現在地球上に住む人間は、73億人と推定される。20世紀初頭におよそ16億人だった世界人口は20世紀半ばに25億人となり、20世紀末には60億人にまで急増した。国連の「世界人口展望」では、21世紀半ばには90億人を突破、その後は増加のペースが鈍化していくものの21世紀末までに100億人を突破するだろうと予測している。世界の人口が100億人に達する場合、種々の問題に直面する。
食料問題、エネルギー問題、気候問題等様々であるが、その抜本的解決には目下当てが無い。そこで解決の糸口を宇宙に求めるのもその一つであろう。地球外に人類が進出するのも一つであるが、未知への挑戦は思わぬ可能性を見出すかも知れないからだ。
現在、地球の遥か上空を莫大な費用をかけて国際宇宙ステーション(ISS;International Space Station)が周回している。ISSは、地上から約400km上空に建設された巨大な有人実験施設で、現在は主に宇宙空間が人体に及ぼす影響や、それを防ぐ方法等が研究されている。ISSは将来、月や火星等に遠方航行するシャトルの燃料補給や、新ステーション開発時の前線基地としても運用可能とのことだ。これも人類の宇宙への進出の可能性を見出すための試みだ。
また、ISSではその他各種実験も行われており、件数で多い実験としては「高品質タンパク質結晶生成実験」だそうだ。タンパク質はその分子構造が特性を決定付け、精密な構造が解析できれば様々な新薬製造や治療に役立ち、有用な医学医薬品は最初に作った者に莫大な利益を与える。しかし、当初期待していたほどには成果は出ていないようだ。
そこで米国はISSの限界に気が付き始め、2030年代の有人火星探査の実現に力点を移している。そこでISSへの物資の補給は民間企業に、乗組員の移動はロシアに任せている。日本人宇宙飛行士、大西卓哉さんは7月9日ロシアのソユーズロケットでISSに到着し、約4か月の滞在生活を始めた。
現時点では米国は新型の宇宙ステーション建造計画を持たないようだが、中国は独自の宇宙ステーションの開発を進めているようで、2018年ごろ本格的な建設を始めるそうだ。中国当局の計画では、今年9月宇宙ステーションの前段となる宇宙実験室「天宮2号」、10月には有人宇宙船[神船11号」を打ち上げ軌道上でドッキング、宇宙飛行士が実験室で1か月滞在するとのことだ。
ISSは15か国が参加しているが中国の参加は無く、独自に道を開こうとしている。しかし、莫大な資金を必要とするため各国に参加を呼び掛けているが、予算や計画の透明性に問題があり、参加にはリスクがありそうだ。アジアインフラ投資銀行(AIIB)と同様に、まず米国や日本の参加は無いだろう。
米航空宇宙局(NASA)はISSからは一歩退いたが、代わりに民間企業による宇宙ビジネスへの参入・拡大の動きが活発になっている。ブルー・オリジン社は、昨年11月、自社で開発したロケットを打ち上げ、地上に垂直着陸させることに成功した。米国スペースX社も、洋上の無人船めがけてロケットを降下させ、垂直に起立した状態で軟着陸させることに今年4月、成功した。いづれもロケットの第1段部分を回収し再使用できれば、打ち上げコストを大幅に圧縮できるからだ。
日本の衛星打ち上げ用のロケットH2Aは世界的にも信頼性の高さを誇る。更に平成32年の実用化を目指して開発中の次世代大型ロケット「H3」(仮称)は、打ち上げ能力は1.5倍、費用は約半分という高性能を誇るはずであるが、これまでと同様使い捨てタイプであり、コスト面で太刀打ちできるか懸念される。
日本のH2Aロケットは、民間企業の三菱重工の製造であるが、国からの支援が無くてはやっていけない。米国の民間ロケットも多分国からの補助金が出ていると想像されるが、そのロケットを観光用等のビジネスに利用しようとする野心もある。
宇宙への挑戦は人類の未来を探る研究的試みと思い込んでいたが、既にビジネスとしても成立しそうなのだ。宇宙ビジネスは、打ち上げ用ロケットばかりでなく、・衛星利用関連、・衛星製造関連、・地上設備(通信関係)、・宇宙観光、・保険などの関連サービスなど多岐にわたる。米国では既に10社以上が名乗りを挙げているそうだ。このように、民間企業の宇宙ビジネスへの参入意欲は大きいが、日本では欧米の発想に追い付けない。
