財務省は昨年5月、国債や借入金を合計した国の借金は2019年3月末時点で1103兆3543億円だったと発表した。この借金は毎年着実に増加しており、これを懸念してか政府も財政健全化のためのプライマリーバランス(PB)の必要性に言及しているがその実行に真剣味は感じられない。PBをゼロに出来たとしてもこれまでの借金が消えるわけでは無く、財政健全化のための第1歩に過ぎないが、それすらやる気を感じられないのだ。
さてPBをゼロにするためには歳入の増大、歳出の削減が必要である。歳入の増大には、景気拡大に伴う法人税収等の増大がもっとも相応しい。そのために景気拡大を図るべく安倍政権に限らず歴代の政権は成長戦略を掲げてきたがこの二十数年間上手くいったのは外人観光客の誘致位であろう。ただこの戦略成功も政府の努力が実を結んだというより、周辺各国の経済発展があったためであり、最近の新型コロナウイルス騒動による来日客減少で底の浅さを感じさせる。
通産省の統計によれば、実質国内総生産(GDP)の成長率は2019年の日本は0.9%であるが、米国は2.7%、中国は6.4%であり、世界の主要国の伸び率は日本の2~3倍あることからして、日本の成長戦略は概して的外れだったのだ。
経済成長が振るわない時の歳入の増加は消費税の増額である。2010年、旧民主党の当時の菅直人首相は消費増税を言い出し、次の選挙で大敗し民主党没落の切っ掛けを作った。この裏には財務官僚の財政健全化に対する強い危機感が菅首相を押したとのことである。
最近、財務官僚の中からも財政健全化の必要性の声が聞かれないのは、情報統制が厳しいのか、現代貨幣理論に染まったのか、政府への忖度が効いているか、どれもであろう。もっとも財務官僚のトップの麻生財務大臣の発言からして、財政健全化などあさっての話となっているのかも知れない。
歳出に関しては、最大の歳出である年金や健康保険等の社会保障費の34兆円の次に大きな歳出は、国債費の24兆円だ。これは、過去に発行した国債の償還や利払いの費用だから、社会保障費以上に削減が難しい。これを削っては国債の信用がガタ落ちとなり、財政破綻に直結するからだ。
国債は借金証書と同じでありいつかは利子を付けて買い戻さなくてはならない。国債に関する歳出は2019年度23.3兆円で、新規国債発行額は当初32.7兆円であったから、ほぼ7割が過去のつけ払いの為である。
国債に関する歳出の詳細は非常に複雑でわかり難いが、国の借金総額が増えれば当然増えていくことは間違いなく、その内過去の国債つけ払いの為に新規国債発行をしなくてはならない自転車操業状態になるだろう。
国債に関する麻生財務大臣の言い訳に呆れ果てる。曰く、国債は、ほとんど円で賄われているから、いざ満期になったときどうすればいいかって、日本政府がやっているんですから、日本政府が印刷して返すだけでしょうが、と。
この超能天気な考えが日本の国の財政破綻になると懸念する。財務官僚は他の省庁の官僚に比べて特に優秀とのことであるが、財務大臣に意見する人はいないのか。2020.02.19(犬賀 大好-575)