日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

永久凍土の融解が引き起こす災難は日本にも及ぶ

2018年11月07日 09時07分36秒 | 日々雑感
 永久凍土とは年間を通して凍結した状態の土壌を指し、日本では他国の話と思いがちだが、日本でも富士山頂上付近および大雪山頂上付近、北アルプスの立山などに存在が確認されているそうだ。恐らく地下何メートルの所に氷の塊が一年中存在しているのだろう。

 日本の永久凍土は極めて小規模だが、アラスカ、カナダ北部そしてシベリア等、北半球の大陸の約20%の広大な土地に存在し、地球温暖化に対し凍土の融解の影響は日本にも及ぶと予想される。

 さて永久凍土には、純粋な氷の部分もあれば、土壌と水が一緒に凍った部分もある。地表面は夏には融けてしまう0.1〜3m程度の活動層と呼ばれる部分があり、タイガと呼ばれる針葉樹林やツンドラと呼ばれる背の低い植物で覆われた草原地帯となっている。

 活動層の厚さは年や場所によって変化するが、典型的なものでは0.6-4mの厚さであり、その下部は地下数百mから数mの厚さで一年中土地が凍っているそうだ。

 地球温暖化が進むと、凍土が融け始めることが容易に予想される。永久凍土は北極地方の大地を強固に安定させているが、温暖化によって建築地盤の沈下などが生ずると予想されるが、これだけであれば、日本では他人事と安心しておられる。

 環境省は永久凍土大規模融解による温室効果ガス放出量の現状評価と将来予測プロジェクトで、2017年6月に、アラスカで変化の様子を調査したそうだ。調査団は実際アラスカで広大な湿地帯や乾燥地帯を目撃したとのことである。

 地盤が緩るむと樹木が倒れ、樹木がなくなると日光で地面が直接温められ更に融け、加速化する。永久凍土の地帯の年間降雨量は少なく現在の森林は凍土から徐々に水分を補給されて生存しているが、凍土が湿地化しても、最終的には乾燥化、砂漠化すると推定されるそうだ。

 凍土の氷の中には,過去のメタン細菌の働きによると推定されているメタンを多く含む空気の気泡があり、低温高圧の地下にはメタンハイドレートと呼ばれる膨大なメタン貯蔵源もある。温暖化により、メタンガスが放出されると、世界的な温暖化を激化させると考えられている。

 また、2016年にロシアで発生した炭疽菌感染は、永久凍土の融解により地表に露出したトナカイの死骸から菌が人間にも広がったと推測されている。地球温暖化に伴い、他の病原微生物が地上に再び現れるリスクも指摘されている。

 熱帯域では植物の光合成が盛んであり炭酸ガスを吸収し酸素を放出するため、温室効果ガス削減の観点から森林伐採や焼き畑農業が問題視されている。しかし、植物が腐ると分解し、温室効果ガスも放出するため、全体としては収支がバランスしているとの説もある。

 熱帯雨林は炭酸ガス吸収の大きな役目を担っていると信じ込んできたが、放出する分も確かにありそうである。吸収と放出の割合は、先月末、打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星2号が明らかにしてくれるかも知れない。

 兎も角、植物が炭酸ガスを吸収し蓄積しつつあるとすれば中高緯度の森林の方が貢献度は高いと推定される。シベリアの膨大な面積が亜寒帯の針葉樹で被われており,二酸化炭素の大きなシンクとなっている可能性は大きい。この点永久凍土の減少は温室効果ガス削減の観点からも影響が大きい。

 地球温暖化によって、永久凍土は2100年時点で33%〜50%程度減少すると予想する研究結果もあるそうだ。ただし、永久凍土の現在の分布や融解過程には不明な点が多く、予測には大きな幅が生ずるとのことであるが、多かれ少なかれ日本にも影響することは間違いない。2018.11.07(犬賀 大好-492)