日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

安倍首相の2枚舌外交の行方

2018年11月21日 11時19分42秒 | 日々雑感
 安倍首相は国内問題より外交問題が得意なようだ。国内問題では、森・加計学園問題が相変わらずくすぶっているが当人は丁寧に説明したつもりで終わったと思っているのか、あるいはそれを避けるためか、外国を飛び回っている。国内問題は、菅官房長官、二階幹事長にすっかり任せているようだ。

 後3年の任期中に外交問題で歴史に名を残すために成果を上げるためだとの憶測もあるが、そのための焦りからか、交渉相手国の発表と国内向けの発表とが食い違っていることが気になる。

 対米では、安倍晋三首相は10月26日、ニューヨーク市内のホテルでトランプ米大統領と会談した。焦点の日米通商問題について両氏は、新たに日米物品貿易協定(TAG)の交渉を開始することで合意して共同声明を発表し親密さをアピールした。

 このTAGは、英語の共同声明文を読む限り、物品ばかりでなく投資やサービスの自由化にも範囲が及ぶ自由貿易協定(FTA)そのものだが、日本政府は従来のFTAとは全く異なり物品に特化した協定だと説明し、国内向けと米国向けを使い分けている。

 この二国間の貿易協定は来年早々にも始まるようであるが、物品の関税に関する話し合いばかりでなく、投資やサービスの自由化にも範囲が及ぶことは必須であろう。今月13日来日したペンス副大統領もこの件では釘を刺しているとのことだ。

 さて、その中で自国産業のため意図的に通貨安に誘導するのを封ずる為替条項も含まれるのではないかとの懸念があるそうだ。日本政府はこれまで意図的な通貨安政策を採っておらず、そんな条項は無用と主張するが、日本国内では安倍政権はアベノミクスと異次元緩和により円安・株高をもたらしたと胸を張っていた。ここにおいても国内向けと米国向けを使い分ける必要が出てきた。

 また、今月14日夜、シンガポールで行われた日ロ首脳会談において、日本が北方領土問題のために、1956年の日ソ共同宣言に基づい交渉を加速させることで、双方完全に合意したと、安倍首相は発表した。しかし、プーチン大統領は安倍首相が提案してきただけだと明かし、日ソ共同宣言には、ソ連が2つの島を引き渡す用意があると述べられておるだけで、どちらの主権に基づくかなどは述べられていないとし、今後の慎重な議論が必要だと述べたそうだ。

 大統領は、歯舞・色丹の2島を日本の主権が及ぶ領土とした場合、そこに米軍基地が設けられることを心配しているのだ。安倍首相は基地を作らないと言っているようではあるが、米国の意向には逆らえないことも承知しており、米軍との間で公式文書を取り交わすように要求しているようだ。

 さて、この日米交渉が安倍首相に出来るのであろうか。もし出来たとしても、そんなことをすれば日本は独立国ではない、と世界の笑い者になるだけだ。

 菅官房長官は、北方4島の帰属の問題を解決した後平和条約を締結する、が、わが国の今日までの一貫した姿勢であり、その姿勢について変わりはない、と述べたようであり、与党内の意見統一も難しそうだ。

 今回の日ソ首脳会談では、通訳のみを同席させた秘密の会談が1時間近く行われたとのことである。ここでどんな話し合いが行われたか分からないが、双方が納得できる落としどころが見つかったとは到底思えない。

 北方4島問題に関しては、日本国民が全員満足できる解決策は無い。安倍首相が考える落としどころも賛成意見があれば反対意見も必ず出る。外交交渉には駆け引きが重要とのことであり、時には2枚舌も必要だろう。

 プーチン大統領と安倍首相は過去20回以上の会談を行い信頼関係は十分構築されたとのことである。2枚舌は、対プーチンにではなく、日本国民に対してであれば許すことは出来ない。2018.11.21(犬賀 大好-496)