日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

トランプ大統領の暴走一時ストップの後

2017年04月05日 10時36分54秒 | 日々雑感
 トランプ米新大統領は、今年2月末、米議会上下両院の合同会議で施政方針演説を行った。内容はこれまでのオバマ路線を破るもので、今後の成り行きを心配していたが、4月始め現在、その成り行きは芳しくなく、安心感が広がっている。

 まず、メキシコからの不法移民を防止するために、メキシコ国境に高さ5mの壁を建設するとぶちあげた。しかし、先月30日ライアン下院議長は今年度15億ドルの予算化を見送ったと発表した。予算が付かねば実行できない。そこで来年度の予算化に期待するとしたが、与党共和党の全面的な賛成が得られないばかりか、そもそも壁建設には反対の民主党の協力も必要である点からしても、まず壁建設はご破算になったとみるのが妥当であろう。

 また、イスラム過激主義によるテロから国を守る措置として、1月27日にイスラム国からの入国制限に関する大統領令に署名したが、サンフランシスコの控訴裁判所は、同大統領令の実施を求めた司法省の申し立てを退けた。しかしこれに懲りず3月6日、新大統領令を発した。1月に出された旧大統領令に比べ、中東・アフリカ7カ国からの一時入国禁止措置からイラクを除外することなどを柱として、穏当な内容に変更した。しかしそれでも新大統領令が違憲だとしてアメリカ・ハワイ州は8日、一時差し止めを求め、ホノルル連邦地裁に提訴した。ワシントン州も13日、無効を求めてシアトル連邦地裁に提訴した。原告にはオレゴン州が名を連ねたほか、カリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツ、メリーランドの4州も加わる意向を示しており、裁判所が可否を判断するが、更なる修正が必要になろう。テロを起こすのはイスラム系の人に多いが、その原因を追求せずして、単にイスラム国からの入国禁止がテロ防止に役立つとは思えず、米国民に納得されるとは思えない。

 また、アメリカ下院の共和党首脳は3月24日、トランプ政権が成立を目指していた医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」(AHCA)を撤回した。AHCAは ”国民全員のための素晴らしい医療制度” になると期待を持たせていたが、次第に額面通りになりそうもないことが分かり、身内の共和党の賛成も得られなかったためである。トランプ大統領は、公約の目玉としてきた医療保険制度改革でも敗北を喫したことになる。オバマ前大統領が苦労して作り上げた医療制度に代わるうまい方法がおいそれと見つかる筈が無い。

 3月28日には、地球温暖化対策を全面的に見直す大統領令に署名した。しかし、オバマ前大統領の設けた規制の廃止にはトランプ政権が合理的な根拠や対策を示し、国民の意見を聞く行政手続きが必要だそうで、廃止までに数年かかる可能性もあるとのことだ。トランプ氏は地球温暖化はまやかしであると主張している。様々な意見があることは確かであるが、あの中国でさえパリ協定を認めている。トランプ゚氏が国民を納得させることは極めて困難であろう。

 この他、新大統領は、インフラ投資に1兆ドルや法人税減税の税制改革を訴えている。米国株式市場では、新政権のこの経済政策に期待して買いが先行するトランプ相場によりダウ平均は急騰し、1月下旬に史上初めて2万ドルの大台に乗せた。しかし、看板公約だったメキシコ国境に壁建設、外国人の入国制限令を巡る混乱やオバマケアの代替案撤回によって、政策の実行力に対する不信感が拡大し、当初の勢いは失っているようだ。しかし、インフラ投資拡大や大規模減税を伴う税制改革の市場の期待が今なお大きく、4月始め、ダウ平均は2万ドルを保っている。

 トランプ大統領の目玉政策は否定され続けている。しかし、TPPから撤退は、トランプ氏と大統領を争ったクリントン候補も否定的であり、米国内で否定されるようには思えない。しかし、この目玉政策は日本に対する影響が極めて大きい。米上院は2月27日の本会議で、トランプ大統領が商務長官に指名した投資家のウィルバー・ロス氏(79)の人事を承認した。トランプ大統領は年7000億ドルを超す貿易赤字の削減を公約に掲げ、通商政策の主導役をロス氏に任せるようである。

 ロス氏は、米国第一の戦略の下、米国の法律や通商協定を行使して不当な輸入を阻止するとともに、中国に過剰生産能力の削減を求めていく考えを示している。優先度の高い問題として日本の農産物の市場開放も挙げている。

 また、対外的な通商交渉を担う米通商代表部(USTR)代表に指名されたロバート・ライトハイザー氏が3月14日、日本の農業分野の市場開放を第一の標的として最重視する方針を示した。

 トランプ大統領はこれまでの失策によりその暴走がストップしたかに見えたが、これを取り戻すためにも、二国間貿易協定では一段と強硬に出てくるかもしれない。2017.04.05(犬賀 大好ー326)