厚生労働省の2015年度乳幼児栄養調査によると、6歳以下の子供6人に1人が食物アレルギーと思われる症状を起こした経験があるとしている。幼稚園や学校の給食で食物アレルギーを起こす子供には特別な食事を用意しなければならず、担当者に大きな負担をかけていると問題となっている。私の小学校時代にも脱脂粉乳で有名な給食を経験しているが、特別メニューの話なぞ聞いたことが無かった。最近、人間の免疫システムに異常をきたしているのではないだろうか。
さて、私たちの体には免疫システムが完備されており、自分の体の成分と違う物、例えば、細菌、ウィルス、食物、ダニ、埃、花粉などが体の中に入ってくるとこれを体に害を与える異物と認識して体外に排除するように構築されている。
利根川進博士は、この免疫システムの解明でノーベル賞を受賞したが、氏の著書により人間が有する免疫システムのすばらしい機能を知った。詳細は忘れたが、非常に複雑な神がかり的な機能であることは記憶に残っている。
ところが問題のアレルギーは、人間が有する免疫システムが特定の異物に過剰に反応するとことと言われている。この異物は、抗原と呼ばれ、アレルギーの原因になるものは特にアレルゲンと呼ばれている。アレルゲンとなり得る物は、私たちの周りのいたるところに存在するが、人により反応が異なることが曲者だ。食物アレルゲンは、鶏卵・乳製品・小麦などが代表的で、アレルギー性鼻炎の元になる杉花粉等もアレルゲンとなり得る。
これらのアレルゲンが一度体に入ると、免疫システムが働き、体が記憶し、再度それが入ると除去しようと過剰に反応し、体にまで害を与えてしまう。アレルギー反応を演ずる役者は数多く、抗原提示細胞、リンパ球、好酸球、マスト細胞などの細胞と、IgE抗体、ヒスタミン、ロイコトリエン、インターロイキンなどのタンパク質や化学物質だそうだ。役者が多いだけに、対処法も一筋縄ではいかないらしい。
先の厚労省の発表では乳幼児の食物アレルギーが増えているとのことであるが、子供に限らず鼻炎等大人のアレルギーも増えているようである。しかし、現状ではその原因は明確になっていないそうだ。アレルギーを発症する人、しない人の差は何だろうと、考えてしまう。
原因として、食事内容の欧米化、抗生物質の使い過ぎ、生活環境の変化等が挙げられているが、つい最近、米食品医薬品局(FDA)が19種類の殺菌剤を含有する石鹸などの販売を禁止すると発表した。これらの殺菌剤を含む石鹸は、通常の石鹸と比べて優れた殺菌効果があるとはいえず、かえって免疫系に悪影響を及ぼすおそれがあると警鐘を鳴らしている。日本ではまだ検討段階だ。
この他、アレルギー増加の原因を説明するものとして「衛生仮説」がある。これは、清潔すぎる環境下では感染症が減るかわりに免疫系が鍛えられないために、アレルゲンに過剰反応しやすくなるとの説である。免疫系を鍛えるとはいかなることか良く分からないが、低開発国にはアレルギー患者が少ないとの統計もあるようであり、この説を裏付けている。私の周囲を見渡しても、清潔好きな人ほど花粉症に悩んでいると感ずる。
最近、抗菌グッズがもてはやされている。抗菌グッズとは、製品に各種の消毒剤や抗菌作用のある物質を混ぜて弱い殺菌能力を持たせたグッズのことだ。O157ウィルスの食中毒が流行りだしたここ数年、多くの台所用品、文具などに抗菌グッズが流行っている。人間の体には、特に腸内には多くの細菌が共生し、人類は細菌と共に生きる道を選んだ。これらの細菌に影響を与える抗菌グッズは、はたして体に良いものであろうか。
利根川博士の指摘のように免疫系は非常に複雑なシステムであり、腸内細菌も大いに関係しているに違いない。免疫系を鍛える様々な工夫、食事から運動まで提案されている。恐らく、アレルギーには多くの因子が複雑に絡み合っているので、工夫も多岐に渉るに違いないし、万能の方法も無く、また効き目も人によって異なるに違いない。