日本の成長戦略は、農業改革等既存のシステムの改革に限られ、新たな需要を喚起する性質のものは観光産業位であろう。宇宙ビジネス等、新たな需要を生み出すのが本当の成長戦略であると思うが、日本の官僚、政治家からはこのような発想は生まれない。
2016.07.23(犬賀 大好-253)
食料問題、エネルギー問題、気候問題等様々であるが、その抜本的解決には目下当てが無い。そこで解決の糸口を宇宙に求めるのもその一つであろう。地球外に人類が進出するのも一つであるが、未知への挑戦は思わぬ可能性を見出すかも知れないからだ。
現在、地球の遥か上空を莫大な費用をかけて国際宇宙ステーション(ISS;International Space Station)が周回している。ISSは、地上から約400km上空に建設された巨大な有人実験施設で、現在は主に宇宙空間が人体に及ぼす影響や、それを防ぐ方法等が研究されている。ISSは将来、月や火星等に遠方航行するシャトルの燃料補給や、新ステーション開発時の前線基地としても運用可能とのことだ。これも人類の宇宙への進出の可能性を見出すための試みだ。
また、ISSではその他各種実験も行われており、件数で多い実験としては「高品質タンパク質結晶生成実験」だそうだ。タンパク質はその分子構造が特性を決定付け、精密な構造が解析できれば様々な新薬製造や治療に役立ち、有用な医学医薬品は最初に作った者に莫大な利益を与える。しかし、当初期待していたほどには成果は出ていないようだ。
そこで米国はISSの限界に気が付き始め、2030年代の有人火星探査の実現に力点を移している。そこでISSへの物資の補給は民間企業に、乗組員の移動はロシアに任せている。日本人宇宙飛行士、大西卓哉さんは7月9日ロシアのソユーズロケットでISSに到着し、約4か月の滞在生活を始めた。
現時点では米国は新型の宇宙ステーション建造計画を持たないようだが、中国は独自の宇宙ステーションの開発を進めているようで、2018年ごろ本格的な建設を始めるそうだ。中国当局の計画では、今年9月宇宙ステーションの前段となる宇宙実験室「天宮2号」、10月には有人宇宙船[神船11号」を打ち上げ軌道上でドッキング、宇宙飛行士が実験室で1か月滞在するとのことだ。
ISSは15か国が参加しているが中国の参加は無く、独自に道を開こうとしている。しかし、莫大な資金を必要とするため各国に参加を呼び掛けているが、予算や計画の透明性に問題があり、参加にはリスクがありそうだ。アジアインフラ投資銀行(AIIB)と同様に、まず米国や日本の参加は無いだろう。
米航空宇宙局(NASA)はISSからは一歩退いたが、代わりに民間企業による宇宙ビジネスへの参入・拡大の動きが活発になっている。ブルー・オリジン社は、昨年11月、自社で開発したロケットを打ち上げ、地上に垂直着陸させることに成功した。米国スペースX社も、洋上の無人船めがけてロケットを降下させ、垂直に起立した状態で軟着陸させることに今年4月、成功した。いづれもロケットの第1段部分を回収し再使用できれば、打ち上げコストを大幅に圧縮できるからだ。
日本の衛星打ち上げ用のロケットH2Aは世界的にも信頼性の高さを誇る。更に平成32年の実用化を目指して開発中の次世代大型ロケット「H3」(仮称)は、打ち上げ能力は1.5倍、費用は約半分という高性能を誇るはずであるが、これまでと同様使い捨てタイプであり、コスト面で太刀打ちできるか懸念される。
日本のH2Aロケットは、民間企業の三菱重工の製造であるが、国からの支援が無くてはやっていけない。米国の民間ロケットも多分国からの補助金が出ていると想像されるが、そのロケットを観光用等のビジネスに利用しようとする野心もある。
宇宙への挑戦は人類の未来を探る研究的試みと思い込んでいたが、既にビジネスとしても成立しそうなのだ。宇宙ビジネスは、打ち上げ用ロケットばかりでなく、・衛星利用関連、・衛星製造関連、・地上設備(通信関係)、・宇宙観光、・保険などの関連サービスなど多岐にわたる。米国では既に10社以上が名乗りを挙げているそうだ。このように、民間企業の宇宙ビジネスへの参入意欲は大きいが、日本では欧米の発想に追い付けない。
日本の成長戦略は、農業改革等既存のシステムの改革に限られ、新たな需要を喚起する性質のものは観光産業位であろう。宇宙ビジネス等、新たな需要を生み出すのが本当の成長戦略であると思うが、日本の官僚、政治家からはこのような発想は生まれない。
2016.07.23(犬賀 大好-253)