3月16日深夜、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した。この地震の影響により東日本における一部の発電所が故障、停止し、また悪天候による低気温で電力需要増がかさなり、経産省は22日東京電力管内で”需給ひっ迫警報”を発令した。
ところで、政府は、2050年の脱炭素社会の実現に向けて、2030年度の電源構成としては、火力発電を56%(LNG27%程度、石炭26%程度、石油3%程度)、再生可能エネルギー22〜24%程度、 原子力20〜22%程度、を目指している。
日本の発電力は2019年時点で、火力発電が75.7%を占めており、その内最も大きなものがLNGで37.1%で、石炭は31.8%だそうだ。3月16日の福島県沖の地震の影響で停止した火力発電所は14基であったそうだが、その内訳はよく分からない。石炭火力発電所は2011年の原発事故以後に電力不足を補うため老朽化した発電所を修復する等して復旧させ、以降約30%と高止まりしたままで、現在に至っている。その多くは老朽化したままなので、災害に対しては脆弱化しているのだろう。
福島原発事故の後、節電や計画停電が一時話題となったが、今回の地震で思い出された。政府は地域割りが明確であった電力会社がお互いに融通しあえるように、電力広域的運営推進機関等を設け、その甲斐があってか23日には東京電力管内において十分な供給力が確保できる見込みとなったことから、需給ひっ迫警報は解除された。
現代社会においては電気は生活必需品であり、電力不足は何としてでも避けたい。今回の需給ひっ迫警報下でスカイツリーの照明が消えた等が話題となったが、普段の東京の夜は明るすぎる。街が暗くなれば不景気の雰囲気となるであろうが、慣れの問題だ。もっと規制があっても然るべきだ。
また、今回の電力不足騒動で原子力発電推進勢力が勢いを取り戻しそうだ。政府の原発に対する考え方は、「可能な限り依存度を低減しつつ、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、再稼働を進めるとともに、実効性のある原子力規制や原子力防災体制の構築を着実に推進する」である。推進派の言い分は、原発は炭酸ガスを出すことなく、また自然エネルギーのような天気に左右されることな安定供給が可能であるである。しかし、SDGsとは真向反対である。
福島原発事故後の廃炉作業は10年以上経つのに、今もってデブリのありかも突き止められない。また放射能廃棄物の保管場所も決められない。原発推進派にはまず過去の負の遺産の整理をしっかり行い、SDGsにも則ることを示した貰いたいものだ。
一方、自然エネルギーの代表格である太陽光発電のパネルを設置する適地は少なくなっており、その上寿命の尽きたパネルの処分法も問題になりつつあるらしい。これからの技術の進歩に期待するしかないが、片や節電に関しては、深夜の照明に対する明るさ制限等、規制をもっと厳しくすべきだ。2022.03.26(犬賀 大好ー801)