティカ

1979年。アメリカの宇宙ステーション、スカイラブが落下するかもしれないとの噂でもちきりのフランスはブルゴーニュ。そこに住むおばあちゃんの誕生日を祝うべく、大人数の一族が次々に集まり、賑やかに宴が始まる。だが、この一族には一癖も二癖もあるメンツが揃っていて、何かと騒動やトラブルが起こったりする中で、大家族の夏の日々が過ぎていくのであった•••。
序盤、ある種の郷愁さえ感じさせる大家族の夏の一コマが描かれたかと思いきや、ちょっと風変わりな一族の面々によって、少しずつタガの外れたものになっていきます。そんな一族の悲喜こもごもを、フランス映画らしい機知や皮肉(時にきわどい会話も交えながら)に富んだセリフのやりとりで見せてくれる、大人が楽しめるコメディ映画に仕上がっておりました。
本作も、主演女優であるジュリー・デルビーが監督と脚本も兼ねています。この日観た2本とも、主演女優が作り手としても才能を発揮した映画だったのでありました。


映画祭の会場となっている宮崎キネマ館には、「がれきに花を咲かせようプロジェクト」展と称した展示スペースが設けられています。
おととしの東日本大震災で被害を受けた、福島県は伊達市にある県立保原高校美術部の生徒さんたちが、「震災で発生した瓦礫に花の絵を描くことで地域の復興と建物の再建を願い、それを伝えることで、人々の心に明るい希望や元気が生まれるように」との願いをこめて立ち上げたプロジェクトだとか。今回の宮崎映画祭で2作品が上映されている大林宣彦監督も、プロジェクトを立ち上げた生徒さんたちと交流しておられるそうです。


展示を見ていると、自分たちの愛するふるさとを想う生徒さんたちの気持ちが、ストレートに伝わってくるようでありました。
映画祭の会期もあと少しですが、会場に足をお運びの際には、ぜひご覧になっていただけるよう願います。

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