新型コロナウイルスの影響を受けた経済活動の再開と、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻でエネルギー価格や農産物価格が高騰しているため、世界的にインフレが広がっている。米国では先月5月の消費者物価指数が前の年の同じ月と比べて8.6%の上昇となり、40年半ぶりの記録的な水準となったそうだ。
日本の場合は5月20日に総務省が公表した4月消費者物価統計によると、生鮮食品を除く消費者物価指数は前年同月比で+2.1%と上昇したそうだ。世界と同じウクライナ紛争の影響の他、円安の影響が大きい所が他国と異にする。
米欧各国の中央銀行はインフレを抑制するため、6月15日には米連邦準備制度理事会(FRB)が0・75%の大幅利上げを決定し、欧州中央銀行(ECB)も7月に0・25%の利上げに踏み切る方針を表明した。
一方、日銀は6月17日、金融政策を決める会合を開き、短期金利をマイナスにし、長期金利がゼロ%程度に抑える等、今の大規模な金融緩和策を維持することを賛成多数で決めたとのことだ。
黒田総裁は今の物価上昇が景気の下押し圧力になっていると指摘した上で ”今金融を引き締めると、さらに景気の下押し圧力になり日本経済がコロナ禍から回復しつつあるのを否定して、経済が更に悪くなってしまう”と緩和策を続行する正当性を主張した。
日銀の目指した異次元金融緩和は、景気が良くなり⇒企業が儲かり⇒従業員の給与が上昇し⇒購買力が高まって⇒物価が上昇する、とのストーリに従い、物価上昇率2%を目標としていたが、最近の状況を給与の上昇が伴わない悪い物価上昇と従来のストーリーを否定する言い方に変化してきている。
しかし、ゼロ金利政策をいつまでも続けるわけには行かない。ゼロ金利政策で市中にお金をばらまき投資を促し景気を回復させるはずであったが、景気は回復せず、不動産と株価の高騰があっただけだ。岸田新政権は ”貯蓄から投資”へと成長戦略を重視した新しい資本主義を提唱しているが、投資資金が増えたところで世の中の景気が良くなる訳ではないことは、異次元金融緩和の成り行きが示している。
日本国債や優良企業が発行する社債は、利回りが適切であれば国民にとって有効な投資先であるはずだが、ゼロ金利政策が投資意欲を阻害する原因にもなっている。
また、日本の産業界は異次元金融緩和が長期に亘っているためゼロ金利を前提に運営している企業が多いとのことであり、黒田総裁の利上げは経済を悪化させるとの言はその通りらしい。
西欧諸国の利上げは加熱した経済を冷却させることが目的であるのに対し、日本では今以上に冷却させることが出来ないとのことだろう。しかし、ゼロ金利政策は続ければ続けるほど円安の進行等副作用がどんどん大きくなる。いつかの時点で、この政策を転換させなくてはならないだろうが、景気回復の目途は立っていない。2022.06.22(犬賀 大好ー824)