日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

バブルの後遺症と株価の高騰

2017年11月25日 11時20分20秒 | 日々雑感
 11月7日の日経平均株価は、2.2937万円となり、バブル崩壊後の高値を更新した。北朝鮮情勢の鎮静化と、米国での好景気が背景にあるとのことであるが、売買高の過半を占める外国人投資家が株価上昇を後押ししているとのことである。国民全体が株高に踊っていないと言うことは、現在アベノミクス景気の真っただ中の筈であるが、その恩恵が全体に行き渡っていない一つの表れであろう。

 今後の株価の見通しに関しては様々である。11月20日発売の週刊2誌の見出しを見ても、”暴落のサイン”と警告したり、”日経平均3万円の根拠”と逆に煽ったり、相反する意見が踊っている。エコノミストは自分の意見に責任を取る必要が無いためか、それぞれ勝手な意見を述べている。

 日本では1990年以前にバブル景気があった。異様なまでの不動産価格の上昇、株価の高騰があり、余剰資金投機によるキャピタルゲインに企業も個人も酔いしれていた。現在の株価の高騰や土地の高騰はかってのバブル景気を思い出させるが、内部留保を相当貯め込んでいる企業はどうしているのだろう。

 かってのバブル崩壊をうまく潜り抜けたもの、まともに食らったもの様々であろう。銀行は莫大な不良債権を抱え、破綻する銀行も現れたが、公的資金の投入により多くは何とか生き延びた。銀行は不良債権処理も終了して元気いっぱいになってもよい筈であるが、政府の進めるゼロ金利政策のお蔭で現在青息吐息のようである。これも昔お世話になった政府に注文を付けられないからではなかろうか。この点で、不良債権処理が終わっても、後遺症は残っていると言えるであろう。

 この後遺症は自治体の特別会計にも残っているようだ。特別会計の一つである”宅地造成事業”とは、借金して宅地を造り、売った収益で返済する自治体の特別事業であり、今だ尾を引いている。

 総務省のデータによると、2015年度末時点の時価評価相当額と借金額について、現存する447特別会計のうち、31道府県の52自治体が持つ57特別会計で借金額が土地の評価額を上回り、その差額は3220億円に上っていたそうだ。恐らく、自治体はバブル期に土地を購入したに違いないが、その後の不況と土地価格の下落で苦しんでいるのだ。

 一方東京銀座の土地価格はバブル期を超えて高騰しているとの話であり、不動産価格に関してはバブルの再来の気配のようだ。借金を抱える自治体はバブルの再来を心待ちにしているに違いない。政府の異次元緩和は、東京銀座の土地に関しては功を奏しているが、果たして地方にまで及ぶであろうか。

 異次元緩和は、市場に現金を溢れさせ、経済を活性化させる目的であった。確かに企業は大いに儲けたが、将来を不安視して内部資金をため込んだ。一般庶民の収入は増えていないが、それでも将来のために貯蓄に励む。これも30年前の呪縛から逃れることができていない証と言えよう。

 物価上昇率2%の目標はまだ見えないが、徐々に信号が赤から青に変わる経済的なタイミングが近づいていると指摘するエコノミスもいる。IT技術の革新・生産性向上に向けた様々な分野での技術革新が、次代を担う上場企業や将来上場を狙う新興企業の間で起こっているとの期待が感じられるためとの理由である。

 そうかもしれないが、バブルの後遺症が少ない世代の登場が、鍵であるように私には思える。従って、現在の株価の高騰を支えている日本人は、後遺症を忘れたか、元々知らない連中であろう。

 黒田日銀総裁はバブルの崩壊は政策により防げると胸を張るが、物価上昇率2%を未だ実現できていない人物を信用できる筈が無い。先のバブルの後遺症がまだあちこちに残るのに、再度バブルが崩壊するようになると、失われた20年くらいでは済まないであろう。2017.11.25(犬賀 大好-393)