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ETV特集『音で描く賢治の宇宙 ~冨田勲×初音ミク 異次元コラボ』

2013-02-05 21:27:27 | ドキュメンタリーのお噂
ETV特集『音で描く賢治の宇宙 ~冨田勲×初音ミク 異次元コラボ~』
初回放送=2月3日(日)午後10時~10時59分(5.1chサラウンド放送)


多くの映画やテレビ番組などの音楽を手がけるかたわら、シンセサイザーを使って新たな音楽の可能性を切り開き、海外でも広く知られる作曲家・冨田勲さん。
80歳となった冨田さんが、自身の音楽活動の集大成として取り組んだのが、長年思い描いていた宮澤賢治の世界を表現した「イーハトーヴ交響曲」。
その世界観を表現するために、冨田さんが歌い手として起用したのが、インターネットで大人気のヴァーチャルアイドル「初音ミク」でした。
番組は、オーケストラと初音ミクの共演という、前代未聞の試みが実現するまでの過程を追いながら、「イーハトーヴ交響曲」に込められた冨田さんの想いに迫っていきます

冨田さんは、交響曲の世界観や宇宙観を表現するための「声」をどうするかで悩んでいました。
そんな時、テレビで見かけたのが「初音ミク」でした。「パソコンの中にしかいないミクロの存在、それは異次元の存在と置き換えられる」というのが、冨田さんのミク起用の理由でした。

これまでは、既にできている音楽に合わせて歌い踊るだけであったミク。しかし、今回はオーケストラの指揮に合わせて歌い、踊るためのシステムが要求されました。
そこで、ミクの開発に携わるエンジニアなどは、指揮に合わせてスムーズに歌や踊りを変えられるためのシステム構築のため、試行錯誤を重ねていきます。
冨田さんは言います。「今回は『イーハトーヴ交響曲』のためだけど、もっと先を見越して、これをやっておくことが大事だと思う」
試行錯誤の末に理想的なシステムを得て、会場である東京オペラシティに現れたミク。ミクは指揮に合わせて完璧にテンポを変えながら歌い、踊ったのでした。オーケストラとの共演は成功裡に終わりました。

子どもの頃に感じた賢治への印象をすべて曲に込めた、という冨田さん。その原点は『銀河鉄道の夜』にありました。
戦時中に過ごした愛知県。空襲に怯える日々に加え、三河地震(1945年1月)の被害に直面した少年時代の冨田さんが出会ったのが『銀河鉄道の夜』。それは、冨田さんに夢と希望を与えてくれたといいます。
『銀河鉄道の夜』をモチーフにした楽章。はるか上にまで続くような闇と光が包む中、賛美歌が響き渡る会場は幻想的な雰囲気に。その場にいたら、さぞかし深く感動していたことだろうなと思いました。

そして、冨田さんを創作に駆り立てたのは、10年前の約束でした。
親戚でもある、東北大学の元総長・西澤潤一さんと交わしていた、詩『雨ニモマケズ』に曲をつけるという約束。それが、東日本大震災を受けて形になったのです。
少年のころの地震の記憶がよみがえった冨田さんは、今こそ形にしなければ、と岩手を訪ね、賢治の遺品や岩手山などの自然からインスピレーションを受け、作品を創り上げました。
第6楽章に置かれた『雨ニモマケズ』は合唱のみで表現され、深い祈りがストレートに伝わってくるようでした。
冨田さんは言いました。
「(震災を受けて)ぼくも奮起しなければバチが当たる」「東北の人たちが、この曲を聴いてがんばってくれたら嬉しい」

初音ミクという「袋」を得て、「酒」である古典的な物語が新しい姿を現していく過程は、なかなか面白い驚きがありました。
そして何より、80歳になってもなお、好奇心とチャレンジ精神あふれる冨田さんの姿勢には、圧倒されるものがありました。しかも、さらに先の可能性をも見据えてのチャレンジを。
つくづく、すごい方だなあと思うばかりでありました。

「イーハトーヴ交響曲」、全曲通して聴いてみたいなあ。叶うものならば初音ミクとのコラボの形で。



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