日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

トランプ政権は次第にまともになるか

2017年04月26日 09時26分52秒 | 日々雑感
 トランプ大統領は大統領令を頻発している。選挙運動中の39個の公約の中で、大統領令として発令されているものが15個、未発令が20個、対象外が4個となっているようだ。

 しかし、大統領令として出してはみたが、日の目を見ないものも結構ある。メキシコとの国境に不法移民流入防止の壁を作る案は予算化出来ず見送りになった。オバマケア撤廃の命令は議会の承認を得られていない。中東・北アフリカ7カ国の出身者および難民の受け入れ停止の命令は憲法違反として裁判所に訴えられている。地球温暖化対策を見直す大統領令に対しても、ニューヨーク州のシュナイダーマン司法長官が、17州などの連名で連邦高裁に提訴した。

 米国大統領は世界一の権力者と思うが、意外にその権限は制限されていると感ずると共に、大統領の暴走を防ぐため、米国の民主主義が健全に機能していると感心もする。

 一方、”米国を再び偉大に!” の一環である製造業を国内に呼び戻す呼びかけは、今のところ成功しているように思われる。トヨタ自動車を始めとして、主要な自動車企業は米国内での工場を拡充し、雇用を増やす計画と報道されている。大統領の一声で一斉になびくとは、やはり大統領の権力の大きさにびっくりする。しかし、実際どの程度の経済的な効果があるものかよく分からない。

 トランプ大統領が描く雇用の対象者は白人であろうが、白人労働者がヒスパニック労働者と同様な低賃金では我慢できないであろう。賃金を上げると製品の高騰になり、外国製品との競争に負ける。関税で対処しようとすると保護貿易とならざるを得ず、問題は雇用だけにとどまらず、軍事問題等どんどん拡大する。トランプ氏は、経済全体のみならず社会全体を熟慮して、この方針を打ち出しているとは到底思えない。

 色々な面で、トランプ大統領の思い付きが暴走していると感ずるが、一つには政策を煮詰めるスタッフ不足が影響しているのであろう。4月4日現在、議会の承認が必要な政治任用の主な高官ポスト553の内、488ポスト、9割近くが未だ指名すらされていないそうだ。トランプ大統領が就任してから70日以上経つのに、政権の実働部隊となるべき各省庁の幹部ポストが空席のままなのだ。これでは、緻密な政策立案も出来ない。

 国務省関係では政治任用119ポストあるそうだが、承認されているのはティラーソン国務長官、ヘイリー国連大使、フリードマン駐イスラエル大使の3人のみ、国防長官にはマティス長官も承認されているが、まだまだ小人数である。世界は大きく変動しているが、世界の大国である米国の外交を彼らだけに任せておいて大丈夫かと心配になる。

 シリアのアサド独裁政権に対するトマホーク攻撃、北朝鮮の独裁者、金正恩に対する原子力空母 ”カール・ビンソン” 等による軍事的威圧は、これまでのオバマ前大統領とは大きく異なる戦略の転換である。限定的空爆や軍事的な圧力は相手が屈しなければ、最期には戦争するしかない。さもなければ黙って引き下がるしかないが、トランプ氏も振り上げた拳で頭を掻いて済ませることなど出来ないであろう。これらの戦略はあるゆる場合を想定して決定しなければならないだろうが、緻密な計画は練られているのだろうかと心配になる。

 トランプ政権を支える高官ポストは議会の承認が必要とのことで、トランプ氏は与党共和党の多数派である主流派に妥協を迫られているとのことだ。トランプ氏の周辺を共和党の主流派で固めれば、暴走は次第に収まるとの見方が強いが、それが本当であって欲しい。

 一方、米国の貿易不均衡を是正し、雇用を拡大するとの方針を実行するポストは固まりつつある。TPPを強硬に反対するウィルバー・ロス氏のアメリカ合衆国商務長官も承認された。低支持率に悩むトランプ大統領は汚名回復とばかりに、一層強気に二国間貿易協定等を迫って来るに違いない。しかし、常識派が周辺を固めれば、大騒ぎする結果にならないかも知れない。2017.04.26(犬賀 大好-332)