TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

”ポイ活”難民

2024年11月12日 | エッセイ
実家からの帰りには、隣の駅ナカにあるパン屋さんに寄って朝食をとるのが習慣になった。
そのココロは、いつもの店で変わりない朝が始まり、その日1日無事に過ぎますように……というおまじないのようなもの。

で、そのおまじないモーニングのあと、予約の美容院に行った。
常連だった美容院が閉店になって以来、近所の店をネット検索して通っている。
初回だと格安なのだ。(これ、人呼んで、初回狙い、という)。
本日は、駅前に新しくできたビルにはいる店舗である。
限られたスペースにできた店らしく、急な階段を上り切ったすぐのところに受付がある。
今風の華奢な若い女性が、愛想よく出迎えてくれる。
そしてアンケート用紙を渡される。
ひと昔前までは、(どういうわけか)年齢をさばよんで記入していたものだが、雑談の折に、不便と矛盾が生じることが判明したために、最近では正直に書くようにしている。
多少若く書いたからとて、この期に及んで、なんのメリットもないのである。
アンケートの項目には、この度の施術の間、どのように過ごしたいか希望を記入する欄がある。

1 静かに過ごしたい 2 楽しくおしゃべりしたい 3 雑誌を読みながら過ごしたい
4 髪の手入れ方法などについて教えてもらいたい

わたしは迷わず、1 静かに過ごしたい、を選ぶ。
ぺちゃくちゃおしゃべりで距離を縮めてこようとされるのが苦手なのだ。
担当はノリの良さそうな、若い男性だった。
朗らかな挨拶のあと、名刺を渡し、今回のネット予約の話から、買い物でポイントを貯める方法について、実に楽しそうに話を展開し始めた。
ポイントを集めることを「ポイ活」というのだそうだ。
婚活だの終活だのは知っていたが、今や、「〇活」時代だ。
わたしのように、家の片づけにいそしむ世代としては、「ポイ活」と聞いて、なんでもかんでもポイポイ捨てる作業を連想する。
くだんのスタッフ、そのポイ活に凝っているようで、貯まったポイントで、3万円のデジタル機器を購入し、なんと沖縄旅行までしとめたらしい。得意げに話が続く。
コツは、1か所の店で1種類のカードではなく、何種類かのカードやポイントを「紐づけする」ことらしい。
公共料金も対象となるとか。
そうした話を聞いていると、知らないことが実に損なように思えてくる。
「紐づけ」といえば、マイナンバーカードもなんらかの個人情報が紐づけされてあれこれ便利になると聞いた。
国家主導の紐づけも周知されているとは言えない中、若者の間では、すでに物価高対策はこのポイ活でずいぶんと先を行っているようだ。
挙げ句の果てに、ワタクシ、「財布にポイントカードがいっぱい詰まってるんだけど、肝心なカードに限ってレジでなかなか出てこないのよね」
「買い物のたびに端数の5円だの7円だのをすぐ充当しちゃうから、とてもとても何万円も貯まらないのよ。もう”紐づけ難民”なのよお」と、自虐気味に話してウケを狙う。
どんなにポイ活について力説されようと、本気で見倣うのはもうメンドクサイのだ。
で結局、アンケートに記入した、「施術中静かに過ごす」、という選択肢はどこへやら。
カラーが定着するまでの時間、タブレット雑誌を見て過ごす間だけ静かに放っておいてもらったが、多くの時間、その若い元気なスタッフに乗せられて?楽しげにお話ししちゃったわね。
プライベートな話題にぐいぐい攻め込んでくる年配女性スタッフとは違って気楽だったが、それが配慮の上のことなのか、それとも最近の若い人々の話題の取り方なのかわからない。
まあ、カットの具合もちょうどいいし(それが一番大事)、軽めで無難な話題もそれなりに楽しかったからいいのだけど。
むしろ、初対面なのに、だんまりして過ごすのもかえっていたたまれなかったかもしれない。
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