日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

成長戦略の失敗はお金の問題か

2022年06月04日 10時22分45秒 | 日々雑感
 日銀が先月17日発表した資金循環統計によると、2021年12月末時点の個人の金融資産残高は2023兆円となり、2000兆円の大台を初めて突破したとのことだ。一方、国の借金が2022年3月末時点で過去最大の1241兆円だそうだが、個人の金融資産はその1.6倍もあることになり、この点で国の借金も大した事でないとを主張するエコノミストもいるが、楽観的過ぎる。

 金融資産のうち現金・預金残高が約50%を、株式や投資信託は15%を占めているそうだ。米国の個人金融資産と比べると、現金・預金の構成比はわずか13%で、株式や投資信託の占める比率が約50%だそうで、日米の資産に関わる考え方の違いが良く表れている。

 さて現金・預金の約1000兆円の内訳は現金であるタンス預金が初めて2020年12月末時点で100兆円を突破し101兆円と過去最高となったそうだから、ほとんどは預金されていることになる。しかし、現在銀行預金の利子はほぼゼロであり、タンスが銀行の金庫となっただけでタンス預金と何ら変わらないことになる。

 5月31日、岸田首相は個人の金融資産を貯蓄から投資へ誘導する資産所得倍増計画を発表した。これは銀行に眠る1000兆円弱の個人預金に目を付けたのであろう。その具体策はこれからだそうだが、岸田首相が提唱する新しい資本主義においても成長は必須とのことで、この金を如何に投資に向かわせるかがポイントになるだろう。

 安倍前首相の異次元金融緩和でも経済成長が重要と言いながら失敗した。日銀は市中の国債を買い取り市中に金をばらまいたが、企業はその金を有効に投資に回せなかった。つまり、成長戦略は金のある無しではなく、成長の基になる種を見出すことが重要なのだ。

 銀行の本来の役目は一般市民から集めた金を企業に投資し、企業はその金で儲け、その利益の一部を市民に返却することだ。ところが銀行は多大な預貯金を抱える一方、国債を現金化した資金を有効に活用できなかったのは、銀行が将来性のある投資先を見いだせなかったことが原因であろう。

 西欧社会、特に米国では成長分野の成長は著しい。この差は銀行ばかりでなく、日本の経済界全般の過去の成功体験から抜け出せない体質によるだろう。その抜本的な問題を解決しないでお金ばかりを注いでも失敗に終わるのは目に見えている。

 世界はキャスレス化、デジタル社会化が進んでいるが、日本がその流れに乗り遅れているのも一因であろう。日本人の国民1人当たりの資産は平均約1650万円との計算になるが、その大半は50歳以上の高齢者が所有者だ。日本社会も徐々にではあるがデジタル化が進みつつあると言え、主流は若者層だ。

 この矛盾を解決するのが政治の役目であろう。個人資産を投資に振り向けようと岸田首相がいくら努力しても、社会の変化が伴わなければ過去の政権のように失敗に終わる。2022.06.04(犬賀 大好ー819)