現在、ウクライナがロシアに一方的に攻撃されているが、西側諸国はウクライナがNATOに加わっていないことを理由に、表立った参戦はしていないが、経済的な制裁を強めている。経済的な締め付けだけでは弱そうに思えるが、ロシア経済も世界経済の歯車の一つであり、遠からずに疲弊して来るのではないだろうか。
残虐な戦争の実態はロシア国内では報道されず、2月28日の世論調査では国民の68%が特別軍事作戦と称する侵攻を支持し、反対は22%だったそうだ。政権側は反政府系メディアや外国報道機関の活動を統制するなどし、国内向けにはウクライナを悪者にしてロシアを正当化し、戦争の真実が国民に知られないよう躍起になっており、この世論調査の結果は政権側のプロパガンダが効いているからであろう。
しかし、プーチン大統領の開戦後2,3日で首都キエフを攻略するとの思惑は大きく外れているようで、最近では中国に軍事支援を依頼せざるを得ないほど疲弊しているとの見方もある。
ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナのNATO参加を阻止するためとか、ウクライナ領土内のロシア人保護のためと説明していた。ウクライナ東部にはロシア人が多く住む二つの自治州があり、日ごろから武力を交えた紛争が多発していたようである。
一方、中国は多民族国家であり、漢民族を含め56の民族からなる。9割以上が漢民族だが、漢民族以外で人口の多い民族には自治を認めており、ウイグル民族の自治区、チベット自治区、内モンゴル自治区など5つの自治区がある。自治区のトップはその民族だが、あくまでもトップは“お飾り”で実質的な力は無く、漢民族の中国共産党が支配しているそうだ。
ロシアと同じような問題を抱える中国は同じ共産党独裁のロシアを応援したいところであろうが、世界から非難の集中砲火を浴びるロシアと同様に扱われることを恐れ、今のところ表立った支援をしていない。中国自身がこれまでに他国への武力を用いた侵攻はしていないが、経済力を背景に支配を強めている。
例えば自治区には漢民族主導の工場を建設し、そこに雇用を生み、経済的な恵みを与えることにより自主独立を抑えようとしているのだろうが、宗教の違いや文化の違いは克服できず、新疆ウイグル自治区で見られるようなウイグル民族への矯正教育等の弾圧となっている。
中国のロシアへの軍需支援を米国は抑えようと躍起になっているようだが、ロシアのウクライナ侵攻が失敗となれば、中国内の自治州への飛び火も懸念され、習近平総書記は悩んでいることだろう。
自国の影響力を増すために、軍事力一辺倒ではなく経済力も駆使する中国のやりかたは一帯一路の世界戦略にもよく表れている。ロシアの世界経済に及ぼす力は低下しており、軍事力のみに頼らざるを得ない現状をプーチン大統領は嘆いていることだろう。2022.03.17(犬賀 大好ー798)