TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

愚痴とも腹立ちとも……

2022年12月04日 | エッセイ
先週の金曜日は、父の通院に付き添う日だった。
自分の通院、親の通院の付き添いと、金曜日はほぼ毎週休みである。
今回は緑内障の父の視力がずいぶん落ちているようなので、大きな病院に診てもらうことになったのである。
かかりつけのクリニックに9時過ぎに寄って紹介状をいただき、病院に向かうためにタクシーに乗り込んだのだが、受付時間が10時半までである。
間に合うかどうか心配だったので、父が運転手さんに、「〇号線は混んでますかね?」と道路の混み具合を尋ねると、彼曰く「〇号線っていったって隅から隅まであるんですからね!お客さんの言ってる〇号線はどの部分なんですか」とそりゃもう、偉そうに声張り上げて揚げ足をとってくる。
もう、あっけにとられたわね。
その病院に行くために通る〇号線のあたりに決まってるじゃないの!
あまりにも失礼でぶしつけなもの言いに、例によって、負けん気の強い父が、言い負かそうとするのだが、なにぶん認知症なので、うまいこと言葉が出てこない。
相手の挑発にのってしゃべればしゃべるほど、とんちんかんな発言になって、その場の空気だけが険悪になってくる。
やめなさいよ、と母がこっそりと隣から父をつつく。
狭い車内でいたたまれなくなったわたしが、するりと別の話題に変えて、運転手抜きの話にもっていく。
すると、くだんの運転手、「(病院までの〇号線の混み具合なら)、普通」と今さらおっしゃる。
それをさっき、聞いたんじゃないの。
知ってるんだったらサッサと言えばいいものを。
それに「普通」っていう言い方も木で鼻をくくったようである。

以前にもその運転手にあたったことがあるらしく、「駅までお願いします」とこちらが言うと、「どこの駅かわからない」と声を荒げたあげく、下車するまでずっとブツブツ文句を言い続けたのだそうだ。
確かに、駅は近隣に3つほどあるので、どこの駅かを言わなかったのはこちらの落ち度だが、なにも文句を言い続けるほどのことでもない。
要するにこちらが年寄りだと思って、小ばかにしたらしい。
わたしは自分がばかにされたよりも、高齢の両親がうまく言い返せないのをいいことに、あんなふうな扱いをうけたことが悔しくてたまらない。

わたしにも、父譲りの、無駄に負けん気の強いところがあり、その時は言い返す言葉がうまく浮かんでこなくて、家に帰ってから、あの時、ああ言ってやればよかった、こう言い返せばよかった、と身もよじれるほど悔しくてたまらなくなることがあるのだが、いつも後の祭りである。
今回は、緑内障の診察の結果が思わしくなく、これ以上の回復が望めないと聞いて帰宅したばかりとあって、その悲しみと、タクシーの中での悔しさが2重になって思い返される。
ああ、せめてあいつ(すでにあいつ呼ばわりになっている)が道路の混み具合を、「普通」と答えたとき、「普通って、何平方メートルに車が何台走ってることを言うんですか」とでも聞いてやればよかった。目には目を!揚げ足には揚げ足を!などと詮無いことをいつまでもぐずぐずと思う。
職場では、同僚、上司、来客諸氏から、随分冷たい言い方じゃないの、というようなもの言いをされることもあるが、それも給料のうちと我慢ができる。しかし今回は、こちらが客なのである。
まあ、物騒な世の中、相手にこちらの家の所在地を知られている以上、変に勝ち誇って恨まれて、放火などされるよりはよかったかもしれない、とちょっと大げさな負け惜しみに気持ちを慰めてみるしかない。
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2 コメント

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Unknown (一般人)
2022-12-04 19:57:53
まあ、病院には何時頃に着きそうですか?
と聞くだけで、良かったような。
もしくは、何時までには、着きたい。
道の混み具合は、感覚ですから、感覚を問答しても、意味はないかな。
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Unknown (TOMATO)
2022-12-05 06:10:00
一般人さん、おはようございます。
確かにあいまいな聞き方ではありましたが、厳密な回答を得たかったわけでもなく、世間話のひとつとしてさらりと扱って欲しかったのです。今、そう書いて気づいたのですが、その運転手さんは、正確な答を求められていると思ったのかもしれない。態度はなんだかなあ、と思うこともありましたが、よく言えば生真面目な人だったのかもしれないです。こちらにも、客なのに、という上から目線の言葉遣いがあって、琴線にふれたのかもしれません。
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