昨年、厚生労働省が発表した「子どもの相対的貧困率」は過去最悪の16.3%となり、6人に1人の子どもが「貧困」とされるそうだ。このような状況を解説したNHK番組に対し、抗議が殺到したそうだ。番組で紹介された貧困状態を訴える子供の部屋の様子などを見ると、一般視聴者が「貧困」と聞いて直感的に思い描く姿とは全く異なって見えたことに、違和感を覚えたとの抗議のようである。私を含め、貧困の現状認識がずれているのだ。
貧困の種類は、相対的貧困と絶対的貧困に分類されるそうだ。前者は家庭の収入が全世帯の平均収入の50%以下の家庭であり、後者は衣食住の確保が難しく普通に生活するのが困難な家庭とのことだ。先進国では、生活保護制度が整っており、生活保護を受ければ絶対的貧困の状態から抜け出すことが出来るそうだから、絶対的貧困者はほとんど存在しないとのことだろう。
子供の貧困と言うと、インド、フィリッピン等の発展途上国のスラム街でごみを漁る子供達を連想するが、それは絶対的な貧困とのことであり、今日本を含め先進国で問題になっているのは相対的貧困のことだそうだ。相対的貧困の状態では、周りの皆にとっては当たり前の生活が享受できないことになる。すなわち、経済的な理由で放課後の習い事に行くことができなかったり、高校や大学に進学できなかったりする。これは子どもたちに一生消えない精神的ダメージを与えるとのことである。
相対的な貧困状態にある子供たちは、外観上普通の子供たちと区別がつかないため、余り認知度が高くなく、先のNHKの放送に対する抗議となったと言うことであろう。貧困と表現するとすぐに絶対的な貧困を思い浮かべるが、相対的貧困に代わるもっと適切な言葉が無いだろうか。
内閣府と厚生労働省によると、OECD34ヵ国中、日本の相対的貧困率は29位という高い数値だそうだ。30位は経済格差社会と言われている米国であり、日本社会が経済格差の点でも米国並みになったと言うことか。
子供の貧困が増加している原因として、山形大学人文学部の戸室健作准教授は日本全体の労働環境の悪化に目を向ける。「現在労働者の約4割が非正規労働者です。子育て世帯は就労世帯でもあるため、賃金の低下が子どもの貧困に直接関係します」、と解説する。つまり、「子どもの貧困」の増加は、子育て世代での非正規労働者の割合が増えたことが原因だと指摘するが、これだけが原因でなくもっと広範囲に探れば、離婚率の増加等様々な原因があるだろうが、子供には原因が無いことは確かである。
貧困家庭の子供に社会が投資しないと将来莫大な損失を招くと社会学者が主張するが、確かであろう。貧困家庭に生まれた子供は、貧困環境の中で大きくなり、十分な教育を受けられず、全うな就職も出来ず、健康状態も悪く、結局は社会資本を無駄に浪費することになるとの指摘であり、説得力がある。
子供の貧困は、人生の始めから公平な競争の場に上がれないことに問題がある。米国では結果の格差は容認されるが、機会の格差は問題視されるとのことであり、少子化が社会問題となっている日本においても、数少ない子供を公平に扱う必要がある。意欲ある子供の芽を早期に摘むことは社会的な損失である。
子供の機会の不平等に対し、社会として、国としてやらなくてはならないことは多々あるが、世界を見渡すと、少子化を議論できるだけでもましとの感もする。
すなわち世界には絶対的な貧困も多々存在するのだ。絶対的貧困が引き起こす発育阻害は、生後1,000日の間に慢性的な栄養欠乏に陥ることで引き起こされる”隠れた悲劇”だそうだ。発育阻害による影響は、一生涯続くが、先進国を含め世界の5歳未満の子供の4人に1人がその状態にあると言われる。発育阻害に苦しむ5歳未満児の数は、約1億6,500万人。その90パーセント以上は、アフリカとアジアの子どもたちだそうだ。
そのアフリカやアジアへ、先進国は先を争って経済的な投資を行っている。ケニアを訪問中の安倍晋三首相は今年8月27日、TICAD(アフリカ開発会議)に共同議長として出席し、基調演説の中で、2016年から18年までの3年間で官民合わせて総額3兆円規模の投資を、アフリカに対して行うと表明した。インフラ整備などに約1兆円を投資するほか、1000万人の人材育成にも取り組むとの表明である。
