しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

戦場の衣食住①飲料水・便所

2020年09月27日 | 盧溝橋事件と歩兵10連隊(台児荘~漢口)
「帝国陸軍 戦場の衣食住」 学習研究社 2002年発行 より転記




飲料水の工夫

水の補給が困難な戦場では、兵員各自が腰につけている水筒が命の綱になる。
軍隊の行進は、50分間の行軍ごとに10分間の小休止を取ることになっている。
この休憩時に水分を摂取する際、注意すべき重要なことがある。
激しい行軍で体内の水分が失われているため、急いで一度の水を飲むと胃痙攣(いけいれん)を起こす場合がある。このため一口ずつゆっくりと噛むように飲むことが教育されていた。
また余裕のある場合には、3%濃度の食塩水をいれることが奨励されていた。



野戦での便所の構築

野営ないし露営を行う場合の排泄への対応は、マニュアルである「築営教範」に規定されている。
短期間と長期間に大別し、

短期間の場合は
大便と小便は共通した厠で行われ、兵員30~40名に対して幅30cm、深さ50cm、長さ1mの溝を掘る。
長期間の場合は、
大便と小便は別の設備が設けられ、大便用には12名に対し幅・深さ・長さ、それぞれ1mの溝を掘り、20cm間隔で踏み板を設置する。
短長期ともできる限り既存の資材を利用して囲いを作り、屋根をつけることが理想とされた。
衛生面ではクロール石灰の散布、ないし土をかける。
行軍中や戦闘中の用便は、衛生と防諜の面から地面に穴を掘ってからの排泄が義務付けられていた。
「落とし紙」は毎月150枚配給された。


陣地の便所

野外での排泄時に臀部を蚊に刺されることが原因で、マラリアにかかる患者が急増した。
このため蚊取り線香や火縄、軟膏が開発された。
地下陣地
高温多湿なため、陣地より離れた地上に設けることが多かった。地下にこもる戦闘では一斗缶を臨時の便器にした。



野戦の日用品給与

手ぬぐい 2ケ月毎 1筋
石鹸 同上 1個
歯ブラシ 3ヶ月毎 1袋
落とし紙 毎月 150枚
鉛筆 同上 1本
私製葉書 2ヶ月毎 20枚
角封筒 毎月 10枚
褌 毎月 1筋





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闇の女たち

2020年09月27日 | 昭和21年~25年
東京闇市興亡記」 猪野健治編 双葉社 1999年発行



RAA解体

「忘れもしないのは昭和21年3月27日のこと。
昼頃目をさますと、突然、全員集まれという。
『GHQの指令で、今日限り、ただ今から慰安所は一切オフリミットになったから、皆さんは立ち退いてもらいたい。
皆さんの犠牲で多くの一般婦女子の純潔が護られたのは歴史的事実であって、どうか国のために尽くしたということを誇りと慰めにお別れしてほしい…』
寝耳に水とはこのことをいうのであろうか」

「下着類の入った風呂敷三つを持って出た。
その夜から私たちは兵隊相手の街娼になった。」

彼女たちの多くは、すでに発生していたパンパンの一群へ身を投じていくことで生きのびようとする。

有楽町のガード下、新橋。
ラク町(有楽町)、バシン(新橋)はアメリカ兵相手の「洋パン」が多く、身なりも派手であった。
ノガミ(上野)、ジュク(新宿)は日本人相手で、どことなく汚らしく地味な服装であった。

闇の女の怖れたものは、稼ぎを横取りされたり、性病にかかることだった。
そのため自衛上、縄張りごとにきっぷのいい姉御がリーダーシップをとるようになる。
そんなところへ,RAA慰安婦たちが合流してきて、街娼は盛り場にあふれ、社会問題化する。



取締り

GHQの要請で性病を防止するため、狩り込みが行われた。
当時、有楽町、新橋など都内に600~700名の闇の女がいた。
「昭和21年3月10日警視庁はMP協力の下に一斉検挙。最年少16歳から最高38歳で街頭で進出していた300余名。
目立って多いのは戦災で家を焼かれ肉親と離れた娘たちである」
取り調べの上、上悪質者以外は保護者と共に説諭放免する。

闇の女と吉原などの集娼の女とでは、はっきりとした区別がなされた。
当然仲も悪く、病院内ではケンカがたえなかった。
あの世界で生き残るには、気を張って、男まさりにふるまわなければ、ひねりつぶされる。口のきき方も乱暴。
やめらないのは、お金が魅力であるからである。
当時のサラリーマンの給料を二日で稼いでしまう。
稼いだ金はすべて自分のものになる。
ショートで一日10人も相手をする街娼もいた。

取締り強化と、世の中が秩序を保ってくるにつれて、パンパンと呼ばれる女たちにも、やがて転機がくる。

赤線が完全に復活する。
街娼は組織に吸収され街にはヒモである客引きの群れがあふれた。


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