原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋める最終処分場の選定に向けて、経産省は先月28日、ようやく処分に適した科学的な特性を有する場所を示した「科学的特性マップ」なるものを公表した。
処分場の選定をめぐっては、原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年から誘致希望の自治体を公募した。それに応えて、高知県東洋町の町長が調査に手を挙げたが、住民の反対で取り下げた経緯がある。東洋町長は過疎化対策のつもりでも、住民は未経験のリスクを嫌ったのだ。
現時点で改めて公募しても、誰も手を上げないだろう。日本政府は、使用済み核燃料の廃棄場所を見つけられないまま、原子力発電所の運営を着々と進めており、日本はトイレの無いマンションと揶揄されている。
最終処分場は、使用済み核燃料を溶かしてガラスと混ぜて固体化し、地表から300mより深いところに半永久的に埋める地層処分法が現時点では最有力と考えられている。
地層処分では10万年程度の長期間、閉じ込めておく必要があり、最終処分場は火山活動や断層活動等の自然現象の影響や、地下深部の地盤の強度や地温の状況など、様々な科学的特性の他、全国の原発からの海上輸送に便利な場所であることなどを前提とし、最終的には住民の同意を得て決定される。
この「科学的特性マップ」は、地層処分に関係する地域の科学的特性を、既存の全国データに基づき一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図に色分けして示したものだ。
地層処分に好ましくない具体的な要件・基準としては、・火山/火成活動、・断層活動、・隆起/侵食、・地熱活動、火山性熱水/深部流体、・軟弱な地盤、・火砕流などの火山の影響があると推定される地域や、・炭田/油田/ガス田、金属鉱物が地下深部に存在すると推定されるエリアも将来の人間侵入の可能性から除外されているとのことだ。
しかし、ここで言うデータは、過去おおよそ1千年以内のデータであろうし、今後何万年通用するものか極めて疑わしい点で未経験のリスクは避けられない。
これ以外の地域が、”好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い” 地域と難解な日本語で表現している。端的に”最終処分場の建設候補地となり得る地域”と言いたいのであろうが、住民の警戒心を少しでも和らげたい気持ちからか、持って回った言い方をしている。
また、海岸から20キロメートル以内の範囲を輸送面で好ましいと位置付けているが、日本のほとんどの海岸線が該当している。そもそも輸送面の話が何で科学的特性となるのか訳が分からないが、海岸から20キロメートル以内で最終処分場に適さない地域を示した方が、よっぽど分かり易い。
同じ図面上に科学的な特性を示す地域と経済的な特性を示す地域を示したり、処分地に適する地域と適さない地域を混在させたりする示し方は、これまでに検討した結果を取り敢えず寄せ集めてみましたとの、やっつけ仕事の印象が強い。東洋町の件から10年以上経つのに、この有様では担当者のやる気の無さが感じられる。
経産省はこの「科学的特性マップ」を基に、今秋から全国で説明会を開き、処分場の必要性やリスクに関する対話活動を始めるそうだ。今後20年ほどかけて、候補地を絞り込む予定だそうだが、なんとも悠長な話だ。恐らく急いだところで住民の反対に会うので、核ゴミの危険性が忘れ去られるのを待つしかないと思っているのだろう。このような計画を決めた官僚も”2、3年後には俺は別の部署に異動して関係なくなる”とじっと我慢の姿勢であろう。
また、この特性マップからは不明であるが、最終処分地は福島県と青森県には作らないことを歴代政権は約束しているそうだ。これは、政治的な取引の結果であり、福島県は東京電力第一原発事故の後始末で東電と国が責任の押し付け合いだし、青森県は県下の6ヶ所村に国指導の再処理工場を設置しているからである。しかし、他の地域に決めることは、今後20年を要しても、いくら過疎化が進む日本であっても、容易では無いだろう。20年後には、原発関係のやっかい物はまとめた方が管理しやすいと、政権の約束は反故にされ、そこに最終処分場が建設されると予想する。2017.08.16(犬賀 大好-364)