アフリカの将来はアフリカの人々が決めなくてはならない。この点、人材育成に力を入れるとの表明には、安倍首相に全面賛成である。即効果がある経済投資は、間違いなく経済格差の助長となる。人材の育成には時間がかかるが、将来を担うのは人材だ。2016.09.14(犬賀 大好-268)
貧困の種類は、相対的貧困と絶対的貧困に分類されるそうだ。前者は家庭の収入が全世帯の平均収入の50%以下の家庭であり、後者は衣食住の確保が難しく普通に生活するのが困難な家庭とのことだ。先進国では、生活保護制度が整っており、生活保護を受ければ絶対的貧困の状態から抜け出すことが出来るそうだから、絶対的貧困者はほとんど存在しないとのことだろう。
子供の貧困と言うと、インド、フィリッピン等の発展途上国のスラム街でごみを漁る子供達を連想するが、それは絶対的な貧困とのことであり、今日本を含め先進国で問題になっているのは相対的貧困のことだそうだ。相対的貧困の状態では、周りの皆にとっては当たり前の生活が享受できないことになる。すなわち、経済的な理由で放課後の習い事に行くことができなかったり、高校や大学に進学できなかったりする。これは子どもたちに一生消えない精神的ダメージを与えるとのことである。
相対的な貧困状態にある子供たちは、外観上普通の子供たちと区別がつかないため、余り認知度が高くなく、先のNHKの放送に対する抗議となったと言うことであろう。貧困と表現するとすぐに絶対的な貧困を思い浮かべるが、相対的貧困に代わるもっと適切な言葉が無いだろうか。
内閣府と厚生労働省によると、OECD34ヵ国中、日本の相対的貧困率は29位という高い数値だそうだ。30位は経済格差社会と言われている米国であり、日本社会が経済格差の点でも米国並みになったと言うことか。
子供の貧困が増加している原因として、山形大学人文学部の戸室健作准教授は日本全体の労働環境の悪化に目を向ける。「現在労働者の約4割が非正規労働者です。子育て世帯は就労世帯でもあるため、賃金の低下が子どもの貧困に直接関係します」、と解説する。つまり、「子どもの貧困」の増加は、子育て世代での非正規労働者の割合が増えたことが原因だと指摘するが、これだけが原因でなくもっと広範囲に探れば、離婚率の増加等様々な原因があるだろうが、子供には原因が無いことは確かである。
貧困家庭の子供に社会が投資しないと将来莫大な損失を招くと社会学者が主張するが、確かであろう。貧困家庭に生まれた子供は、貧困環境の中で大きくなり、十分な教育を受けられず、全うな就職も出来ず、健康状態も悪く、結局は社会資本を無駄に浪費することになるとの指摘であり、説得力がある。
子供の貧困は、人生の始めから公平な競争の場に上がれないことに問題がある。米国では結果の格差は容認されるが、機会の格差は問題視されるとのことであり、少子化が社会問題となっている日本においても、数少ない子供を公平に扱う必要がある。意欲ある子供の芽を早期に摘むことは社会的な損失である。
子供の機会の不平等に対し、社会として、国としてやらなくてはならないことは多々あるが、世界を見渡すと、少子化を議論できるだけでもましとの感もする。
すなわち世界には絶対的な貧困も多々存在するのだ。絶対的貧困が引き起こす発育阻害は、生後1,000日の間に慢性的な栄養欠乏に陥ることで引き起こされる”隠れた悲劇”だそうだ。発育阻害による影響は、一生涯続くが、先進国を含め世界の5歳未満の子供の4人に1人がその状態にあると言われる。発育阻害に苦しむ5歳未満児の数は、約1億6,500万人。その90パーセント以上は、アフリカとアジアの子どもたちだそうだ。
そのアフリカやアジアへ、先進国は先を争って経済的な投資を行っている。ケニアを訪問中の安倍晋三首相は今年8月27日、TICAD(アフリカ開発会議)に共同議長として出席し、基調演説の中で、2016年から18年までの3年間で官民合わせて総額3兆円規模の投資を、アフリカに対して行うと表明した。インフラ整備などに約1兆円を投資するほか、1000万人の人材育成にも取り組むとの表明である。
アフリカの将来はアフリカの人々が決めなくてはならない。この点、人材育成に力を入れるとの表明には、安倍首相に全面賛成である。即効果がある経済投資は、間違いなく経済格差の助長となる。人材の育成には時間がかかるが、将来を担うのは人材だ。2016.09.14(犬賀 大好-268)