歴代の政権はいづれも成長戦略を掲げたが、成功したのは観光立国を掲げ外国人観光客を招き入れたのが唯一の成功例だった。しかし、新型コロナウイルス拡大で水を差された昨年2021年の訪日外国人客数は約24万6000人と、2019年に記録した過去最多の3190万人には遠く及ばなかった。
最近コロナ感染が一段落するとともにドルに対する円が144円と円安が進み、外国人観光客は日本で安く買い物ができ大喜びである。政府は6月に海外からの観光客の受け入れを一部再開したが、思うように伸びていない。再開の影響が反映された7月の訪日外国人客数について、日本政府観光局(JNTO)は先月14万4500人だったと発表した。コロナ禍前の2019年7月(299万人)と比べると95.2%減と低い水準のままだ。
これは政府が観光会社の主催する団体旅行しか認めていなかったことが影響している。その後、観光会社が企画する個人旅行に解禁されたが、日本におけるコロナ感染が完全に終息していない為、感染した場合の個人の特定を容易にするためであり、個人が自由に動き回れる個人旅行では無かった。
木原官房副長官は9月11日、報道番組で秋冬の観光シーズン前に1日の入国者数の上限撤廃や個人旅行の解禁、訪日ビザの免除などを検討し、訪日外国人客の受け入れ拡大を図る考えを示した。
欧米主要国ではすでに個人旅行客が自由に行き来できるようになっている国も多い。日本では今月7日に1日の入国者数の上限を2万人から5万人へと引き上げ、ワクチン3回接種を条件に入国時の陰性証明提出も不要にしているが、先述の副長官の検討はいつになったら実行に移されるであろうか。
現在、24年ぶりの水準となっている円安の特性を生かし、外国人観光客の呼び込む絶好の機会であり、エコノミストからは経常収支の改善につながり、円安の歯止めになるとの見方も出ている。
政府、日銀は円安を指をくわえて見ているだけで何も出来ないようだが、外国人観光客の増加が円安の歯止めとなる理屈がよく分からないが、可能性があるならば対策を急いで貰いたいものだ。
外国人観光客を増やす場合のリスクは、コロナ感染の再拡大である。コロナウイルスは変異が激しく新たな変異株が登場するかもしれないが、余り慎重になっていても経済の回復は遅れるばかりである。決断と実行の人、岸田首相の実行力が試される。2022.09.14(犬賀 大好ー846)