「桃」 有岡利幸 法政大学出版局 2012年発行
桃太郎の変容
桃太郎は、降参した鬼を許してやる。
その寛大な得に対して感謝のしるしとして、
「イロイロナ タカラモノヲ、サシダシマシタ」としている。
もう一つの重要な点は、
「モウ、ケッシテ人ヲクルシメタリ、モノヲトッタリイタシマセン」と言わせているところである。
この言葉によって、桃太郎の鬼ヶ島征伐を正当化しているのである。
桃太郎の鬼退治は、正義の戦いであることを鬼の側に言わせているのである。
この時代における「国民精神総動員」運動、満州事変以来の大陸進攻を「聖戦」とし、
「八紘一宇」の思想によって、侵略思想に非ずとするとき、「皇軍」は正義の士となる。
そうした時勢の中でこのように「桃太郎像」が生まれ、解釈されたと見なければならない。
こうして桃太郎は太平洋戦争直前の状況のなかで、権力者や軍国主義者の手によって大東亜の士として、「鬼畜米英」を象徴する鬼を、天に代わって征伐することになったのである。
長い戦争によって立場が逆転して、
征伐するはずであった鬼ヶ島の鬼のほうが強くて、降参したのは桃太郎である日本人自身となった。
戦後の教科書から一切「桃太郎」は姿を消し去ったのである。
そして現在に至るまで小学校国語教科書には、一度も登場してこない。
桃太郎の変容
桃太郎は、降参した鬼を許してやる。
その寛大な得に対して感謝のしるしとして、
「イロイロナ タカラモノヲ、サシダシマシタ」としている。
もう一つの重要な点は、
「モウ、ケッシテ人ヲクルシメタリ、モノヲトッタリイタシマセン」と言わせているところである。
この言葉によって、桃太郎の鬼ヶ島征伐を正当化しているのである。
桃太郎の鬼退治は、正義の戦いであることを鬼の側に言わせているのである。
この時代における「国民精神総動員」運動、満州事変以来の大陸進攻を「聖戦」とし、
「八紘一宇」の思想によって、侵略思想に非ずとするとき、「皇軍」は正義の士となる。
そうした時勢の中でこのように「桃太郎像」が生まれ、解釈されたと見なければならない。
こうして桃太郎は太平洋戦争直前の状況のなかで、権力者や軍国主義者の手によって大東亜の士として、「鬼畜米英」を象徴する鬼を、天に代わって征伐することになったのである。
長い戦争によって立場が逆転して、
征伐するはずであった鬼ヶ島の鬼のほうが強くて、降参したのは桃太郎である日本人自身となった。
戦後の教科書から一切「桃太郎」は姿を消し去ったのである。
そして現在に至るまで小学校国語教科書には、一度も登場してこない。