日本人のアレルギー患者数は年々増加を続けており、厚生労働省の調査では、現在日本人のアレルギー有病者数は約2人に1人、約6,000万人にものぼると言われている。衛生仮説を含め、アレルギーの原因となる要因は今後益々増える傾向にあるので、アレルギー患者は益々増加するだろう。アレルギーの死亡率が低いのがせめてもの救いである。2016.09.21(犬賀 大好-270)
さて、私たちの体には免疫システムが完備されており、自分の体の成分と違う物、例えば、細菌、ウィルス、食物、ダニ、埃、花粉などが体の中に入ってくるとこれを体に害を与える異物と認識して体外に排除するように構築されている。
利根川進博士は、この免疫システムの解明でノーベル賞を受賞したが、氏の著書により人間が有する免疫システムのすばらしい機能を知った。詳細は忘れたが、非常に複雑な神がかり的な機能であることは記憶に残っている。
ところが問題のアレルギーは、人間が有する免疫システムが特定の異物に過剰に反応するとことと言われている。この異物は、抗原と呼ばれ、アレルギーの原因になるものは特にアレルゲンと呼ばれている。アレルゲンとなり得る物は、私たちの周りのいたるところに存在するが、人により反応が異なることが曲者だ。食物アレルゲンは、鶏卵・乳製品・小麦などが代表的で、アレルギー性鼻炎の元になる杉花粉等もアレルゲンとなり得る。
これらのアレルゲンが一度体に入ると、免疫システムが働き、体が記憶し、再度それが入ると除去しようと過剰に反応し、体にまで害を与えてしまう。アレルギー反応を演ずる役者は数多く、抗原提示細胞、リンパ球、好酸球、マスト細胞などの細胞と、IgE抗体、ヒスタミン、ロイコトリエン、インターロイキンなどのタンパク質や化学物質だそうだ。役者が多いだけに、対処法も一筋縄ではいかないらしい。
先の厚労省の発表では乳幼児の食物アレルギーが増えているとのことであるが、子供に限らず鼻炎等大人のアレルギーも増えているようである。しかし、現状ではその原因は明確になっていないそうだ。アレルギーを発症する人、しない人の差は何だろうと、考えてしまう。
原因として、食事内容の欧米化、抗生物質の使い過ぎ、生活環境の変化等が挙げられているが、つい最近、米食品医薬品局(FDA)が19種類の殺菌剤を含有する石鹸などの販売を禁止すると発表した。これらの殺菌剤を含む石鹸は、通常の石鹸と比べて優れた殺菌効果があるとはいえず、かえって免疫系に悪影響を及ぼすおそれがあると警鐘を鳴らしている。日本ではまだ検討段階だ。
この他、アレルギー増加の原因を説明するものとして「衛生仮説」がある。これは、清潔すぎる環境下では感染症が減るかわりに免疫系が鍛えられないために、アレルゲンに過剰反応しやすくなるとの説である。免疫系を鍛えるとはいかなることか良く分からないが、低開発国にはアレルギー患者が少ないとの統計もあるようであり、この説を裏付けている。私の周囲を見渡しても、清潔好きな人ほど花粉症に悩んでいると感ずる。
最近、抗菌グッズがもてはやされている。抗菌グッズとは、製品に各種の消毒剤や抗菌作用のある物質を混ぜて弱い殺菌能力を持たせたグッズのことだ。O157ウィルスの食中毒が流行りだしたここ数年、多くの台所用品、文具などに抗菌グッズが流行っている。人間の体には、特に腸内には多くの細菌が共生し、人類は細菌と共に生きる道を選んだ。これらの細菌に影響を与える抗菌グッズは、はたして体に良いものであろうか。
利根川博士の指摘のように免疫系は非常に複雑なシステムであり、腸内細菌も大いに関係しているに違いない。免疫系を鍛える様々な工夫、食事から運動まで提案されている。恐らく、アレルギーには多くの因子が複雑に絡み合っているので、工夫も多岐に渉るに違いないし、万能の方法も無く、また効き目も人によって異なるに違いない。
日本人のアレルギー患者数は年々増加を続けており、厚生労働省の調査では、現在日本人のアレルギー有病者数は約2人に1人、約6,000万人にものぼると言われている。衛生仮説を含め、アレルギーの原因となる要因は今後益々増える傾向にあるので、アレルギー患者は益々増加するだろう。アレルギーの死亡率が低いのがせめてもの救いである。2016.09.21(犬賀 大好-270)