日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

G7伊勢志摩サミットへの課題

2016年05月11日 09時02分28秒 | 日々雑感
 今年5月26日(木)~27日(金)にG7伊勢志摩サミットが開催される予定である。サミットでは、各国首脳が国際社会が直面する様々な課題について、自由闊達な意見交換を通じて問題点の共有や、意思の統一を図るのが目的であろう。

 グローバル化が進むと世界各国の相互依存関係が進み、事件が発生しかつ展開する速度が速くなり、その影響するところも国境を越えて大きくなる。それらに素早く、効果的に対処するためには、首脳が一堂に会して議論し、本音で話し合うことは、コンセンサスを得ることより重要であろう。この点、クリミアやウクライナ紛争の結果、ロシアを排しG8がG7となったことは残念である。

 現在世界が抱える課題は、テロや難民など問題が山積みであるが、議長国である日本が主導できるのは経済問題しか無いだろう。安倍総理大臣は、伊勢志摩サミットで、世界経済の持続的な成長に向けて、構造改革の加速化に合わせ、機動的な財政出動も辞さないという強いメッセージを打ち出し、リーダシップを発揮するとともに、参院選にも備えたいという考えのようである。

 財政出動とは、税金や国債などの財政資金を公共事業などに投資することによって公的需要・総需要を増加させ、国内総生産(GDP)や民間消費などの増加促進を図ることであり、要は公的な金をばらまき、経済の活性化を図ろうとの試みである。一時的には良いかもしてないが、国の財政立て直し、あるいは持続可能との観点からは逆効果である。そこで財政立て直しを重要視する独や英は消極的とのことである。

 英国は、総債務残高のGDP比は世界16位で90%であり、財政立て直しを急いでいるのだ。また、独は2015年予算案に関しは「無借金」で歳出をまかなえる、と国家財政は極めて健全であるが、財政規律には厳しく処しているのだ。これに対し、我が政府の総債務残高のGDP比は世界1位であり、230%を超えしかも国家予算の4割弱は将来世代の負担となる借金に依存しているのだ。日本の赤字は1000兆円を超えるというのに、更に財政出動を優先させるとは、目先のことしか考えていない。メルケル首相の爪の垢でも煎じて飲ませたい位だ。

 このような借金地獄に対し、国の借金はほとんど日本国民が負担しており、家族間の貸し借りと同じであるから何ら心配ない、との能天気な意見もあるが、この借金は子供や孫の負担になることは勿論、格差拡大の一因ともなっていることを忘れている。

 さて、安倍首相はサミットの事前調整のため、イタリア、フランス、ベルギー、ドイツ、イギリスのヨーロッパの5か国を歴訪した。ドイツが日本の期待に応えて財政出動に踏み切るかが最大の焦点となっていたのが4日の日独首脳会談であった。安倍晋三首相との話し合いを終えて共同記者会見に臨んだメルケル独首相は「構造改革、金融政策、財政出動の3つを一緒にやっていかねばならない」と強調し、機動的な財政出動には慎重姿勢を崩さなかったようだ。国の借金には目を瞑る安倍首相と財政規律を重視するメルケル氏とは所詮折り合わないだろう。

 日本時間の5日夜、イギリスでキャメロン首相と会談した。キャメロン首相は、メルケル首相への配慮か各国の事情への配慮が重要だという考えを示し、返事を先送りし、引き続き調整を続けることになった。

 G7の結果として、全員一致で世界経済の低迷脱却を図るために機動的な財政出動も辞さないという強いメッセージを打ち出し、大成功をアピールする目論見であったであろうが、そうは簡単に事が運ばないようである。

 ヨーロッパ各国を訪問した後での記者会見で、安倍首相は、「財政出動の必要性に各国首脳から手応えをしっかりと感じとることができ、それが今回の一連の首脳会談の大きな成果だ」、強調した。賛成意見も、反対意見も、手応えであり、旨い表現をしたと感心するが、どう見ても強がりの発言だ。

 この歴訪がどのようにサミットに反映されているか分からないが、NHKの今月6日から3日間の世論調査によると、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より3ポイント上がって45%、「支持しない」と答えた人は3ポイント下がって36%となったそうだ。この結果からは、今回の歴訪は大成功であったと言えよう。
2016.05.11(犬賀 大好-232)