日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

福島原発の周辺は野生動物に返すのも手

2017年04月22日 09時38分48秒 | 日々雑感
 東京電力の福島第1原子力発電所の4つの原子炉で、日夜廃炉作業が続けられている。3月23日、1号機原子炉格納容器で5日間続けたロボット調査を終えたとの発表があった。核燃料が見えるところまでカメラを送ることが出来なかったとの失敗の内容であった。

 東京電力作成の中長期ロードマップ(2015年6月作成)には、燃料の取り出し方法の確定時期は2018年度上半期と記されており、まだ1年余裕がある。しかし、核燃料の在りかも分からない状況では取り出し方法など検討も出来ない。計画は大幅に遅れること間違いない。

 今月15日、NHKテレビで ”廃炉への道2017” と題する特別番組があった。蒸気でぼんやりした映像を画像処理により鮮明にした等を放映し、廃炉への壁がより明確になったとの内容であった。壁が明確になるとは、より困難であることがはっきりしたとの意味か、壁の性質が分かり廃炉への道がはっきりしたのか、どちらともとれる表現であるが、全体からの雰囲気は後者の方であり、楽天過ぎる感であった。

 これまでに、大きな原発事故は世界で3箇所で起こっている。一番目は1979年の米国スリーマイルにある原発2号炉である。幸い溶けた燃料棒が圧力容器の中にとどまっていた。それでも原子炉の燃料棒の抜き出しには10年、廃炉には20年かかっている。その廃炉も完全に原状に回復できた分けではなく、燃料ゴミ、放射能で汚染された建材物等は今後何百年、何千年と隔離し続けなくてはならないだろう。

 二番目の事故は1986年のウクライナ、チェルノブイリ事故だ。放射性物質の外部への飛散を防ぐため、突貫工事で原子炉全体を所謂 ”石棺” で覆った。しかし、30年経ち、原子炉建屋は老朽化が激しく、新たに建設するアーチ型のシェルターで4号炉を覆う ”再石棺” 計画が進められている。放射線量があまりにも高いため、燃料取り出しはとっくに諦め、このまま永久保存する予定のようだ。

 現在、現在30Km圏内は立ち入り禁止が続いている。人間が居住しなくなった代わりに、イノシシ、オオカミやタヌキ等の大型動物が繁殖し、動物天国となっているようだ。これらの野生動物に対する放射能の影響は定かではないが、個体数の増加で見る限り、動物の敵は放射能ではなく人間だったのだ。

 3番目の事故が我が国の東日本大震災に伴う事故だ。直接の原因は津波による電源喪失であり、1号炉~3号炉はメルトダウンを起こし、核燃料が何処にあるか未だ不明のままだ。少なくとも圧力容器内には留まっていない。政府は、燃料を取り出し、日本の何処かに保管する予定でいる。そのため、まず燃料の在りかを探ろうとしているのだが、順調ではない。

 炉の周辺は放射線量の極めて高く、周りは配管等で込み入った狭い空間であるため、人間は近づくことが出来ない。このため、調査や燃料取り出しを遠隔操作や自律的に動くことが出来るロボットで行おうと計画し、様々な検討を行っている。ロボットはアニメの世界では万能のイメージが強いが、現実には大したことは出来ない。

 ロボットにはハードとソフトが必要である。物を移動したり、外部の物に力を作用させたりするハードの開発には、設計、製作、組み立て、実験と、ソフトに比べ時間と費用がかかる。現在、人工知能(AI)の発展が著しいが、ソフトだけでは何もできない。同じ作業を繰り返す工業用ロボットでは世界一であるが、人間に似た仕事が出来るようなロボットの類は、ソフトバンクの人型コミュニケーションロボット ”ペッパー” が例であるが、話し相手としてもまだまだ不充分だ。

 スリーマイルの事故でも種々のロボットが検討されたようであるが、最終的に選ばれた方法は、ロボットではなく掘削用ドリルを改造し、人間が操作して取出したとのことだ。30年以上経つが、ソフトの進歩は著しいが、ハードに関する画期的な進歩は見当たらないし、今後も大して期待できない。調査のためのロボットは何とか出来るだろうが、燃料ゴミの取り出しとなると一段と難しくなる。

 2011年の東日本大震災までは原子力発電は我が世の春を謳歌していた。核燃料サイクルの確立には失敗を重ねていたが、まだ何とかなるよと問題を先送りしていた。大震災を契機に原子力事業の低迷が始まり天下の東芝の衰退も始まった。恐らく、大学の原子力関係の人気も下がっているだろう。福島第1原発に限らず、今後日本各地で原子炉の廃炉を進めてかなくてはならないが、原子力企業の衰退、若手研究者の弱体化は必須だ。

 ロボット技術により原子炉の廃炉作業ができるに越したことはないが、時間と費用が果てしなくかかるであろう。事故から6年経ち、福島第1原発の周辺はイノシシ等の野生動物が闊歩しているとの話だ。一層のこと、石棺方式とし、動物に周辺土地を明け渡した方が自然の掟に適うのかも知れない。2017.04.22(犬賀 大好-331)