処分場の選定をめぐっては、原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年から誘致希望の自治体を公募した。それに応えて、高知県東洋町の町長が調査に手を挙げたが、住民の反対で取り下げた経緯がある。東洋町長は過疎化対策のつもりでも、住民は未経験のリスクを嫌ったのだ。
現時点で改めて公募しても、誰も手を上げないだろう。日本政府は、使用済み核燃料の廃棄場所を見つけられないまま、原子力発電所の運営を着々と進めており、日本はトイレの無いマンションと揶揄されている。
最終処分場は、使用済み核燃料を溶かしてガラスと混ぜて固体化し、地表から300mより深いところに半永久的に埋める地層処分法が現時点では最有力と考えられている。
地層処分では10万年程度の長期間、閉じ込めておく必要があり、最終処分場は火山活動や断層活動等の自然現象の影響や、地下深部の地盤の強度や地温の状況など、様々な科学的特性の他、全国の原発からの海上輸送に便利な場所であることなどを前提とし、最終的には住民の同意を得て決定される。
この「科学的特性マップ」は、地層処分に関係する地域の科学的特性を、既存の全国データに基づき一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図に色分けして示したものだ。
地層処分に好ましくない具体的な要件・基準としては、・火山/火成活動、・断層活動、・隆起/侵食、・地熱活動、火山性熱水/深部流体、・軟弱な地盤、・火砕流などの火山の影響があると推定される地域や、・炭田/油田/ガス田、金属鉱物が地下深部に存在すると推定されるエリアも将来の人間侵入の可能性から除外されているとのことだ。
しかし、ここで言うデータは、過去おおよそ1千年以内のデータであろうし、今後何万年通用するものか極めて疑わしい点で未経験のリスクは避けられない。
これ以外の地域が、”好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い” 地域と難解な日本語で表現している。端的に”最終処分場の建設候補地となり得る地域”と言いたいのであろうが、住民の警戒心を少しでも和らげたい気持ちからか、持って回った言い方をしている。
また、海岸から20キロメートル以内の範囲を輸送面で好ましいと位置付けているが、日本のほとんどの海岸線が該当している。そもそも輸送面の話が何で科学的特性となるのか訳が分からないが、海岸から20キロメートル以内で最終処分場に適さない地域を示した方が、よっぽど分かり易い。
同じ図面上に科学的な特性を示す地域と経済的な特性を示す地域を示したり、処分地に適する地域と適さない地域を混在させたりする示し方は、これまでに検討した結果を取り敢えず寄せ集めてみましたとの、やっつけ仕事の印象が強い。東洋町の件から10年以上経つのに、この有様では担当者のやる気の無さが感じられる。
経産省はこの「科学的特性マップ」を基に、今秋から全国で説明会を開き、処分場の必要性やリスクに関する対話活動を始めるそうだ。今後20年ほどかけて、候補地を絞り込む予定だそうだが、なんとも悠長な話だ。恐らく急いだところで住民の反対に会うので、核ゴミの危険性が忘れ去られるのを待つしかないと思っているのだろう。このような計画を決めた官僚も”2、3年後には俺は別の部署に異動して関係なくなる”とじっと我慢の姿勢であろう。
また、この特性マップからは不明であるが、最終処分地は福島県と青森県には作らないことを歴代政権は約束しているそうだ。これは、政治的な取引の結果であり、福島県は東京電力第一原発事故の後始末で東電と国が責任の押し付け合いだし、青森県は県下の6ヶ所村に国指導の再処理工場を設置しているからである。しかし、他の地域に決めることは、今後20年を要しても、いくら過疎化が進む日本であっても、容易では無いだろう。20年後には、原発関係のやっかい物はまとめた方が管理しやすいと、政権の約束は反故にされ、そこに最終処分場が建設されると予想する。2017.08.16(犬賀 大好-364)