日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日銀金融緩和の検証

2016年09月17日 10時47分01秒 | 日々雑感
 日本銀行が来週、火曜日と水曜日の金融政策決定会合で取り上げる予定の金融緩和策の「総括的な検証」に関し、黒田総裁が5日の講演で言及した。物価上昇率が2%に届かない理由や、マイナス金利政策の効果や副作用を分析する予定とのことだ。また日銀は今後も、緩和の縮小する方向には向かわず、追加の金融緩和を検討するようである。

 予想される緩和策としては、外債購入や社債の購入等があるらしい。しかし、外債の購入は、事実上の為替介入でり、政府は先日のG7、G20で通貨安競争を避けると宣言していた手前難しいのではないかとの観測である。また、介入権限は財務大臣にあり、日銀法に違反するとのことであるが、それでも外債購入に踏み切るとなれば、いよいよ日銀も追い詰められ,策が尽きた感がする。

 社債の購入に関しては、金融機関に資金提供することにより、投資を促す目論見であろうが、その効果が無いことはこれまでの国債購入でも証明されている。

政府、日銀は2013年4月に、2年間で物価上昇2%達成を目標を掲げた。しかし今なお目標に届かず、物価低迷の根拠として、・原油価格の低迷、・消費増税後の消費などの需要の弱さ、・新興国経済の減速を挙げているが、日本の社会状況の変化に目を瞑っている。すなわち、少子高齢化社会の到来である。団塊の世代の高齢者にとって、若者ほど欲しいものが見当たらない上、老後の心配が一層大きくなっている。貧困老人、下流老人の言葉が週刊誌を賑わす昨今、少しでも消費を控えるのが人情である。しかし、今更少子高齢化を理由には出来ないであろう。

 また、第3の矢であった成長戦略がうまくいっていない現状もある。成長戦略の中で規制緩和も唱えていたが、そもそも規制緩和とは経済システムの無駄をなくす効率化のことであり、物価上昇とは逆の方向なのだ。
本来の成長戦略は新しい需要を作り出すことにあるが、簡単なことではない。目下、外人観光客の増加が目に付く程度であるが、それも日本の努力というより、アジア諸国の経済発展のお陰である。

 政府は、今月9日、未来投資会議の設立を発表した。2013年から成長戦略を主導してきた”産業競争力会議”と”官民対話”を統合し、新たな組織を立ち上げるとのことである。これまでの成長戦略がうまくいかないからと言って、組織を変えたくらいでうまくいくはずがない。単なる目くらましであろう。

 さて、来週の金融政策決定会合の総括的な検証であるが、黒田総裁も頭を抱えていることだろう。表面的には、量・質・金利の各次元での金融緩和の拡大は十分可能、と強気の姿勢を保持しているが、ここで、金融緩和の縮小を言明したならば、立ちどころに日本経済は大混乱に陥るのではないだろうか。米国の金利引き上げの時期をめぐって、日本の株価が右往左往するくらいである。

 目標を達成できずに、金融緩和を止めたならばこれまでの負の遺産をどうするかが大問題となろう。しかし、このまま続行すれば、負の遺産は増加するばかりである。理想は物価が適度に上がり、それ以上に賃金が上がる状態であろうが、夢のまた夢の感がする。

 東京オリンピックの招致が決定した3年前には、先の1964年の東京オリンピックを思い出して、好景気がやってくるだろうとの期待があった。しかし、今や五輪の開催費を巡りすったもんだしている。日本の国の借金は64年当時には無く、戦後の復興の名目で公共投資も無限に出来た。今や1000兆円を超える借金を抱えており、2兆円とも3兆円とも言われる開催費を少しでも減らさなくてはならない社会環境の変化である。

 東京五輪開催まであと4年、アベノミクスも限界に近づいた。日銀および政府はこの苦境をどうやって打開するのであろうか。2016.09.17(犬賀 大好-269)