日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

原発栄華の夢の後

2017年08月26日 10時43分31秒 | 日々雑感
 2012年、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえて法律を改正し、原子力発電所の原子炉が運転できる期間を40年と規定した。また原子力規制委員会の認可を受ければ、その期間を1回に限り20年を超えない範囲で延長できるとした。従って、現段階では延命処理が施されたとしても最長60年が原発の寿命となるが、今後経済状況、政治状況により変更されるかも知れない。

 この40年という期間は、技術的観点から決定される原子力プラントの寿命や耐用年数ではなく、政治的な値だ。寿命を科学的に決めるためには、何百年と言った運転経験が必要だが、原発の歴史はそんなに古くない。

 このため、運転期間中、日常的な点検を行うとともに、計画的な機器の取替え、必要な点検の実施など、適切な保守管理を実施し、さらに、常に最新の技術基準を取り入れるバックフィット制度の導入により、長期間運転継続しても高い安全性が確保されると考えられる基準より決めた値である。

 ”バックフィット” とは、聞きなれない英語であるが、発電所の電源の多重化、多様化や原子炉格納容器の排気システムの改善など、最新の技術的知見を技術基準に取り入れる制度であり、技術が進歩すればこの基準も変化すると思われ、恐らく年々厳しくなると思われる制度である。

 2013年、原子力規制委員会が原子力施設の設置や運転等の可否を判断するため、従来の安全基準を強化して新たな規制基準を決めた。これにより、福島第一原発事故後、すべての原発に、この最新基準への適合を義務づけ、最新基準を満たさない場合には、運転停止や廃炉命じることができるとされている。

 最新の基準に合わせるため多大な費用が必要となり、電力各社は算盤をはじき、廃炉か再稼働か決断を迫られる。既に廃炉が決まった福島第一原発の4基を除き、各電力会社が採算が合わないなどを理由に廃炉を決めた原発がすでに5基あるとのことだ。

 廃炉費用は、1基あたり350億円から830億円程度にのぼるらしい。電力各社でつくる電気事業連合会によると全国の原発を廃炉にするための費用は、事故を起こした東京電力福島第一原発の4基と中部電力浜岡原発の2基を除くと、2015年度末で約2兆9000億円にのぼると見込まれている。しかし、各電力会社が積み立てたお金は、昨年度末まで積み立てられたのは約1兆7000億円で、残る約1兆2000億円はまだ手当されていない状態らしい。

 経済産業省自身が昨年12月9日、福島第一原発の廃炉にかかる費用や賠償費用の総額が21兆5000億円に上りそうだとする推計結果を公表している。3年前の2013年の時点では総額11兆円とされていたので、いきなり2倍に増えたわけだ。しかし、廃炉の全工程が確定したわけではない。3号機で、今年7月、ようやく溶け落ちた核燃料の可能性の高い塊が確認された程度で、これから取り出し法などを検討していかなくてはならない。廃炉費用は間違いなく増えるであろう。

 また、廃炉が決まった高速増殖原型炉もんじゅの廃炉費用が3750億円と公表され、東海再処理施設の廃止にも約1兆円かかると言われている。恐らくこんな値では収まらないであろう。

 また、先の原発の廃炉完了まで30年程度かかるとしているが、施設を解体する過程で出る放射性廃棄物の処分場所が決まっていないなど肝心な部分が計画から抜けている。

 原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋める最終処分場の選定に向けて、経産省は今年2017年7月28日、ようやく処分に適した科学的な特性を有する場所を示した「科学的特性マップ」なるものを公表した。原子力発電所の使用済み核燃料の最終処分場をこれから20年かけて決めるのだそうだ。使用済み核燃料ですらこの有様だ。しかも、この最終処分場に廃炉に伴う放射性廃棄物が含まれるか不明である。

 これまで、原発は問題を先送りして、我が世の春を謳歌してきた。いよいよこれまでの付けを払わなくてはならない時が来た。2017.08.26(犬賀 大好-367)